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クリサンとグリズリーの冒険 中編
クリサンとグリズリーの冒険 その十八
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「乾杯!」
「「「乾杯!」」」
その日の夜、俺とグリズリー、コスモス、ライザー達は酒場で打ち上げをしていた。ようやくメシにありつけるわけだ。
クロスロードに到着する頃には皆に笑顔が戻っていた。
なんたって百万シルバーだからな。笑顔を取り戻す言い訳がつくわけだ。
勿論、俺は空気が読めるから何も言わない。いや、最初から言うなよってツッコミは勘弁な。
グルフの首を突き出したときのバッツの顔、見物だったな。ただ、殺人の自首だと勘違いされて、またもや捕まり、ケツ穴の貞操の危機を感じたわけだが。
「おい、クリサン。がっつきすぎだろ?」
「う、うるふぁい!」
片っ端から魚料理と野菜を腹に詰め込む。ミードで一息ついた後、更にメシを腹に詰め込んだ。昨日の夜から満足にご飯を食ってないからな。
うまい! 美味すぎる!
空腹は最高のスパイスだ! 美味すぎる!
「おい、聞いたか? あの傭兵団、スヒナスが解雇されたってよ」
「本当か! けど、黒いカモリアはどうなるんだ?」
「それがよ、壊滅したって話しだぜ! なんか、熊の化物が皆殺しにしたらしいぞ。頭領の首が屯所に届いたって聞いたぜ!」
おいおい、化物が屯所に首なんて持ってくるわけないだろ? 金欲しがる化物って斬新すぎて笑うわ!
心の中で客にツッコミを入れ、料理に手をつけようとしたとき、ウェイターが俺達一人一人にカップを置いた。
カップの中は薄赤い液体が揺れていた。
「これ、なに? 頼んでないけど?」
「これは街を救ってくれた英雄へのお礼よ。ありがとう。これは紅茶っていう飲み物で、東の大陸から仕入れたの。口当たりがよくて美味しいわよ」
へえ……紅茶なんてこの世界にあるんだ……どれどれ……。
「うっ……」
く、口当たりいいか? これ?
変に甘い……香もキツい……あとに残る……。
「驚いた……本当に紅茶だわ」
「そうですね。でも、何てお茶?」
「……中国紅茶だと思う」
女性陣が紅茶の評論をしているが、この紅茶が何の種類であったとしても、あまり好きになれないな。個人的にはミルクティーの方が好きだ。
こんなことをいえば、お子様だとか言われそうだから、黙っていよう。
とりあえず、目をギュッとつぶり、一気に紅茶を飲み干した。この紅茶はウェイターの心遣いだ。残すなんてありえないだろ?
それになんでかな、背中がかゆい。人のために頑張るのも悪くないって思えたわ。
全然らしくないんだけどな~。
「ヒトシ、やめておきなさい。アンタのようなサイコに正義の味方なんて似合わないわよ」
「ぶふっ!」
「きゃあああああああ! 汚い!」
俺は口の中に入れていた食いもんをコスモス目掛けて思いっきりぶちかました。
ふん! 天罰だ。
「正義の味方か……悪くないな」
「五十万シルバー入ったからでしょ?」
ネルソンに突っこまれて、ライザーはご機嫌のまま、グリズリーとエールを飲み交わしている。
いつも不機嫌そうなライザーが笑っているんだ。そりゃ、不気味だよな。
けど、金抜きでも、黒いカモリアを退治できてよかったと思っている。
バッツ達衛兵にはものすごく感謝されたし、自分の武が人の役に立てるなんて今までになかったからな。
世間では大抵、暴力を振るう危ない子供扱いだし。
それに……。
「ガァハハハハハハハハ! クリサン、コスモス、みてくれた? わいの勇士を!」
「ハハハッ……ウゼぇ……」
一番活躍したのは間違いなくグリズリーだろう。
会心の進撃だもんな。やはり、元世界チャンピオンは伊達じゃない。こうでなきゃな。
「クリサン、コスモス」
グリズリーがいきなり真顔で俺達を呼んだ。
「……んだよ」
「はいはい」
「見ちょってくれん。おいはもう、ファンの期待を裏切らんで。最高んパフォーマンスをだいよりも近うで見せっでな!」
グリズリー……もしかして、昨日の夜のこと、気にしてたのかよ。バカじゃないの?
くそっ! ガキかよ、俺は。グリズリーが自分の思い描いた英雄像でなかったからって、拗ねて、八つ当たりしていたなんて……。
「期待してるわよ、グリズリー。アナタが活躍してくれたら、私の知名度もアップするしね」
「おい、スイーツ。寄生虫か、己は」
自分の力でなんとかしろよ。ったく、俺の感動が半減したわ。
「共存関係と言ってほしいわね。でも、このソウル杯っていうのも面倒よね。勝者は一人なのに、共闘しないとNPCにさえ、殺されるかもしれないんだし」
確かにそうだ。性格悪いよな、この大会。
フツウにオンラインゲームとして販売した方がみんなが楽しめるんじゃないか?
