10 / 386
二章 戦いの序曲
二話 戦いの序曲 その二
しおりを挟む
門をくぐり抜けると、農場と畑が見え、農奴が仕事に勤しんでいる。更にその後ろには草原が広がっていた。それはまるで緑のカーペットのように敷き詰められ、のどかな風景だった。
緑の草原の上に砂利道がどこまでも続いている。心地いい風が潮の匂いと共に吹き抜けていく。
道幅は馬車を通るほどの広さがあり、次の町へと続いている。分かれ道には立札があり、目的地が記載されていた。
ジャック達が目指すのは次の町ではなく、この周辺に生息しているオオカミを狩ることだ。
オオカミを狩り、ギルドで受注したクエスト達成に必要なものを採取する。よくあるMMOPRGのお約束クエストだ。
地味な作業だが、序盤ではお金と経験値を稼ぎやすいクエストでもある。
今回は初めてのクエストなので、ジャック達は一番難易度の低いクエストを受注した。理由はこの世界で一度でも死んだらゲームオーバーになるからだ。
だから、失敗しないよう、最初は慎重にいく必要があるとテツは判断した。
ジャックを先頭に、テツ、ムサシは草原を駆け抜ける。
「ジャック、こっちであってるのか?」
「あってるはずだよ。あそこに見える牧場を北西に進めば、オオカミに会えるってギルドから情報は得ているし、問題ないはず。それよりも、今はこの景色を楽しもうよ。ほら、あそこに富士山が見えるよ」
「おっ! 見えるな!」
「んなわけねえだろ! 低すぎだ!」
ジャックの軽口にムサシが便乗し、テツがツッコミをいれる。ちなみにジャックが指さした方向には小さな山があるだけだ。決して富士山などではない。
これからオオカミと殺し合いをするジャック達だが、完全に浮かれていた。
序盤に出てくる敵は大抵、雑魚だと相場が決まっている。
雑魚相手に負けるはずがないという思い込みと、この美しい景色がジャック達の気分を高揚させていることが原因だろう。
空を見上げれば、雲一つない快晴。青空はどこまでも高く青く澄んでる。都会ではめったに見られない空だ。
周りに建物がなく、電柱や自動車等がない。日本の田舎でも見られない光景だ。もちろん、排気ガスはないので、空気がおいしいと、ジャックは素直に感動できた。
草原を駆け抜ける風が、アスファルトではない柔らかい草原の感触がジャックの五感を刺激し、楽しませてくれる。
コンビニやタクシー等の便利なものはないが、その不便さはこの中世の世界にはマッチしていて、まるで物語の世界に入り込んだ気分にさせてくれる。
「あっ! みんな見てみて! オオカミだ! ヤバイ! 僕、初めて見たよ! やっぱり生はいいよね! 格好いい!」
ジャックがはしゃいで指差す方向に、ターゲットがいた。獣型系のウルフだ。
白と灰色の毛並みのオオカミが五匹で草原をかけている。悠々とオオカミが走っているだけでも絵になる光景だ。
オオカミの牙、十個がクエスト達成に必要な数になる。あそこにいる五匹のオオカミを倒すことができれば、一匹から一個しか採取できなくても、半分達成できる。もし、二個ずつなら、一気にクエスト達成だ。
「よし、あのオオカミをやろう」
「油断するんじゃねえぞ。雑魚が相手でもあっちのほうが数は上だ。奇襲で主導権を握るぞ」
ジャックとテツ、ムサシはオオカミを追跡する。離れた場所から奇襲の機会をうかがう。
隠れる場所はなかったが、それでも、バレやしないと高をくくっていた。
ゲームの世界では、敵はある程度近づかないとプレイヤーを襲いかかってこない。
そんな考えから、ジャック達は楽観視していたが、異変が起きた。
一匹のオオカミが突然、立ち止まったのだ。空に向け、鼻をヒクヒクと震わせている。
ジャック達は気づいていなかった。
ジャック達が立っているのは風上で、オオカミの嗅覚は人間の約百万倍あること。
1.5km程離れた獲物を嗅ぎ別けることができること。
聴覚は人の四倍といわれ、野外なら十km離れたところでも聞こえること。
