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二十六章 雪辱戦! ビックタワーVSエンフォーサー! ルーシベニ村防衛戦
二十六章 雪辱戦! ビックタワーVSエンフォーサー! ルーシベニ村防衛戦 その一
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「ジーマ! カズヤ! もう寝なさい!」
「ええぇ~! まだ眠くない!」
「眠くない~」
夜も更け、ディーナは子供達を寝かせようとするが、いつものように愚図り始めた。
ジーマ、カズヤはディーナの子供で、ジーマは五歳でおてんばな女の子で、カズヤは三歳の男の子でやんちゃさかりだ。
ジーマの後をカズヤはいつもついてまわり、お互い手を繋いで、村の中を探検している。
元気の塊である二人の子に、ディーナは振り回されつつも、幸せを感じていた。
ディーナはルーシベニ村の娘で、十六の時、幼なじみで木こりのエブリンと結婚した。
小さくて何の名所もない村だが、それでも、緑豊かな土地に囲まれたのどかで平和な場所だ。
「こ~ら! 聞き分けのない子供にはもう、お話をしてあげないわよ」
「や~だ! お話聞かせて~!」
「きかせて~」
ジーマとカズヤがディーナの腰にしがみつく。
ディーナはやれやれと言いたげに二人の愛する子供達の頭を撫で、ベットに移動する。今日はどのお話を聞かせようか考えていた。
ジーマとカズヤをベットに寝かせ、ディーナは椅子に座り、物語を聞かせる。
「むか~しむかし、リンカーベル山の麓の村にスデーという若者がいました。
スデーは誰よりも優しく、勇敢な狩人でもありました。
彼が放つ矢はどこにでも届き、外さない。
どんな魔物も悪党も彼の前では無力でした。
ある日、村人がステーに、リンカーベル山に大きなオオカミが住み着いているので、退治して欲しいとお願いされました。
ステーは昼間、リンカーベル山を訪れたとき、大きな熊に襲われました。
退治することは出来ましたが、怪我を負ってしまい、その場から動けなくなりました。
そのときです。
一人の美しい女性が現れたのは。
その女性はスデーを麓の小屋まで連れて行き、介抱しました。
スデーは女性に恋し、好きだと告白しましたが、彼女は彼の思いを受け入れませんでした。
理由を聞いても教えてくれません。
彼女には秘密があったのです。
スデーは満足の夜にその秘密を知りました。
そう、彼女は満月の光を浴び、真っ白で大きなオオカミに変身したのです。
彼女こそが村人が話していたオオカミだったのです。
スデーは悩みました。
彼女を退治するのか? それとも、彼女を護るのか?
ステーが選んだ答えは……」
「こたえは?」
「こたえは~」
ディーナは微笑みながら、ジーマとカズヤの頭を優しく撫でる。
「答えはまた明日。二人がいい子にしていたらはなしてあげる」
「ええ~、話してよ!」
「はなしてよ~」
二人は不満の声を上げるが、ディーナはやんわりと諭す。
「あまりお母さんを困らせると白いオオカミが二人をペロリと食べちゃうぞ~」
「べ、べつにこわくないもん!」
「……いい子にしたら食べられない?」
ジーマは意地を張るが、カズヤは布団をかぶり、少しだけ頭を出してディーナに尋ねる。
「こら! カズヤ!」
「ジーマ。怒っちゃダメ。カズヤ、いい子にしていたら白いオオカミは襲ってこないから。今日は寝なさい」
「は~い」
「もう! カズヤは弱虫なんだから!」
「はいはい。ジーマも寝なさい」
ディーナはランプの明かりを消し、部屋を出る。
これでディーナの仕事は終わりだ。明日も朝は早い。
ジーマとカズヤが生まれてから、ディーナは毎日が忙しくなった。そして、幸せが倍になった。
こんな毎日がいつまでも続く。そう疑っていなかった。
だが……。
カンカンカンカン!
