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三十四章 カースルクーム争奪戦 全滅必至の撤退戦
三十四話 カースルクーム争奪戦 全滅必至の撤退戦 その四
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「ヨシュアン! 大変だ!」
カリアンが血相を変えて、戻ってきた。
エンフォーサーのリーダー、ムサシとビックタワーのメンバーであるジェスとの一騎打ちに決着がついたときのことだった。
偵察に出ていたカリアンが、血相を変えて戻ってきた。
ルシアン、ヨシュアン、カリアン、ミリアンは生物兵器の被害をなくすために、カースルクーム争奪戦に参戦しているプレイヤー、NPCをこの場から遠ざけようと行動していた。
ルシアンはビックタワーのリーダーであるジョーンズの説得に、ヨシュアンとカリアン、ミリアンはエンフォーサーとビックタワーのメンバーを逃がすために行動していた。
三人はエンフォーサーのみんなを逃がすため、逃走経路を確保しようとしていたときに次なる災難の予兆をカリアンが見つけてきたのだ。
「落ち着け、カリアン。焦ったっていいことはないぜ。特に報告するときは、冷静に事実をそのまま伝えることが大事だって言われてるだろ?」
意見、推測は分けて報告すること。コシアンのアドバイスの一つだ。
カリアンはそのことを思いだし、恐怖を押し殺して、ヨシュアンとミリアンだけでなく、ここにいるムサシ率いるエンフォーサーのメンバーに伝える。
「武装した兵士達に取り囲まれている!」
「武装した兵士? 確か、この地域だっけ? その領主の兵士じゃないのか?」
「違うよ! 彼らは外装に十字のマークがあって、大盾や鎖帷子、ソードを装備してる! 領主の兵士は基本騎馬だし、歩兵じゃない! 未知の軍隊がいるんだ! カースルクームは大きくない村だけど、それを取り囲むとなると、千や二千以上と思う」
「……まるで十字軍ね。しかも、千単位の兵士なんて……嫌な予感しかしないわね」
ミリアンはゴクリと息をのむ。
「ねえ、その軍隊ってNPCなんでしょ? ソウル杯が始まって一ヶ月もたっていないのに、千人以上のプレイヤーを集めるなんて無理よ。それなら、ビックタワーを討伐に来た軍じゃない?」
エンフォーサーのメンバーの一人であるカリーナの推測にヨシュアン、カリアン、ミリアンは黙り込む。
極悪非道なビックタワーを討つべく集められた軍隊……と思うのは希望的観測だろう。
もしかすると、ビックタワーの隠し球かもしれない。そうヨシュアンとカリアン、ミリアンは考えていた。
楽観的な希望は捨て、最悪と最良を想像し、行動する。
これもコシアンの教えだ。
「ええっと、アンタの名前は……」
「カリーナよ」
「それなら、カリーナさんよ、十字軍みたいな軍隊がカースルクーム争奪戦に参戦するってこと、誰かが言っていたか?」
「いえ、そんなことは聞いてないけど……」
「それなら、敵の可能性だってあるよな? カリアン、敵はただ取り囲んでいるだけ……」
「そうじゃないみたい。進軍してきてるわよ……こっちに!」
ミリアンは叫び声をあげる。ソウルで強化した視力でカリアンが偵察してきた方向を見ると、徐々にだが、近づいてきている。
それはうすぼんやりとした影の存在が、少しずつハッキリと、大きく見えてきたのだ。
しかも、手には剣を握っている。
少なくとも話し合いに来ているわけではなさそうだ。
ヨシュアンは考える。
今、近づいてくるヤツラは敵か? 味方か?
どう判断する?
