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ミリーと相手の切り札
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武舞台の上で戦うミリーは善戦している。しかし戦いの流れは明確にあの格闘家にあるのも事実だ。ミリーはひたすらに逃げに徹しながら魔法を撃ち続けているが、ほとんどが無力化されてしまっている。このままでは……何とかしてミリーと交代したいが、格闘家がそれを許してくれるはずもない。
(今交代しようとしたら間違いなく背中から胴体を打ち抜かれてミリーが倒されるだけだ。乱入して強化オイルなどで時間を作ろうとしても、きっとミリーを倒せるのならばきっと無理やりでも突撃してくるだろう。乱入してもそこから何かに繋がらないのでは無駄にしかならない)
そしてついにミリーは追い詰められつつあった。今のところ回避してはいるものの、頭部や胴体に格闘家のパンチやキックが掠るような形で命中一歩手前という状態になりつつあった。乱入して格闘家の頭部を狙った一矢を放つか? しかし、あの格闘家はこっちにも警戒している気配があるのだ。乱入しても当たるイメージが全く沸いてこない。
考えを巡らせている間にもミリーはより追い詰められていく。そしてついに格闘家のパンチが描く軌跡がミリーの頭部に合わさってしまった。あれは避けられない──そう感じさせる一撃がミリーに当たろうとした瞬間。ミリーの杖から光がほとばしり、ミリーを護った。それだけではなく、光は格闘家を軽くではあったが明確に弾き飛ばして見せた。
(む、見たことがない魔法だ。ミリーの奥の手か?)
それだけでは終わらず、光は武器の形を取っていく。どうやらブレイド系列の魔法であることは間違いないようだが……問題はその形だった。どう見ても自分の八岐の月とレガリオンなのだ。ちょっと待って、なんでミリーさんが魔法でそれを模すの!? もっといい武器や使い勝手のいい武器があるでしょ!?
「アースさん、貴方の戦い方を借りますね~」
そんな宣言の後、何とミリーから格闘家に向かって突撃。レガリオンを模した魔法の刃で格闘家に切りかかった。自分ほどではないが、魔法使いが振るう武器の速度ではない。格闘家も回避した物の、ほんのわずかに血が舞った。完全に回避はしきれなかったらしい。
「その武器は、アイツの真似か!」「ええ、ずーっと見てきた戦い方ですので、私も真似したくなっちゃったんですよ~」
格闘家の言葉に、ミリーは返答を返している。真似したくなっちゃった、で真似できるものじゃないはずなんだけど。ミリーはきっと裏で秘かに訓練していたんだろう、ぶっつけ本番で使える武器じゃないのだから。しかし、こうも自分のバトルスタイルを真似られると背中にむずがゆさを感じる。なんでここにきて急にこんな事になったのだろう?
戦いが再開されたが、ミリーの武器は光魔法を武器の形にしている事が生かされている点がある。それは八岐の月から放たれる矢。自分は弓だから放つ時にはレガリオンを一旦離して矢を番えなければならないが、ミリーの方にはそんな制約はない。放ちたい時に魔法の矢をいつでも放つことができるのだ。
よって、近接武器による戦闘を行いつつ相手の不意を突くように魔法の矢を発射する事が出来るのである。これには格闘家も手を焼いているのが分かる、何せいつ打ち出されるか分からない矢が近接攻撃に混じって飛んでくるのだ。カウンターを取れたと思わせておいて、そこに魔法の矢を置く形で放ってくるのだからタチが悪い。
事実カウンターを狙った格闘家に一本の矢がつき立ち明確なダメージを与えている。その一撃は明確に重かったという事は、その後の格闘家の動きを見れば明白だ。弓を向けられるだけで明確に回避運動を優先するようになったのだから。お陰でミリーは試合の流れを徐々に取り戻していったのが分かる。