真夜中に村の警鐘が鳴り響く。その鐘は日常の終わりを告げ、惨劇の合図になろうとしていた。
「ディーナ! ジーマとカズヤを隠せ! 賊だ!」
ディーナの夫であるトマージが叫ぶようにディーナに警告する。ディーナの顔が真っ青になる。
最近、村々を襲う賊が現れたことを衛兵から聞いていた。それでも、ディーナの住む村、ルミナードには関係ないと思っていた。
ディーナが生まれてこのかた、ルミナードには事件らしき事件はなく、警鐘がなったことなど一回もない。
けれども、危機は刻一刻と近づいている。
ディーナは最悪な状況を予測し、すぐさま走った。
「ジーマ! カズヤ! 起きなさい!」
「……んん~なに、お母さん?」
「な~に?」
眼をこすりながらジーマとカズヤが不機嫌そうに起き上がる。ディーナは二人を抱え、納屋に逃げ込もうとした。
あそこなら身を隠せる。そこしか思いつかなかったのだ。
ディーナは裏口から外に出ると、叫び声が聞こえる。
いつもおてんばなジーマもこのときはカズヤと同じくディーナに抱きつく。
ディーナも怖かったが、胸の中にある二人の子供の前が母としての勇気を与える。
「大丈夫。ジーマもカズマもお母さんが護るから!」
ディーナは納屋に隠れようとしたとき。
「悪いな。ここは満室だ~」
中から一人の男が現れる。
男はショートソードをちらつかせ、ディーナ達を品定めしていた。
どうやって殺すのか考えている目だ。ディーナは震えがらも子供達を抱きしめ、気丈に男を睨みつける。
「何の用なの! ここには金目のものはないわ!」
「あるだろ~? お前達の……命がぁ~! 僕~、女を殺すのが大の好物なんだよね~。男は即刻殺すけどな」
男は一歩、また一歩ディーナに近づく。
彼女達の命運は風前の灯火だ。誰も助けに来ない。
誰もが悲鳴を上げ、死にたくないと逃げ回る。生きるために誰もが自分の事で精一杯なのだ。
だが、彼らの命は賊……ビックタワーに奪われようとしている。
等しく……蹂躙されていく。
そこに救いはない。
「まずは、そのガキからだ。俺は好きなモノは最後に食べるタイプなんでな」
「やめて! カズヤに……この子達に手を出さないで!」
「聞く度に思うんだけどさ~、それ、意味あるの? 手を出すに決まってるじゃん。だって……そうした方が、お前をひんむくとき、楽しめるだろぉおおおおおお!」
男はショートソードを構え、カズヤに狙いを定める。男に子供を殺す罪悪感は全くない。
ディーナは恐怖で頭がどうにかなりそうだったが、大切な者を護る為、その命がつきるまで我が子を護ろうと体を張る。
ショートソードがカズヤを庇うディーナに刃先が貫く……。
「やらせない!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
それは閃光だった。
ディーナに刃先が貫こうとした瞬間、横から光の塊が男に襲いかかった。
「ジョーンズ! どういうことだ! なんでここにエンフォーサーがいるんだよ!」
「……」
ジョーンズは内心舌打ちをしていた。
夜の闇に紛れて奇襲をかけた村に、逆に敵対しているチーム、エンフォーサーに奇襲を受けているのだ。
ここはゲームの世界だが、プレイヤーの都合通りに全てできてない。夜は暗闇に覆われ、現代社会のように夜でも街灯や明かりが溢れてるわけではない。
星の光は空に輝いているが、一寸先は闇そのものだ。夜目が利いたとしても、周りの地形を把握するのは難しいだろう。
ジョーンズ達はたいまつやランタンといった明かりを最小限におさえ、ビックタワーのアジトから比較的近い場所を強襲場所として選んだ。
この強攻策は夜に急遽招集をかけたため、集まりも悪く、全体の半分である百人ほどしかいない。
だが、強攻策であったからこそ、ビックタワーへの待ち伏せは難しく、奇襲は成功するハズだった。
「おい、ジョーンズ! どうするんだ!」
「……浮き足立つな! まずは状況を把握しろ! 敵の勢力はどこからやってきて、数はどれくらいだ!」
ジョーンズは矢次に指示を出していく。
仲間の報告から、敵はジョーンズの背後と前方から襲いかかってきて、数はおそらく三十人ほど。戦力はあきらかにビックタワーが上だ。
それでも、奇襲を受けている状況には変わりない。
「村人は後回しにしろ! お互い二人以上組んで敵にあたれ! 敵はたいした強さでは……」
「やべえぞ! マーガンが脱落したぞ!」
「慌てるな! 俺の指示に従え! そうすれば、脱落しない! お互い護りあえ!」
ジョーンズは拳を握り、目に憎悪をたぎらせていた。
この強攻策、仲間にたしなめられたが、そう悪い策ではないとジョーンズは思っていた。
計画にない作戦だからこそ、敵に見抜かれる心配はなかったのだが、エンフォーサーはジョーンズ達を待ち伏せ、奇襲をかけてきた。
これが意味するところは……。
――裏切り者がいるのか? エンフォーサーだけでなく、俺のチームにも裏切り者がいて、情報が漏洩されたのか? そっちの方がマズイだろうが!