まあ、ソウルインするのにあんな馬鹿でかい椅子を使わないといけないのはアレだけどな。
「ヒトシもちゃんと感謝の言葉を口にしなさいよ」
「ヤダよ、テレくさい」
「どこのどなたのせいで黒いカモリアと戦う羽目になったのか、忘れたの? 賞金のことがあったとはいえ、私達はアンタの不始末をしたのよ。お礼を言ってもバチは当たらないと思うけど?」
ぐおっ! とんでもないカウンターを打ってきた……。
そうだよな……俺のせいだよな、今回の無茶ぶりな件は……。
俺がもめ事を起こさなければ、グリズリーとコスモスを危険な目に遭わせることもなかったのに……。
「気にせんでくれ、クリサン。おいは二人に感謝しちょっど」
「感謝?」
「そうじゃ。おかげで目が覚めた。自分がだいなんかを思いださせてくれた。誇りを取り戻せた。二人んおかげじゃ」
ううっ、おっさん……いい人だ。とても、いい人だ……。
俺も大人になれたら、誰かの期待を背負って、それに応えられる人になれるのか?
そのまえに、やっぱ、コスモスのアドバイスどおりに謝罪するべきだよな。
よし、やるぞ!
「ライザーさん、そろそろ……」
「分かってるよ! ちっ、面倒くせえな」
なんだ? いつの間にか、ライザーのチームのメンバーがじっとライザーを見つめている。
ライザーはその視線が疎ましくて、ぶっきらぼうに言葉を吐き出す。
「みんなも顔くらいは知っているよな? コイツはグリズリー=ベア。総合格闘技UFCの元ヘビー級チャンピオンだ。グリズリー、ここにいるのが俺が作り上げたチームの面子だ。紹介が遅くなったが、よろしくしてやってくれ」
「紹介にあずかったグリズリー=ベアじゃ。実力は錆びちちょっが、いっき現役ん強さをキミ達やこん世界におっプレイヤーに見せつけっことになっじゃろう。そんときは、正々堂々とファイトしよごたっもとじゃ!」
あれ? みんな、黙り込んでる……。さては信じてないな。
まあ、当然か。あの有名人がこんなゲーム大会に参加しているってフツウは思わない……。
「「「マジであのグリズリーか!」」」
おおっう!
ライザーの仲間は全員が椅子を蹴飛ばすように総立ちになり、グリズリーを見つめている。
あれ? 信じちゃうの? 嘘でしょ?
グリズリーはライザーのメンバーに囲まれ、質問攻めにあっている。
「あ、あの……握手してもらっていいですか?」
あの冷静なネルソンでさえ、低姿勢で握手を求めてる。はぁ……すげえな、グリズリー。
どうでもいいんだけど、俺の謝罪タイムはどこにいったのやら……。
「ね、ねえ、コスモスさん。グリズリー=ベアって有名なの?」
「お前はそれでも日本人かっ!」
俺はレベッカにビシッと指さす。
えっ、嘘でしょ? モグリなの? 信じられないんですけど!
俺がゴミを見るような目で睨んでいると、レベッカは慌てて弁解してきた。
「し、仕方ないでしょ! 知らないものは知らないんだし。誰も教えてくれなかったし……」
指をちょんちょんとあわせる仮面のツインテールはちょっと可愛いと思いました。
けどな、テレビとか見ないのか? このお嬢さんは。
CMとか雑誌、新聞にだって載ったことがあるんだぞ? 後、電車や街のポスターにだって載ってたでしょ?
それにあの事故はどのテレビ局も取り上げていた。もしかして、箱入り娘なのか?
それとも、理由があって隔離されていた場所にいたとか。
例えば……。
「気にしないで、レベッカさん。コイツ、ちょっと頭がおかしいから」
「おかしい言うな。二人とも、自己紹介済んでたんだな」
レベッカか……。
どっかのバンドがそんな名前だったよな? 偶然か?
俺は肩をすくめ、食事を再開する。
ライザーの一言で、打ち上げはグリズリーの食事会みたいな雰囲気になっている。
グリズリーはネルソンやコリーといったプレイヤーの質問や言葉に親切丁寧に応えている。
あれも、スターの仕事ってわけか? 少しつまらん。
「なあなあ、ライザー。グリズリー達と一緒に組まねえ? ここにいるみんながいれば、絶対にクリアできないクエストなんてないって! それに予選突破も夢でなくなるぜ!」
おおっ、いいことを言いますな、ムートさん!
グリズリーは最良物件だぜ。コスモスおしだしな!