つまり、ジャック達はすでに見つかっていたのだ。
オオカミは後ろを振り向き……ジャックと目が合った。
「ヤバい……見つかった! 来るぞ!」
テツの怒鳴り声に、ジャックとムサシは慌てて戦闘態勢に入る。オオカミがジャック達に向かって、矢の如くかけてくる。
どうやら、オオカミも獲物を見つけてしまったようだ。
陣形を組み、迷いなく、堂々とオオカミ達はジャック達に突進してきた。それに対して、ジャック達は浮足立っている。
一匹のオオカミがフルスピードからジャックの足に噛みつく。
ジャックは痛みと驚きで足が踏ん張れず、そのまま後ろに倒れた。
この世界では、五感を体感できる為、痛みすら感じてしまう。
しかし、痛みはプレイヤーで調整することができ、その範囲は最大で十パーセント、最小で痛みを完全にカットできる。
つまり、最大でも本来感じる痛みの一割しか感じないのだ。
ジャックはその数値を十パーセントにしている。数値を下げると、触覚の感触も鈍くなるからだ。
ジャックは痛みに慣れていると思った。格闘技の経験がある為、ある程度は耐えられると予測していた。
だが、オオカミに足を噛まれた痛みは、今までに感じたことのない痛みだった事、オオカミの勢いが激しかったので、足が踏ん張れずに倒れてしまった。
体勢を崩したジャックに、もう一匹のオオカミがジャックの喉笛を噛みちぎらんと馬乗りになる。
頭を押し込むようにオオカミは鋭く尖った歯をジャックの喉に突き立てようとした。
ジャックはかろうじて、スモールシールドをねじ込み、オオカミの牙から護っていた。
「グルルー! グォオオオオオオ!」
「う、うわぁああああああ! くるなくるなこないで! 助けて! 助けて!」
ジャックは必死にオオカミを押しのけようとするが、倒された姿勢からでは力が入らない。しかも、足をもう一匹のオオカミに噛みつかれているため、完全に退路を断たれている。
「ガッルルルルルルルッ! ガウゥ! ガァゥ! ガァルルルルルルルッ!」
「くっ! 美味しくないから! 食べたらきっと食中毒になるから! やめて、やめて!」
ジャックは完全に戦意を失い、命乞いをしていた。
スモールシールド超しに聞こえてくるオオカミのうなり声と震動がジャックをパニックにさせている。
周りを見る余裕もなく、必死に防御に徹する。
死にたくない。
それがジャックの頭の中を占めていた。
そんなジャックを嘲笑うかのように事態は悪化していく。ジャックの体にいきなり変調が現れたのだ。
ーーく、苦しい。息が苦しくなってきた。どうして?
ジャックはいきなり息苦しくなったことに更に混乱していく。
原因は何か? どうして、こうなったのか?
「ジャック、気をつけて! スタミナゲージがレッドゾーンに入ってる!」
リリアンの叫び声に、ジャックはSPゲージの下に新たなゲージが表示され、ゲージが真っ赤になっている事に気づいた。
ジャックは意識が朦朧とする中、チュートリアルの内容を思いだす。
スタミナゲージ。
スタミナゲージは、全力で走ったり、泳いだり、連続で攻撃をした場合等に減るゲージだと説明された。
このゲージがなくなると、動きが制限されるとのこと。
ジャックが呼吸困難に陥っているのは、スタミナゲージが残りわずかな為に起きていることだと判明した。
こんなところまでリアルに再現するなんて! ジャックは心の中で抗議した。
「リリアン……助けて……」
「が、頑張って、ジャック! 負けないで!」
リリアンはジャックの頭の上をくるくると回っているだけで、何の役にもたたなかった。
ジャックは刻一刻と追い詰められている。
ムサシもテツもオオカミに襲われているのだ。この状況で彼らの助けは期待できないだろう。
ジャックは酸欠状態で防御が崩れようとしている。そうなれば、オオカミに喉笛を噛みきられ、餌になってしまう未来が待っている。
死ぬ。
ジャックの頭の中に浮かんだ単語が、今、現実になろうとしていた。
ガンガン、ガン!
