藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり

Keitetsu003

文字の大きさ
上 下
89 / 174

90:青島高等学校七不思議 その三 疾走する人体模型

しおりを挟む
「はぁ……どうにか真実の鏡を……解決できたのかな? けど、また一人で寂ちぃ……」
「おい、ほのか、何一人で廊下を歩いてやがる」
「大丈夫ですか、伊藤さん」
「……」
「どうした、ほのか? 俺様の顔に何かついてるか?」
「一さん、伊藤さんは驚いているのかも。学校の校舎の中で会ったわけですし」
「し、獅子王さんに古見君! えええええええっ! どうして、獅子王さんがここにいるんですか! 死んで化けて出てきたんですか!」
「お前が死ね」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
「……相変わらず命知らずだね、伊藤さん」

(信じられない! 目の前にいるお人は獅子王財閥の跡取り、ボクシング部のエースで全国三連覇と成し遂げた最強のボクサー、俺様イケメンの獅子王一さん。今はアメリカに留学……という名の島流しみたいな扱いをされているんだけど……)

「どうだ? 俺様の手や足が透けて見えるか?」
「もう! 相変わらず人の顔をアイアンクローするのが好きな人達ですね! でも、嬉しいです! 獅子王さんが帰ってきたって事は古見君と……」
「いや、夏休みで一時帰国しているだけだ。まだ、そのときじゃねえ」
「はははっ……獅子王財閥を乗っ取る気満々ですね」
「あたぼうよ!」
「……」

(はははっ……相変わらずのビックマウスと絶滅危惧種のナウでヤングな死語マスター。けど、これぞ獅子王さんってカンジがする)

「それで、獅子王さん達はどうしてここに?」
「獅子王さんがどうしても伊藤さんに会いたいって言うから」
「んなわけねえだろうが! 変なこと抜かしているんじゃねえぞ、ひなた!」
「私は獅子王さんに会えて嬉しいですよ。獅子王さんは私の中で最高の親友ですから」
「……」
「あれ? テレちゃいました?」
「うっせ! ぶっ殺すぞ!」

(昔はすごく怖かったけど、今は笑えるくらい余裕がある。やっぱり、獅子王さんは変わったよね)

「それなら、ファミレスにでも行きませんか? 私、獅子王さんと古見君とおしゃべりしたいですし」
「ファミレス? 北区にあるホテル『グランドブルー』の最上階にあるバーでお茶すればいいだろ?」
「……流石御曹司。庶民と感覚が違う。でも、そこがいい……んだけど、やっぱり、ファミレスにしません? 私、お金そんなにないですし」
「金だと? そんなもん、俺様が……」
「いえ、友達ですので、そういうお金の事はしっかりしておきたいんです。獅子王さんは不満だと思いますけど」
「一さん、ここは……」
「ふっ……ひなたとほのかがそれでいいのならそうしてやる」
「では、いきましょう!」

「……待て。何かがくる」
「えっ? し、獅子王さん。脅かすのはやめて……」
「いえ、伊藤さん。足音がします。僕達の後ろに」
「ううっ……もうヤダ……怖い……」
「お前、あんぽんたんだろ、ほのか」
「な、なんでですか!」
「俺様がいるんだぞ? 何を恐れる?」
「……」
「僕も及ばずながら力になりますから」
「……古見君……獅子王さん……ううっ、目にゴミが……」

「くるぞ! ひなた!」
「はい!」

 タタタタタタタタタタタタッ!

「き、聞こえてきた! 足音! どうします? 投降を命じますか?」
「なんで投降を命じるんだ!」
「いや、獅子王さんのダイナマイトパンチを食らったら、あの世までぶっ飛びますよ。一応何かあったとき、言質をとっておかないと」
「「……」」

 タタタタタタタタタタタタッ!