一方でここまで押していた格闘家の方に焦りの色が見え始めた。流石に魔法使いがこんな事をしてくるとは予想外だったようで、動きのキレが鈍り始めている。焦りだけでなく動揺もあるな。今まで容易く回避できていた攻撃をかすった程度ではあるが回避しきれていない。が、のまま行くだろうか? ミリーは一つのカードを切った。なら、向こうも更なるカードを切ってくる可能性が──
「悪い、使うぞ!」「仕方ないよ、このままじゃ不味いしさ!」
と、格闘家と控えの一人が短い会話を交わした。どうやら向こうも手札を出してくるか。その内容はなんだ? その答えはすぐに分かった。格闘家の背中にカラスの羽根の様な翼が広がったからだ。変身能力か? それとも全く別の力か? ミリーも警戒心を強めている。そして彼は飛んだ、空高く。そして──
「これは、怖いですね~」
上から降り注ぐは羽根を模した闘気の弾だと思われる。次々と降り注ぐ羽根は武舞台の地面に触れると次々と小さな爆発を起こす。もちろんミリーは回避行動をとっているが、お構いないしとばかりに次々と羽根を振らせ続ける格闘家。もちろんただ降らせるだけでなくミリーの動きを先読みしたと思われる弾が複数混じっている。
(一転して飛行ユニットに代わるとは……基本的に打ち下ろす方が人間は得意だ。しかも弾を撃ちながらかなりの速度で飛び回っている。これはミリーにとって辛い状況になってしまったぞ)
ミリーも弓を模した魔法から放つ矢で反撃をしているが、矢は一本も当たらず。相手の動きが速いからこそ当たらないのであって、ミリーの狙いが下手なのではない。しかし、こんな無茶な戦闘はそうそう続けられるもんじゃない。必ずガス欠はやってくる、そして当然格闘家は使い手なのだからそんな事は承知の上だろう。
(だから、どこかで必ず仕掛けてくる。ミリーもそれは読めているはずだ。肝心なのはそれがいつくるかという所と、対処できるかという二点だ。ここまでの技を見せた以上、向こうもこれで流れを完全に持っていった上でとどめを刺してこちらの人数を減らしたいはず。切り札を着て成果がありませんなんて展開だけは相手にとって絶対に避けたいはず)
羽根を降らせる格闘家と、ひたすら回避と羽根を相殺するミリーという戦いは一分ほど続いただろうか? ミリーが上手く対処し続ける事に、対戦相手の控えの人から焦りの感情が感じられるようになった。向こうの展開としては、この降り注ぐ羽根で一定ダメージを稼ぎ、動きが鈍った所に必殺の一撃を叩き込みたかったはず。しかし、その目論見が明確に外れている。
が、ミリーも明確に疲弊してきている。これはMPの問題ではなくプレイヤーの精神の方だ。何せここまで長く弾幕に晒されていれば疲れないはずがない。しかも上を見上げ続けて居るという態勢も疲労を増加させていると感じる。制空権という言葉があるように、基本的には上を取っている方が有利なのだ。
そんなせめぎ合いもついに終わりの時が来たようだ。飛び続けていた格闘家が、明確に力を振り絞って大量の羽根をミリーに対して高速で降り注がせる。ミリーはこの羽根を光の盾を生み出して防御した。羽根の速度が速かった事と大量に降らせられたために回避しきれないと判断したのだろう。
そんなミリーを見た格闘家は、ミリーの後ろを取るように急降下。捕まればロナちゃんにやったあのアーツでミリーを即死させるつもりだろう。更に対戦相手が大声で「いけえー!」と叫んだ。恐らく鼓舞する事だけが目的じゃない。こちらの後ろから来るという声を打ち消すための支援行為。
(なんてでかい声だ、こちらの声が完全にかき消されてしまった!)
