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久々の塔登り

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 翌日、ログインして今日も塔の中へ。今日からは再び普通に塔を登る事となる、気合置入れなおして頑張ろう。

「来たか。では先に話しておいた通り、四五〇階まで飛ばす事となる。飛ばした先で球体に触れ、記録する事だけは絶対忘れないでくれ」

 彼との付き合いも終わりだな。援軍として動いた分、他の管理者よりも長い付き合いになったな。

「では、お願いします」

 さて、ではさっそく飛ばしてもらおうとしたのだが……その前に連絡事項があると言われてしまった。なんだろう?

「その、こちらの勝手で済まないのだが……上からさっさと貴殿を上層へと上らせろとせっつかれてしまっている。その為、七五〇階まで貴殿に試練が課されることはない」

 ──へ? それってあんまりにも贔屓が過ぎるのでは? 他のプレイヤーは試練で苦しみながらも進んでいるのに、自分だけパスってのはあまりにもおかしいだろう。なのでその点を指摘したのだが。

「その代わり、五〇〇階と七五〇階の試練は他の者よりも遥かに厳しいものになるそうだ。どうやら、貴殿が二五〇階で達成した試練のやり方が影響しているという話と聞いている。それと、貴殿が援軍として出向いた先も関係している。前の試練が七〇〇階の試練であったことは伝えたが、他も六〇〇階の難易度の試練であった。それによってだ……」

 ここでいったん話を区切る管理人。なんだ? どうにも口にしたくない事をしなくてはならない、みたいな雰囲気が漂い始めたんだが。

「その、身内の恥と言う訳ではないが……貴殿の援軍の時の戦いぶりを見た事で、貴殿の試練を受け持ちたくないという者が多数現れてな……他にも数人、そう言う形で五〇〇、七五〇と言った区切りの試練を厳しくすることでそこまでは試練を無しとする処置がとられた挑戦者は僅かながら貴殿の他にもいる。なので、遺伝だけの特例と言う訳ではない」

 なるほど、他の僅かな──の中にグラッドのパーティはたぶん混じっているのだろう。お前らの強さは分かったから、一定レベルまでさっさと上がってこいと言う事だろうか? その一員として選ばれた事は名誉に思うべきなのだろうか……

「話は分かりました。正直自分はかなり出遅れ気味になってきているので、その処置はこちらとしても助かります」

 掲示板情報だが、今は大体全体の七割が五〇〇階層前後まで進んでいるらしい。一割がそれより上で、残り二割がそれより下。誰が調べたのかは不明なんだけど……その情報を見た他の人達からは大きな反論が出ていないので、大きくずれたデータと言う訳でもないらしい。

「うむ、今は大半が貴殿より上の階層にいる。まずはそれに追いついてもらいたい。では、話が長くなってしまったがそろそろ四五〇階まで飛ばすぞ、良いか?」「大丈夫です、やってください」

 さて、では前進を再開しよう。とにかく七五〇階までは出来る限り急いで進めよう。制限時間内に塔の天辺に到達しないといけないのだから。

「では、貴殿の幸運を祈る。さらばだ」

 その言葉と共に、自分の体が浮き上がるような感覚を覚え──気が付いたら自分は球体の前に立っていた。今まで何度も見ていた彼はいない。ここが四五〇階なのだろう。実感はないが。

(とにかく、記録だな。彼からも念を押されていたし)

 球体に触れる事で記録完了。これで力尽きてもここから再開できる。では先に進もうか……とにかくまずは五〇〇階到達を目指さなければ。試練が免除されているのだからさっさと到達しなければ──そう思って足を踏み出した自分を待っていたのは、ジャングル。熱帯地域に生えている木々や草花がお出迎えだ。

 当然モンスターの反応も多数。だが、所々に隙間があるのでできる限り戦闘を避ける方向で進む。ここまで戦って来てほぼ確信したが、自分のスキルはおそらくもう上がる事はない。肉体の限界に達してしまっていると考えて良いだろう。何せここまであれだけ戦ってきたのに、どのスキルも全く上がっていない。

 他のプレイヤーはそんな事は無いらしく、スキルレベルの上昇がすごくいいという意見まである。そんなプレイヤーがいるのに、自分は全く上がらないとなればこれが限界なのだろう。limit! などの表記が現れないのにもかかわらず上がらないのは……たぶん自分の行動とやってきた事の異常性が関係しているのではないだろうか? うん、そう言う事にしておきたい。

