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「先輩。鬼役、お疲れ様です!」
「司会お疲れ様、伊藤。流石というか、板に付いていたな、お姉さん役」
「ありがとうございます。でも、驚きです。風紀委員って節分のイベントにもお呼ばれされるんですね」
「全くだ。イメージ戦略とはいえ、市が開催する子供会にいいようにこき使われてるな、俺達は。左近からの連絡よりも市の役員から先に連絡がくるのはどうかと思うのだが」
「先輩の鬼役は役者顔負けですからね。不良殺しは伊達じゃありませんね」
「不良狩りな。そういえば、伊藤。お前は俺に何度も豆をぶつけてきたよな。笑顔で」
「……先輩、先輩。豆まきで、『鬼は外!』と言ってはいけない場所があるんですけど、知ってます?」
「露骨に話題を変えやがったな。鬼子母神をお祀りするお堂か?」
「正解です! 出て行かれたら困りますからね」
「だな。ちなみに豆をまく理由は分かるか?」
「確か、鬼に豆をぶつけることで邪気を払い、一年の無病息災を願うからですよね。穀物や果実には、邪気を払う霊力を宿していること、毘沙門天様のお告げで大豆を鬼の目に投げつけて退治したって話があったりと、いろいろと逸話がありますが。桃太郎もきび団子ではなく、大豆を持って行けばよかったのにと思いませんか?」
「……それはシュールな光景だな。それに何か格好が悪い。子供達の夢が壊れてしまいそうだ」
「いいんじゃないですか? 昔話なんて大人が都合のいいように作り替えていますし。第一、桃太郎は桃からではなく、おばあさんの股の下からうまれたわけですし」
「女子が股の下とかいうな。本来、桃太郎は桃から生まれたわけではなく、川に流れていた桃をおじいさんとおばあさんが食することで若返り、子作りしてうまれたわけだ。どちらにせよ、とんでも設定だけどな」
「ですよね~。あっ、先輩。鬼の衣装の中に豆がいくつかついてますよ。とってあげます」
「!」
(近い近い! 身体を密着させるな!)
「とれました。どうしたんです、先輩? 顔を真っ赤にして。赤鬼ですか?」
「……なんでもない」
「……邪気退散! 鬼は外! 福は内!」
「ふん!」
ぴしっ!
「あ痛ぁ! で、デコピンで跳ね返すなんて酷いですよ~。おでこに当たっちゃいました」
「自業自得だ。何度も豆をぶつけられてたまるか」
「ううっ……痛いよ~」
「……すまん。痛かったか? どれ、見せてみろ」
「!」
(近い近い近いですから! うううっ、先輩との距離が近すぎて恥ずかしいよ~。あっ、先輩の大きな手が私のおでこに……これって福のおかげかな? エヘヘッ♪)
「司会お疲れ様、伊藤。流石というか、板に付いていたな、お姉さん役」
「ありがとうございます。でも、驚きです。風紀委員って節分のイベントにもお呼ばれされるんですね」
「全くだ。イメージ戦略とはいえ、市が開催する子供会にいいようにこき使われてるな、俺達は。左近からの連絡よりも市の役員から先に連絡がくるのはどうかと思うのだが」
「先輩の鬼役は役者顔負けですからね。不良殺しは伊達じゃありませんね」
「不良狩りな。そういえば、伊藤。お前は俺に何度も豆をぶつけてきたよな。笑顔で」
「……先輩、先輩。豆まきで、『鬼は外!』と言ってはいけない場所があるんですけど、知ってます?」
「露骨に話題を変えやがったな。鬼子母神をお祀りするお堂か?」
「正解です! 出て行かれたら困りますからね」
「だな。ちなみに豆をまく理由は分かるか?」
「確か、鬼に豆をぶつけることで邪気を払い、一年の無病息災を願うからですよね。穀物や果実には、邪気を払う霊力を宿していること、毘沙門天様のお告げで大豆を鬼の目に投げつけて退治したって話があったりと、いろいろと逸話がありますが。桃太郎もきび団子ではなく、大豆を持って行けばよかったのにと思いませんか?」
「……それはシュールな光景だな。それに何か格好が悪い。子供達の夢が壊れてしまいそうだ」
「いいんじゃないですか? 昔話なんて大人が都合のいいように作り替えていますし。第一、桃太郎は桃からではなく、おばあさんの股の下からうまれたわけですし」
「女子が股の下とかいうな。本来、桃太郎は桃から生まれたわけではなく、川に流れていた桃をおじいさんとおばあさんが食することで若返り、子作りしてうまれたわけだ。どちらにせよ、とんでも設定だけどな」
「ですよね~。あっ、先輩。鬼の衣装の中に豆がいくつかついてますよ。とってあげます」
「!」
(近い近い! 身体を密着させるな!)
「とれました。どうしたんです、先輩? 顔を真っ赤にして。赤鬼ですか?」
「……なんでもない」
「……邪気退散! 鬼は外! 福は内!」
「ふん!」
ぴしっ!
「あ痛ぁ! で、デコピンで跳ね返すなんて酷いですよ~。おでこに当たっちゃいました」
「自業自得だ。何度も豆をぶつけられてたまるか」
「ううっ……痛いよ~」
「……すまん。痛かったか? どれ、見せてみろ」
「!」
(近い近い近いですから! うううっ、先輩との距離が近すぎて恥ずかしいよ~。あっ、先輩の大きな手が私のおでこに……これって福のおかげかな? エヘヘッ♪)
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