ライザーはムートの胸ぐらを乱暴に掴んだ。
「おい……ふざけたこと、ぬかしているんじゃねえよ。俺達はライバルなんだぞ? グリズリーは仲間じゃなくて倒すべき敵だろうが!」
お、重い……。
先ほどの楽しい雰囲気は散開し、ギスギスした空気が流れる。ムート達は冷や水を浴びた思いだろう。
「……私はムートさんの意見に賛成です。彼の近くなら戦闘に事欠きませんし、何より、五十万シルバー、拠点、その他諸々ががたった一日で手に入ったわけですし」
「そうだな。魅力的だな」
はやっ! 手のひら返すのめちゃはやっ!
金かよ。ライザーさんよ……ちょっと引いたわ。
ネルソンもライザーの操縦方法が分かっていらっしゃるみたいだ。
コスモスはうんうんと頷いちゃってるし。ここ、ゲームの世界よ? 金じゃなくて、もっと何かあるだろうが。
「だったら、いいじゃん! グリズリーさんと一緒にやろうぜ!」
「そうだぜ、ライザーさん! 俺達で盗賊狩りまくって、ガボガボ金を稼ごうぜ!」
「何か正義の味方っぽくていいじゃん!」
ここぞとばかりにネルソンの援護射撃をするメンバー達。
そんなメンバーの姿に、ライザーは……。
「……考えておく。人に頼ろうとするのは嫌いだが、グリズリーとなら、楽しくやっていけそうだ。それに正義の味方っいうのも悪くない」
えええっ! その強面で! 正義の味方とか言っちゃうの!
人のことは言えないが、正義の味方っていうのもな……けど、みんなの言う通り、負ける気はしないんだよな~このメンバーなら。
「だってさ。レベッカどうするの?」
「どうして、そんなことを訊くの? コスモス」
コスモスはライザーを一瞥した後、肩をすくめてみせた。
「だって、不満そうな顔してるからさ。ライザーは乱暴だし、とっつきにくいところがあるし、きっと反発していると思うけど、私達がさ、愚痴くらい聞いてあげるから。仲良くいきましょうよ」
「……そうね。正義の味方っていうのなら……ここにいてもいいかもね……」
レベッカは目をつぶり、自分の手にしたジョッキを軽く揺らしてみせる。
仮面をかぶっていても、このお嬢さんの顔ってどんな顔をしているのか、なんとなく分かる気がするんだよな。ただ、単純ってだけかもしれないが、悪いやつではないことは分かる。
きっと、口元をゆるめ、まんざらでもない顔をしているのだろう。
その証拠に……。
「レベッカがデレた!」
「なっ! だ、誰がデレてるのよ! ぶった切るわよ!」
図星のようだ。それにいいツンデレだ。
コイツらとは仲良くやっていけるかもしれない。
「なあ、レベッカ。ラックとグリムはどこにいったんだ?」
「現実で用があるから先にソウルアウトしたみたいよ」
そっか……あの二人とも話してみたかったが、仲間になればその機会もあるだろう。
「よう、我らが英雄様!」
「え、英雄様?」
なんだ、いきなり?
いつの間にか、野郎どもに囲まれていた。日に焼けたガタイのいいあんちゃん達がジョッキ片手に笑いかけてきた。
「そうだ! あんた達なんだろ? 黒いカモリアをやっつけてくれたのは!」
「あ、ああぁ……」
俺は思わず頷いてしまう。
あんちゃん達は興奮しながら俺に話しかけてくる。
「やっぱり、そうだ! あんた達はクロスロードの救世主様だ! 俺達に一杯おごらせてくれ!」
「後、話を聞かせてくれよ! 俺達マルダーク人はなによりも戦いを好むんだ。特に死闘の話は三度の飯よりも好物だ」
……あ、ありえねえ……。
コイツら、本当にNPCか? 感情豊かすぎるだろ?
「よし、私が話してやろう! 黒いカモリアとその頭、グリフをどうやって葬ってやったのかを! 私達は奮起した! 黒いカモリアの悪逆非道な行為に! 勇気と義憤を胸に、私達は黒いカモリアの拠点に殴り込んだ! 敵の拠点の入り口で堂々と怒鳴ってやったぞ! 貴様らに生きる価値はない! 今すぐ首を差し出せとな!」
「お、おい、グリズリー!」
グリズリーはジョッキを片手に、酒場にいるみんなに黒いカモリアとの戦いの顛末を大げさに、笑いをとりながら、盛大に語る。
グリズリーの英雄譚は酒場にいる全員が耳を傾け、聞き入っている。
グリズリーよ……恥ずかしくないか? 俺達は正義の味方じゃないんだぜ?
それと、ちぎっては投げ~ちぎっては投げ~って言葉、どこぞやのお嬢様か。
グリズリーの話に感動したのか、酒場にいた吟遊詩人がリュートを手にし、即興で音楽を奏でる。
ははっ……ここゲームの世界なの? 違うだろ、絶対。
「なに~? 私の歌が聴きたいわけ~」
な、なんだ?
