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第四章 運命の導き手
四話 運命の導き手 その七
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その後も何度か敵の襲来はあったが、ジャックとエリンの索敵スキルで奇襲は免れ、コンビネーションでモンスターを撃破していく。
最初はピクニック気分だったジャックも、いつどこから襲ってくるか分からない敵と視界の悪さから、別の意味でドキドキしていた。
先程までは葉の擦れた音や見渡す限りの木々、目に優しい光景に、マイナスイオン的な癒しの効果があったが、今では警戒の対象となってしまっている。
どこかに獣がひそんでいて、こっちに近づいているから葉の擦れた音がする、木々が邪魔でモンスターの出所が分かりにくいといった感じだ。
探索スキルも万能ではない。もしかすると、敵の中に隠密系に長けた敵もいて、察知できない可能性だってある。
森の生き物が人を襲う。
日本でも、熊や蜂、蛇等、存在し、襲ってくることもあるが、大抵は整備されて、危険な生き物はあまりいない。
森の中でも道が作られている場所もある。つくづく、日本って人にやさしい環境になっているとジャックは思い知らされた。
慎重に進んでいく中、途中でいくつかの分かれ道が存在した。道は人が通った時に草が踏みつぶされ、土が露出したような作りだ。何人もの人がここを通ったという証拠になる。
それは正しい道を歩いていると思われるが、楽観はできない。
ロビーのガイドで、ジャックは道に迷うことはなかったが、いくつか、寄り道をした。ロビーが案内した道と違うコースをあえて進んだ。
寄り道については、ジャックが事前に全員に訳を話し、了承を得ている。
この寄り道は万が一を想定した保険であった。
森に入って一時間がたとうとしていた。
「ねえ、みんな。そろそろ休憩にしない?」
「そうね……と言いたいのだけど、ここは急ぐべきでは? 保険をかけたことで思ったより、距離を進めていないわ」
時間がたつにつれて、夜が近づいてくる。この森の獣は夜行性が多い為、ソレイユはそのことを危惧しているのだろう。
ジャックはロビーに問いかける。
「ねえ、目的の場所はまだ遠いの?」
「ううん。もうそこだよ」
ロビーは森の奥を指さすが、後どれくらいなのか見当がつかない。慣れない道を歩くと、近い距離でも遠くに感じてしまう。
ジャックはどうするべきか、考えていた。
なるべくなら体を休めて、いつでもベストな状態で獣を迎え撃ちたいと考えている。勝てそうにない敵が現れたとき、すぐさま全力でなるべく遠くに逃げる為にも体力は温存しておきたい。
だが、ソレイユの言うことも一理ある。獣に足止めされて、森を出るのが遅くなったら、危険が大きくなる。
ここはロビーの言うことを信じて、ルイビスの花の採取場所まで頑張るか、少しだけでも休憩を取るべきか。
「ねえ、ジャック。俺もソレイユの意見に賛成。ムサシやテツは先に進んでいるし、時間をかけると、合流するのが遅くなるから」
ロイドの意見は賛成。残りは……。
「エリンはどう?」
「ううん~。少し疲れたかもー。水分補給だけでもしておくべきかと」
「そうだね。それくらいなら、いいよね?」
ソレイユもロイドも反対はせず、少しだけの休憩が決定した。
ジャック達は敵がいないことを確認した後、水筒の水を飲む。
渇いた喉に流し込む水は、戦闘で疲れた疲労を回復させ、一息つくことが出来た。
ジャックは自分が思っていたよりも疲れていたことに気づかされる。
エリンの提案を聞いていてよかったと思ったのは、ジャックだけではないだろう。
みんなが一息つくなか、エリンだけは水を一口飲んだ後、すぐに警戒を強めていた。休憩時に奇襲に遭わないよう見張るために。
ジャックはふと、エリンの先ほどの発言はみんなを休める為にわざと言ってくれたのではないかと思った。
ジャック達は再度、森の奥へと進む。
少し進むと、前方にある茂みからかさかさかさっと動きがあった。索敵スキルに何も引っかからない。敵ではないはずだが……。
