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24:ひな祭り
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「……」
「おい」
「……」
「無視するな。女雛様になれなかったからってスネるなよ」
「……別にスネてません。そこじゃありませんから」
「……はあ」
(例のごとく、市主催の子供会のイベント、ひな祭りの手伝いに来ているわけだが、伊藤の機嫌がすこぶる悪い。俺達風紀委員がひな祭りに出てくる人物の衣装を着て、お菓子を配ったり、イベントの手伝いをしているわけだが、衣装のことで伊藤の機嫌が悪くなった。その理由がいまいち分からん。何を怒っているんだ?)
(先輩の鈍感! 先輩が男雛様をやらないなら、私が女雛様をやっても意味がないじゃないですか! 私が怒っているのは、先輩が女雛様の衣装を着た朝乃宮先輩に見惚れていたことです! 鼻の下伸ばしちゃって! 本当に格好悪い! キモい! 許せない!)
「……おい、伊藤」
「……何ですか?」
「ひなあられ、食うか?」
「私は 子供ですか! 食べ物でご機嫌を取ろうなんてやめてください!」
「伊藤、ひな祭りにひなあられを食べる由縁を知っているか?」
「……子供の健やかな成長を願う気持ちが込められているからですよね。ひなあられの白は雪の大地のエネルギー、緑は木々のエネルギー、赤は血と命の色から生命のエネルギーとされています。三つの自然エネルギーが成長を促すわけですね」
「そうだ。四色なら何を意味するか知っているか?」
「確か季節ですよね? 緑は春、赤は夏、黄は秋、白は冬。意味は一年を通しての幸せを祈るでしたっけ?」
「そうだ。本当は子供達に配るお菓子だから、俺達が食べるのはダメなんだが、伊藤には食べてほしい」
「どうしてですか?」
「お礼だ。なんだかんだ言いながら、いつも手伝ってくれるだろ? だから、感謝の気持ちを込めて、伊藤にも幸せになって欲しいと願いを込めて、贈り物がしたいんだ」
「……それがひなあられですか?」
「子供っぽかったか?」
「……いえ、全部いただきます」
「おい! 子供達の分は残しておけ!」
「違います! 私が配ってくるんです! 先輩みたいな強面な人が子供達に配ったら泣かれちゃいますから!」
「……やれやれ」
「お疲れさま、正道。伊藤さん、やる気出してくれたみたいじゃない」
「お疲れ、左近。全く、手を焼かせてくれるよ、伊藤は」
「そのわりには正道、嬉しそうな顔してるじゃない。伊藤さんも幸せそうな顔、してたよ。いいコンビだね」
「……冗談はよせ。朝乃宮にからかわれるわ、伊藤は機嫌が悪いわ、子供にはいつも蹴られるわ、大変なんだぞ。嬉しいわけあるか」
「散々だね。三月三日なだけに」
「全くだ。伊藤も頑張っているわけだし、俺も気合い入れていくか」
「おい」
「……」
「無視するな。女雛様になれなかったからってスネるなよ」
「……別にスネてません。そこじゃありませんから」
「……はあ」
(例のごとく、市主催の子供会のイベント、ひな祭りの手伝いに来ているわけだが、伊藤の機嫌がすこぶる悪い。俺達風紀委員がひな祭りに出てくる人物の衣装を着て、お菓子を配ったり、イベントの手伝いをしているわけだが、衣装のことで伊藤の機嫌が悪くなった。その理由がいまいち分からん。何を怒っているんだ?)
(先輩の鈍感! 先輩が男雛様をやらないなら、私が女雛様をやっても意味がないじゃないですか! 私が怒っているのは、先輩が女雛様の衣装を着た朝乃宮先輩に見惚れていたことです! 鼻の下伸ばしちゃって! 本当に格好悪い! キモい! 許せない!)
「……おい、伊藤」
「……何ですか?」
「ひなあられ、食うか?」
「私は 子供ですか! 食べ物でご機嫌を取ろうなんてやめてください!」
「伊藤、ひな祭りにひなあられを食べる由縁を知っているか?」
「……子供の健やかな成長を願う気持ちが込められているからですよね。ひなあられの白は雪の大地のエネルギー、緑は木々のエネルギー、赤は血と命の色から生命のエネルギーとされています。三つの自然エネルギーが成長を促すわけですね」
「そうだ。四色なら何を意味するか知っているか?」
「確か季節ですよね? 緑は春、赤は夏、黄は秋、白は冬。意味は一年を通しての幸せを祈るでしたっけ?」
「そうだ。本当は子供達に配るお菓子だから、俺達が食べるのはダメなんだが、伊藤には食べてほしい」
「どうしてですか?」
「お礼だ。なんだかんだ言いながら、いつも手伝ってくれるだろ? だから、感謝の気持ちを込めて、伊藤にも幸せになって欲しいと願いを込めて、贈り物がしたいんだ」
「……それがひなあられですか?」
「子供っぽかったか?」
「……いえ、全部いただきます」
「おい! 子供達の分は残しておけ!」
「違います! 私が配ってくるんです! 先輩みたいな強面な人が子供達に配ったら泣かれちゃいますから!」
「……やれやれ」
「お疲れさま、正道。伊藤さん、やる気出してくれたみたいじゃない」
「お疲れ、左近。全く、手を焼かせてくれるよ、伊藤は」
「そのわりには正道、嬉しそうな顔してるじゃない。伊藤さんも幸せそうな顔、してたよ。いいコンビだね」
「……冗談はよせ。朝乃宮にからかわれるわ、伊藤は機嫌が悪いわ、子供にはいつも蹴られるわ、大変なんだぞ。嬉しいわけあるか」
「散々だね。三月三日なだけに」
「全くだ。伊藤も頑張っているわけだし、俺も気合い入れていくか」
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