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一次予選終了

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 それから数日が経過し、ギルド対抗戦は滞りなく進んだ。ブルーカラーも順調で、すでにトップ通過が確定している。一方で二位の通過枠は大混戦で、残された一枚の切符をめぐっての激しすぎる戦いが繰り広げられている。それでももう絶対に届かないとなったギルドは次々と姿を消し、塔の追い込みをかけている人達への援軍に向かっている。彼等は最終日の表彰式に戻ってくる事になっている。

 そして今、最後の切符を手にできる可能性が残されているギルドは三つとなっていた。目の前で今から行われる第一次予選最終戦の結果で全てが決まる。片方が勝てば確定で二位になる。その片方のギルドが負けた場合はAIによる評価点の高いギルドが二位となる。サッカーなどで言う勝ち点による評価だと思ってくれればいい。

 すでに戦闘前から両ギルドの間で火花が散っているし、見守るしかない三つ目のギルドメンバーは勝ったら確定で二位になるギルドに対して「負けてくれ負けてくれ」とひたすら負の念を送り続けている。当然周囲は気味悪がっているが気持ちはわかるので、少し離れた場所から生温かい目で見守っている。

 異様な空気の中、第一次予選最終戦が開始された。もちろん自分達もその試合をしっかりと見守る事となる……生き残ったギルドと二次予選で戦う事になるのだから、どういったギルドが生き残るのかをしっかりと知っておくのは大事だ。

 どちらのギルドもここまでの戦闘で体力は始めから相当すり減った状態で始まっている為短期決戦で動く。一瞬の判断ミスが命取りとなり、どちらのギルドも次々とダウン者が出る。それでもはお食いしばって両者必死に戦った結果、もつれにもつれて第三ラウンドにまで持ち込まれる形となった。

「どちらのギルドも執念がすごいね」「ああ、勝ち残るギルドはやっぱりそう言う易々とはやられない執念というものがあるな」「俺達も見習わなければダメだな、最後まできらめない執念は大事だ」「泣いても笑っても次で決着です、どう転ぶでしょうか?」

 ブルーカラーの面々も目の前で行われた戦いを見て、そのような感想を漏らしていた。皆が言う通り、勝ち残ってやるぞ、ここで終わってたまるかという周南がまるでオーラのように見える気がする。そうして始まった第三ラウンドは、勝てば二位確定のチームが序盤から押す形となった。

「やめろおおお!?」「しっかりしろ、お前らも負けたらそこでお終いだろうが!」「何とか巻き返してー!!」

 そんな悲痛な叫びが見ている事しかできないギルドから次々と飛び出してくる。そんな願いも届かずか、とばかりに負けたら終わり側のギルドの一人目、二人目が次々とダウンさせられる。もうこれまでか? という空気が漂ったが──最後に控えていた大剣使いが強かった。一人目、二人目が必死で削った格闘家タイプの相手を大剣の一当ててダウンさせると、二人目の片手剣と盾というタンカー相手に被弾することなくダウンを奪って見せたのだ。

 最後の三人目は魔法使いだった。しかもHPの残りが初めから三割弱ぐらいしかない。一方で大剣使いはまだギリギリ五割。しかし魔法の威力は高いので、どうなるか分からないという盤面。お互いが一瞬見合い、そして魔法使いが詠唱を始め大剣使いが突っ込む。魔法使いは電撃の壁を生み出し、接近を阻む。

 その電撃の壁を大剣使いは《大跳躍》を使用して飛び越え、上から魔法使いを一刀両断しようと迫った。しかし魔法使いはとっさに地面から大地をせり上げる魔法を使い、それを防いだ。大剣使いは壁を蹴り、仕方なくと言った感じで後ろにとんで再び見合った。互いにある程度離れていてもお互いの攻撃が届く事を確認したような形となったか。

 このタイミングで残り時間が一分をきった。当然タイムアップとなった場合どちらが勝つのか一切分からない。当人たちはもちろんだろうが、周囲もどちらが優勢と評価されるかは予想がつかない展開なのでこのままタイムアップという終わり方だけは無いだろうと観戦者である自分達には簡単に予測がついた。

 その予測を当人達も理解していたのだろう、お互い捨て身と言っていい感じでの攻防が始まった。魔法使いはもはやMPの管理など投げ捨てる勢いで魔法を放ち、大剣使いは多少の被弾は覚悟のうえで突撃を仕掛けた。互いの距離が詰まっていくと、周囲の観戦者からも歓声と双方を応援する声が響き渡る。

