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試作四号機……あとリアル

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 パイルバンカーの残弾を乗せる方法は、二つしか思いつけなかった。一つはマガジン式、これはハンドガンなどにある前の弾を撃ちだしたら次の弾をバネの力などで押し上げて装填する形。もう一つはリボルバー式。こちらも様々な拳銃で使われている方法だ……回転するシリンダーの中に弾丸を入れておいて、回転させる事で連射を可能としたタイプ。

(オリジナルの装填方法なんて思つけないよ。そもそもこの二つが使われているのはそれだけ優秀って事になるんだろうからな)

 オリジナルの装填方式なんて考えようものなら、たぶんまともに動かせるようになるまで一か月以上はかかっちゃうんじゃないだろうか? 流石にそこまで時間を使える状況じゃない。だからこそ、既存の方法を採用する方が現実的だ。さて、そう決まればどちらを採用すべきかという話なんだが。

(うん、やっぱりリボルバー式だよな。戦闘中のリロードは一切考えない事と、重量バランスを考えるとなぁ)

 マガジン式だと、どうしても複数の打ち出すための杭を一列に並べないとならなくなる。イメージはハンドガンのマガジンそのもの。ただあれは弾の大きさと重量が小さめ、そこまで重くないからこそ問題ないのであって。鉄の杭を一方方向にずらっと並べたらそりゃ場所はとるわ重量バランスも悪化するわと、デメリットばかり思い浮かぶ。

 リボルバー式だと、籠められる弾数は少ないが重量バランスが大きくずれる事にはならないしマガジンに比べればコンパクトに収めることが出来る。回転するシリンダー部分にはさらにその外側にシールドを追加すれば防御しやすいのでその点もベターではないだろうか。結局ある程度要望を叶えるために条件を突き詰めていくとどっかで見たような……という形になって行ってしまうのは仕方がないのだろう。

(結局、革新なんてものは容易くないと言う事を思い知らされるばかりだ。故に完全に新しい技術を生み出せる人間という物は実にすごい存在だと言う事だよなぁ)

 昔、そして今の研究者、開発者に対して敬意を払った所で設計開始。シリンダーはどうしても重量がかさむけれど……ここは頑丈に作らなければいけない部分だ。とりあえず重量問題は今は横に置いておいて、今はちゃんと動く試作機を作り上げるのが重要だ。基本が出来なきゃ発展させる事は不可能なのだから。

 ひとまず現実にあるリボルバーを下敷きにして仕組みを取り入れるための案を考え、実験を兼ねて試作機の制作に取り掛かる。そうして試作機四号機がログアウトする時間の十分前に産み出された。ただ、重量はガツンと増えてしまっている。リボルバーの強度と安全性を考えると、鋼鉄ではどうしてもサイズ的に重量がかさむ。

 ま、試作機ってのはどうしてもどこか不格好になるのは仕方がない。試作機の外見が格好良くて、いきなり最前線に突入したのに武装を駆使して大戦果を挙げてしまうなんてのは……夢もへったくれもないが、まずありえないんだよね。でも、完全試作機、実験機がその特殊性を生かして活躍するってのは燃える部分があるのもまた事実だ。

(乗り込んだパイロットにもよるんだろうけどさ、そう言うメカ物のお約束ってのは。自分の作る武器では無理だわ……結局今までに作ったモノだって、最初は基礎を基にこうすればいいんじゃないか? こうやれば新しい使える物になるんじゃないか? という試行錯誤の元に存在している訳だ。このパイルバンカーだって、重量問題を完全に無視できたとしてもこれをそのまま持ち込んでモンスターとの戦いに使えるか? と考えればノーだって答えるしな)

 自分は純粋な開発者とかではないので、いきなり武器の開発を大成功させるなんて事は無理。こうやって何度も何度も試しながら改良していく他ない。いや、これは言い方がまずいか。多くの物を生み出してきた開発者の皆さんだってトライ&エラーを何回も繰り返して新商品を作り上げている訳で──自分のような人間が、そんな人たちを差し置いてパッと新しい物を作り上げられたらそっちの方がおかしいよな。

 そんな事を脳内で考えつつ、またも白の塔でパイルバンカーを試す。今回のシリンダーは三発籠めるタイプにしておいた。それ以上の弾込めを可能にすると、強度に不安が残ったのだ。計算して、十中八九最初の試射でシリンダーにひびが入ると出たからだ。なので問題はたぶんないんじゃないかなー? と思われる三発型にした。