いきなり、コスモスが立ち上がりやがった。
「お、おい、コスモス! 酔っ払っているのか?」
酒くさ! 大丈夫かよ、アイドルが人前で酔っ払うなんて……。
「ご、ごめんなさい! 彼女、この人たちにエールを勧められて、飲んじゃったみたいなの!」
マジか……。
レベッカは止めることができなかったことを悪いと思っているのか、俺に謝ってきた。
いや、これはコスモスの不注意だと思うから、別にレベッカが気にする必要ないぞ。
「こ~ら~、ヒトシ~。こっちを見なさいよ~」
顔を真っ赤にしたコスモスがトロンとした目で俺を見つめてくる。真正面から見つめられ、ドキッと……。
「酔っ払ってるわけないでしょ! 私は酔ってない!」
するわけもなかった。
コスモスよ、酔ってないというヤツほど、酔ってるんだぜ。
「愚民共! 私の歌を聴け~~~~~!」
コスモスは木のスプーンを片手に歌い出した。
すげぇ……。
酔っ払っていても、腐っていても歌手は歌手だな。
声もはっきりとしているし、音程もとれている。しかも、足取りもしっかりとしていて、自分を魅せる方法を熟知したダンスだ。
いきなり歌い出したコスモスに周りは戸惑っていたが、すぐに合いの手や口笛を吹いて場を盛り上げる。
吟遊詩人はノリノリで演奏している。
はははははっ……なにこれ。絶対、ゲームのイベントじゃないでしょ、これ。
ちょっとしたコスモスのミニコンサートというサプライズにライザー達も楽しんでいた。
一曲歌い終わり、コスモスは拍手喝采を受けながら、お辞儀をする。
「もう一曲頼むぜ、ねーちゃん!」
「OK! レベッカ! ネルソン! あんた達も歌いなさい~!」
「えっ?」
「な、なぜ私達まで……」
いきなり指名されたレベッカとネルソン。
二人は冗談じゃないと言いたげだったが……。
「ひゅーひゅー! いいねえ!」
「歌姫様達のお通りだ! 道を空けろ!」
「期待してるぜ、ねえちゃんたち!」
外堀が埋められ、レベッカ達は歌わざるを得ない状況に追い込まれていく。
「私も聞きたいな~レベッカとネルソンの美声を~」
「そうだ~歌え~歌え~」
「ら、ラック、グリムもいつの間に……アナタ達まで酔っているのですか?」
「別に~。でも、私達、無償でレベッカを守ってあげてるんだし、そろそろ報酬をいただかないとね~」
「くっ!」
ネルソンはラックをにらみつけているが、諦めたようにため息をつき、コスモスの元へ歩いて行く。レベッカも慌ててネルソンを追いかける。
「来たわね~ネルソン、レベッカ。歌うわよ~」
「何を歌わせるつもりですか?」
「ブルーコスモス~」
「ぶ、ブルーコスモス? なんですか、その不吉な曲名は!」
「私のデビュー曲~」
「知らないわよ、そんな歌!」
三人はぎゃーぎゃ騒ぎだし、結局、マイナーなアイドルの曲を歌い出した。
俺達の世界でミリオンセラーとなった曲だ。それ故、三人は歌詞を知っているので即興でトリオで歌えたわけだ。
このアレンバシルでは珍しいのか、男どもは美少女達の歌に興奮し、大騒ぎだ。
コスモスなんてテンションが上がっているのか、ウインクまでしてるし。
俺は呆れながらも、この雰囲気に酔いしれていた。
ここはゲームの世界であって、現実ではない。
でも、だからなんだというのか? 楽しけりゃそれでいいよな? ゲームなんて遊びだし。
それに正義の味方っていうのもガラじゃないが、みんなが喜んでくれるのならいいのかもな。
何か胸がくすぐったくてこそばゆいが、悪い気はしなかった。
ここにいるみんなが笑い合い、仲間と一緒に困難を乗り越える。
まるで、アニメやゲームの胸熱な展開だ。テンションがあがる。
こんな世界がいつまでも続けばいいのに……。
グリズリーがいて、コスモスがいる。おまけに俺がいて、楽しく旅を続ける。気苦労が多そうだが、楽しめそうだ。
ずっと続けばいいのにな……。
けど、俺達は知らなかった。
これから起こる出来事が、俺達の未来を大きく変わることを……。
そして、俺達は正義ではなく、真逆の悪党に染まっていくことを。
その歯車はもうまわっていて、取り返しの付かないところまできていたことを、全く気づけずにいた。
そのときは前触れもなくいきなり訪れた。そう、この後に訪れる招かざる客が……俺の因縁の相手が不幸をもたらしたのだ。
-To be continued-
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
「クリサンとグリズリーの冒険 後編」は11月30日に投稿予定です。
メンテナンス(物語の修正)を行いますので、しばらくお待ちください。
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「「「乾杯!」」」
その日の夜、俺とグリズリー、コスモス、ライザー達は酒場で打ち上げをしていた。ようやくメシにありつけるわけだ。
クロスロードに到着する頃には皆に笑顔が戻っていた。
なんたって百万シルバーだからな。笑顔を取り戻す言い訳がつくわけだ。
勿論、俺は空気が読めるから何も言わない。いや、最初から言うなよってツッコミは勘弁な。
グルフの首を突き出したときのバッツの顔、見物だったな。ただ、殺人の自首だと勘違いされて、またもや捕まり、ケツ穴の貞操の危機を感じたわけだが。
「おい、クリサン。がっつきすぎだろ?」
「う、うるふぁい!」
片っ端から魚料理と野菜を腹に詰め込む。ミードで一息ついた後、更にメシを腹に詰め込んだ。昨日の夜から満足にご飯を食ってないからな。
うまい! 美味すぎる!