ジャックはすぐさま構え、迎え撃つ体制をとる。茂みから出てきたのは……ウサギの親子だ。
ジャックは構えを解かず、このままウサギの親子を攻撃して、まだ見ぬ素材をゲットといきたかったが……。
「あっ! ウサギの親子だ~」
「そうだね、ロビー。可愛いよね」
無邪気に喜ぶロビーと、同意するロイドを見て、ジャックは攻撃する機会を失う。そんなジャックにエリンはとびっきりの笑顔で話しかける。
「ジャックさん、あれですよ、あれ。イケメン度、でちゃいますよね~。ちなみに~ジャックさんは退治しようと考えませんでした?」
「……文化の違いだよ」
エリンの抜き打ちイケメン判定試験にジャックは負け惜しみを言いつつ、更に奥へと向かう。すると、開けた場所に出た。
「おおおっ……」
ジャックは感嘆の声を上げる。そこはちょっとした絶景があった。
中央にはどっしりとした、樹齢何百年になるか分からない大きな樫の木がそびえ立っている。
その周りを囲むように色とりどりの花が咲き乱れていて、樫の木の隙間から、おぼろげな光がゆらゆらとゆれていた。
ここは、まるで聖域のように思えた。人が入ってはならない、そんな神聖な雰囲気を感じさせられる。
今にもリリアンのような妖精が飛び交ってもおかしくない、そんな幻想的な光景が目の前に広がっていた。この光景を見れただけでも、ここまで来た甲斐はあっただろう。
しばらくは誰も声が出せなかった。この沈黙を破ったのはロビーだった。
「ここにルイビスの花がある」
「……そっか。それなら手分けして探そうか」
ロビーの声に我に返ったジャック達は早速、目的の花を捜そうとした。
「ねえ、ロビー。ルイビスの花ってどんな花? いくつ持って帰ればいいの?」
「これだよ。この花を十本ほしいの」
ロビーはとぽとぽと歩いてジャックに近づき、一輪の花を差し出す。鮮やかな青い花で手のひらサイズの大きさである。
「ブルーポピーに似ているわね」
ソレイユはそう表現したが、花に疎いジャックはぴんとこなかった。
「ママの部屋にあったのを持ってきたの。お医者様がこの花が必要だって言ってた。そしたら、お薬が作れるんだって」
「なるほど。ロビー、今、何本その花を持っているの?」
「一輪だけ」
「そっか。十本必要なんだね?」
「うん」
ということは、残り九本の採取が必要となる。
ジャックはすぐさま、採取に取り掛かるべきだと思った。夕暮れまで時間はあるはずだが、長居は無用だ。
この景色に後ろ髪惹かれる思いはあるが、獣に襲われる危険がある為、仕方ない。
ジャックは心のどこかでは森の主を一目見たかった思いはあるが、チームの安全が最優先だ。自分一人の我儘は許されない。
「よし! さっさとルイビスの花を九本採取して、クロスロードに戻ろう。みんな! この辺りを……」
「はいはいは~い! ここは分担作業でやるべきだと思いま~す! ジャックさんと私はあっち。ソレイユとロイドさんとロビーは樫の木の下あたりをお願いできますか~? ではでは~」
「ちょ、ちょっと!」
エリンはジャックの腕に抱きつき、その場を離れようとする。ジャックは腕に当たる柔らかい感触に気が散って、なすがままにエリンについていく。
ソレイユ達はあっけにとられながらも、エリンの指示通り、樫の木の下でルイビスの花の採取に取り掛かった。
エリンはソレイユ達から少し離れた場所に移動し、ジャックから離れる。
柔らかくて甘い匂いが離れていったことに、ジャックは少し残念に思ったが、それよりも気になったことをエリンに尋ねる。
「ねえ、どうして僕達だけ三人から離れた場所で採取するの? 何かソレイユ達に言えない話があるとか?」
「察しがいいですね、ジャックさんは。ほら、あっちを見てください」
エリンは指さした方向には、ソレイユ、ロイド、ロビーがいた。
ソレイユとロイドはロビーに導かれて、採取作業に入っている。ロビーを挟み、ロイドとソレイユは採取作業に取りかかった。
こうしてみると、仲のいい若夫婦のように見える。
あの三人に何があるのか?
