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エルダープリズムノヴァによる影響

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 一番反応が早かったゼラァは回避を。ザッドとゼットはその場で防御態勢を取った。防御態勢と言っても武器を構えて落ちてくる《エルダープリズムノヴァ》に備えるのではなく、何らかのスキルかアイテムの効果で体の周囲にうっすらとではあるが青い膜を展開した状態で身を護るべく体を固めていた。

 結果として……《エルダープリズムノヴァ》はゼッドとザッド、そして回避行動はとったものの、左にサイドステップした際に右足の足首から先だけが範囲に残ってしまったが故に、その部分だけゼラァにも命中した。その結果は……

「ぐお、毒かよ!?」「ぐ、体が焼ける!」「よりにもよって、アタシにはこんな異常を!?」

 ゼッドは毒、ザッドは体が炎上、そしてゼラァは範囲内から抜け出せなかった右足の足首から先が石化していた。一番運が悪かったのはゼラァだな、石化はなかなか発動しないんだが。が、もちろんこの好機を逃がす訳には甲斐ない。MPを大量に消費した以上、それなりの成果を出さなければ。自分が真っ先に狙ったのは……ゼラァだった。

 理由だが、体の一部だけとはいえ石化した以上一番体の動かし方に難が出るのはゼラァだからだ。更にゼッドとザッドは鎧を着ているが、ゼラァはその戦闘方法から重い鎧を着込む事を好まない。つまり装甲が一番薄い。そしてなにより、回復してしまったラ機動力が一番あるのもまたゼラァなのだ。機動力で引っ掻き回されたところにゼッドやザッドの重い一撃を喰らう展開だけは絶対に避けたい。

 ゼラァに向かって複数の矢を射る。それに気が付いたゼッドとザットが阻止しようと動くが、ゼラァと比べると流石に敏捷性には劣る為矢を阻止する事は叶わなかった。そのまま矢はゼラァに向かって飛ぶわけだが、ゼラァは飛んできた矢の大半を右足の一部が石化しているにもかかわらず回避して見せた。だが、流石に全てを回避しきる事は出来なかったようだ。複数個所に矢が付き立つ。

「ぐうううううっ!!」

 辛そうなうめき声をあげ、動きが止まるゼラァ。一方でこれ以上やらせないとばかりに自分に対して突っ込んできたゼッド。彼の槍の穂先が自分に迫ってくる。が、自分はそれを八岐の月に付けてある爪部分で切り払う。槍を流される形となったためかゼッドは動きが一瞬だが止まり、バランスを取りなおそうとしたのでそこを蹴りで追撃しておく。ダメージを取る事が目的ではなく、転ばすためだ。

 が、ゼッドは転ばない。とっさに槍を杖のように使ってこちらの蹴りで受けた衝撃に対処し再び刺突攻撃を繰り出してきた。これは流石にバックステップを行う事で距離を取り、回避したがそれだけでは済ませない。バックステップしながらも蛇炎オイルを二つ、軽く前に投げておいたのだ。その片方がゼッドの槍の上に落ち、炎が槍を伝ってゼッドに襲い掛かった。

「やべぇ!」

 とっさの判断でゼットが槍を捨てた。が、彼もただ捨てるのではなく、自分に向かって投げ槍の様な形で捨てたのだ。当然槍は自分が火をつけた蛇炎オイルの影響で炎を纏った状態で襲い掛かってくる。更に加えて、ザッドまでもが自分の両手斧をこちらに向かって投擲していたのだ。恐らくはレイジが使っていた斧系統的アーツの一つなのだろう……何せ明後日に投げたはずの斧が自分に向かってホーミングしているのだから。

 飛んできたゼッドの槍はとっさにしゃがんで回避し、その後にやってきた両手斧は矢を斧に命中させる事で勢いを少し弱めてからタイミングを見計らって蹴り飛ばして地面に叩き落とした。しかし、なぜあんな明後日の方向にザッドは投げたのだろう? ホーミング性能があるとは言え、ゼッドの槍との連携とするには首を捻る形であったが──そこで、《エルダープリズムノヴァ》の効果をもう一度考えて予想がついた。