空腹は最高のスパイスだ! 美味すぎる!
「おい、聞いたか? あの傭兵団、スヒナスが解雇されたってよ」
「本当か! けど、黒いカモリアはどうなるんだ?」
「それがよ、壊滅したって話しだぜ! なんか、熊の化物が皆殺しにしたらしいぞ。頭領の首が屯所に届いたって聞いたぜ!」
おいおい、化物が屯所に首なんて持ってくるわけないだろ? 金欲しがる化物って斬新すぎて笑うわ!
心の中で客にツッコミを入れ、料理に手をつけようとしたとき、ウェイターが俺達一人一人にカップを置いた。
カップの中は薄赤い液体が揺れていた。
「これ、なに? 頼んでないけど?」
「これは街を救ってくれた英雄へのお礼よ。ありがとう。これは紅茶っていう飲み物で、東の大陸から仕入れたの。口当たりがよくて美味しいわよ」
へえ……紅茶なんてこの世界にあるんだ……どれどれ……。
「うっ……」
く、口当たりいいか? これ?
変に甘い……香もキツい……あとに残る……。
「驚いた……本当に紅茶だわ」
「そうですね。でも、何てお茶?」
「……中国紅茶だと思う」
女性陣が紅茶の評論をしているが、この紅茶が何の種類であったとしても、あまり好きになれないな。個人的にはミルクティーの方が好きだ。
こんなことをいえば、お子様だとか言われそうだから、黙っていよう。
とりあえず、目をギュッとつぶり、一気に紅茶を飲み干した。この紅茶はウェイターの心遣いだ。残すなんてありえないだろ?
それになんでかな、背中がかゆい。人のために頑張るのも悪くないって思えたわ。
全然らしくないんだけどな~。
「ヒトシ、やめておきなさい。アンタのようなサイコに正義の味方なんて似合わないわよ」
「ぶふっ!」
「きゃあああああああ! 汚い!」
俺は口の中に入れていた食いもんをコスモス目掛けて思いっきりぶちかました。
ふん! 天罰だ。
「正義の味方か……悪くないな」
「五十万シルバー入ったからでしょ?」
ネルソンに突っこまれて、ライザーはご機嫌のまま、グリズリーとエールを飲み交わしている。
いつも不機嫌そうなライザーが笑っているんだ。そりゃ、不気味だよな。
けど、金抜きでも、黒いカモリアを退治できてよかったと思っている。
バッツ達衛兵にはものすごく感謝されたし、自分の武が人の役に立てるなんて今までになかったからな。
世間では大抵、暴力を振るう危ない子供扱いだし。
それに……。
「ガァハハハハハハハハ! クリサン、コスモス、みてくれた? わいの勇士を!」
「ハハハッ……ウゼぇ……」
一番活躍したのは間違いなくグリズリーだろう。
会心の進撃だもんな。やはり、元世界チャンピオンは伊達じゃない。こうでなきゃな。
「クリサン、コスモス」
グリズリーがいきなり真顔で俺達を呼んだ。
「……んだよ」
「はいはい」
「見ちょってくれん。おいはもう、ファンの期待を裏切らんで。最高んパフォーマンスをだいよりも近うで見せっでな!」
グリズリー……もしかして、昨日の夜のこと、気にしてたのかよ。バカじゃないの?
くそっ! ガキかよ、俺は。グリズリーが自分の思い描いた英雄像でなかったからって、拗ねて、八つ当たりしていたなんて……。
「期待してるわよ、グリズリー。アナタが活躍してくれたら、私の知名度もアップするしね」
「おい、スイーツ。寄生虫か、己は」
自分の力でなんとかしろよ。ったく、俺の感動が半減したわ。
「共存関係と言ってほしいわね。でも、このソウル杯っていうのも面倒よね。勝者は一人なのに、共闘しないとNPCにさえ、殺されるかもしれないんだし」
確かにそうだ。性格悪いよな、この大会。
フツウにオンラインゲームとして販売した方がみんなが楽しめるんじゃないか?