ジャックにはさっぱり分からなかった。首をかしげていると、エリンがニコニコと説明してきた。
「分かりませんか?」
「……実はソレイユは男だったとか?」
ジャックは大真面目に答えた。
「うわ~斬新ー。本人に確認しておきますね」
「ごめんごめん! うそだから! 降参! さっぱり分からない! 教えてください、エリンさん!」
すがって教えを乞うジャックに気をよくしたのか、エリンは得意げに答える。
「恋ですよ、恋!」
「鯉? そんなのどこにいるの? 池なんてないよ? それに食べれるの?」
「ジャックさん、それってマジボケですか? 面白くないんですけど」
エリンの白い目で睨まれ、ジャックはううっと唸った。
ジャックとしては半ば本気の発言だった。年齢イコール彼女いない歴の青年であり、格闘技に身を捧げてきたといっても過言ではないジャックが色恋沙汰にピンとこないのは仕方のないことだった。
強いて言えば、リリアンとの出会いや付き合いが恋愛に似たものかもしれないが、それだけの経験で恋愛脳になるわけでもなく、逆に筋肉脳といったほうがジャックの場合、ふさわしいのかもしれない。
ジャックは、エリンの伝えたいことを改めて考え直したが……。
「いやいや、待って! どうして、ここで恋が出てくるの? 誰と誰? まさか、ソレイユってショタ……」
「ソレイユさんとロイドさんしかないじゃないですかー!」
ジャックは顔をしかめ、二人の様子を見る。特に変わった様子はない。
ロイドは仮にもアイドルの卵。恋愛はご法度のはず。それなら、ソレイユがロイドに片思いしているのか?
ジャックは自分の考えた事を否定するように首を横に振る。
ジャックはずっとソレイユの事を見てきたが、あれが男に惚れるようなタマだろうかと疑問が湧き上がる。
失礼な考えかもしれないが、彼女は唯我独尊というか、誰にも媚びず、一人で生きていくタイプだとジャックは思っている。
結婚できなくても、何一つ愚痴を言わず、マイロードを爆走する女の子だと予測できてしまうのだ。
そうなると、エリンの勘違いだと思うが、彼女の態度からして何か根拠があり、自分の意見に自信があるようにジャックは思えた。
最初はピクニック気分だったジャックも、いつどこから襲ってくるか分からない敵と視界の悪さから、別の意味でドキドキしていた。
先程までは葉の擦れた音や見渡す限りの木々、目に優しい光景に、マイナスイオン的な癒しの効果があったが、今では警戒の対象となってしまっている。
どこかに獣がひそんでいて、こっちに近づいているから葉の擦れた音がする、木々が邪魔でモンスターの出所が分かりにくいといった感じだ。
探索スキルも万能ではない。もしかすると、敵の中に隠密系に長けた敵もいて、察知できない可能性だってある。
森の生き物が人を襲う。
日本でも、熊や蜂、蛇等、存在し、襲ってくることもあるが、大抵は整備されて、危険な生き物はあまりいない。
森の中でも道が作られている場所もある。つくづく、日本って人にやさしい環境になっているとジャックは思い知らされた。
慎重に進んでいく中、途中でいくつかの分かれ道が存在した。道は人が通った時に草が踏みつぶされ、土が露出したような作りだ。何人もの人がここを通ったという証拠になる。
それは正しい道を歩いていると思われるが、楽観はできない。
ロビーのガイドで、ジャックは道に迷うことはなかったが、いくつか、寄り道をした。ロビーが案内した道と違うコースをあえて進んだ。
寄り道については、ジャックが事前に全員に訳を話し、了承を得ている。
この寄り道は万が一を想定した保険であった。
森に入って一時間がたとうとしていた。
「ねえ、みんな。そろそろ休憩にしない?」
「そうね……と言いたいのだけど、ここは急ぐべきでは? 保険をかけたことで思ったより、距離を進めていないわ」
時間がたつにつれて、夜が近づいてくる。この森の獣は夜行性が多い為、ソレイユはそのことを危惧しているのだろう。
ジャックはロビーに問いかける。
「ねえ、目的の場所はまだ遠いの?」
「ううん。もうそこだよ」