「思い切って声をかけてみるとか? 確かめないことにはなにも始まらないわよ?」
「矢で歓迎されるかもしれないぜ? まあ、その場合、敵だって一発で分かるけどな」
「それだと遅いよ。エンフォーサーのみんなは満身創痍だ。もし、敵だとしたら、包囲されているから一点突破して脱出しないと。奇襲を受けて余計な体力を失うのは致命的だと思う」
ミリアン、ヨシュアン、カリアンの言葉に、エンフォーサーのメンバーは戸惑っていた。
まるで敵を目の前にしている警戒さ。敵かどうか分からないと言っておきながら、相手を分析し、対応を考えている。
「とりあえず、ルシアンを呼び戻して行動するか」
「その必要はないみたいよ」
「みんなぁああああ!」
ルシアンが戻ってきた。声色から状況を把握しているみたいだ。
しかも、それだけではない。
「ヨシュアン! カリアン! ミリアン!」
「「「ジョーンズ!」」」
ジョーンズも馬に乗って、ルシアンを追いかけてきた。
カリーナ達は息をのむ。
「とにかく、逃げるぞ! あれは俺達にとって、敵だ! しかも、数は五千! 勝ち目はねえ!」
「「「ご、五千!」」」
これにはヨシュアン達だけでなく、カリーナ達も大声を上げる。
なぜ、五千もの兵がこんな辺境の村に集まっているのか? ビックタワーを殲滅するにしても、多すぎないか?
カリーナはすぐには信じられなかったが……。
「それで、どうするのジョーンズ!」
「逃げる」
ヨシュアンの問いにジョーンズは即答する。
「どこに!」
「俺についてこい。策がある」
「分かったわ!」
ヨシュアンとカリアン、ミリアンはすぐにジョーンズを信じ、行動に移そうとする。
彼を信じているということもあるが、ここにとどまっていたら、生物兵器の餌食になるのでこの場から離れたいという理由もあった。
「ま、待って!」
カリーナは慌ててルシアン達を呼び止める。
「時間がないんだ! 今すぐ逃げないと!」
「今すぐ逃げる? それを信じろって言うの? その男の言葉を……ビックタワーのリーダーの言葉を!」
カリーナはジョーンズを指さす。
それはそうだろう。カリーナ達はジョーンズを倒しにきたのだ。
ビックタワーは多くのNPC,プレイヤー、仲間を殺してきた。そのリーダーの言うことを信じる……一緒に行動する事など、許せるわけがない。
今すぐにでもジョーンズを倒すべきだと、拳に力が入る。
「それで?」
ジョーンズは言い訳も謝罪もすることもなく、ただ一言返す。
カリーナは呆然としていたが、すぐに怒鳴る。
「そ、それでって! だから!」
「俺を倒したところで、待っているのは死……いや、脱落だ。今も俺達に向かっているヤツらは確実にお前達を殺す。そういうヤツらなんだよ」
ジョーンズは端的に真実を告げる。
今、近づいてくる敵は話し合いも命乞いも通用しない相手だと。
「な、なんで、そんなことが分かるの!」
「俺の部下……いや、ビックタワーを作るよう取引を持ちかけたヤツが手配した兵士だからだ。そして、その兵士達は見境なく襲いかかってくるから注意しろとも言われている。事実、俺の仲間がヤツラに殺された」
「と、取引……ですって? それに殺されたって……」
つまり、黒幕がいるということなのか? それに殺された……脱落したというのは本当なのか?
カリーナ達はにわかには信じられず、戸惑っている。
「だ、だからって、お前の言葉を信じられるか!」
「そうだ!」
エンフォーサーのメンバーから次々とジョーンズを疑う声が上がる。
ルシアンは間に入ろうとしたが、ヨシュアンが止める。
その必要がないと言いたげに。
「信じるかどうかはてめえらの目で見て判断しろ。その為についてこい。考えることを放棄してこのままくたばりたいのなら止めはしないがな」
「なぁ、なんですって!」
カリーナ達は顔を真っ赤にして怒っているが、ジョーンズは冷静に言葉を続ける。
「今、そこにいるムサシを救えるのはお前達だけだ。ムサシを見捨てるのか? 命をかけて護ってもらったんだろ?」
「「「……」」」
その点をつかれると、カリーナ達は黙ってしまうほかない。
ジョーンズは何を言えば、カリーナ達を黙らせ、ついてこさせるか分かっている。
コシアンに教授された策の応用だった。
「……本当にムサシクンを助けることが出来るのね?」