まあ、ソウルインするのにあんな馬鹿でかい椅子を使わないといけないのはアレだけどな。
「ヒトシもちゃんと感謝の言葉を口にしなさいよ」
「ヤダよ、テレくさい」
「どこのどなたのせいで黒いカモリアと戦う羽目になったのか、忘れたの? 賞金のことがあったとはいえ、私達はアンタの不始末をしたのよ。お礼を言ってもバチは当たらないと思うけど?」
ぐおっ! とんでもないカウンターを打ってきた……。
そうだよな……俺のせいだよな、今回の無茶ぶりな件は……。
俺がもめ事を起こさなければ、グリズリーとコスモスを危険な目に遭わせることもなかったのに……。
「気にせんでくれ、クリサン。おいは二人に感謝しちょっど」
「感謝?」
「そうじゃ。おかげで目が覚めた。自分がだいなんかを思いださせてくれた。誇りを取り戻せた。二人んおかげじゃ」
ううっ、おっさん……いい人だ。とても、いい人だ……。
俺も大人になれたら、誰かの期待を背負って、それに応えられる人になれるのか?
そのまえに、やっぱ、コスモスのアドバイスどおりに謝罪するべきだよな。
よし、やるぞ!
「ライザーさん、そろそろ……」
「分かってるよ! ちっ、面倒くせえな」
なんだ? いつの間にか、ライザーのチームのメンバーがじっとライザーを見つめている。
ライザーはその視線が疎ましくて、ぶっきらぼうに言葉を吐き出す。
「みんなも顔くらいは知っているよな? コイツはグリズリー=ベア。総合格闘技UFCの元ヘビー級チャンピオンだ。グリズリー、ここにいるのが俺が作り上げたチームの面子だ。紹介が遅くなったが、よろしくしてやってくれ」
「紹介にあずかったグリズリー=ベアじゃ。実力は錆びちちょっが、いっき現役ん強さをキミ達やこん世界におっプレイヤーに見せつけっことになっじゃろう。そんときは、正々堂々とファイトしよごたっもとじゃ!」
あれ? みんな、黙り込んでる……。さては信じてないな。
まあ、当然か。あの有名人がこんなゲーム大会に参加しているってフツウは思わない……。
「「「マジであのグリズリーか!」」」
おおっう!
ライザーの仲間は全員が椅子を蹴飛ばすように総立ちになり、グリズリーを見つめている。
あれ? 信じちゃうの? 嘘でしょ?
グリズリーはライザーのメンバーに囲まれ、質問攻めにあっている。
「あ、あの……握手してもらっていいですか?」
あの冷静なネルソンでさえ、低姿勢で握手を求めてる。はぁ……すげえな、グリズリー。
どうでもいいんだけど、俺の謝罪タイムはどこにいったのやら……。
「ね、ねえ、コスモスさん。グリズリー=ベアって有名なの?」
「お前はそれでも日本人かっ!」
俺はレベッカにビシッと指さす。
えっ、嘘でしょ? モグリなの? 信じられないんですけど!
俺がゴミを見るような目で睨んでいると、レベッカは慌てて弁解してきた。
「し、仕方ないでしょ! 知らないものは知らないんだし。誰も教えてくれなかったし……」
指をちょんちょんとあわせる仮面のツインテールはちょっと可愛いと思いました。
けどな、テレビとか見ないのか? このお嬢さんは。
CMとか雑誌、新聞にだって載ったことがあるんだぞ? 後、電車や街のポスターにだって載ってたでしょ?
それにあの事故はどのテレビ局も取り上げていた。もしかして、箱入り娘なのか?
それとも、理由があって隔離されていた場所にいたとか。
例えば……。
「気にしないで、レベッカさん。コイツ、ちょっと頭がおかしいから」
「おかしい言うな。二人とも、自己紹介済んでたんだな」
レベッカか……。
どっかのバンドがそんな名前だったよな? 偶然か?
俺は肩をすくめ、食事を再開する。
ライザーの一言で、打ち上げはグリズリーの食事会みたいな雰囲気になっている。
グリズリーはネルソンやコリーといったプレイヤーの質問や言葉に親切丁寧に応えている。
あれも、スターの仕事ってわけか? 少しつまらん。
「なあなあ、ライザー。グリズリー達と一緒に組まねえ? ここにいるみんながいれば、絶対にクリアできないクエストなんてないって! それに予選突破も夢でなくなるぜ!」
おおっ、いいことを言いますな、ムートさん!
グリズリーは最良物件だぜ。コスモスおしだしな!