ロビーは森の奥を指さすが、後どれくらいなのか見当がつかない。慣れない道を歩くと、近い距離でも遠くに感じてしまう。
ジャックはどうするべきか、考えていた。
なるべくなら体を休めて、いつでもベストな状態で獣を迎え撃ちたいと考えている。勝てそうにない敵が現れたとき、すぐさま全力でなるべく遠くに逃げる為にも体力は温存しておきたい。
だが、ソレイユの言うことも一理ある。獣に足止めされて、森を出るのが遅くなったら、危険が大きくなる。
ここはロビーの言うことを信じて、ルイビスの花の採取場所まで頑張るか、少しだけでも休憩を取るべきか。
「ねえ、ジャック。俺もソレイユの意見に賛成。ムサシやテツは先に進んでいるし、時間をかけると、合流するのが遅くなるから」
ロイドの意見は賛成。残りは……。
「エリンはどう?」
「ううん~。少し疲れたかもー。水分補給だけでもしておくべきかと」
「そうだね。それくらいなら、いいよね?」
ソレイユもロイドも反対はせず、少しだけの休憩が決定した。
ジャック達は敵がいないことを確認した後、水筒の水を飲む。
渇いた喉に流し込む水は、戦闘で疲れた疲労を回復させ、一息つくことが出来た。
ジャックは自分が思っていたよりも疲れていたことに気づかされる。
エリンの提案を聞いていてよかったと思ったのは、ジャックだけではないだろう。
みんなが一息つくなか、エリンだけは水を一口飲んだ後、すぐに警戒を強めていた。休憩時に奇襲に遭わないよう見張るために。
ジャックはふと、エリンの先ほどの発言はみんなを休める為にわざと言ってくれたのではないかと思った。
ジャック達は再度、森の奥へと進む。
少し進むと、前方にある茂みからかさかさかさっと動きがあった。索敵スキルに何も引っかからない。敵ではないはずだが……。
ジャックはすぐさま構え、迎え撃つ体制をとる。茂みから出てきたのは……ウサギの親子だ。
ジャックは構えを解かず、このままウサギの親子を攻撃して、まだ見ぬ素材をゲットといきたかったが……。
「あっ! ウサギの親子だ~」
「そうだね、ロビー。可愛いよね」
無邪気に喜ぶロビーと、同意するロイドを見て、ジャックは攻撃する機会を失う。そんなジャックにエリンはとびっきりの笑顔で話しかける。
「ジャックさん、あれですよ、あれ。イケメン度、でちゃいますよね~。ちなみに~ジャックさんは退治しようと考えませんでした?」
「……文化の違いだよ」
エリンの抜き打ちイケメン判定試験にジャックは負け惜しみを言いつつ、更に奥へと向かう。すると、開けた場所に出た。
「おおおっ……」
ジャックは感嘆の声を上げる。そこはちょっとした絶景があった。
中央にはどっしりとした、樹齢何百年になるか分からない大きな樫の木がそびえ立っている。
その周りを囲むように色とりどりの花が咲き乱れていて、樫の木の隙間から、おぼろげな光がゆらゆらとゆれていた。
ここは、まるで聖域のように思えた。人が入ってはならない、そんな神聖な雰囲気を感じさせられる。
今にもリリアンのような妖精が飛び交ってもおかしくない、そんな幻想的な光景が目の前に広がっていた。この光景を見れただけでも、ここまで来た甲斐はあっただろう。
しばらくは誰も声が出せなかった。この沈黙を破ったのはロビーだった。
「ここにルイビスの花がある」
「……そっか。それなら手分けして探そうか」
ロビーの声に我に返ったジャック達は早速、目的の花を捜そうとした。
「ねえ、ロビー。ルイビスの花ってどんな花? いくつ持って帰ればいいの?」
「これだよ。この花を十本ほしいの」
ロビーはとぽとぽと歩いてジャックに近づき、一輪の花を差し出す。鮮やかな青い花で手のひらサイズの大きさである。
「ブルーポピーに似ているわね」
ソレイユはそう表現したが、花に疎いジャックはぴんとこなかった。
「ママの部屋にあったのを持ってきたの。お医者様がこの花が必要だって言ってた。そしたら、お薬が作れるんだって」
「なるほど。ロビー、今、何本その花を持っているの?」
「一輪だけ」
「そっか。十本必要なんだね?」
