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90:青島高等学校七不思議 その三 疾走する人体模型
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「はぁ……どうにか真実の鏡を……解決できたのかな? けど、また一人で寂ちぃ……」
「おい、ほのか、何一人で廊下を歩いてやがる」
「大丈夫ですか、伊藤さん」
「……」
「どうした、ほのか? 俺様の顔に何かついてるか?」
「一さん、伊藤さんは驚いているのかも。学校の校舎の中で会ったわけですし」
「し、獅子王さんに古見君! えええええええっ! どうして、獅子王さんがここにいるんですか! 死んで化けて出てきたんですか!」
「お前が死ね」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
「……相変わらず命知らずだね、伊藤さん」
(信じられない! 目の前にいるお人は獅子王財閥の跡取り、ボクシング部のエースで全国三連覇と成し遂げた最強のボクサー、俺様イケメンの獅子王一さん。今はアメリカに留学……という名の島流しみたいな扱いをされているんだけど……)
「どうだ? 俺様の手や足が透けて見えるか?」
「もう! 相変わらず人の顔をアイアンクローするのが好きな人達ですね! でも、嬉しいです! 獅子王さんが帰ってきたって事は古見君と……」
「いや、夏休みで一時帰国しているだけだ。まだ、そのときじゃねえ」
「はははっ……獅子王財閥を乗っ取る気満々ですね」
「あたぼうよ!」
「……」
(はははっ……相変わらずのビックマウスと絶滅危惧種のナウでヤングな死語マスター。けど、これぞ獅子王さんってカンジがする)
「それで、獅子王さん達はどうしてここに?」
「獅子王さんがどうしても伊藤さんに会いたいって言うから」
「んなわけねえだろうが! 変なこと抜かしているんじゃねえぞ、ひなた!」
「私は獅子王さんに会えて嬉しいですよ。獅子王さんは私の中で最高の親友ですから」
「……」
「あれ? テレちゃいました?」
「うっせ! ぶっ殺すぞ!」
(昔はすごく怖かったけど、今は笑えるくらい余裕がある。やっぱり、獅子王さんは変わったよね)
「それなら、ファミレスにでも行きませんか? 私、獅子王さんと古見君とおしゃべりしたいですし」
「ファミレス? 北区にあるホテル『グランドブルー』の最上階にあるバーでお茶すればいいだろ?」
「……流石御曹司。庶民と感覚が違う。でも、そこがいい……んだけど、やっぱり、ファミレスにしません? 私、お金そんなにないですし」
「金だと? そんなもん、俺様が……」
「いえ、友達ですので、そういうお金の事はしっかりしておきたいんです。獅子王さんは不満だと思いますけど」
「一さん、ここは……」
「ふっ……ひなたとほのかがそれでいいのならそうしてやる」
「では、いきましょう!」
「……待て。何かがくる」
「えっ? し、獅子王さん。脅かすのはやめて……」
「いえ、伊藤さん。足音がします。僕達の後ろに」
「ううっ……もうヤダ……怖い……」
「お前、あんぽんたんだろ、ほのか」
「な、なんでですか!」
「俺様がいるんだぞ? 何を恐れる?」
「……」
「僕も及ばずながら力になりますから」
「……古見君……獅子王さん……ううっ、目にゴミが……」
「くるぞ! ひなた!」
「はい!」
タタタタタタタタタタタタッ!
「き、聞こえてきた! 足音! どうします? 投降を命じますか?」
「なんで投降を命じるんだ!」
「いや、獅子王さんのダイナマイトパンチを食らったら、あの世までぶっ飛びますよ。一応何かあったとき、言質をとっておかないと」
「「……」」
タタタタタタタタタタタタッ!