ライザーはムートの胸ぐらを乱暴に掴んだ。
「おい……ふざけたこと、ぬかしているんじゃねえよ。俺達はライバルなんだぞ? グリズリーは仲間じゃなくて倒すべき敵だろうが!」
お、重い……。
先ほどの楽しい雰囲気は散開し、ギスギスした空気が流れる。ムート達は冷や水を浴びた思いだろう。
「……私はムートさんの意見に賛成です。彼の近くなら戦闘に事欠きませんし、何より、五十万シルバー、拠点、その他諸々ががたった一日で手に入ったわけですし」
「そうだな。魅力的だな」
はやっ! 手のひら返すのめちゃはやっ!
金かよ。ライザーさんよ……ちょっと引いたわ。
ネルソンもライザーの操縦方法が分かっていらっしゃるみたいだ。
コスモスはうんうんと頷いちゃってるし。ここ、ゲームの世界よ? 金じゃなくて、もっと何かあるだろうが。
「だったら、いいじゃん! グリズリーさんと一緒にやろうぜ!」
「そうだぜ、ライザーさん! 俺達で盗賊狩りまくって、ガボガボ金を稼ごうぜ!」
「何か正義の味方っぽくていいじゃん!」
ここぞとばかりにネルソンの援護射撃をするメンバー達。
そんなメンバーの姿に、ライザーは……。
「……考えておく。人に頼ろうとするのは嫌いだが、グリズリーとなら、楽しくやっていけそうだ。それに正義の味方っいうのも悪くない」
えええっ! その強面で! 正義の味方とか言っちゃうの!
人のことは言えないが、正義の味方っていうのもな……けど、みんなの言う通り、負ける気はしないんだよな~このメンバーなら。
「だってさ。レベッカどうするの?」
「どうして、そんなことを訊くの? コスモス」
コスモスはライザーを一瞥した後、肩をすくめてみせた。
「だって、不満そうな顔してるからさ。ライザーは乱暴だし、とっつきにくいところがあるし、きっと反発していると思うけど、私達がさ、愚痴くらい聞いてあげるから。仲良くいきましょうよ」
「……そうね。正義の味方っていうのなら……ここにいてもいいかもね……」
レベッカは目をつぶり、自分の手にしたジョッキを軽く揺らしてみせる。
仮面をかぶっていても、このお嬢さんの顔ってどんな顔をしているのか、なんとなく分かる気がするんだよな。ただ、単純ってだけかもしれないが、悪いやつではないことは分かる。
きっと、口元をゆるめ、まんざらでもない顔をしているのだろう。
その証拠に……。
「レベッカがデレた!」
「なっ! だ、誰がデレてるのよ! ぶった切るわよ!」
図星のようだ。それにいいツンデレだ。
コイツらとは仲良くやっていけるかもしれない。
「なあ、レベッカ。ラックとグリムはどこにいったんだ?」
「現実で用があるから先にソウルアウトしたみたいよ」
そっか……あの二人とも話してみたかったが、仲間になればその機会もあるだろう。
「よう、我らが英雄様!」
「え、英雄様?」
なんだ、いきなり?
いつの間にか、野郎どもに囲まれていた。日に焼けたガタイのいいあんちゃん達がジョッキ片手に笑いかけてきた。
「そうだ! あんた達なんだろ? 黒いカモリアをやっつけてくれたのは!」
「あ、ああぁ……」
俺は思わず頷いてしまう。
あんちゃん達は興奮しながら俺に話しかけてくる。
「やっぱり、そうだ! あんた達はクロスロードの救世主様だ! 俺達に一杯おごらせてくれ!」
「後、話を聞かせてくれよ! 俺達マルダーク人はなによりも戦いを好むんだ。特に死闘の話は三度の飯よりも好物だ」
……あ、ありえねえ……。
コイツら、本当にNPCか? 感情豊かすぎるだろ?
「よし、私が話してやろう! 黒いカモリアとその頭、グリフをどうやって葬ってやったのかを! 私達は奮起した! 黒いカモリアの悪逆非道な行為に! 勇気と義憤を胸に、私達は黒いカモリアの拠点に殴り込んだ! 敵の拠点の入り口で堂々と怒鳴ってやったぞ! 貴様らに生きる価値はない! 今すぐ首を差し出せとな!」
「お、おい、グリズリー!」
グリズリーはジョッキを片手に、酒場にいるみんなに黒いカモリアとの戦いの顛末を大げさに、笑いをとりながら、盛大に語る。
グリズリーの英雄譚は酒場にいる全員が耳を傾け、聞き入っている。
グリズリーよ……恥ずかしくないか? 俺達は正義の味方じゃないんだぜ?
それと、ちぎっては投げ~ちぎっては投げ~って言葉、どこぞやのお嬢様か。
グリズリーの話に感動したのか、酒場にいた吟遊詩人がリュートを手にし、即興で音楽を奏でる。
ははっ……ここゲームの世界なの? 違うだろ、絶対。
「なに~? 私の歌が聴きたいわけ~」
な、なんだ?