「バカか、お前は。必ずなんてことは保証できるわけがない。だが、生き残る可能性が高くなるのは確実だ。後一度しか言わない。何もせずに死を待つつもりか? それとも、俺の案以外にいい方法があるのか? だったら、それを実施しろ。それがないなら、ついてこい」
カリーナ達は歯を食いしばり、屈辱に耐える。
情報がない以上、ジョーンズに従うしかない。
現に兵士達がこちらに向かっているのはカリーナ達だって分かっているからだ。しかも、数十、百人は目視で確認できる。
もし、その兵士に攻撃されたら? ひとたまりもない。
せめてムサシだけでも逃がしたい。
そうカリーナ達は願っている。渋々うなずいた。
「お前、名前は?」
「……カリーナよ」
「よし、カリーナ。お前が今後、エンフォーサーをまとめろ。いいな」
カリーナはキッとジョーンズを睨む。
「……なんでアンタに命令されなきゃいけないのよ」
「意思疎通をしやすくするためだ。ここからは部隊で行動するからな。分かってると思うが、俺達がまとまわないと全滅は必至だ」
敵の言うことを素直に受け入れるのはカリーナにとって癪だったが、事実なのでうなずいた。
「……分かってるわ。ムサシクンを救うため、一時休戦するだけよ」
「OKだ」
話しがまとまり、ルシアンが腕を振り上げる。
「よし、行こう! 安心してくれ! ジョーンズはこう見えても頭はよくて、ここから逃げる方法に関しては誰よりも熟知している!」
「おい、悪口か、それは?」
ルシアンのフォローに、ジョーンズは口を挟むが……。
「テンペストの口車に乗って俺達から離れていったくせに」
「うっ!」
「コシアンに一番迷惑かけているくせに」
「ううっ!」
「私、勝手にチームぬけたこと、まだ許してないんだけど?」
「い、行くぞ! 敵が迫ってきてるんだ! 余計な会話は不要だ!」
カリアン、ヨシュアン、ミリアンの冷たいツッコミに、ジョーンズは顔を背けて馬を走らせる。
その後にルシアン、カリーナ達が続く。
カリーナ達の左をミリアン。右をヨシュアン。
後ろにカリアンがついていく。
こうして、撤退戦が始まろうとしていた。
しかし、ジョーンズはまだ気づいていない。敵の中に……神の薔薇、ロサ・オスカル・フランソワがいることに……。
カリアンが血相を変えて、戻ってきた。
エンフォーサーのリーダー、ムサシとビックタワーのメンバーであるジェスとの一騎打ちに決着がついたときのことだった。
偵察に出ていたカリアンが、血相を変えて戻ってきた。
ルシアン、ヨシュアン、カリアン、ミリアンは生物兵器の被害をなくすために、カースルクーム争奪戦に参戦しているプレイヤー、NPCをこの場から遠ざけようと行動していた。
ルシアンはビックタワーのリーダーであるジョーンズの説得に、ヨシュアンとカリアン、ミリアンはエンフォーサーとビックタワーのメンバーを逃がすために行動していた。
三人はエンフォーサーのみんなを逃がすため、逃走経路を確保しようとしていたときに次なる災難の予兆をカリアンが見つけてきたのだ。
「落ち着け、カリアン。焦ったっていいことはないぜ。特に報告するときは、冷静に事実をそのまま伝えることが大事だって言われてるだろ?」
意見、推測は分けて報告すること。コシアンのアドバイスの一つだ。
カリアンはそのことを思いだし、恐怖を押し殺して、ヨシュアンとミリアンだけでなく、ここにいるムサシ率いるエンフォーサーのメンバーに伝える。
「武装した兵士達に取り囲まれている!」
「武装した兵士? 確か、この地域だっけ? その領主の兵士じゃないのか?」
「違うよ! 彼らは外装に十字のマークがあって、大盾や鎖帷子、ソードを装備してる! 領主の兵士は基本騎馬だし、歩兵じゃない! 未知の軍隊がいるんだ! カースルクームは大きくない村だけど、それを取り囲むとなると、千や二千以上と思う」
「……まるで十字軍ね。しかも、千単位の兵士なんて……嫌な予感しかしないわね」
ミリアンはゴクリと息をのむ。
「ねえ、その軍隊ってNPCなんでしょ? ソウル杯が始まって一ヶ月もたっていないのに、千人以上のプレイヤーを集めるなんて無理よ。それなら、ビックタワーを討伐に来た軍じゃない?」
エンフォーサーのメンバーの一人であるカリーナの推測にヨシュアン、カリアン、ミリアンは黙り込む。
極悪非道なビックタワーを討つべく集められた軍隊……と思うのは希望的観測だろう。
