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30:梅雨入り
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「『令和』になって一ヶ月が過ぎたな」
「そうですね、いろんなことがありました。天皇誕生日、令和元年の硬貨等、話題になりましたね。先輩、見てください。令和記念 グッズ、『令和猫』です。特攻服の背中の部分に元号が入っている猫です。なめ猫のパクリっすね」
「おおっ、伊藤。企業戦略に踊らされているな」
「それ、嫌味ですか?」
「いや、お金は使ってこそナンボだろ? 伊藤の行為は経済が潤う、いい行動だ」
「そ、そうっすか?」
「その調子で、このクッキーを注文してくれ。『令和クッキー』だ」
「……」
「こ、このクッキーはな……」
「うわ……すごいですね~。クッキーに『令和』って書かれてます。何のひねりもない、シンプルで味も悪くない。値段が相場の倍以上しますけど」
「……仕方ないんだ。バイト先の店長が考えたんだが、在庫をかかえてな……最初は売れたんだ。でも、時が過ぎれば、全く注文されなくなってな」
「流行は水物ですからね。分かりました。先輩の為に一肌脱ぎましょう。友達に声を掛けておきます。どこで買えるんですか?」
「限定商品だから店内での注文のみだ。気軽に来てくれ」
「いや、先輩。先輩のバイト先って居酒屋ですよね? 流石に女子高校生一人で居酒屋は無理っしょ。いろんな意味で」
「大丈夫だ。伊藤は可愛いから、すぐに誰か声を掛けられる」
「私が可愛いのは否定しませんが、お持ち帰りされたらどうするんですか?」
「問題ない。そんな店ではないと、たっぷり身体に教えてやる」
「うわ~……美人局じゃないですか。二人で刑務所行きの未来しか見えないんですけど……」
「とにかく、気が向いたら来てくれ。水くらいはおごる」
「元々タダでしょ、それ。そんなことより、先輩。そろそろ梅雨入りですよね。そこで問題です。梅雨入りの定義とは何でしょうか?」
「晴天が2日以上続いた後、梅雨前線の影響で、前日と本日が雨で、さらにその後1週間の天気予報が5日以上雨または曇りだったか? ただ、気象庁は梅雨入りの宣言を『○月○日頃』、もしくは『見られます』で発表しているな。定義は決まっているのに、ぼかした言い方をするのはクレーム回避の為だと思われる」
「世辞辛いっすね。防災上の注意喚起の為、気象庁は梅雨入りの情報を流しているのに」
「全くだ。だが、予報ですので外れても仕方ない、では納得いかないというのも頷ける話だ」
「ですね。梅雨に備えて、傘を新調しないと。先輩は毎年同じ傘を使っているんですか?」
「いや、最近は一年に四、五本買い換えてるな」
「えっ? そうなんですか? 先輩も流行とか気にする人なんですね。意外です」
「いや、違う。喧嘩で使うんだ」
「け、喧嘩?」
「ああ、そうだ。雨の日でも不良の喧嘩に巻き込まれる事はあるからな、武器として使うんだ。意外に使えるんだが、すぐに壊れてな。その度に買い換えてる」
「ううっ……先輩のマジボケについていけない」
「そうですね、いろんなことがありました。天皇誕生日、令和元年の硬貨等、話題になりましたね。先輩、見てください。令和記念 グッズ、『令和猫』です。特攻服の背中の部分に元号が入っている猫です。なめ猫のパクリっすね」
「おおっ、伊藤。企業戦略に踊らされているな」
「それ、嫌味ですか?」
「いや、お金は使ってこそナンボだろ? 伊藤の行為は経済が潤う、いい行動だ」
「そ、そうっすか?」
「その調子で、このクッキーを注文してくれ。『令和クッキー』だ」
「……」
「こ、このクッキーはな……」
「うわ……すごいですね~。クッキーに『令和』って書かれてます。何のひねりもない、シンプルで味も悪くない。値段が相場の倍以上しますけど」
「……仕方ないんだ。バイト先の店長が考えたんだが、在庫をかかえてな……最初は売れたんだ。でも、時が過ぎれば、全く注文されなくなってな」
「流行は水物ですからね。分かりました。先輩の為に一肌脱ぎましょう。友達に声を掛けておきます。どこで買えるんですか?」
「限定商品だから店内での注文のみだ。気軽に来てくれ」
「いや、先輩。先輩のバイト先って居酒屋ですよね? 流石に女子高校生一人で居酒屋は無理っしょ。いろんな意味で」
「大丈夫だ。伊藤は可愛いから、すぐに誰か声を掛けられる」
「私が可愛いのは否定しませんが、お持ち帰りされたらどうするんですか?」
「問題ない。そんな店ではないと、たっぷり身体に教えてやる」
「うわ~……美人局じゃないですか。二人で刑務所行きの未来しか見えないんですけど……」
「とにかく、気が向いたら来てくれ。水くらいはおごる」
「元々タダでしょ、それ。そんなことより、先輩。そろそろ梅雨入りですよね。そこで問題です。梅雨入りの定義とは何でしょうか?」
「晴天が2日以上続いた後、梅雨前線の影響で、前日と本日が雨で、さらにその後1週間の天気予報が5日以上雨または曇りだったか? ただ、気象庁は梅雨入りの宣言を『○月○日頃』、もしくは『見られます』で発表しているな。定義は決まっているのに、ぼかした言い方をするのはクレーム回避の為だと思われる」
「世辞辛いっすね。防災上の注意喚起の為、気象庁は梅雨入りの情報を流しているのに」
「全くだ。だが、予報ですので外れても仕方ない、では納得いかないというのも頷ける話だ」
「ですね。梅雨に備えて、傘を新調しないと。先輩は毎年同じ傘を使っているんですか?」
「いや、最近は一年に四、五本買い換えてるな」
「えっ? そうなんですか? 先輩も流行とか気にする人なんですね。意外です」
「いや、違う。喧嘩で使うんだ」
「け、喧嘩?」
「ああ、そうだ。雨の日でも不良の喧嘩に巻き込まれる事はあるからな、武器として使うんだ。意外に使えるんだが、すぐに壊れてな。その度に買い換えてる」
「ううっ……先輩のマジボケについていけない」
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