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33:梅雨入りしない

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「先輩先輩! 大変です!」
「どうした、伊藤? 転んだか?」
「うぇえええ~~ん、せんぱ~い。膝小僧がむけちゃって~!」
「我慢しろ」
「いやいやいや! ボケをボケで返さないでください! それより、大変なんですよ! 天変地異なんですよ!」
「天変地異?」
「はい! 今は梅雨ですよね?」
「だな。それにしては……」
「まだ梅雨入りしてない地域があるんですよ! 主に西日本です! かっこ例外ありかっこ閉じですが!」
「……別にいいだろって言いたいが、農作物に影響が出ているらしいな」
「このまま梅雨入りされなかったらどうしましょ?」
「まあ、梅雨入りしなかった年もあるし、台風も来そうだから、梅雨入りにこだわる必要は……」
「先輩……今、何て言いました?」
「梅雨入りにこだわる必要は……」
「もう少し前です!」
「梅雨入りしなかった年がある、か?」
「そうです! あるんですか、そんな年!」
「確か、1963年の四国地方と近畿地方は梅雨入りはしなかったはずだ。台風が来れば、条件を満たして梅雨入りするかもしれんが、問題は一気に雨が降ることだな。天気はまるで調整されたかのように変動する。猛暑が続けば、豪雨が訪れる。災害で大きな被害が出る」
「何事もほどほどがいいってことですね。広く浅くがベストっす」
「そうだな」
「あっ、先輩って貯金箱にお金を入れているタイプっすか?」
「よく分かったな」
「先輩って体は大きいのに、小さな事をコツコツとすることが好きですよね~。態度もデカいのに」
「……なあ、伊藤」
「なんすか、先輩? また暴力という名の説教っすか? 別にバカにしてませんよ?」
「貯金箱な、風紀委員室にあるんだ」
「はい?」
「そんでな……俺だけじゃなくて、左近や御堂、黒井、朝乃宮、上春のみんなで貯めているんだ。気が向いたらお金を入れているんだ」
「えっ?」
「お金がたまったら、美味しい物をみんなで食べようと決めたんだ」
「それって、私もお呼ばれされるんですよね?」
「んなわけないだろ。金を出してないヤツに参加する資格はない」
「ちょっとちょっとちょっと! それって酷くないっすか! 一番気になるのが、私、ハブにされていたんですか! ねえ、先輩!」
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