もしかすると、ビックタワーの隠し球かもしれない。そうヨシュアンとカリアン、ミリアンは考えていた。
楽観的な希望は捨て、最悪と最良を想像し、行動する。
これもコシアンの教えだ。
「ええっと、アンタの名前は……」
「カリーナよ」
「それなら、カリーナさんよ、十字軍みたいな軍隊がカースルクーム争奪戦に参戦するってこと、誰かが言っていたか?」
「いえ、そんなことは聞いてないけど……」
「それなら、敵の可能性だってあるよな? カリアン、敵はただ取り囲んでいるだけ……」
「そうじゃないみたい。進軍してきてるわよ……こっちに!」
ミリアンは叫び声をあげる。ソウルで強化した視力でカリアンが偵察してきた方向を見ると、徐々にだが、近づいてきている。
それはうすぼんやりとした影の存在が、少しずつハッキリと、大きく見えてきたのだ。
しかも、手には剣を握っている。
少なくとも話し合いに来ているわけではなさそうだ。
ヨシュアンは考える。
今、近づいてくるヤツラは敵か? 味方か?
どう判断する?
「思い切って声をかけてみるとか? 確かめないことにはなにも始まらないわよ?」
「矢で歓迎されるかもしれないぜ? まあ、その場合、敵だって一発で分かるけどな」
「それだと遅いよ。エンフォーサーのみんなは満身創痍だ。もし、敵だとしたら、包囲されているから一点突破して脱出しないと。奇襲を受けて余計な体力を失うのは致命的だと思う」
ミリアン、ヨシュアン、カリアンの言葉に、エンフォーサーのメンバーは戸惑っていた。
まるで敵を目の前にしている警戒さ。敵かどうか分からないと言っておきながら、相手を分析し、対応を考えている。
「とりあえず、ルシアンを呼び戻して行動するか」
「その必要はないみたいよ」
「みんなぁああああ!」
ルシアンが戻ってきた。声色から状況を把握しているみたいだ。
しかも、それだけではない。
「ヨシュアン! カリアン! ミリアン!」
「「「ジョーンズ!」」」
ジョーンズも馬に乗って、ルシアンを追いかけてきた。
カリーナ達は息をのむ。
「とにかく、逃げるぞ! あれは俺達にとって、敵だ! しかも、数は五千! 勝ち目はねえ!」
「「「ご、五千!」」」
これにはヨシュアン達だけでなく、カリーナ達も大声を上げる。
なぜ、五千もの兵がこんな辺境の村に集まっているのか? ビックタワーを殲滅するにしても、多すぎないか?
カリーナはすぐには信じられなかったが……。
「それで、どうするのジョーンズ!」
「逃げる」
ヨシュアンの問いにジョーンズは即答する。
「どこに!」
「俺についてこい。策がある」
「分かったわ!」
ヨシュアンとカリアン、ミリアンはすぐにジョーンズを信じ、行動に移そうとする。
彼を信じているということもあるが、ここにとどまっていたら、生物兵器の餌食になるのでこの場から離れたいという理由もあった。
「ま、待って!」
カリーナは慌ててルシアン達を呼び止める。
「時間がないんだ! 今すぐ逃げないと!」
「今すぐ逃げる? それを信じろって言うの? その男の言葉を……ビックタワーのリーダーの言葉を!」
カリーナはジョーンズを指さす。
それはそうだろう。カリーナ達はジョーンズを倒しにきたのだ。
ビックタワーは多くのNPC,プレイヤー、仲間を殺してきた。そのリーダーの言うことを信じる……一緒に行動する事など、許せるわけがない。
今すぐにでもジョーンズを倒すべきだと、拳に力が入る。
「それで?」
ジョーンズは言い訳も謝罪もすることもなく、ただ一言返す。
カリーナは呆然としていたが、すぐに怒鳴る。
「そ、それでって! だから!」
「俺を倒したところで、待っているのは死……いや、脱落だ。今も俺達に向かっているヤツらは確実にお前達を殺す。そういうヤツらなんだよ」
ジョーンズは端的に真実を告げる。
今、近づいてくる敵は話し合いも命乞いも通用しない相手だと。
「な、なんで、そんなことが分かるの!」
「俺の部下……いや、ビックタワーを作るよう取引を持ちかけたヤツが手配した兵士だからだ。そして、その兵士達は見境なく襲いかかってくるから注意しろとも言われている。事実、俺の仲間がヤツラに殺された」
「と、取引……ですって? それに殺されたって……」
つまり、黒幕がいるということなのか? それに殺された……脱落したというのは本当なのか?
