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86:梅雨のない場所

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「ねえ、新宮司君。今日のお祭り、楽しかったね」
「そうだね」
「また、来年もみんなで花火を見に行こうね」
「……それは嫌だな……」
「えっ?」
「今度は……お前と二人だけで花火を作りたいな」
「えっ……うそ……きゅん!」

「んなわけねえだろうが!」
「ぐほぉ! な、何しやがる! 伊藤!」
「花火作ってどないするねん! 意味が分からんわ! 火薬類取締法で捕まるっちゅうねん! そんなことより、先輩は!」
「いや、今回も俺だけど」
「タイトル! タイトルは『藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり』でしょ! またタイトル詐欺をする同じ過ちを繰り返すなんて!」
「まあ、落ち着け。梅雨がある程度あけたな」
「……そうですね」
「日本で梅雨がない場所って知ってるか?」
「確か……北海道でしたっけ?」
「正解。理由は?」
「梅雨前線は北海道までもたないって話でしたっけ? 北海道に梅雨前線が来る頃には気団の温度や湿度の差がなくて、そのせいで勢力は弱まってしまい、消えてしまうでしたっけ?」

「おおっ、お前一人でもやっていけるじゃねえか」
「それは寂しすぎます! ああっ……夏休みなのに○○○のせいで遊びに行けない地域とかあって今年もつまらなさそうですね。でも、今年はオリンピックがあるので楽しみです」
「いや、オリンピックこそ関東の夏休みや飲食店のフラストレーションを高めている原因だろ? 自粛しろって言っているくせにどこぞやの会長の歓迎会はやってるし。料理がなければいいとかじゃないだろ? 蜜をなくすために……」
「はい! そこまで! それ以上は大抵、話が消されるラインになる可能性が出てくるのでここまでです!」

「ったく、ネットでも自粛かよ」
「私はいいと思いますよ。言論の自由という名の言葉の暴力反対派ですから」
「はぁ……何かと面倒な時代だぜ」
「モラルのある世界になったと思いますけど。どっちもメリットもデメリットはありそうですけどね。ああ~、先輩に会いたいよ~~~~」
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