「グルッアアアアアアアアアアアア!」
ジャックは意識が朦朧としていた。リリアンの声が遠くから聞こえてくる。手に力が入らない。
スモールシールドをオオカミがくわえ、地面に投げ捨てた。
ジャックは大の字になり、無防備な状態をさらしてしまう。
オオカミは何の躊躇もなく、大きく口を開き……。
「オラの仲間に手を出すなボケェエエエエエエエエエエ!」
「キャン!」
ジャックの体に馬乗りしていたオオカミが黒い影にぶつかり、吹き飛ばされた。
その黒い影の正体は血まみれになったオオカミだった。
オオカミを投げつけたのはムサシだ。
ムサシの足下にはオオカミだった物体が転がっている。ツーハンデッドソードで肉片になったオオカミを投げ飛ばし、ムサシは血走った目つきでジャックの足に噛みついているオオカミを威嚇する。
オオカミはムサシから背を向け、逃げだそうとした。
だが……。
「オラァアアアアアアアアアア!」
ムサシはツーハンデッドソードをやり投げの要領でオオカミ目掛けて投げ飛ばす。
ツーハンデッドソードは空を裂き、オオカミの尻から口まで貫通し、それでも、勢いは止まらず突き進む。
ジャックはようやく、息が整い、意識がはっきりとしてきた。
ジャックが周りを見渡すと、戦いは終わっていた。
オオカミの死体が五つ地面に転がっている。死体は斬り裂かれて真っ赤に染まり、風に乗って血の匂いがする。
オオカミの鳴き声もうなり声も聞こえない。風の音だけがジャックの耳に届く。
「おい、ジャック!」
「な、何、テツ?」
テツの呼びかけに、ジャックは声が裏返ってしまう。ビクついているジャックに、テツは何事もなかったかのように言い放つ。
「無事なら採取するのを手伝え。それくらいは出来るだろ」
「う、うん」
ジャックはトボトボとテツの指示されたとおり、オオカミの死体から採取にとりかかる。
採取。
植物から鉱山、死体までありとあらゆるものからアイテムをとる行為である。
いくら命を狙ってきた敵だとしても、倒した敵から物を奪い取るのは一見、強盗じゃねえ? と思える行為なのだが、RPGのように、敵を倒せばお金やアイテムが勝手に財布に移動はしないのだ。
ジャックは採取の準備にかかる。動かなくなったオオカミの死体の前にかがみこんだ。
ジャックはそのまま動かない。
「どうしたの、ジャック?」
リリアンの問いに、ジャックは少し青ざめた顔で答えた。
「……リリアン。どうしたら、採取できるの? 僕、死体を切り刻む趣味はないし、経験もないんだけど」
「了解。ジャック、ナイフを装備した状態で死体を見つめみて」
ジャックは言われたとおり、ナイフを装備する。そのままオオカミを見てみると、オオカミの死体から白く発光した線が見えた。
その線は、血が固まって黒ずんだオオカミの死体にしか見えない。死体の下にある地面や自分の体には線がなかった。
「リリアン、線が見えた。これなに?」
「その線になぞってナイフを動かすと、採取できるの。力を込める必要はないよ。ただなぞるだけでいいの」
ジャックはリリアンの指示通りに、ナイフを発行する線になぞって動かす。すると、死体の手前に、牙と毛皮、肉の塊が出てきた。
「わぉ! これ、すごくない! 僕、『魔眼使い ジャック』と名を改めるよ! 決め台詞は『死んでいるのなら、神様だって搾取してみせる!』。ケツの毛まで奪ってみせるから!」
「いよっ、日本一!」
「ただの追い剥ぎだろうが。日本一罰当たりなだけだろ、お前は。バカ言っていないで手を動かせ!」
ジャックとリリアンのやりとりにテツはこめかみを押さえながら怒鳴り散らす。
再び怒られたことにジャックは肩を落とし、次の死体の採取に取り掛かる。
今度は左右に二本の線が見える。
「リリアン。線が二本あるけど、これなに?」
「それは選択肢みたいなものだよ、ジャック。どちらか一方しか線をなぞることができないの。もしかすると、どちらか一方にレアアイテムがあるかも」
「それは重大だ!」
テツに怒られたことを忘れ、ジャックは興奮のあまり、ナイフを持つ手が震える。
――どっちだ。どっちがレアなんだ?
