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23:卒業
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「思い出のキズが~ 残るあの机に~」
「『ありがとう さようなら』か?」
「はい! 卒業シーズンですからね。私、この歌好きなんです。友達は寂しい曲とか言いますけど、私はせつなくて、美しくて、前へ歩いていける、そんな曲だと思うんです」
「確かにな。最近の卒業式はJ-POPとか人気アーティストが歌った曲が流れるが、情緒がないような気がする」
「同感です。そのときは人気のある曲でも、後世まで語り継がれることもないですし、パパン世代の大人はピンとこないようですしね。ちなみに、先輩は第二ボタンはどうするつもりなんですか?」
「第二ボタン?」
「もうもう、とぼけちゃって~。ウチの学校は私服OKですけど、制服が今時学ランじゃないですか。学ランといえば、第二ボタン! 気になるイベントですよね~」
「よく知ってるな。第二ボタンか……奉納だな」
「奉納?」
「ああっ。風紀委員の風習でな、卒業した先輩方の第二ボタンを集めて、保管しておくんだ。先輩方がここにいたって事を証明するために。映画でもあるだろ? ○○もここにありきって。分かっているとは思うが、レッドの方だからな。あれは心に深く残る映画だ」
「今その箱、どこにあるんですか? そんな不届きな箱、M72 LAWで木っ端微塵にしておきます」
「お前……思い出ごと消し去るつもりか。鬼か、己は」
「第二ボタンは幻の卒業イベントのひとつです。それを汗臭い男の子の美学みたいなノリでつぶすようなマネをしないでください」
「……」
「それより、先輩は第二ボタンの意味、知っていますか?」
「……男性から女性に制服の第二ボタンを贈る風習だったものだな。今はブレザーが主流だから第二ボタンを贈ること自体知らない人もいるようだ。元々は映画『紺碧の空遠く』のワンシーンで、特攻隊に志願した男性が、好きな女性に死ぬ前に何か贈りたくて、出撃前に軍服の第2ボタンを引きちぎって渡した事だな。昔はボタンは全てとめていた。第一ボタンを渡してしまうと、前が開いてしまい、だらしなく見えてしまう。第二ボタンだと敬礼 (左手を胸の前に当てる)の時に第二ボタンを手で隠せる。そういった理由だったと思う」
「柏原芳恵さんの『春なのに』で流行ったという説もあるみたいです。私としては敬愛する先輩の第二ボタンを狙っているのですが、予約しておいてよろしいでしょうか?」
「気が早いな。でも、俺達もいずれ卒業するんだよな。進学して、その後は就職だ。大人の仲間入りももうすぐだと思うと、感傷深いよな、卒業式は」
「あっ、先輩、それは大丈夫ですよ。この小説はサザエさん方式で永遠に年をとりませんから。私達、永遠の高校生です」
「おまっ!」
「『ありがとう さようなら』か?」
「はい! 卒業シーズンですからね。私、この歌好きなんです。友達は寂しい曲とか言いますけど、私はせつなくて、美しくて、前へ歩いていける、そんな曲だと思うんです」
「確かにな。最近の卒業式はJ-POPとか人気アーティストが歌った曲が流れるが、情緒がないような気がする」
「同感です。そのときは人気のある曲でも、後世まで語り継がれることもないですし、パパン世代の大人はピンとこないようですしね。ちなみに、先輩は第二ボタンはどうするつもりなんですか?」
「第二ボタン?」
「もうもう、とぼけちゃって~。ウチの学校は私服OKですけど、制服が今時学ランじゃないですか。学ランといえば、第二ボタン! 気になるイベントですよね~」
「よく知ってるな。第二ボタンか……奉納だな」
「奉納?」
「ああっ。風紀委員の風習でな、卒業した先輩方の第二ボタンを集めて、保管しておくんだ。先輩方がここにいたって事を証明するために。映画でもあるだろ? ○○もここにありきって。分かっているとは思うが、レッドの方だからな。あれは心に深く残る映画だ」
「今その箱、どこにあるんですか? そんな不届きな箱、M72 LAWで木っ端微塵にしておきます」
「お前……思い出ごと消し去るつもりか。鬼か、己は」
「第二ボタンは幻の卒業イベントのひとつです。それを汗臭い男の子の美学みたいなノリでつぶすようなマネをしないでください」
「……」
「それより、先輩は第二ボタンの意味、知っていますか?」
「……男性から女性に制服の第二ボタンを贈る風習だったものだな。今はブレザーが主流だから第二ボタンを贈ること自体知らない人もいるようだ。元々は映画『紺碧の空遠く』のワンシーンで、特攻隊に志願した男性が、好きな女性に死ぬ前に何か贈りたくて、出撃前に軍服の第2ボタンを引きちぎって渡した事だな。昔はボタンは全てとめていた。第一ボタンを渡してしまうと、前が開いてしまい、だらしなく見えてしまう。第二ボタンだと敬礼 (左手を胸の前に当てる)の時に第二ボタンを手で隠せる。そういった理由だったと思う」
「柏原芳恵さんの『春なのに』で流行ったという説もあるみたいです。私としては敬愛する先輩の第二ボタンを狙っているのですが、予約しておいてよろしいでしょうか?」
「気が早いな。でも、俺達もいずれ卒業するんだよな。進学して、その後は就職だ。大人の仲間入りももうすぐだと思うと、感傷深いよな、卒業式は」
「あっ、先輩、それは大丈夫ですよ。この小説はサザエさん方式で永遠に年をとりませんから。私達、永遠の高校生です」
「おまっ!」
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