 そして決着。勝ったのは──大剣使いだ。己のHPが尽きる前に、魔法使いの腹部に大剣の切っ先を深々と埋め込むことに成功したのだ。決着がついた直後、仲間から最大の賛辞を受ける大剣使いが属するギルドと、全員が地面を殴りつけながら悔しがるギルドの対比が印象的だった。

 そして、三つのギルドが武舞台の上に呼ばれる。運命の宣告が行われるため、誰もが静まり返って結果を見守る。発表方式は武舞台の上から最後まで降ろされなかったギルドが二位となって二次予選に進めるという事だが、降ろされないとはどういうことだろう? 自分以外にも何人もが首をひねっていたが、遂に発表が始まった。

 三つのギルド前に棒グラフが表示され、それぞれが上に向かって伸びていく。あの棒グラフの長さが評価点の合計という事か。勢い良く伸びていく三つの棒グラフだが、徐々に勢いが弱まって一つの棒グラフが完全に止まってしまった。すると、その止まってしまったグラフのギルドメンバーは突如武舞台の上に発生した落とし穴に落とされてしまった。

(文字通りの落選と言いたい訳か? なんにせよ、真っ先に落ちたギルドが意外だったな)

 真っ先に落ちたギルドは、なんと勝てば二位確定のギルドだったのだ。予選最後の負けが致命傷になるとは……これで残るは予選最後に勝ったギルドと負の念を送っていたギルドとなった訳だが──また棒グラフの勢いが戻り伸びていく。なるほど、次勢いが弱まった時が決着の時か。

 そして、それから二十秒ぐらい後に時は来た。棒グラフの勢いが弱まりだしたのだ。誰もが固唾をのんで見守り、そしてついに止まった。グラフの差は本当に僅か、紙一重と言っても良い差。生き残ったのは……最後の大剣使いの突撃が全てを決めたギルドであった。負の念を送っていたギルドは哀れ落とし穴へと落下していった。

『これにて、二次予選に進む二つのギルドが決まりました! 二次予選も頑張ってください!』

 運営役を務めているプレイヤーからの発言を持って、第一次予選が終了した。次の第二次予選の二位以内に入れば準決勝へと駒を進めることができる。まだ第一関門を突破したに過ぎないのだ。宿屋へと引き上げていく中で、最後の戦いについてブルーカラーの皆とあれこれ話し合いを行った。

「あの大剣使いの根性、無視できないな。あれだけの魔法を前に、剣を使って防御はしていたとはいえ躊躇なく突撃して見せた。相当な痛みを感じていたはずだが、それでもやり切ったあのプレイヤー本人の精神力は見事だった」

 これはレイジの言葉。前に立つことが多いレイジだからこその言葉だろう。

「一方でちょっとプレイヤー同士のレベルに差があるようにも見えたわね。最後の人がすごかったからそう見えちゃうだけかもしれないけど、付け入る隙は明確にあるようにも感じたわ。もちろん油断はしないけど」

 これはノーラ。特に一人目、二人目が振るわなかった事もノーラにこういった意見を出させる事に繋がったのだろうか?

「うーん、それは正直負けた側のギルドが出して来た一人目が硬かったからじゃねえかな。硬いと言っても純粋な防御力が高いって意味じゃなくって、防御行動が上手いって意味でな。受け流しをうまく使ってダメージを的確に押さえていたからな、その防御を破れなかった殻こそパッとしない様にも見えたんだと思うぜ」

 ノーラの言葉に、ツヴァイがこのように反論した。確かにツヴァイの言う通り、負けた側のギルドの一人目は立ち回りなども上手く、一人目と二人目のプレイヤーをうまく封じ込んでいた所がある。両者ともにインファイトで戦うタイプのプレイヤーだったので丸め込まれたところもある。もしどちらかが遠距離攻撃も出来たなら、もうちょっと展開は違ったかもしれない。

「自分の有利、特異な点ををいかに相手に押し付けて勝つかが対人戦ですからね、そう言う意味でもあのプレイヤーが負けてくれたのはこちらとしてもありがたいかと。直接戦った時も、かなり苦労させられましたから」

 と、自分の経験を交えての意見を口にしたのはカザミネだ。確かにあのプレイヤーと戦った時、カザミネはかなりやりずらそうだったな。格闘だけでなく闘気を発射する事で中距離戦もこなし、体術も優れていたつわものだった。相手の振るってくる刃物への対処も得意だったようで、カザミネの大太刀を次々といなして見せた。最後はカザミネが首を刎ねて勝ったんだけど。

 なんにせよ、他のブロックから勝ち上がってきた強いギルドが二次予選で集う事になる。ブルーカラーが優勝するためにも、どんな相手が上がって来ようが勝つ! という強い心意気で挑まなければな。
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