ここでレアを引けば、名誉挽回できる。ジャックは是が非でもレアをゲットしたかった。
「ジャックぅ~、頑張れ~頑張れ~」
リリアンは手をぎゅっと握りしめ、ジャックを応援する。
リリアンが見守る中、ジャックは線をなぞろうとして……。
「リリアン。レアを見分ける方法は?」
リリアンはがくっと頭を揺らす。
自分で決める前に、情報を集めておきたい。人任せな気がしたが、それでもジャックは失敗したくないのでリリアンに尋ねた。
「採取スキルの『見極め』があれば、ある程度判断できるんだけど、ジャックはまだ取得していないよ。採取の熟練度を上げないと取得できないの。熟練度をあげるには、採取し続けて経験値をためてね」
「今すぐは無理か。どうしよう? ここで信頼を回復しておきたいのに」
ジャックはもう一度、オオカミの死体を凝視する。線は二本。
長さや太さがそれぞれ違うが、線が長い方がレアなのか、線の太い方がレアなのか……。
ジャックは悩みに悩んだ末、足下にあった手ごろな花を摘んだ。
「それをどうするつもりなの?」
採取するわけでなく、花を摘んだジャックの行動が理解できないリリアンは首をかしげている。
ジャックはおもむろに花びらをちぎった。
「右、左、右、左、右、左……」
ジャックがとった行動は花占いだった。右、左、右……と交互に声を出しながら花びらを右から順にちぎっていき、最後の一枚が右だった場合は右の線を、左なら左の線をなぞると決めた。
ジャックの行動を見ていたテツはブチギレた。
「乙女か、己は! 大の男が花占いなんかに頼るんじゃねえ!」
「ちょ!」
テツはナイフを取り出し、片方の線をなぞる。出てきたのは爪だけだった。
「おおおっ! さっきとは違うアイテムだ。リリアン、これってレア?」
「たぶん、ハズレ」
ジャックは大げさに天を仰ぐ。
「もう、テツ! せっかく、汚名返上できるチャンスだったのに!」
「汚名返上? なに言ってやがる?」
「テツだって思ってるんでしょ? 役立たずだって……」
ジャックの思いがけない言葉に、テツは目を丸くしていたが、面倒くさそうに髪をかき上げる。
「つまんねえこと考えてないで仕事しろ」
それだけを言い残し、テツは他のオオカミの死体の採取にとりかかる。
ジャックは頭を垂れ、ノロノロと作業を再開した。
採取は完了した。
収穫は牙が三個、爪が一個、毛皮が三枚、肉の塊が二個だ。この数は戦利品として多いのか、少ないのか分からないが、数をこなせば分かることだろう。
「けど、面倒くせえな。いちいち採取しなきゃいけないのか?」
テツのうんざりとした声に、ジャックは苦笑する。
「ゲームによっては自動収取してくれる機能があるけどね。それかペットが拾ってくれることもあるけど」
ジャックは視線をリリアンに向ける。その視線を受け、リリアンは抗議した。
「ジャック! 私、ペットじゃないから! でも、命令してくれたら採取してあげるよ。その場合、採取の熟練度は少ししか上がらないけど、どうする?」
「なら、自分でやるさ。僕はこういった作業は苦にならないから。やっぱり、自分の手でレアを手にしたいし」
それこそレアの醍醐味だろう。
雨の日もお盆も正月も、ただひたすら何百、何千とモンスターを狩り、たどり着ける境地。それがレアアイテムだ。
もちろん、一発でレアを引き当ててしまう豪の者もいるが、それこそ稀だ。
まだ見ぬレアを求めて、今日も冒険者ジャックは採取する。まだ見ぬレアアイテムを夢見て。
「いや、遠い目をしているとこ、悪いんだが、格好悪いからな、ジャック」
緑の草原の上に砂利道がどこまでも続いている。心地いい風が潮の匂いと共に吹き抜けていく。
道幅は馬車を通るほどの広さがあり、次の町へと続いている。分かれ道には立札があり、目的地が記載されていた。
