とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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もう一太刀と、初日終了後の掲示板

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 食事を終え、店を出る。そして解散となると思っていたんだけど──カブラギさんに呼び止められた。

「厚かましい事は重々承知の上で一つお願いがあります。後一度だけ、あの一撃を私に振るって頂けないでしょうか? あの一太刀をもう一度だけ味わって己に足りないものを見つめなおしたいのです」

 目は真剣そのもので……断るのは難しいと判断して自分は話を受けた。PvPを起動して、一撃決着のモードを選択。ブルーカラーのメンバーにだけ観戦できるようにする。

「我が儘を聞いていただき、心より感謝いたします。いつでも来てください」

 カブラギさんは防具をすべて脱ぎ、武器も身に着けていない状態でただ静かに立っている。自分はそんなカブラギさんの前で居合の態勢を取り、目を閉じる。静かに集中し、またあの湖面を見る。光で見たし、心身共に一致するタイミングが来る少し前に一言だけ口にした。

「今から行きます」「来てください!」

 直後、全てが重なった事を感じた自分は全力をもってカブラギさんの体に刃を振るった。切った後、ゆっくりと刃を鞘に納めると同時にカブラギさんが倒れ、自分の勝利が宣言される。が、今回はこの勝利に何の意味もない。カブラギさんがこの太刀を受けて何かを掴めるかどうかの方が大事だ。

「どうですか?」「──分かりません、少なくとも頭では。ですがその一方で別の所で何かを感じ取りました。きっとあの刃を振るって頂いたこととこの体で受けた事は、無意味ではなかったと少し後でなら言えると思います、そう感じるのです」

 PvPの空間から戻ってきたカブラギさんは、自分の言葉にそう答えた。これ以上自分にできる事はない、後はカブラギさんしだいだ。頭を下げたカブラギさんとはここで分かれ、ブルーカラーの面々と一緒に宿屋へと向かう。

「アースのあの一撃を見ると、やっぱり有翼人との戦いを思い出すな。あの時魔剣を砕きながら見せてくれたあの攻撃は今でもまだ目にこびりついているぜ」

 そんなツヴァイの言葉から始まった有翼人との最終決戦の話は、宿屋についてもしばし続いた。プレイヤー同士のPvPではない殺し合いになったからな……それも圧倒的に数が少ないという不利な状況。それでも何とかこっちに勝ちを呼び寄せる事が出来たが、プレイヤーの様な特権が無いこちらの世界の人達は大勢亡くなったし、生き延びても多大な傷が残った。

「あんな戦いは二度とごめん被るけどね。ただ、明鏡止水状態になってから振るうあの攻撃は今後も使わせてもらうよ。例え魔剣でなかったとしても、その威力は非常に高いし」

 師匠が残してくれた最後の技なので、乱発はしないが使う時は使う。今日みたいな戦いは今後もあるだろうし。その後ログアウトし、布団の中へ。さて、明日も仕事がある事だししっかりと寝なくては──そして自分が寝入った後でも掲示板の方が賑やかな状態であった事を後で知る。


 激戦!)ギルド対抗戦専用掲示板No.7(激闘!

877:無名の冒険者 ID:gwrsa5efd

一日目から熱い戦いが多すぎる。見ているだけでも楽しかった、もちろんギルド優勝を目指して全力で戦ったけれども

878:無名の冒険者 ID:jjh8r36tr

一方で有名ギルドの前に一方的に負けるギルドもあったけどな。有名ギルドなのは伊達じゃないと言った所なんだろう

879:無名の冒険者 ID:vab5fefvv

そりゃ意地もあるだろうし。易々とは負けらんねえと宣言してたギルドは複数あったからなー。実際そう言ったギルドは強かったぞ

880:無名の冒険者 ID:gef5fdsrd

なんにせよ、この面子の中から勝ち残るには実力がある事は前提で、いかにうまく試合を運ぶかだな。PvPが終わっても全快しないから、明日からの戦いがものすごく苦しくなったギルドもちらほらあるし

881:無名の冒険者 ID:GEe4efcyu

疑似的な連戦をイメージしてるんだろうな。勝ったら僅かな休息があるだけですぐ次の戦いに行くって感じだから……今日かったギルドでもぎりぎりの勝利ってなってると明日の一戦目でHPが相当するない状態から開始となるからきついぞ

