藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり

Keitetsu003

文字の大きさ
上 下
40 / 173

40:正道の夏休み

しおりを挟む
「今日も暑いな!」
「夏だからな」
「出たよ。何の発展もない返しが。だから、お前はモテないんだよ。ちなみに俺、風紀委員一年、黒井麗子の義兄である武蔵野猛は偶然出会った藤堂正道と喫茶店で涼んでいた」
「……お前もか」
「なにがだ?」
「いや、いい。俺と武蔵野が初めて出会ったのが冬だとか、今の状況を誰に話しているのかとか、もうツッコむのが面倒だ」
「だったら言うな。正道は夏休みを満悦してるみたいだな。綺麗に日焼けしているじゃねえか」
「海のバイトで日焼けしただけだ。やはり、夏は稼ぎ時だな。九月のバイト代が楽しみで仕方ない」
「何か欲しいものでもあるのか?」
「別に。大学の進学費とバイクのメンテ、後は車の購入の積み立てだな」
「おおっ、車が欲しいって珍しいな。走り屋にでもなる気か?」
「いや。買い物とか便利だろ?」
「……お前、本当に高校生か? 生活臭がすげえぞ」
「やかましい。楓さんの手伝いが出来るし、親孝行だろうが」
「ああっ、楓さんって確かあのチャーミングなご婦人だよな。まさにおばあちゃんの代名詞だ」
「なんなんだそれは。武蔵野こそ日焼けしてるじゃないか。バイトか?」
「いや、デートだ。正道、夏にしか楽しめないデートコースがあるんだから、少しは遊べよ。それに、童貞は捨てておけ。童貞のまま、二学期を迎えるとあきらかに残念な気持ちになるぞ。逆に童貞を卒業した新学期の朝は晴れ晴れとした気分になる。これは経験談だ」
「やかましい。風紀委員の俺にそんなこと言うな」
「風紀委員関係なくね? 俺はおすすめするぜ。マジで大人になった気分になれる。自信がついて憂鬱な二学期も少しは楽しくなる」
「はいはい」
「はぁ……ガタイはいいものもってるのにな。マッチョで日焼けのコンボはモテるのに。ソースは俺だ」
「いい加減なことを言うな」
「いやいや、マジだって。にしても、誰か遊んでくれる女はいないのか?」
「いるわけないだろ? いや、そういえば一人、海に誘われたな」
「おいおい、誰だよ! そのマザーテレサな御仁は」
「修道女が男を海に誘うか。後輩だ」
「経緯を教えろ。マジか社交辞令か見抜いてやる」
「はぁ……実はカクカクシカシカ……」
「……おいおい、脈ありだろうが! バカか、お前は! おい、携帯を貸せ!」
「か、勝手にとるな!」
「アドレスは……この伊藤ほのかって女だな。よし、送信」
「おい、やめろ!」
「もう、おせえよ。明日の午前中に海デートのお誘いをしてやったぜ。約束事は早くしたほうがいいだろ?」
「お前な……あんなもん、社交辞令だろうが。それに明日はバイトが……」
「おっ、返答が来たぜ。ほのかちゃん、なんだって?」
「ちゃんづけするな。返信は……」
「返信は?」
「……OKだと」
「だろ? 俺の目に狂いはない」
「あのな……伊藤は俺の後輩だぞ。そういった目で見れるわけないだろうが!」
「だったら、フツウに楽しんでこいよ。海に行くからってやましいことなんてないだろ? 特に海辺に住む正道達なら」
「……そうかもしれないが」
「夏は女と遊んでおけ。絶対に楽しいし、仲良くなれる。正道はほのかちゃんの事、嫌いなのか?」
「だから、ちゃんづけするな。嫌いなわけないだろうが。はぁ……明日のバイト、休めるかどうか、店長と相談してくる」
「そんな不景気そうな顔をするな。明日になれば、絶対に俺に感謝するぞ。賭けてもいい。騙されたと思って、楽しんでこい」
「勝手な事ばかり言いやがって……伊藤と海か……アイツは俺と一緒で楽しいのかよ……」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で2/20頃非公開予定ですが読んでくださる方が増えましたので先延ばしになるかもしれませんが宜しくお願い致します。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

処理中です...