常にビックタワーはエンフォーサーの先手をとっているつもりだった。現にビックタワーの侵攻をエンフォーサーは一つも阻止することが出来ていない。
戦力差もあるが、一番の理由は内通者の情報があったことだ。エンフォーサーの行動は筒抜けだったからこそ、裏をかいてきたのだ。
だが、それが通用しないとなると、作戦を大幅に修正せざるを得ないが、これはチャンスでもあった。
「おい、お前ら! 日和ってるんじゃねえぞ! これはチャンスだ! 俺達の方が数でも力でも優勢なのは火を見るよりも明らかだ! ここでエンフォーサーを壊滅させる!」
ジョーンズはソウルを解放させ、仲間の注目を集めた後、大声で怒鳴る。
「エンフォーサーのリーダーをこの場に引きずり出せ! みんな大好き公開処刑だ! 特にジャックは見つけ次第、殺せ! ヤツの首を取ったヤツには、褒美をやる! 金でも装備品でもなんでも用意してやる! 殺る気をだせ、お前ら! 俺らはビックタワーなんだ! 残虐に圧倒的に敵を蹂躙しろ!」
ジョーンズは怒鳴り声を上げ、仲間に檄を入れる。
ビックタワーのメンバーは凶器を握りしめ、笑みを浮かべる。そう、彼らは思い出したのだ。
自分達は強奪する側の人間である事を。恐怖を与える存在だと。
その思い込みが焦りを消し、彼らを殺人鬼へと変貌させる。そうなるように、ジョーンズはわざわざ村を襲い、仲間達にその手で村人を殺させた。
これはある種の踏み絵だった。
命乞いをする村人を殺させて、快楽を感じるが、罪悪感を覚えるか試した。
興奮を覚えたモノは前線に、罪悪感に悩むようなら、支援にまわした。
ここにいるのは、人殺し大好きキチガイ共だ。
そのリーダーであるジョーンズは舌で唇を舐め、己の人間性を心の奥底に閉じ込め、狩人として命を略奪する者として戦う。
「ええぇ~! まだ眠くない!」
「眠くない~」
夜も更け、ディーナは子供達を寝かせようとするが、いつものように愚図り始めた。
ジーマ、カズヤはディーナの子供で、ジーマは五歳でおてんばな女の子で、カズヤは三歳の男の子でやんちゃさかりだ。
ジーマの後をカズヤはいつもついてまわり、お互い手を繋いで、村の中を探検している。
元気の塊である二人の子に、ディーナは振り回されつつも、幸せを感じていた。
ディーナはルーシベニ村の娘で、十六の時、幼なじみで木こりのエブリンと結婚した。
小さくて何の名所もない村だが、それでも、緑豊かな土地に囲まれたのどかで平和な場所だ。
「こ~ら! 聞き分けのない子供にはもう、お話をしてあげないわよ」
「や~だ! お話聞かせて~!」
「きかせて~」
ジーマとカズヤがディーナの腰にしがみつく。
ディーナはやれやれと言いたげに二人の愛する子供達の頭を撫で、ベットに移動する。今日はどのお話を聞かせようか考えていた。
ジーマとカズヤをベットに寝かせ、ディーナは椅子に座り、物語を聞かせる。
「むか~しむかし、リンカーベル山の麓の村にスデーという若者がいました。
スデーは誰よりも優しく、勇敢な狩人でもありました。
彼が放つ矢はどこにでも届き、外さない。
どんな魔物も悪党も彼の前では無力でした。
ある日、村人がステーに、リンカーベル山に大きなオオカミが住み着いているので、退治して欲しいとお願いされました。
ステーは昼間、リンカーベル山を訪れたとき、大きな熊に襲われました。
退治することは出来ましたが、怪我を負ってしまい、その場から動けなくなりました。
そのときです。
一人の美しい女性が現れたのは。
その女性はスデーを麓の小屋まで連れて行き、介抱しました。
スデーは女性に恋し、好きだと告白しましたが、彼女は彼の思いを受け入れませんでした。
理由を聞いても教えてくれません。
彼女には秘密があったのです。
スデーは満足の夜にその秘密を知りました。
そう、彼女は満月の光を浴び、真っ白で大きなオオカミに変身したのです。
彼女こそが村人が話していたオオカミだったのです。
スデーは悩みました。
彼女を退治するのか? それとも、彼女を護るのか?