 一応モンスターはどんなのがいるか、という確認飲みしておく。ワニ、ニシキヘビぐらいのサイズをもつヘビ、コンドルの様な猛禽類が要る様だ。ワニとヘビは分かるんだが、なんでコンドルのような奴がいる? コンドルは確か乾燥した地域に生息しているはずでは……ま、まあこの世界というかこの塔の中は色々とカオスな状況になっているから、そう言うのもありなのかもしれない。

 なんにせよ、空から見られると厄介なのでコンドルもどきからは十二分に距離を開けて進む。ただどうしても前に進むたびに大きな葉っぱなどに体が触れてしまう為、音を立てずに前進することが出来ない。ワニやヘビ達が、この音に反応して寄ってくるかもしれないので、あまり音を立てたくないのだが……

 更に、ヘビにはピット機関という熱で相手を察知する能力もある。多分、ここに居るヘビ達にもそれは備わっている、という前提でいた方が良い。一回見つかかったら、隠蔽スキルを発動して隠れてもその能力でこちらの位置を見破ってくる可能性は高いだろう。故に、見つかったら戦う他ない。流石に熱まで周囲と同化させるスキルなんて使えないのだから。

 そのまま歩く事二〇分ほど。ジャングルにふさわしくない扉を数回潜って前進。今までは一度も戦闘をせずに進めているが……それは残念ながらここまでの様だ。まばらながら、ヘビとワニの団体さんが待ち構えている。戦いは避けられそうもない……やるしかないだろう。

(数は……ワニが六、蛇が九か。ワニを先に弓で処理して、その後にヘビを臨機応変に対処する形が良いか。八岐の月であのワニの鱗を貫けないとは思わないし……それでいいだろう)

 最終確認、コンドルもどきは近くに居ない。ワニとヘビの数も間違いない。良し、仕掛けよう。ワニに対してゆっくりと矢を番えて……放つ。放たれた矢は、ワニを貫通した。やはり、あのワニの鱗にこちらの矢を防ぐほどの防御力はない。撃たれたモンスター側は、まだ自分達がどこから攻撃されたのかが分からないようだ。周囲を見渡している。

 もちろん、それならばさらにワニの数を削るまで。二匹目、三匹目とワニを射殺す。これで流石にこちらの位置を察したようだ。生き残ったモンスター達がこちらに向かって殺到してくる。だが、自分を焦らせるには圧が足りない。接近される前にワニを全滅させ、さらに蛇も四匹ほど落とさせてもらった。

 残りの蛇はレガリオンで切って捨てた。今更、このレベルの相手に苦戦などしようがない。むしろ、だからさっさとこんな場所にいないで上にこいと塔の上にいる主から指示が管理者たちに流されたのかも。モンスターからのドロップは、ワニが肉を複数落としていった。確かちゃんと料理すれば鶏肉みたいな味だったという記事を見た事がある。後でやってみよう。

 結局ジャングルは四七〇階まで続いた。戦闘は最小限にしたが、それでも結構な数のワニとヘビのお肉が手に入った。四七〇階の球体に触れて記憶した後、その場で軽くワニとヘビの肉を試食してみた。うん、ワニは鳥のささ身っぽい味。蛇の方はある程度油が少なくなったウナギのような味がした。あくまでこれはワンモアの世界の話で、現実とは違うのだろうが。

 ワニのお肉は一口大の大きさにしてから揚げ物にして、ヘビの方はウナギを焼くような感じで、両方を丼物の具材にしてしまった。ワニのからあげ丼とヘビのかば焼き丼である。なかなか上手にできたのではないだろうか。


ワニのからあげ丼

 制作評価 8

ワニの身を挙げて、丼の具としたもの。揚げ物でありながら、さっぱりと食べられる一品。

空腹速度低下(中) 防御力増加(中)


ヘビのかば焼き丼

 制作評価 8

ヘビを、ウナギのようなやり方で開き、焼いた身を丼の具材としたもの。ウナギに比べるとやや油が少ないが、十分な旨味がある。

移動速度上昇(小) 直感強化(小) 行動時騒音低下(小)


 ヘビのかば焼き丼の直感強化はモンスターを発見しやすくなる効果が、行動時騒音低下は物音を立てにくくする効果がある様だ。効果量は(小)なのでそこまで大きな効果ではないが、多少は違ってくるのだろう。後は食べてみないと、効果のほどは実感できないか。ここで食事をして、前進を再開しよう。今日はまだまだ時間がある。
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