「き、来ました! あれは……うぇえええええええええええええええええええ! じ、人体模型がきたぁああああああああああああああ!」
「ほのか、投降を命じるか?」
「いえ、結構です! 元の場所へとかえしてあげてください!」
「っしゃ! 俺様の前に立ち塞がる敵は誰であろうと殴り飛ばす!」
「相手は走ってきてますけどね!」
「やかましい! くらいやがれ!」
「ひぃ! 獅子王さんの右ストレートで頭がもげてもこっちに来る! いやぁあああああ! こ、こないでぇええええ!」
「ひなた!」
「はい!」
「ふぇええええええええええええ! 古見君の右ストレートで左上半身が粉々になってもこっちにくる! なんで、私に来るのよぉおおおおおお! ひぃ! 目の前に!」
「ほのか!」
「伊藤さん!」
トントン。
「えっ?」
「あの野郎! 叩きのめす! ひなた、ついてこい!」
「一さん! あの人体模型はまだ男性と決まったわけでは!」
「ちょ! 獅子王さん! 古見君! かむば~~~~~~く! 男とか女とかどうでもいいでしょ! 私一人置いていくなんて、ありえないんですけど~~~~~~~!」
ピンポン!
「我が友を破壊せし愚かな生徒、伊藤ほのか。器物破損により、貴様に血の制裁を加える。だが、慈悲がないわけではない。伊藤ほのか、我が問いに答えよ。正解なら不問にとす」
「いや、友って……器物破損って言ってるじゃないですか。請求は獅子王財閥でお願いします!」
「では人体について問おう。タンスの角で小指をぶつけたとき、神経繊維の中を伝わる神経インパルスは時速何キロで脳へと向かっている?」
「時速約300キロでしたっけ? GTR並の加速で痛みが走るわけですね」
「赤ちゃんと成人、どちらが骨の数が多い?」
「連続っすか。勿論、大人……ではなく、赤ちゃん。成長の過程で骨が結合するから」
「朝と夜。身長が高いのは?」
「朝。疑ってる人は実際に起床時と寝る前にはかってみてね」
「よろしい! 汝の罪を許そう。それではこの場から去るがいい!」
「あ、あの~私、走ってきた人体模型に肩を二回叩かれたんですけど、あれって何ですか?」
「七不思議だ。疾走する人体模型に肩を叩かれると……」
「肩を叩かれると……ごくり!」
「臭くなる」
「地味な嫌がらせ!」
「それを回避するには二日以内に三人、肩を叩かなければならない」
「ベタすぎる! 小学生か! あっ……そういえば、あの人体模型、右脳でいいのかな? 獅子王さんに殴られる前からヒビが入っていたような……」
「それはね、藤堂が喧嘩で人体模型を振り回したからだよ」
「安定のせんぱぁあああああああああああああああああああいいいいいい!」
「おい、ほのか、何一人で廊下を歩いてやがる」
「大丈夫ですか、伊藤さん」
「……」
「どうした、ほのか? 俺様の顔に何かついてるか?」
「一さん、伊藤さんは驚いているのかも。学校の校舎の中で会ったわけですし」
「し、獅子王さんに古見君! えええええええっ! どうして、獅子王さんがここにいるんですか! 死んで化けて出てきたんですか!」
「お前が死ね」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
「……相変わらず命知らずだね、伊藤さん」
(信じられない! 目の前にいるお人は獅子王財閥の跡取り、ボクシング部のエースで全国三連覇と成し遂げた最強のボクサー、俺様イケメンの獅子王一さん。今はアメリカに留学……という名の島流しみたいな扱いをされているんだけど……)
「どうだ? 俺様の手や足が透けて見えるか?」
「もう! 相変わらず人の顔をアイアンクローするのが好きな人達ですね! でも、嬉しいです! 獅子王さんが帰ってきたって事は古見君と……」
「いや、夏休みで一時帰国しているだけだ。まだ、そのときじゃねえ」
「はははっ……獅子王財閥を乗っ取る気満々ですね」
「あたぼうよ!」
「……」
(はははっ……相変わらずのビックマウスと絶滅危惧種のナウでヤングな死語マスター。けど、これぞ獅子王さんってカンジがする)
「それで、獅子王さん達はどうしてここに?」
「獅子王さんがどうしても伊藤さんに会いたいって言うから」
「んなわけねえだろうが! 変なこと抜かしているんじゃねえぞ、ひなた!」
「私は獅子王さんに会えて嬉しいですよ。獅子王さんは私の中で最高の親友ですから」
「……」
「あれ? テレちゃいました?」
「うっせ! ぶっ殺すぞ!」
(昔はすごく怖かったけど、今は笑えるくらい余裕がある。やっぱり、獅子王さんは変わったよね)
「それなら、ファミレスにでも行きませんか? 私、獅子王さんと古見君とおしゃべりしたいですし」
「ファミレス? 北区にあるホテル『グランドブルー』の最上階にあるバーでお茶すればいいだろ?」
「……流石御曹司。庶民と感覚が違う。でも、そこがいい……んだけど、やっぱり、ファミレスにしません? 私、お金そんなにないですし」
「金だと? そんなもん、俺様が……」
「いえ、友達ですので、そういうお金の事はしっかりしておきたいんです。獅子王さんは不満だと思いますけど」
「一さん、ここは……」
「ふっ……ひなたとほのかがそれでいいのならそうしてやる」
「では、いきましょう!」
「……待て。何かがくる」
「えっ? し、獅子王さん。脅かすのはやめて……」
「いえ、伊藤さん。足音がします。僕達の後ろに」
「ううっ……もうヤダ……怖い……」
「お前、あんぽんたんだろ、ほのか」
「な、なんでですか!」
「俺様がいるんだぞ? 何を恐れる?」
「……」
「僕も及ばずながら力になりますから」
「……古見君……獅子王さん……ううっ、目にゴミが……」
「くるぞ! ひなた!」
「はい!」
タタタタタタタタタタタタッ!