自分も後ろから来ると叫んだのだが、完全に自分の声はミリーの耳に届かなかっただろう。後はミリーの今までの旅と戦いで養われてきたはずの戦いの勘に賭けるしかない。今から乱入しても、矢を番えている間に格闘家の攻撃がミリーに届いてしまうだろうから間に合わない。そして格闘家がミリーの背中から迫る。ミリーは──
「や~っぱり、後ろから来ますよね~。盾で防げば、後ろから攻められるだろうって考えちゃいますよね~」
彼女は分かっていた。いやむしろ、あの盾を出した時点でそう来ると読んでいたのだろう。ミリーが取った攻撃は非常にシンプルだった。魔法でデカい杭の形をした氷を発生させた。ただそれだけ。しかし、格闘家は全力でミリーに迫っていた。故に──
「が……あぁ……」
格闘家は自ら高速でその杭に対してもろに突っ込んでしまう形となる。そして大量の血飛沫が武舞台の上に舞って散った。誰がどう見ても──即死と理解出来るだろうその光景は、背中に冷たい物が走るのを止める事など出来なかった。相手を撃ち負ったミリーだったが、少しふらつきながらこちらに寄ってきて交代を要求してきた。
「流石に疲れました~。アースさん、ここからはお願いします~」
ミリーの手を取って自分は武舞台の上に上がる。最後の相手も武舞台の上に上がってきた。どうやら最後の相手は、軽鎧を着込んで右手に片手剣を握って左手に逆手持ちの短剣を握るタイプの二刀流か。速度をある程度残して手数で相手を切り刻むスタイルと見るが……dふぉうだろうか?
(だが、相手がだれであっても勝つしかない。二次予選の初戦を白星で飾れるか否かはここから先の展開に大きく響いてくるはずだ。行くぞ自分、しっかりと相手を見ろ)
自分自身に喝を入れ、相手とにらみ合う。勝ちをもぎ取らないとな、何としても。
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「アースさん、貴方の戦い方を借りますね~」
そんな宣言の後、何とミリーから格闘家に向かって突撃。レガリオンを模した魔法の刃で格闘家に切りかかった。自分ほどではないが、魔法使いが振るう武器の速度ではない。格闘家も回避した物の、ほんのわずかに血が舞った。完全に回避はしきれなかったらしい。
「その武器は、アイツの真似か!」「ええ、ずーっと見てきた戦い方ですので、私も真似したくなっちゃったんですよ~」
格闘家の言葉に、ミリーは返答を返している。真似したくなっちゃった、で真似できるものじゃないはずなんだけど。ミリーはきっと裏で秘かに訓練していたんだろう、ぶっつけ本番で使える武器じゃないのだから。しかし、こうも自分のバトルスタイルを真似られると背中にむずがゆさを感じる。なんでここにきて急にこんな事になったのだろう?
戦いが再開されたが、ミリーの武器は光魔法を武器の形にしている事が生かされている点がある。それは八岐の月から放たれる矢。自分は弓だから放つ時にはレガリオンを一旦離して矢を番えなければならないが、ミリーの方にはそんな制約はない。放ちたい時に魔法の矢をいつでも放つことができるのだ。
よって、近接武器による戦闘を行いつつ相手の不意を突くように魔法の矢を発射する事が出来るのである。これには格闘家も手を焼いているのが分かる、何せいつ打ち出されるか分からない矢が近接攻撃に混じって飛んでくるのだ。カウンターを取れたと思わせておいて、そこに魔法の矢を置く形で放ってくるのだからタチが悪い。
事実カウンターを狙った格闘家に一本の矢がつき立ち明確なダメージを与えている。その一撃は明確に重かったという事は、その後の格闘家の動きを見れば明白だ。弓を向けられるだけで明確に回避運動を優先するようになったのだから。お陰でミリーは試合の流れを徐々に取り戻していったのが分かる。
一方でここまで押していた格闘家の方に焦りの色が見え始めた。流石に魔法使いがこんな事をしてくるとは予想外だったようで、動きのキレが鈍り始めている。焦りだけでなく動揺もあるな。今まで容易く回避できていた攻撃をかすった程度ではあるが回避しきれていない。が、のまま行くだろうか? ミリーは一つのカードを切った。なら、向こうも更なるカードを切ってくる可能性が──
「悪い、使うぞ!」「仕方ないよ、このままじゃ不味いしさ!」