 題材を置き、その上に力を込めて持ち上げたパイルバンカーを置いて固定する。今回は的の鎧は用意していない。今回は三発きちんと打てるかどうかの部分を実験したいからだ。撃てればよし、撃てなかった場合は壊れた部分から理由を探るのでそれはそれでよし、だ。どう転ぼうと、完成品に一歩近づけることだけは間違いない。

 今回もきちんと距離を取り、まずは初弾。ワイヤーもどき越しにトリガーを引くと、キチンと杭が打ち出され爆炎や衝撃を逃がす機構も問題なく動いたように思える。それから十五秒ごとに二発目、三発目も発射。うん、流石はシリンダーの安定性と言おうか……試射に失敗することなく三発打てた。リロードなしで三発打てたのは大きな前進だろう。

 次に近寄って試作四号機の状態を確認する。うーむ、主要部分の大半はまあ問題ないと言ってもいいのかな……一方でシリンダー周りは明確にダメージが見て取れた。やっぱり四発以上装填できる形にしていたらこの部分が持たなかったな。こうなった理由はおそらく……設計に無理がるというたぐいの話ではない。作り手、つまり自分の技術力が足りていないからだと思われる。

(しょうがない、か。リボルバーの回転機構とかシリンダーとか作ったの初めてだったし。むしろ何とか三発持っただけでもかなり上々だったんじゃなかろうか? 明日はこのシリンダー周りのパーツをとにかく作りまくって経験を積む事を重点的にやった方が良いな。経験を積んでよりしっかりとしたものを作れるようになれば耐久性も向上するだろう)

 そう短評を纏めて、後片付けを行う。試作四号機をばらしてより詳しい問題を洗うのは明日でいい。仕事だってあるし、そもそも適切な睡眠は日々の健康に繋がる。徹夜できるのは若い時だけ! そして若い時でも徹夜をすれば将来の健康を前借しているだけ! 夜は寝る、これは生物として必要な事なのだ! と頭の中で謎の活動家が声を上げる。

(まあ、同意するけどさ。ちょっとでも不摂生をすると、健康診断の結果がなぁ──もろに出る歳になっちゃったからなぁ)

 若い時は何ともなかったのに、と同僚もある同僚達は口をそろえて言うがアンタらは酒の飲み過ぎだ! と言いたかったが堪えていた。そもそも健康診断の数日前に盛大な酒盛りをする奴があるか! 肝臓への負担を始めとして、酒やおつまみによるカロリーの取り過ぎともなればいい数字が出る訳もない。もちろん酒を飲むなとは絶対言わない。飲み過ぎるな、とだけ言いたいのだ。

 自業自得でしかないのだけれど。そしてお約束通り、彼らは健康診断の後に禁酒宣言をするのである。さて、どれだけその禁酒宣言を彼らは守れたのだろうか? という話だが──まあ、その、同僚だから言葉を濁して散々な結果に終わったとだけ。毎年繰り返しているという点でもはやお約束となっており、他の同僚も彼らを生温かく見守っている。

 まあ、男女関係なく酒にたばこなどの嗜好品が度が過ぎて壊してしまった人は残念ながら何回も見てきた。それでも、彼等や彼女達は止められなかった人が大半だった。もちろん、手術の後に完全に酒やたばこなどを絶った人もたくさん見てきた。そう言う人は結構長く生き延びている。止めなかった人? 察して。

 こんなことが頭に浮かんだのは、会社の健康診断が近いからだろう。それに今日の昼休みに例のお酒大好きな連中が周囲から今年こそ、健康診断の前ぐらいは酒をこらえろと散々言われていたことも原因だろうな……そんな殺生ななんて言葉を漏らしていたが、誰かがお前達の体をお前達が殺生する事になるんだが? と言ったら一切の反論が出来なくなって沈んでいた。

 まあ、彼等の為を思って行っている事も分かっているからだろうけどさ……うちの会社は本当に社員同士の仲がいいから、そんな社員が病気で苦しむ姿は見たくないという感情から先ほどの言葉が生まれている事は彼等も知っているはずだ。

(そんな不摂生を避けるためにも、しっかり寝ないとな。では、おやすみなさい)

 ログアウトして、明日の忘れ物もないかチェックした自分はすぐに布団に入って眠りについた。明日も仕事と遊び、両方頑張るぞーっと。
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