いきなり、コスモスが立ち上がりやがった。
「お、おい、コスモス! 酔っ払っているのか?」
酒くさ! 大丈夫かよ、アイドルが人前で酔っ払うなんて……。
「ご、ごめんなさい! 彼女、この人たちにエールを勧められて、飲んじゃったみたいなの!」
マジか……。
レベッカは止めることができなかったことを悪いと思っているのか、俺に謝ってきた。
いや、これはコスモスの不注意だと思うから、別にレベッカが気にする必要ないぞ。
「こ~ら~、ヒトシ~。こっちを見なさいよ~」
顔を真っ赤にしたコスモスがトロンとした目で俺を見つめてくる。真正面から見つめられ、ドキッと……。
「酔っ払ってるわけないでしょ! 私は酔ってない!」
するわけもなかった。
コスモスよ、酔ってないというヤツほど、酔ってるんだぜ。
「愚民共! 私の歌を聴け~~~~~!」
コスモスは木のスプーンを片手に歌い出した。
すげぇ……。
酔っ払っていても、腐っていても歌手は歌手だな。
声もはっきりとしているし、音程もとれている。しかも、足取りもしっかりとしていて、自分を魅せる方法を熟知したダンスだ。
いきなり歌い出したコスモスに周りは戸惑っていたが、すぐに合いの手や口笛を吹いて場を盛り上げる。
吟遊詩人はノリノリで演奏している。
はははははっ……なにこれ。絶対、ゲームのイベントじゃないでしょ、これ。
ちょっとしたコスモスのミニコンサートというサプライズにライザー達も楽しんでいた。
一曲歌い終わり、コスモスは拍手喝采を受けながら、お辞儀をする。
「もう一曲頼むぜ、ねーちゃん!」
「OK! レベッカ! ネルソン! あんた達も歌いなさい~!」
「えっ?」
「な、なぜ私達まで……」
いきなり指名されたレベッカとネルソン。
二人は冗談じゃないと言いたげだったが……。
「ひゅーひゅー! いいねえ!」
「歌姫様達のお通りだ! 道を空けろ!」
「期待してるぜ、ねえちゃんたち!」
外堀が埋められ、レベッカ達は歌わざるを得ない状況に追い込まれていく。
「私も聞きたいな~レベッカとネルソンの美声を~」
「そうだ~歌え~歌え~」
「ら、ラック、グリムもいつの間に……アナタ達まで酔っているのですか?」
「別に~。でも、私達、無償でレベッカを守ってあげてるんだし、そろそろ報酬をいただかないとね~」
「くっ!」
ネルソンはラックをにらみつけているが、諦めたようにため息をつき、コスモスの元へ歩いて行く。レベッカも慌ててネルソンを追いかける。
「来たわね~ネルソン、レベッカ。歌うわよ~」
「何を歌わせるつもりですか?」
「ブルーコスモス~」
「ぶ、ブルーコスモス? なんですか、その不吉な曲名は!」
「私のデビュー曲~」
「知らないわよ、そんな歌!」
三人はぎゃーぎゃ騒ぎだし、結局、マイナーなアイドルの曲を歌い出した。
俺達の世界でミリオンセラーとなった曲だ。それ故、三人は歌詞を知っているので即興でトリオで歌えたわけだ。
このアレンバシルでは珍しいのか、男どもは美少女達の歌に興奮し、大騒ぎだ。
コスモスなんてテンションが上がっているのか、ウインクまでしてるし。
俺は呆れながらも、この雰囲気に酔いしれていた。
ここはゲームの世界であって、現実ではない。
でも、だからなんだというのか? 楽しけりゃそれでいいよな? ゲームなんて遊びだし。
それに正義の味方っていうのもガラじゃないが、みんなが喜んでくれるのならいいのかもな。
何か胸がくすぐったくてこそばゆいが、悪い気はしなかった。
ここにいるみんなが笑い合い、仲間と一緒に困難を乗り越える。
まるで、アニメやゲームの胸熱な展開だ。テンションがあがる。
こんな世界がいつまでも続けばいいのに……。
グリズリーがいて、コスモスがいる。おまけに俺がいて、楽しく旅を続ける。気苦労が多そうだが、楽しめそうだ。
ずっと続けばいいのにな……。
けど、俺達は知らなかった。
これから起こる出来事が、俺達の未来を大きく変わることを……。
そして、俺達は正義ではなく、真逆の悪党に染まっていくことを。
その歯車はもうまわっていて、取り返しの付かないところまできていたことを、全く気づけずにいた。
そのときは前触れもなくいきなり訪れた。そう、この後に訪れる招かざる客が……俺の因縁の相手が不幸をもたらしたのだ。
-To be continued-
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ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
「クリサンとグリズリーの冒険 後編」は11月30日に投稿予定です。
メンテナンス(物語の修正)を行いますので、しばらくお待ちください。
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