と、格闘家と控えの一人が短い会話を交わした。どうやら向こうも手札を出してくるか。その内容はなんだ? その答えはすぐに分かった。格闘家の背中にカラスの羽根の様な翼が広がったからだ。変身能力か? それとも全く別の力か? ミリーも警戒心を強めている。そして彼は飛んだ、空高く。そして──
「これは、怖いですね~」
上から降り注ぐは羽根を模した闘気の弾だと思われる。次々と降り注ぐ羽根は武舞台の地面に触れると次々と小さな爆発を起こす。もちろんミリーは回避行動をとっているが、お構いないしとばかりに次々と羽根を振らせ続ける格闘家。もちろんただ降らせるだけでなくミリーの動きを先読みしたと思われる弾が複数混じっている。
(一転して飛行ユニットに代わるとは……基本的に打ち下ろす方が人間は得意だ。しかも弾を撃ちながらかなりの速度で飛び回っている。これはミリーにとって辛い状況になってしまったぞ)
ミリーも弓を模した魔法から放つ矢で反撃をしているが、矢は一本も当たらず。相手の動きが速いからこそ当たらないのであって、ミリーの狙いが下手なのではない。しかし、こんな無茶な戦闘はそうそう続けられるもんじゃない。必ずガス欠はやってくる、そして当然格闘家は使い手なのだからそんな事は承知の上だろう。
(だから、どこかで必ず仕掛けてくる。ミリーもそれは読めているはずだ。肝心なのはそれがいつくるかという所と、対処できるかという二点だ。ここまでの技を見せた以上、向こうもこれで流れを完全に持っていった上でとどめを刺してこちらの人数を減らしたいはず。切り札を着て成果がありませんなんて展開だけは相手にとって絶対に避けたいはず)
羽根を降らせる格闘家と、ひたすら回避と羽根を相殺するミリーという戦いは一分ほど続いただろうか? ミリーが上手く対処し続ける事に、対戦相手の控えの人から焦りの感情が感じられるようになった。向こうの展開としては、この降り注ぐ羽根で一定ダメージを稼ぎ、動きが鈍った所に必殺の一撃を叩き込みたかったはず。しかし、その目論見が明確に外れている。
が、ミリーも明確に疲弊してきている。これはMPの問題ではなくプレイヤーの精神の方だ。何せここまで長く弾幕に晒されていれば疲れないはずがない。しかも上を見上げ続けて居るという態勢も疲労を増加させていると感じる。制空権という言葉があるように、基本的には上を取っている方が有利なのだ。
そんなせめぎ合いもついに終わりの時が来たようだ。飛び続けていた格闘家が、明確に力を振り絞って大量の羽根をミリーに対して高速で降り注がせる。ミリーはこの羽根を光の盾を生み出して防御した。羽根の速度が速かった事と大量に降らせられたために回避しきれないと判断したのだろう。
そんなミリーを見た格闘家は、ミリーの後ろを取るように急降下。捕まればロナちゃんにやったあのアーツでミリーを即死させるつもりだろう。更に対戦相手が大声で「いけえー!」と叫んだ。恐らく鼓舞する事だけが目的じゃない。こちらの後ろから来るという声を打ち消すための支援行為。
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「が……あぁ……」
格闘家は自ら高速でその杭に対してもろに突っ込んでしまう形となる。そして大量の血飛沫が武舞台の上に舞って散った。誰がどう見ても──即死と理解出来るだろうその光景は、背中に冷たい物が走るのを止める事など出来なかった。相手を撃ち負ったミリーだったが、少しふらつきながらこちらに寄ってきて交代を要求してきた。
「流石に疲れました~。アースさん、ここからはお願いします~」
ミリーの手を取って自分は武舞台の上に上がる。最後の相手も武舞台の上に上がってきた。どうやら最後の相手は、軽鎧を着込んで右手に片手剣を握って左手に逆手持ちの短剣を握るタイプの二刀流か。速度をある程度残して手数で相手を切り刻むスタイルと見るが……dふぉうだろうか?
(だが、相手がだれであっても勝つしかない。二次予選の初戦を白星で飾れるか否かはここから先の展開に大きく響いてくるはずだ。行くぞ自分、しっかりと相手を見ろ)
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