上 下
4 / 152

04:アジサイ

しおりを挟む
「先輩先輩、今日も雨が……以下略!」
「なら、言わなければいいだろうが」
「言いたくもなりますよ。ジメジメしていい加減ウザくて……そんな私の心を癒やしてくれるのはアジサイだけです。綺麗ですよね、アジサイって。私、この花が大好きです」

「確かに色鮮やかだな。ちなみにアジサイの花の色は何で決まるか知っているか?」
「今日は逆バージョンですね。ええっと……土の酸度で決まるんでしたっけ。アルカリ性なら赤、酸性なら青ですよね?」
「そうだ。品種によっては色が固定されているものもあるらしいがな。アジサイには『アントシアニン』という色素が含まれている。その色素がアルミニウムと結合すると、色が変化するわけだな。花の色は『アントシアニン』の量で決まる。酸性の土にはアルミニウムが溶け込んでいるから、酸性土で育てたアジサイは青くなる。逆にアルカリ性の土はアルミニウムが溶けにくいから、アルカリ性の土で育てたアジサイは赤くなるって寸法だな」

「土の性質で花の色を変えるわけですから、アジサイの花言葉の一つに『移り気』があるんですよね~」
「勝手な言い分だな。他の花だって環境によっては花の色は様々だ。それに人間だって育った環境で考え方や性格だって変わるだろうに……納得がいかない」

「先輩って意外にも熱いですよね。私、先輩って青紫色のアジサイの花言葉みたいに『冷淡』だって思っていましたけど。ほら、先輩って私に冷たいですし」
「俺はただ、伊藤に風紀委員としてまっとうになってほしいだけだ。俺と組むのが嫌なら左近に言ってコンビを解消してもらえ」
「……やっぱり冷たい」

 キキキキキーーーーー!

「伊藤!」
「きゃ! な、なんですか! って危なっ! 私をひき殺すつもりですか、あの自転車!」
「伊藤、怪我はないか!」
「は、はい……」

「ふう……何事もなくてよかったな」
「先輩……私のこと、心配してくれたんですか?」
「当たり前だろうが。伊藤は俺の後輩だ。お前が俺の後輩である限り、護るのは当然だろ? だがな、少しは周りに注意しろ。お前はいつもいつも……」
「……先輩ってやっぱり青紫色のアジサイの花言葉みたいな人です。私、先輩に逆らってばかりなのに、なんだかんだでいつも私のこと、護ってくれますし。これって『辛抱強い愛情』なんですかね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...