(ザッドは炎上だけでなく、盲目の状態異常もかかっている可能性がある)

 視界を潰されていて、音だけを頼りに投げたとするならば普段からそう言った訓練をしていないと狙いをつけるのは難しいだろう。だから大雑把にこのあたりか? と当たりをつけてザッドは両手斧を投擲するアーツを使ったのだろう。ホーミング能力がある事は、使い手のザッドが知らないはずがない。

 ザッドはすぐに変えの両手斧を持ち出していたが……ゼッドは槍を一時的に失い、この二人からいきなりこちらに向かって中距離以降の攻撃が飛んでくる可能性はかなり下がった。今のうちにゼラァをダウンさせてしまいたい。ゼラァの方に目をやると、一時撤退して状態を回復し、状況を好転させる事を選んだのだろう、かなり離れた場所まで移動していた。だが、逃がす訳にはいかない。

 八岐の月を構え、矢を放つ。ゼラァも矢を放たれた事に気が付いたのだろう、音を頼りに回避行動をとる──だが、やはり右足の石化の影響でその動きは精彩を欠く、と言った所だ。特に、心臓のあたりに矢が一本突き立ってしまった事が致命傷になったのだろう、流石のゼラァも地に伏せた。

「ゼラァ!? ち、やっぱりこいつの弓の上では並じゃねえか!」

 ここでゼッドも変えの槍を取り出していた。ただ、かなりもたついたようだが……普段愛用の槍を失うという経験があまりなかったのかもしれない。そして、槍を構えてこちらに迫ろうとする動きを見せる。

「ゼッド、熱くなるな! 熱くなって突撃をすれば、アースにとってはカモになる行動以外の何物でもない!」

 ゼッドが突撃しようとした所を、ザッドが大声で静止した。が、ゼッドはゼッドで──

「そう言ってもよ! アースの獲物は弓だぞ! この距離を保ったら、一方的にハリネズミにされるだけだっての!」

 こちらへの注意は怠らずに、ザッドの言葉への反論を行う。そうだね、確かに今の状況なら投擲される攻撃以外は届かないから、こちらの弓による攻撃がとても行いやすい。だが、それでもザッドはゼッドに行くなと口にする。

「確かにお前のチャージは強力だ! だが、アースには通じる可能性はまずない! 確実に身を守りながら距離を詰めて反撃するしかないのだ! あの弓による攻撃をまともに喰らえば、お前の鎧であっても容易く貫かれるぞ! そしてそのまともに当ててくるだけの力量が、アースにはある!」

 むう、評価が高いが……これは間違いなく有翼人との戦いでこちらが見せた様々な動きからそう判断しているんだろうな。しかし、戦いにおいては相手が侮ってくれる方が助かるのだが。残念ながらザッドの考えからしてそれは望めそうにない。この二人にがちがちに守りを固めつつ戦闘を続行されると、時間をかなり浪費させられかねない。

(それは避けたいんだよな……いくら能力が十倍になっても自分という存在は一人であることには変わりがない。だからこういう形での足止めが一番効く。だからこそ、ここはゼッドに突っ込んできて欲しかったんだが)

 早々上手くはいかないか……それにダウンさせたゼラァも拘束出来ていない。回復アイテムを使われて起き上がってこられたらまたゼラァを相手にしなければならなくなる。かといって拘束に動けば、ザッドが前に出てゼッドが拘束具を壊すだろうし……あと一人、どちらかを落とさないとダメだろうな。

(ザッドが間違いなく盲目の状態異常にかかっていると確信が持てるのであればもっと積極的に動けるのだが……そこをつつくか?)

 あまり時間をかけたくない。出来る事は積極的に試すべき、か。そうなれば、すぐに動こう。ここから向こうがどう動くかの出方で判断する。
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