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番外編

幻想への道のり 第二歩 後編

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「次はソレイユね!」
「……」

 ソレイユは迷った。
 キッパリといらないと言うべきか、否かを。
 だが、ジャックの方が早く武器を取り出した。
 その武器とは……。

「……」

 ソレイユはジャックが取り出した武器に見とれていた。
 その武器とは……。

 エスパダ・ロペラ。
 突きに特化した片手剣で色はシンプルなシルバーでグリップが鮮やかなブルーに染まっている。
 勿論、パワーストーンを備えている。しかも、二個も付加されていた。

「やっぱ、美人のソレイユにはシンプルなモノの方が見栄えがいいっていうか、無駄な装飾は美しさを損なうしね」

 ソレイユは少し微妙な顔をしながらも、エスパダ・ロペラの形状とその特化した能力に魅了されつつあった。
 ソレイユのテンションが5上がった。



「ねえ、みんな! 私からもプレゼントがあります!」
「キュキュー!」
「ワン!」
「なんでしょうか?」

 リリアンはムサシ達のサポキャラ、聖獣アスコット、大型犬の金重、オオカミのネイキッドを集めた。
 その理由はお互い親交を深め、協力することでカースルクーム奪還戦をよりサポートできるようにする為だ。
 リリアンはバスケットにかかっていた布を掴み、一気に開けた。

「キュキュキュー♪」
「ワンワンワン!」
「ほぅ……」

 アスコットと金重は歓喜の鳴き声を、ネイキッドは感嘆の声を漏らす。
 バスケットの中には木の実、果実、お菓子の詰め合わせがてんこ盛りになって入っていた。

「ジャックがね、最近、お小遣いをくれるようになったの! 私、サポキャラだからいらないし無意味だって言ったんだけどね……」

 リリアンとしては、ジャックが稼いだお金は自分の為に使ってもらいたい。けど、ジャックは……。

「今まで貯めたお金はリリアンと二人で稼いだお金だし、分配しないと駄目でしょ?」
「で、でも……私の姿は他の人には見えないし、サポキャラにお金をあげるプレイヤーなんて聞いたことないよ」

 リリアンは呆れていたが……。

「だったら、僕が初めてでいいじゃない。リリアンは僕の相棒なんだから対等でなきゃ……って言いたいけど、半分は勘弁して。僕のお金は基本、みんなの武器や防具代で消えていくし……だから、お小遣い程度しか分けられないんだけど……」
「……うん! 分かった! ジャックの気が済むのなら、もらってあげる!」

 リリアンは胸の中にこみ上げてくる何かを押し殺し、にっこりと笑ってみえた。
 純粋にジャックから相棒であること、対等でいたいと言ってくれたことがうれしかった。
 けれども、リリアンは所詮、NPC。生きているジャックと対等ハズがない。
 それがリリアンの胸を苦しめていた。

「キュ~~……」
「な、なんでもないよ、アスコット。ごめんね、心配掛けて」
「キュキューー!」

 アスコットはリリアンの頬を舐める。リリアンはくすぐったそうにして、アスコットを抱きしめた。

「ワン!」
「ああっ! 駄目だよ、金重! フライングしちゃ! みんなで仲良く食べるんだから!」

 金重は知るかと言いたげに果物にかじりつくが、その一つをリリアンに投げ渡す。

「わ、私が食べていいの?」
「ワン!」

 お前のだから当然だろと言いたげに金重はそっぽをむき、果実にかじりつく。

「素直でない方ですね。犬なのにツンデレですか」
「ぷぷっ!」
「キュキュ~~~♪」

 ネイキッドの指摘にリリアンとアスコットは可笑しそうに笑った。
 リリアン達は仲良くお菓子を食べて始めた。



「さて、トリを飾るのはテツの武器! 期待してくれていいよ! 制作費は誰よりも高いから!」
「……いや、それならシルバーでくれたほうが……」
「じゃじゃじゃ~~~~~ん!」

 テツの要望など聞こえなかったように、ジャックはテツ用の武器を取り出す。
 その武器とは……。

「ぐ、グレイブ?」

 そう、グレイブだ。
 だが、テツはすでにグレイブを持っている。
 同じ武器に意味があるのか?
 ただ、そのグレイブは……。

「こ、これ、すげえな。全身シルバーじゃねえか」

 ムサシの指摘通り、そのグレイブはシルバー一色に染まっていた。しかも、デザインが若干違った。
 刃の部分に青龍の装飾が施されている。

「ったく、これもメッキか……って、重ぉ!」

 ジャックからグレイブを受け取った瞬間、テツはシルバーグレイブを落としそうになった。
 見た目よりもかなり重量があったからだ。

「安心して! これはどこをとってもシルバーだから」
「ま、まさか……」
「純度百パーセントのシルバーグレイブ。制作費五十万シルバーだよ」
「「ご、五十万だとぉおおおおおおおおお!」」

 ムサイは驚愕の声で、テツは悲鳴に近い声で叫ぶ。
 エリンもソレイユも呆然としている。
 ジャックが自信作を自慢げに語る。

「重量は四十九キロあるけど、威力は桁違い! 斬撃も鈍器としても一流の武器さ!」
「いや、鈍器じゃねえ?」
「重さ=攻撃力ではないと思うのだけれど」
「……いや、これ……ほんと、すごい武器ですよ……パワーストーンが三つ差し込めますし、鑑定スキルで確認したら、そのすごさが分かります」

 ムサシ、ソレイユ、エリンはそれぞれの感想を述べる。
 それに対してテツは……。

「いや……重ぃ……マジで重めえわ……こんなもん……扱えるかよ……」

 テツの腕はプルプルとふるえ、顔が真っ赤になる。

「ソウルを解放させなよ。元々、ソウル解放を想定した武器だし」
「ったく、面倒くせえな……ソウル『解放』!」

 テツはソウルを解放させ、シルバーグレイブを持ち上げる。
 重さは軽減されたが、それでも……。

「重めぇ……なんとか振り回すことは出来そうだが、スタミナ値も減少するし、何より遅え……攻撃を当てることが出来るのか?」
「そこはテツ次第だよ。テツならきっと使いこなせる。そう信じてる」

 ニカッと無邪気に笑うジャックに、テツは眉をひそめる。

「いや、信じられてもな……」
「オラもそう思う! テツならやれる! 気合いだ! 気合い!」
「根性ですよ~テツさん」
「いや、無理でしょ?」

 ジャックとムサシは純粋にムサシを応援し、エリンはからかい、ソレイユは率直な意見を述べる。
 テツのテンションが-100下がった。

「みんな! ぜひ、この新装備で戦ってね! 絶対にこの武器はみんなの力になるから!」
「「「……」」」

 ムサシ、テツ、エリンは封印しようと心に誓い、ソレイユは思案顔で考え込んでいた。



 ジャックの宣言通り、この新しい武器は意外にも、彼らを助けることになることをまだ誰も知らない。
 それが判明するのはもう少し先になる。
 アレンバシルの大地はジャック達をただ見守っていた。
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