882:無名の冒険者 ID:3695fedjr

というか温存できている方が少なくない? 多かれ少なかれ、今日の戦いで誰もがダメージを負っているよ。ごく一部の例外はいるけどさ

883:無名の冒険者 ID:dsfdsa65f

そのごく一部との差は目いっぱい開きそうだな……こちらのブロックはほとんどダメージを受けずに圧倒したギルドがいるけど、あいつら明日からの勝負は超絶有利だぞ

884:無名の冒険者 ID:RDBVasvfv

とはいってもルールも内容も同じだからなぁ、文句を言うのは違うし。それでも何とか巻き返しを狙っていくしかない

885:無名の冒険者 ID:jrvsvsv46

明日からは勝つために切り札を切るギルドも増えそう。今日すでに見せたギルドも結構あるけど

886:無名の冒険者 ID:lhtd5gefE

切り札も色々だねぇ、見た目からダメージ髙そうってアーツもあれば相手の弱点を壊す事に特化している範囲の狭いアーツとかもあった。首刎ねは基本で、心臓狙いの者も多数

887:無名の冒険者 ID:brfaw24ge

流石に心臓引っこ抜きとか、脊椎引き抜きとかは無かったな……あったらグロイどころの話じゃないが

888:無名の冒険者 ID:ijh2pok1j

そう言うグロさは専門のゲームに求めてくれ。皆が皆、グロい物を求めている訳じゃないって事だけは理解してくれー

889:無名の冒険者 ID:Kjsdtjme5

話がずれてきたが──流石にこれが最後という事もあって、切り札を隠さないギルドは多数あったね。見た事ないアーツとかかなりあったよ、Wikiにも載ってないものがかなりあったんじゃない?

890:無名の冒険者 ID:lkpht54ee

もしくは乗ってはいたが使い手がレア過ぎて今まで見る機会が無かった、も追加で。片手剣の分身してから相手を四方八方に取り囲んで斬りまくるアーツとか初めて自分の目で見たわ

891:無名の冒険者 ID:Htes5reG7

分身系アーツはかなりお披露目されてたね。あれ初見で見切るのは無理! 三人までなら多対一の感覚で何とか回避も出来なくないけど、今日対峙した相手は誰も一〇体ぐらい同時展開してくるんだもん、どうしろと? ガードしてダメージを減らす事に専念するしかなかったよ!

892:無名の冒険者 ID:hgsh7gsrG

いや、それは正しいと思うぞ。分身系のアーツはコストもクールダウンも重いから回避できないなら防御を固めて耐えるというのは正解の一つだ。ただ厄介なのはとどめとして僅かなHPを削るために使われた場合なんだけどな

893:無名の冒険者 ID:jhth4jrwe

それはもう、立ち回りを失敗したとして諦めるかイチかバチかの回避に専念するかしかないじゃない。そうなる前に交代するなり、こっちが先に切り札使って倒すかしかないよ。これは読み合いだね

894:無名の冒険者 ID:bf8fe632e

明日からはその辺の読み合いがより大事になりそうだな。ある程度の手札を見せ合ったんだし……それを使わせないか早めに使わせて受けられるように立ち回るか

895:無名の冒険者 ID:fsadv5efw

分身系も怖いけどさ、一撃必殺系も怖いよ。大太刀使いの首刎ね率が半端じゃない……リアルだったら武舞台の上にいくつ首が転がってるんだろうって感じで

896:無名の冒険者 ID:VDvdb5erW

そしてそんな大太刀をカウンターで消し飛ばす魔法使いも多数いると言うね。ある大太刀使いの首狙いが決まったと思った瞬間、とんだ首は場所入れ替え魔法を喰らった大太刀使いの方だったなんて事もあったぞ

897:無名の冒険者 ID:ged8cweeI

うかつに魔法使いに首狙いをしてはいけないって、あそこにいた全員が思ったよな。かといって距離を取ってれば魔法が次々と降ってくるし

898:無名の冒険者 ID:BRTEDs5fe

そんな魔法使いも弓使い相手だと逆に苦しくなると言うね。だからこそ交代するタイミングとか最初に誰を出すのかの判断も重要になるが

899:無名の冒険者 ID:fCf4fWerd

最後のギルド対抗戦、そして最強ギルドを決めるにふさわしい舞台であるって事だけは間違いないなー、明日はどうなるのやら。混戦になるのか特定のギルドが勝ち星を伸ばすのか、予想が難しいな
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