ジャック達が目指すのは次の町ではなく、この周辺に生息しているオオカミを狩ることだ。
オオカミを狩り、ギルドで受注したクエスト達成に必要なものを採取する。よくあるMMOPRGのお約束クエストだ。
地味な作業だが、序盤ではお金と経験値を稼ぎやすいクエストでもある。
今回は初めてのクエストなので、ジャック達は一番難易度の低いクエストを受注した。理由はこの世界で一度でも死んだらゲームオーバーになるからだ。
だから、失敗しないよう、最初は慎重にいく必要があるとテツは判断した。
ジャックを先頭に、テツ、ムサシは草原を駆け抜ける。
「ジャック、こっちであってるのか?」
「あってるはずだよ。あそこに見える牧場を北西に進めば、オオカミに会えるってギルドから情報は得ているし、問題ないはず。それよりも、今はこの景色を楽しもうよ。ほら、あそこに富士山が見えるよ」
「おっ! 見えるな!」
「んなわけねえだろ! 低すぎだ!」
ジャックの軽口にムサシが便乗し、テツがツッコミをいれる。ちなみにジャックが指さした方向には小さな山があるだけだ。決して富士山などではない。
これからオオカミと殺し合いをするジャック達だが、完全に浮かれていた。
序盤に出てくる敵は大抵、雑魚だと相場が決まっている。
雑魚相手に負けるはずがないという思い込みと、この美しい景色がジャック達の気分を高揚させていることが原因だろう。
空を見上げれば、雲一つない快晴。青空はどこまでも高く青く澄んでる。都会ではめったに見られない空だ。
周りに建物がなく、電柱や自動車等がない。日本の田舎でも見られない光景だ。もちろん、排気ガスはないので、空気がおいしいと、ジャックは素直に感動できた。
草原を駆け抜ける風が、アスファルトではない柔らかい草原の感触がジャックの五感を刺激し、楽しませてくれる。
コンビニやタクシー等の便利なものはないが、その不便さはこの中世の世界にはマッチしていて、まるで物語の世界に入り込んだ気分にさせてくれる。
「あっ! みんな見てみて! オオカミだ! ヤバイ! 僕、初めて見たよ! やっぱり生はいいよね! 格好いい!」
ジャックがはしゃいで指差す方向に、ターゲットがいた。獣型系のウルフだ。
白と灰色の毛並みのオオカミが五匹で草原をかけている。悠々とオオカミが走っているだけでも絵になる光景だ。
オオカミの牙、十個がクエスト達成に必要な数になる。あそこにいる五匹のオオカミを倒すことができれば、一匹から一個しか採取できなくても、半分達成できる。もし、二個ずつなら、一気にクエスト達成だ。
「よし、あのオオカミをやろう」
「油断するんじゃねえぞ。雑魚が相手でもあっちのほうが数は上だ。奇襲で主導権を握るぞ」
ジャックとテツ、ムサシはオオカミを追跡する。離れた場所から奇襲の機会をうかがう。
隠れる場所はなかったが、それでも、バレやしないと高をくくっていた。
ゲームの世界では、敵はある程度近づかないとプレイヤーを襲いかかってこない。
そんな考えから、ジャック達は楽観視していたが、異変が起きた。
一匹のオオカミが突然、立ち止まったのだ。空に向け、鼻をヒクヒクと震わせている。
ジャック達は気づいていなかった。
ジャック達が立っているのは風上で、オオカミの嗅覚は人間の約百万倍あること。
1.5km程離れた獲物を嗅ぎ別けることができること。
聴覚は人の四倍といわれ、野外なら十km離れたところでも聞こえること。
つまり、ジャック達はすでに見つかっていたのだ。
オオカミは後ろを振り向き……ジャックと目が合った。
「ヤバい……見つかった! 来るぞ!」
テツの怒鳴り声に、ジャックとムサシは慌てて戦闘態勢に入る。オオカミがジャック達に向かって、矢の如くかけてくる。
