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何やら話が変な方向へ

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 何とか各種インゴットをそれなりに確保したので、塔の外へ出て休息所の端に移動していたブルーカラーの生産者の皆さんにインゴットを渡す。

「──随分と沢山持ってきてくれたんですね? しかも精製済み……ああ、アースさんが居ればその場で可能でしたね。これだけ持ち込んでいただければ、武器の方は素材が揃ったので作れそうです。防具の方はギルマスが持ってきてくれた革次第ですが」

 という言葉と共に、さっそく武器を打つべく各種道具を持ち出して準備を整える生産者の皆さん。遠巻きに見ている人は何人もいるが、ブルーカラーのギルドメンバーであることはほぼ知れ渡っているので声をかけてくるプレイヤーはいない。ま、声をかけられたところで断るんですけどね。受け付けたらきりがない。

 生産者の皆さんが剣やら槍やらを作っているうちにツヴァイ達も戻ってきた。大量の皮を手渡し、これで十分な量が確保できたという事で防具の生産も始まった。ブルーカラーの別動隊も武具が出来ればすぐさま塔への攻略を再開するはずである。

「しかし、塔に挑む前に十分な武具は用意させていたはずだが、何があったんだ? ここまで武具が消耗するなんて相当厄介な要素にぶち当たったんだろうが……」

 生産者さんが働き始めた事を見た後にレイジがそう別動隊の女性陣に話しかけた。もちろん威圧的な所はなく気遣っている様子がうかがえた。そのレイジの言葉に、一人の女性プレイヤーが口を開く。

「何といえばいいのでしょうか? 鎧や剣を主食にしている? みたいに装備の金属部分を積極的に食べるモンスター達に出会ってしまったんです」

 彼女曰く、八〇〇階後半からそう言ったモンスターに出会う事が増えてしまったらしい。自分は出会っていないから何とも言えないが、かなり運が悪いと言えるだろう。そいつらに攻撃を貰うと鎧などの一部を食べられるみたいに切り裂かれてしまい、耐久力がガタ落ちするのだという。それでも何とか生産者の援護を受けて騙し騙しやってきたが、ついに限界を迎えてしまったという事が事の顛末のようだ。

「あっちゃー、それは運が悪すぎたねえ。掲示板のどこかでそう言うモンスターが出るって話は見た気がするけど、出現率は高くなかったはずだし。まあ、しょうがないと割り切るしかないよね」

 ロナちゃんの言葉に、頷いている別動隊。これは確かに運が悪かっただけ、しょうがないと割り切っちゃうしかない。出てくるモンスターは当然プレイヤーが選べるわけもないのだからしょうがない事である。

「そうでも私達はこうして支援を受けられますので何とか諦めずに済んでいますけど……そうでない方は地獄を見ているでしょうね。まあ、それもこれも原因を作った人を恨んでくださいとしか言いようがないのですが」

 と、他の別動隊書生プレイヤーも言葉を発する。事実、いくつかの羨ましげな視線がこちらに向けられている事を感じている。しかし、彼女達はブルーカラーの一員だからこその協力体制だ。ギルドメンバーでない人を手助けする余裕は彼女達にもない。実際素材が足りなくてこうやって自分達が集めてくる事になったんだしな。

「正直、俺としては皆に好きな事を好きなようにやってもらって楽しんでもらいたいと願っていただけなんだけどな……こうやって協力体制が取れる形が取れていること自体、狙った事じゃなかったんだが」

 これはツヴァイの発言。気になったんでそこら辺をちょっと聞いてみると、ツヴァイ曰く戦闘をやりたい人、生産を目いっぱい楽しみたい人などそれぞれの考えがあったのだという。が、ギルドのカラーとでも言えばいいのだろうか? それを押し付けてくるギルマスやギルメンと仲たがいして追い出された人もかなりいた。

 他にも生産者に強く当たって、素材も出さないのに明らかに相場以上の安さで装備を要求する連中からツヴァイが救っていたこともあったらしい。で、そう言った女性プレイヤーがツヴァイのギルドに入る事を熱望していった結果、ブルーカラーは女性プレイヤーが多く集まっていったという事らしい。

 ずーっと前に聞いた戦闘でピンチに陥っている女性プレイヤーを助けて、それが切っ掛けでギルドメンバーとしてはいってきてべったりくっついている女性プレイヤーなど、ごく一部に過ぎなかったという訳である。ツヴァイとしてはあくまで善意かつ、理不尽にさらされたプレイヤーに助け船を出していただけだったのだが。

「もちろん男性プレイヤーにだって助け舟は出していたぞ? 本当だぞ!? ただ何故がギルドに入るのは女性プレイヤーが圧倒的に多くてな……ハーレムギルドのあだ名を貰う事になっちまったが」

 どこか遠いとこを見るような視線をツヴァイは虚空へとむけていた。まあ長い付き合いだし、ツヴァイがただの女性が大好きなだらしない人間ではないという事は知っている。ただ、表面しか見ない大多数のプレイヤーからはそう言う目で見られてしまうのもまた事実なんだよな。ツヴァイはツヴァイで相当な苦労をしていたのだろう。