ステーが選んだ答えは……」
「こたえは?」
「こたえは~」
ディーナは微笑みながら、ジーマとカズヤの頭を優しく撫でる。
「答えはまた明日。二人がいい子にしていたらはなしてあげる」
「ええ~、話してよ!」
「はなしてよ~」
二人は不満の声を上げるが、ディーナはやんわりと諭す。
「あまりお母さんを困らせると白いオオカミが二人をペロリと食べちゃうぞ~」
「べ、べつにこわくないもん!」
「……いい子にしたら食べられない?」
ジーマは意地を張るが、カズヤは布団をかぶり、少しだけ頭を出してディーナに尋ねる。
「こら! カズヤ!」
「ジーマ。怒っちゃダメ。カズヤ、いい子にしていたら白いオオカミは襲ってこないから。今日は寝なさい」
「は~い」
「もう! カズヤは弱虫なんだから!」
「はいはい。ジーマも寝なさい」
ディーナはランプの明かりを消し、部屋を出る。
これでディーナの仕事は終わりだ。明日も朝は早い。
ジーマとカズヤが生まれてから、ディーナは毎日が忙しくなった。そして、幸せが倍になった。
こんな毎日がいつまでも続く。そう疑っていなかった。
だが……。
カンカンカンカン!
真夜中に村の警鐘が鳴り響く。その鐘は日常の終わりを告げ、惨劇の合図になろうとしていた。
「ディーナ! ジーマとカズヤを隠せ! 賊だ!」
ディーナの夫であるトマージが叫ぶようにディーナに警告する。ディーナの顔が真っ青になる。
最近、村々を襲う賊が現れたことを衛兵から聞いていた。それでも、ディーナの住む村、ルミナードには関係ないと思っていた。
ディーナが生まれてこのかた、ルミナードには事件らしき事件はなく、警鐘がなったことなど一回もない。
けれども、危機は刻一刻と近づいている。
ディーナは最悪な状況を予測し、すぐさま走った。
「ジーマ! カズヤ! 起きなさい!」
「……んん~なに、お母さん?」
「な~に?」
眼をこすりながらジーマとカズヤが不機嫌そうに起き上がる。ディーナは二人を抱え、納屋に逃げ込もうとした。
あそこなら身を隠せる。そこしか思いつかなかったのだ。
ディーナは裏口から外に出ると、叫び声が聞こえる。
いつもおてんばなジーマもこのときはカズヤと同じくディーナに抱きつく。
ディーナも怖かったが、胸の中にある二人の子供の前が母としての勇気を与える。
「大丈夫。ジーマもカズマもお母さんが護るから!」
ディーナは納屋に隠れようとしたとき。
「悪いな。ここは満室だ~」
中から一人の男が現れる。
男はショートソードをちらつかせ、ディーナ達を品定めしていた。
どうやって殺すのか考えている目だ。ディーナは震えがらも子供達を抱きしめ、気丈に男を睨みつける。
「何の用なの! ここには金目のものはないわ!」
「あるだろ~? お前達の……命がぁ~! 僕~、女を殺すのが大の好物なんだよね~。男は即刻殺すけどな」
男は一歩、また一歩ディーナに近づく。
彼女達の命運は風前の灯火だ。誰も助けに来ない。
誰もが悲鳴を上げ、死にたくないと逃げ回る。生きるために誰もが自分の事で精一杯なのだ。
だが、彼らの命は賊……ビックタワーに奪われようとしている。
等しく……蹂躙されていく。
そこに救いはない。
「まずは、そのガキからだ。俺は好きなモノは最後に食べるタイプなんでな」
「やめて! カズヤに……この子達に手を出さないで!」
「聞く度に思うんだけどさ~、それ、意味あるの? 手を出すに決まってるじゃん。だって……そうした方が、お前をひんむくとき、楽しめるだろぉおおおおおお!」
男はショートソードを構え、カズヤに狙いを定める。男に子供を殺す罪悪感は全くない。
ディーナは恐怖で頭がどうにかなりそうだったが、大切な者を護る為、その命がつきるまで我が子を護ろうと体を張る。
ショートソードがカズヤを庇うディーナに刃先が貫く……。
「やらせない!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
それは閃光だった。
ディーナに刃先が貫こうとした瞬間、横から光の塊が男に襲いかかった。