カリーナ達はにわかには信じられず、戸惑っている。
「だ、だからって、お前の言葉を信じられるか!」
「そうだ!」
エンフォーサーのメンバーから次々とジョーンズを疑う声が上がる。
ルシアンは間に入ろうとしたが、ヨシュアンが止める。
その必要がないと言いたげに。
「信じるかどうかはてめえらの目で見て判断しろ。その為についてこい。考えることを放棄してこのままくたばりたいのなら止めはしないがな」
「なぁ、なんですって!」
カリーナ達は顔を真っ赤にして怒っているが、ジョーンズは冷静に言葉を続ける。
「今、そこにいるムサシを救えるのはお前達だけだ。ムサシを見捨てるのか? 命をかけて護ってもらったんだろ?」
「「「……」」」
その点をつかれると、カリーナ達は黙ってしまうほかない。
ジョーンズは何を言えば、カリーナ達を黙らせ、ついてこさせるか分かっている。
コシアンに教授された策の応用だった。
「……本当にムサシクンを助けることが出来るのね?」
「バカか、お前は。必ずなんてことは保証できるわけがない。だが、生き残る可能性が高くなるのは確実だ。後一度しか言わない。何もせずに死を待つつもりか? それとも、俺の案以外にいい方法があるのか? だったら、それを実施しろ。それがないなら、ついてこい」
カリーナ達は歯を食いしばり、屈辱に耐える。
情報がない以上、ジョーンズに従うしかない。
現に兵士達がこちらに向かっているのはカリーナ達だって分かっているからだ。しかも、数十、百人は目視で確認できる。
もし、その兵士に攻撃されたら? ひとたまりもない。
せめてムサシだけでも逃がしたい。
そうカリーナ達は願っている。渋々うなずいた。
「お前、名前は?」
「……カリーナよ」
「よし、カリーナ。お前が今後、エンフォーサーをまとめろ。いいな」
カリーナはキッとジョーンズを睨む。
「……なんでアンタに命令されなきゃいけないのよ」
「意思疎通をしやすくするためだ。ここからは部隊で行動するからな。分かってると思うが、俺達がまとまわないと全滅は必至だ」
敵の言うことを素直に受け入れるのはカリーナにとって癪だったが、事実なのでうなずいた。
「……分かってるわ。ムサシクンを救うため、一時休戦するだけよ」
「OKだ」
話しがまとまり、ルシアンが腕を振り上げる。
「よし、行こう! 安心してくれ! ジョーンズはこう見えても頭はよくて、ここから逃げる方法に関しては誰よりも熟知している!」
「おい、悪口か、それは?」
ルシアンのフォローに、ジョーンズは口を挟むが……。
「テンペストの口車に乗って俺達から離れていったくせに」
「うっ!」
「コシアンに一番迷惑かけているくせに」
「ううっ!」
「私、勝手にチームぬけたこと、まだ許してないんだけど?」
「い、行くぞ! 敵が迫ってきてるんだ! 余計な会話は不要だ!」
カリアン、ヨシュアン、ミリアンの冷たいツッコミに、ジョーンズは顔を背けて馬を走らせる。
その後にルシアン、カリーナ達が続く。
カリーナ達の左をミリアン。右をヨシュアン。
後ろにカリアンがついていく。
こうして、撤退戦が始まろうとしていた。
しかし、ジョーンズはまだ気づいていない。敵の中に……神の薔薇、ロサ・オスカル・フランソワがいることに……。
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