どうやら、オオカミも獲物を見つけてしまったようだ。
陣形を組み、迷いなく、堂々とオオカミ達はジャック達に突進してきた。それに対して、ジャック達は浮足立っている。
一匹のオオカミがフルスピードからジャックの足に噛みつく。
ジャックは痛みと驚きで足が踏ん張れず、そのまま後ろに倒れた。
この世界では、五感を体感できる為、痛みすら感じてしまう。
しかし、痛みはプレイヤーで調整することができ、その範囲は最大で十パーセント、最小で痛みを完全にカットできる。
つまり、最大でも本来感じる痛みの一割しか感じないのだ。
ジャックはその数値を十パーセントにしている。数値を下げると、触覚の感触も鈍くなるからだ。
ジャックは痛みに慣れていると思った。格闘技の経験がある為、ある程度は耐えられると予測していた。
だが、オオカミに足を噛まれた痛みは、今までに感じたことのない痛みだった事、オオカミの勢いが激しかったので、足が踏ん張れずに倒れてしまった。
体勢を崩したジャックに、もう一匹のオオカミがジャックの喉笛を噛みちぎらんと馬乗りになる。
頭を押し込むようにオオカミは鋭く尖った歯をジャックの喉に突き立てようとした。
ジャックはかろうじて、スモールシールドをねじ込み、オオカミの牙から護っていた。
「グルルー! グォオオオオオオ!」
「う、うわぁああああああ! くるなくるなこないで! 助けて! 助けて!」
ジャックは必死にオオカミを押しのけようとするが、倒された姿勢からでは力が入らない。しかも、足をもう一匹のオオカミに噛みつかれているため、完全に退路を断たれている。
「ガッルルルルルルルッ! ガウゥ! ガァゥ! ガァルルルルルルルッ!」
「くっ! 美味しくないから! 食べたらきっと食中毒になるから! やめて、やめて!」
ジャックは完全に戦意を失い、命乞いをしていた。
スモールシールド超しに聞こえてくるオオカミのうなり声と震動がジャックをパニックにさせている。
周りを見る余裕もなく、必死に防御に徹する。
死にたくない。
それがジャックの頭の中を占めていた。
そんなジャックを嘲笑うかのように事態は悪化していく。ジャックの体にいきなり変調が現れたのだ。
ーーく、苦しい。息が苦しくなってきた。どうして?
ジャックはいきなり息苦しくなったことに更に混乱していく。
原因は何か? どうして、こうなったのか?
「ジャック、気をつけて! スタミナゲージがレッドゾーンに入ってる!」
リリアンの叫び声に、ジャックはSPゲージの下に新たなゲージが表示され、ゲージが真っ赤になっている事に気づいた。
ジャックは意識が朦朧とする中、チュートリアルの内容を思いだす。
スタミナゲージ。
スタミナゲージは、全力で走ったり、泳いだり、連続で攻撃をした場合等に減るゲージだと説明された。
このゲージがなくなると、動きが制限されるとのこと。
ジャックが呼吸困難に陥っているのは、スタミナゲージが残りわずかな為に起きていることだと判明した。
こんなところまでリアルに再現するなんて! ジャックは心の中で抗議した。
「リリアン……助けて……」
「が、頑張って、ジャック! 負けないで!」
リリアンはジャックの頭の上をくるくると回っているだけで、何の役にもたたなかった。
ジャックは刻一刻と追い詰められている。
ムサシもテツもオオカミに襲われているのだ。この状況で彼らの助けは期待できないだろう。
ジャックは酸欠状態で防御が崩れようとしている。そうなれば、オオカミに喉笛を噛みきられ、餌になってしまう未来が待っている。
死ぬ。
ジャックの頭の中に浮かんだ単語が、今、現実になろうとしていた。
ガンガン、ガン!