「ジョーンズ! どういうことだ! なんでここにエンフォーサーがいるんだよ!」
「……」
ジョーンズは内心舌打ちをしていた。
夜の闇に紛れて奇襲をかけた村に、逆に敵対しているチーム、エンフォーサーに奇襲を受けているのだ。
ここはゲームの世界だが、プレイヤーの都合通りに全てできてない。夜は暗闇に覆われ、現代社会のように夜でも街灯や明かりが溢れてるわけではない。
星の光は空に輝いているが、一寸先は闇そのものだ。夜目が利いたとしても、周りの地形を把握するのは難しいだろう。
ジョーンズ達はたいまつやランタンといった明かりを最小限におさえ、ビックタワーのアジトから比較的近い場所を強襲場所として選んだ。
この強攻策は夜に急遽招集をかけたため、集まりも悪く、全体の半分である百人ほどしかいない。
だが、強攻策であったからこそ、ビックタワーへの待ち伏せは難しく、奇襲は成功するハズだった。
「おい、ジョーンズ! どうするんだ!」
「……浮き足立つな! まずは状況を把握しろ! 敵の勢力はどこからやってきて、数はどれくらいだ!」
ジョーンズは矢次に指示を出していく。
仲間の報告から、敵はジョーンズの背後と前方から襲いかかってきて、数はおそらく三十人ほど。戦力はあきらかにビックタワーが上だ。
それでも、奇襲を受けている状況には変わりない。
「村人は後回しにしろ! お互い二人以上組んで敵にあたれ! 敵はたいした強さでは……」
「やべえぞ! マーガンが脱落したぞ!」
「慌てるな! 俺の指示に従え! そうすれば、脱落しない! お互い護りあえ!」
ジョーンズは拳を握り、目に憎悪をたぎらせていた。
この強攻策、仲間にたしなめられたが、そう悪い策ではないとジョーンズは思っていた。
計画にない作戦だからこそ、敵に見抜かれる心配はなかったのだが、エンフォーサーはジョーンズ達を待ち伏せ、奇襲をかけてきた。
これが意味するところは……。
――裏切り者がいるのか? エンフォーサーだけでなく、俺のチームにも裏切り者がいて、情報が漏洩されたのか? そっちの方がマズイだろうが!
常にビックタワーはエンフォーサーの先手をとっているつもりだった。現にビックタワーの侵攻をエンフォーサーは一つも阻止することが出来ていない。
戦力差もあるが、一番の理由は内通者の情報があったことだ。エンフォーサーの行動は筒抜けだったからこそ、裏をかいてきたのだ。
だが、それが通用しないとなると、作戦を大幅に修正せざるを得ないが、これはチャンスでもあった。
「おい、お前ら! 日和ってるんじゃねえぞ! これはチャンスだ! 俺達の方が数でも力でも優勢なのは火を見るよりも明らかだ! ここでエンフォーサーを壊滅させる!」
ジョーンズはソウルを解放させ、仲間の注目を集めた後、大声で怒鳴る。
「エンフォーサーのリーダーをこの場に引きずり出せ! みんな大好き公開処刑だ! 特にジャックは見つけ次第、殺せ! ヤツの首を取ったヤツには、褒美をやる! 金でも装備品でもなんでも用意してやる! 殺る気をだせ、お前ら! 俺らはビックタワーなんだ! 残虐に圧倒的に敵を蹂躙しろ!」
ジョーンズは怒鳴り声を上げ、仲間に檄を入れる。
ビックタワーのメンバーは凶器を握りしめ、笑みを浮かべる。そう、彼らは思い出したのだ。
自分達は強奪する側の人間である事を。恐怖を与える存在だと。
その思い込みが焦りを消し、彼らを殺人鬼へと変貌させる。そうなるように、ジョーンズはわざわざ村を襲い、仲間達にその手で村人を殺させた。
これはある種の踏み絵だった。
命乞いをする村人を殺させて、快楽を感じるが、罪悪感を覚えるか試した。
興奮を覚えたモノは前線に、罪悪感に悩むようなら、支援にまわした。
ここにいるのは、人殺し大好きキチガイ共だ。
そのリーダーであるジョーンズは舌で唇を舐め、己の人間性を心の奥底に閉じ込め、狩人として命を略奪する者として戦う。
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