「き、来ました! あれは……うぇえええええええええええええええええええ! じ、人体模型がきたぁああああああああああああああ!」
「ほのか、投降を命じるか?」
「いえ、結構です! 元の場所へとかえしてあげてください!」
「っしゃ! 俺様の前に立ち塞がる敵は誰であろうと殴り飛ばす!」
「相手は走ってきてますけどね!」
「やかましい! くらいやがれ!」
「ひぃ! 獅子王さんの右ストレートで頭がもげてもこっちに来る! いやぁあああああ! こ、こないでぇええええ!」

「ひなた!」
「はい!」
「ふぇええええええええええええ! 古見君の右ストレートで左上半身が粉々になってもこっちにくる! なんで、私に来るのよぉおおおおおお! ひぃ! 目の前に!」
「ほのか!」
「伊藤さん!」

 トントン。

「えっ?」
「あの野郎! 叩きのめす! ひなた、ついてこい!」
「一さん! あの人体模型はまだ男性と決まったわけでは!」
「ちょ! 獅子王さん! 古見君! かむば~~~~~~く! 男とか女とかどうでもいいでしょ! 私一人置いていくなんて、ありえないんですけど~~~~~~~!」

 ピンポン!

「我が友を破壊せし愚かな生徒、伊藤ほのか。器物破損により、貴様に血の制裁を加える。だが、慈悲がないわけではない。伊藤ほのか、我が問いに答えよ。正解なら不問にとす」
「いや、友って……器物破損って言ってるじゃないですか。請求は獅子王財閥でお願いします!」
「では人体について問おう。タンスの角で小指をぶつけたとき、神経繊維の中を伝わる神経インパルスは時速何キロで脳へと向かっている?」
「時速約300キロでしたっけ? GTR並の加速で痛みが走るわけですね」
「赤ちゃんと成人、どちらが骨の数が多い?」
「連続っすか。勿論、大人……ではなく、赤ちゃん。成長の過程で骨が結合するから」
「朝と夜。身長が高いのは?」
「朝。疑ってる人は実際に起床時と寝る前にはかってみてね」

「よろしい! 汝の罪を許そう。それではこの場から去るがいい!」
「あ、あの~私、走ってきた人体模型に肩を二回叩かれたんですけど、あれって何ですか?」
「七不思議だ。疾走する人体模型に肩を叩かれると……」
「肩を叩かれると……ごくり!」
「臭くなる」
「地味な嫌がらせ!」
「それを回避するには二日以内に三人、肩を叩かなければならない」
「ベタすぎる! 小学生か! あっ……そういえば、あの人体模型、右脳でいいのかな? 獅子王さんに殴られる前からヒビが入っていたような……」
「それはね、藤堂が喧嘩で人体模型を振り回したからだよ」
「安定のせんぱぁあああああああああああああああああああいいいいいい!」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

十年目の結婚記念日

あさの紅茶
ライト文芸
結婚して十年目。 特別なことはなにもしない。 だけどふと思い立った妻は手紙をしたためることに……。 妻と夫の愛する気持ち。 短編です。 ********** このお話は他のサイトにも掲載しています

病弱な愛人の世話をしろと夫が言ってきたので逃げます

音爽(ネソウ)
恋愛
子が成せないまま結婚して5年後が過ぎた。 二人だけの人生でも良いと思い始めていた頃、夫が愛人を連れて帰ってきた……

ぼくたちのたぬきち物語

アポロ
ライト文芸
一章にエピソード①〜⑩をまとめました。大人のための童話風ライト文芸として書きましたが、小学生でも読めます。 どの章から読みはじめても大丈夫です。 挿絵はアポロの友人・絵描きのひろ生さん提供。 アポロとたぬきちの見守り隊長、いつもありがとう。 初稿はnoteにて2021年夏〜22年冬、「こたぬきたぬきち、町へゆく」のタイトルで連載していました。 この思い入れのある作品を、全編加筆修正してアルファポリスに投稿します。 🍀一章│①〜⑩のあらすじ🍀 たぬきちは、化け狸の子です。 生まれてはじめて変化の術に成功し、ちょっとおしゃれなかわいい少年にうまく化けました。やったね。 たぬきちは、人生ではじめて山から町へ行くのです。(はい、人生です) 現在行方不明の父さんたぬき・ぽんたから教えてもらった記憶を頼りに、憧れの町の「映画館」を目指します。 さて無事にたどり着けるかどうか。 旅にハプニングはつきものです。 少年たぬきちの小さな冒険を、ぜひ見守ってあげてください。 届けたいのは、ささやかな感動です。 心を込め込め書きました。 あなたにも、届け。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

処理中です...