藤堂正道と伊藤ほのかのおしゃべり

Keitetsu003

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35:催涙雨

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「も~えろよ もえろ~よ 笹よも~え~ろ」
「……燃えてるな」
「そうっすね。ちなみに今、私達は七夕で使用した笹を燃やしています。短冊って結構、風で飛んでいきますよね」
「それを掃除するのが俺達の最後の仕事だ。今年も不安定な天気だったな」
「先輩、先輩。クイズです。七月七日にふる雨は何でしょうか?」
「催涙雨だろ。年に1度の七夕のみ会うことが許された織姫と彦星だが、その日に雨が降ると天の川の水かさが増してしまい、織姫は渡ることができずに再会の機会を失い、悲しみで流した涙と言われているな。ただ、再会を喜んで流した涙も催涙雨と言われているな」
「私は再会して流した涙の方がいいですけどね。でもでも、天ノ川が水かさが増して渡れなかった場合、カササギの群れがやってきて天の川の中に翼をつらねて橋となって、二人を会わせててくれた、そんなエピソードもあるらしいですよ」
「カササギは織姫の父である天帝の使者とも言われているからな。粋な計らいだな」
「ロマンチックな話ですよね。でも、天帝が二人を引き裂いたわけですけど」
「だな。それに雨が降らなかったら、感激もなにもなかったってことだろ? 一年に一度だけしか会えないから、愛も冷めて、仕方なく会っているような気にならないか?」
「出ましたよ……空気読めない発言が」
「ツッコミどころしかないだろ、このイベントは。織姫と彦星の距離は約140兆キロも離れているのに牛車で移動の方が無茶だろ。せめてHTV-2にしておけよって言いたくなる」
「それを言うなら、二人が結婚して仕事をしなかったから、このイベントがうまれたわけですし、あまり子供に聞かせたくないイベントではありますね。それにそもそも七夕しちせきって呼ばれていましたしね。よし、作業完了! さくっと後片付けしますか」
「仕事熱心だな」
「私、思うんです。ロマンチックな話より、普通がいいって。会いたい人にはすぐに会えた方がいいですからね。だから、真面目に頑張ろうと思っただけです」
「そうだな……会いたい人には会えるのが一番いいよな。さて、後片付けも終わったし、帰るか。伊藤、家まで送るから、準備ができたら声を掛けてくれ。それとこれ、飲んどけ」
「先輩って本当、ママンですよね。水分補給するほど汗をかいてませんよ。でも、気を遣っていただき、ありがとです。仲良く二人で帰りますか」
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