「うん」
ということは、残り九本の採取が必要となる。
ジャックはすぐさま、採取に取り掛かるべきだと思った。夕暮れまで時間はあるはずだが、長居は無用だ。
この景色に後ろ髪惹かれる思いはあるが、獣に襲われる危険がある為、仕方ない。
ジャックは心のどこかでは森の主を一目見たかった思いはあるが、チームの安全が最優先だ。自分一人の我儘は許されない。
「よし! さっさとルイビスの花を九本採取して、クロスロードに戻ろう。みんな! この辺りを……」
「はいはいは~い! ここは分担作業でやるべきだと思いま~す! ジャックさんと私はあっち。ソレイユとロイドさんとロビーは樫の木の下あたりをお願いできますか~? ではでは~」
「ちょ、ちょっと!」
エリンはジャックの腕に抱きつき、その場を離れようとする。ジャックは腕に当たる柔らかい感触に気が散って、なすがままにエリンについていく。
ソレイユ達はあっけにとられながらも、エリンの指示通り、樫の木の下でルイビスの花の採取に取り掛かった。
エリンはソレイユ達から少し離れた場所に移動し、ジャックから離れる。
柔らかくて甘い匂いが離れていったことに、ジャックは少し残念に思ったが、それよりも気になったことをエリンに尋ねる。
「ねえ、どうして僕達だけ三人から離れた場所で採取するの? 何かソレイユ達に言えない話があるとか?」
「察しがいいですね、ジャックさんは。ほら、あっちを見てください」
エリンは指さした方向には、ソレイユ、ロイド、ロビーがいた。
ソレイユとロイドはロビーに導かれて、採取作業に入っている。ロビーを挟み、ロイドとソレイユは採取作業に取りかかった。
こうしてみると、仲のいい若夫婦のように見える。
あの三人に何があるのか?
ジャックにはさっぱり分からなかった。首をかしげていると、エリンがニコニコと説明してきた。
「分かりませんか?」
「……実はソレイユは男だったとか?」
ジャックは大真面目に答えた。
「うわ~斬新ー。本人に確認しておきますね」
「ごめんごめん! うそだから! 降参! さっぱり分からない! 教えてください、エリンさん!」
すがって教えを乞うジャックに気をよくしたのか、エリンは得意げに答える。
「恋ですよ、恋!」
「鯉? そんなのどこにいるの? 池なんてないよ? それに食べれるの?」
「ジャックさん、それってマジボケですか? 面白くないんですけど」
エリンの白い目で睨まれ、ジャックはううっと唸った。
ジャックとしては半ば本気の発言だった。年齢イコール彼女いない歴の青年であり、格闘技に身を捧げてきたといっても過言ではないジャックが色恋沙汰にピンとこないのは仕方のないことだった。
強いて言えば、リリアンとの出会いや付き合いが恋愛に似たものかもしれないが、それだけの経験で恋愛脳になるわけでもなく、逆に筋肉脳といったほうがジャックの場合、ふさわしいのかもしれない。
ジャックは、エリンの伝えたいことを改めて考え直したが……。
「いやいや、待って! どうして、ここで恋が出てくるの? 誰と誰? まさか、ソレイユってショタ……」
「ソレイユさんとロイドさんしかないじゃないですかー!」
ジャックは顔をしかめ、二人の様子を見る。特に変わった様子はない。
ロイドは仮にもアイドルの卵。恋愛はご法度のはず。それなら、ソレイユがロイドに片思いしているのか?
ジャックは自分の考えた事を否定するように首を横に振る。
ジャックはずっとソレイユの事を見てきたが、あれが男に惚れるようなタマだろうかと疑問が湧き上がる。
失礼な考えかもしれないが、彼女は唯我独尊というか、誰にも媚びず、一人で生きていくタイプだとジャックは思っている。
結婚できなくても、何一つ愚痴を言わず、マイロードを爆走する女の子だと予測できてしまうのだ。
そうなると、エリンの勘違いだと思うが、彼女の態度からして何か根拠があり、自分の意見に自信があるようにジャックは思えた。
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