「グルッアアアアアアアアアアアア!」
ジャックは意識が朦朧としていた。リリアンの声が遠くから聞こえてくる。手に力が入らない。
スモールシールドをオオカミがくわえ、地面に投げ捨てた。
ジャックは大の字になり、無防備な状態をさらしてしまう。
オオカミは何の躊躇もなく、大きく口を開き……。
「オラの仲間に手を出すなボケェエエエエエエエエエエ!」
「キャン!」
ジャックの体に馬乗りしていたオオカミが黒い影にぶつかり、吹き飛ばされた。
その黒い影の正体は血まみれになったオオカミだった。
オオカミを投げつけたのはムサシだ。
ムサシの足下にはオオカミだった物体が転がっている。ツーハンデッドソードで肉片になったオオカミを投げ飛ばし、ムサシは血走った目つきでジャックの足に噛みついているオオカミを威嚇する。
オオカミはムサシから背を向け、逃げだそうとした。
だが……。
「オラァアアアアアアアアアア!」
ムサシはツーハンデッドソードをやり投げの要領でオオカミ目掛けて投げ飛ばす。
ツーハンデッドソードは空を裂き、オオカミの尻から口まで貫通し、それでも、勢いは止まらず突き進む。
ジャックはようやく、息が整い、意識がはっきりとしてきた。
ジャックが周りを見渡すと、戦いは終わっていた。
オオカミの死体が五つ地面に転がっている。死体は斬り裂かれて真っ赤に染まり、風に乗って血の匂いがする。
オオカミの鳴き声もうなり声も聞こえない。風の音だけがジャックの耳に届く。
「おい、ジャック!」
「な、何、テツ?」
テツの呼びかけに、ジャックは声が裏返ってしまう。ビクついているジャックに、テツは何事もなかったかのように言い放つ。
「無事なら採取するのを手伝え。それくらいは出来るだろ」
「う、うん」
ジャックはトボトボとテツの指示されたとおり、オオカミの死体から採取にとりかかる。
採取。
植物から鉱山、死体までありとあらゆるものからアイテムをとる行為である。
いくら命を狙ってきた敵だとしても、倒した敵から物を奪い取るのは一見、強盗じゃねえ? と思える行為なのだが、RPGのように、敵を倒せばお金やアイテムが勝手に財布に移動はしないのだ。
ジャックは採取の準備にかかる。動かなくなったオオカミの死体の前にかがみこんだ。
ジャックはそのまま動かない。
「どうしたの、ジャック?」
リリアンの問いに、ジャックは少し青ざめた顔で答えた。
「……リリアン。どうしたら、採取できるの? 僕、死体を切り刻む趣味はないし、経験もないんだけど」
「了解。ジャック、ナイフを装備した状態で死体を見つめみて」
ジャックは言われたとおり、ナイフを装備する。そのままオオカミを見てみると、オオカミの死体から白く発光した線が見えた。
その線は、血が固まって黒ずんだオオカミの死体にしか見えない。死体の下にある地面や自分の体には線がなかった。
「リリアン、線が見えた。これなに?」
「その線になぞってナイフを動かすと、採取できるの。力を込める必要はないよ。ただなぞるだけでいいの」
ジャックはリリアンの指示通りに、ナイフを発行する線になぞって動かす。すると、死体の手前に、牙と毛皮、肉の塊が出てきた。
「わぉ! これ、すごくない! 僕、『魔眼使い ジャック』と名を改めるよ! 決め台詞は『死んでいるのなら、神様だって搾取してみせる!』。ケツの毛まで奪ってみせるから!」
「いよっ、日本一!」
「ただの追い剥ぎだろうが。日本一罰当たりなだけだろ、お前は。バカ言っていないで手を動かせ!」
ジャックとリリアンのやりとりにテツはこめかみを押さえながら怒鳴り散らす。
再び怒られたことにジャックは肩を落とし、次の死体の採取に取り掛かる。
今度は左右に二本の線が見える。
「リリアン。線が二本あるけど、これなに?」
「それは選択肢みたいなものだよ、ジャック。どちらか一方しか線をなぞることができないの。もしかすると、どちらか一方にレアアイテムがあるかも」
「それは重大だ!」
テツに怒られたことを忘れ、ジャックは興奮のあまり、ナイフを持つ手が震える。
――どっちだ。どっちがレアなんだ?