「まあ確かにツヴァイさんは女性と見ればお構いなしなだらしない男性ではないですよね。ただ、困っている女性プレイヤーと出会う確率はおかしいの一言ですが。狙っている訳ではないと理解してはおりますが、やっぱり思い返すと確率的におかしいのですよね」

 カナさんの言葉に、ツヴァイの目からハイライトが消えた気がする。しかし、そんなツヴァイを知ってか知らずか追撃が入ってしまう……

「そこは否定できないわよね。私は初期メンバーだからずーっとギルドの事は見てきたけど、確かにツヴァイはメンバーになった女性に対してナンパとか一切してないし変な迫り方もやってこなかった。一般的な言葉で言えば紳士的よね、彼。ただ、女性プレイヤーとの出会い率とその後の展開がもうギャルゲーの世界なのよ。狙ったってできないから、変な勘繰りはしてないけどねぇ」

 これがノーラのお言葉。ツヴァイ、泣くんじゃない。気持ちはわかるけどさ、すごく痛いほどに理解できるけどさ!!

「しかし、繰り返する事になりますがギルマスはあくまで善意からくる行動をしていただけですからね。間違いなく下心は一切ないんですよ。だからこそ女性プレイヤーの皆さんも付いていきたいとなるんでしょうが、それがますますギルドの名前を広める結果になってしまいましたね」

 カザミネが必死でフォローした。流石に見ていられなくなったか。自分も口をはさんでおこう。

「カザミネの言う通り、もしツヴァイが下世話な奴だったら自分はここまで付き合いを続けられなかったよ。ツヴァイは間違いなく性格が良いし、今まで取ってきた行動にも問題はないさ。実力もあるし、頼もしい人物であることは疑いようがない」

 カザミネ、そして自分の言葉でツヴァイの瞳にハイライトが戻ってきている。よかった、あのまま虚空に行ってしまうのではないかと正直心配になってしまったからな。

「まあ、カザミネやアースが言ったようにツヴァイ本人は良い奴だ。それはブルーカラーに属する人間ならだれもが分かっている事だろう。ただなぁ、周囲はそうは見ない奴も多い。特に女性が多いという一点だけを見て、そうなった経過など見ない奴らはツヴァイに対して嫉妬するからな。お門違いも良い所なんだが、あの手の人間に細かく説明した所で聞こうとはしないだろう」

 ため息交じりにレイジがそのような言葉を口にした。そうだよね、今だけを見てそうなった経緯を見ない人が世間では大多数だ。今お金持ちだからと嫉妬はするが、その人の過去はどうだったとか、どんな苦労をしただとかをひっくるめてみる人ってのは相当少ない。結果よければすべてよし、なんていうがそのいい結果というものは容易くはやってこない。相当な苦労と、流した血と涙が裏にはある。

「皆さんがおっしゃったように、ツヴァイさんの事を女ったらしの最低野郎と罵った男性プレイヤーと女性プレイヤーは残念ながら一定数いましたからね。何も知らないのによくもまああそこまで言えるものだと……頭に来たのでPvPを挑んでしっかり叩き潰しておきましたけど」

 別動隊の女性プレイヤーの一人がそんな言葉を発した後に大きなため息をついた。うん、気持ちはわかるけどちょっとやりすぎでないかい? そう言う行動をとるから、ツヴァイがますます噂を立てられちゃったんじゃないかな? と思うのですよ。いやまあ、気持ちはわかるよ、うん。

「せめて噂をするにしても聞こえない所でやって欲しい物ですよね。わざわざこちらに聞こえる声の大きさでするのが始末に負えません。人としての最低限の礼節まで投げ捨ててしまったのでしょうが」

 なんて声も別動隊の女性プレイヤーから上がってくる。まあそう言いたくもなるよね、そんなわざわざ嫌がらせをすることを目的としたやり方をされるのは。しかも彼女達にとってツヴァイは厄介な状況を助けてくれた恩人だし、いわれのない悪口を聞けば穏やかではいられないだろう。

「まあ~そうですねぇ。それなりに痛い思いはしてもらいましょうかぁ~」

 ぼそりとミリーが呟いた。いや、貴女がそんな言葉を口にするとこっちは冷や汗が流れ始めるんですが。正体を知っているのは良い事ばかりじゃないね!?

「そうですわ、そんな連中は一度痛い目を見ないと理解しませんわ。中には痛い目を見ても理解しない方もいらっしゃいますが。死んでも治らないと言うものでしたか」

 エリザまで殺気立ってる。いや、ホントに言葉だけにしておいてよ!? 痛い目をあわせるにしてもせめてゲーム内のPvPとかに限定してね!? ミリーが暴走しない事を祈るしかないな……ミリーが別動隊からツヴァイの悪口を言っていたプレイヤーの情報を聞き出している様に見えるが、俺は何も知らないぞ。見ていないぞ。
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