「き、聞こえてきた! 足音! どうします? 投降を命じますか?」
「なんで投降を命じるんだ!」
「いや、獅子王さんのダイナマイトパンチを食らったら、あの世までぶっ飛びますよ。一応何かあったとき、言質をとっておかないと」
「「……」」
タタタタタタタタタタタタッ!
「き、来ました! あれは……うぇえええええええええええええええええええ! じ、人体模型がきたぁああああああああああああああ!」
「ほのか、投降を命じるか?」
「いえ、結構です! 元の場所へとかえしてあげてください!」
「っしゃ! 俺様の前に立ち塞がる敵は誰であろうと殴り飛ばす!」
「相手は走ってきてますけどね!」
「やかましい! くらいやがれ!」
「ひぃ! 獅子王さんの右ストレートで頭がもげてもこっちに来る! いやぁあああああ! こ、こないでぇええええ!」
「ひなた!」
「はい!」
「ふぇええええええええええええ! 古見君の右ストレートで左上半身が粉々になってもこっちにくる! なんで、私に来るのよぉおおおおおお! ひぃ! 目の前に!」
「ほのか!」
「伊藤さん!」
トントン。
「えっ?」
「あの野郎! 叩きのめす! ひなた、ついてこい!」
「一さん! あの人体模型はまだ男性と決まったわけでは!」
「ちょ! 獅子王さん! 古見君! かむば~~~~~~く! 男とか女とかどうでもいいでしょ! 私一人置いていくなんて、ありえないんですけど~~~~~~~!」
ピンポン!
「我が友を破壊せし愚かな生徒、伊藤ほのか。器物破損により、貴様に血の制裁を加える。だが、慈悲がないわけではない。伊藤ほのか、我が問いに答えよ。正解なら不問にとす」
「いや、友って……器物破損って言ってるじゃないですか。請求は獅子王財閥でお願いします!」
「では人体について問おう。タンスの角で小指をぶつけたとき、神経繊維の中を伝わる神経インパルスは時速何キロで脳へと向かっている?」
「時速約300キロでしたっけ? GTR並の加速で痛みが走るわけですね」
「赤ちゃんと成人、どちらが骨の数が多い?」
「連続っすか。勿論、大人……ではなく、赤ちゃん。成長の過程で骨が結合するから」
「朝と夜。身長が高いのは?」
「朝。疑ってる人は実際に起床時と寝る前にはかってみてね」
「よろしい! 汝の罪を許そう。それではこの場から去るがいい!」
「あ、あの~私、走ってきた人体模型に肩を二回叩かれたんですけど、あれって何ですか?」
「七不思議だ。疾走する人体模型に肩を叩かれると……」
「肩を叩かれると……ごくり!」
「臭くなる」
「地味な嫌がらせ!」
「それを回避するには二日以内に三人、肩を叩かなければならない」
「ベタすぎる! 小学生か! あっ……そういえば、あの人体模型、右脳でいいのかな? 獅子王さんに殴られる前からヒビが入っていたような……」
「それはね、藤堂が喧嘩で人体模型を振り回したからだよ」
「安定のせんぱぁあああああああああああああああああああいいいいいい!」
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