ここでレアを引けば、名誉挽回できる。ジャックは是が非でもレアをゲットしたかった。
「ジャックぅ~、頑張れ~頑張れ~」
リリアンは手をぎゅっと握りしめ、ジャックを応援する。
リリアンが見守る中、ジャックは線をなぞろうとして……。
「リリアン。レアを見分ける方法は?」
リリアンはがくっと頭を揺らす。
自分で決める前に、情報を集めておきたい。人任せな気がしたが、それでもジャックは失敗したくないのでリリアンに尋ねた。
「採取スキルの『見極め』があれば、ある程度判断できるんだけど、ジャックはまだ取得していないよ。採取の熟練度を上げないと取得できないの。熟練度をあげるには、採取し続けて経験値をためてね」
「今すぐは無理か。どうしよう? ここで信頼を回復しておきたいのに」
ジャックはもう一度、オオカミの死体を凝視する。線は二本。
長さや太さがそれぞれ違うが、線が長い方がレアなのか、線の太い方がレアなのか……。
ジャックは悩みに悩んだ末、足下にあった手ごろな花を摘んだ。
「それをどうするつもりなの?」
採取するわけでなく、花を摘んだジャックの行動が理解できないリリアンは首をかしげている。
ジャックはおもむろに花びらをちぎった。
「右、左、右、左、右、左……」
ジャックがとった行動は花占いだった。右、左、右……と交互に声を出しながら花びらを右から順にちぎっていき、最後の一枚が右だった場合は右の線を、左なら左の線をなぞると決めた。
ジャックの行動を見ていたテツはブチギレた。
「乙女か、己は! 大の男が花占いなんかに頼るんじゃねえ!」
「ちょ!」
テツはナイフを取り出し、片方の線をなぞる。出てきたのは爪だけだった。
「おおおっ! さっきとは違うアイテムだ。リリアン、これってレア?」
「たぶん、ハズレ」
ジャックは大げさに天を仰ぐ。
「もう、テツ! せっかく、汚名返上できるチャンスだったのに!」
「汚名返上? なに言ってやがる?」
「テツだって思ってるんでしょ? 役立たずだって……」
ジャックの思いがけない言葉に、テツは目を丸くしていたが、面倒くさそうに髪をかき上げる。
「つまんねえこと考えてないで仕事しろ」
それだけを言い残し、テツは他のオオカミの死体の採取にとりかかる。
ジャックは頭を垂れ、ノロノロと作業を再開した。
採取は完了した。
収穫は牙が三個、爪が一個、毛皮が三枚、肉の塊が二個だ。この数は戦利品として多いのか、少ないのか分からないが、数をこなせば分かることだろう。
「けど、面倒くせえな。いちいち採取しなきゃいけないのか?」
テツのうんざりとした声に、ジャックは苦笑する。
「ゲームによっては自動収取してくれる機能があるけどね。それかペットが拾ってくれることもあるけど」
ジャックは視線をリリアンに向ける。その視線を受け、リリアンは抗議した。
「ジャック! 私、ペットじゃないから! でも、命令してくれたら採取してあげるよ。その場合、採取の熟練度は少ししか上がらないけど、どうする?」
「なら、自分でやるさ。僕はこういった作業は苦にならないから。やっぱり、自分の手でレアを手にしたいし」
それこそレアの醍醐味だろう。
雨の日もお盆も正月も、ただひたすら何百、何千とモンスターを狩り、たどり着ける境地。それがレアアイテムだ。
もちろん、一発でレアを引き当ててしまう豪の者もいるが、それこそ稀だ。
まだ見ぬレアを求めて、今日も冒険者ジャックは採取する。まだ見ぬレアアイテムを夢見て。
「いや、遠い目をしているとこ、悪いんだが、格好悪いからな、ジャック」
0
お気に入りに追加
301
あなたにおすすめの小説
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる