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いよいよ大詰め?

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 宝箱の中身を丁寧に皆で吟味していく、が。

「くそっ! 回復アイテムなどはある程度あったが蘇生アイテムは無しかッ!!」

 大太刀使いの男性プレイヤーが口にした通り、蘇生アイテムの存在は無かった。宝箱に入っていたのはヒヒイロカネの装備(スネークソード、弓、杖)、HPとMPの回復ポーションが六つづつ、昏睡の呪力石と治癒の呪力石が二つづつ。これで全てだった。

「ここからは四人……しかも前衛が一人しかいないなんて」「あ、私がここからは前衛として動きますよ。なので前衛と後衛二人づつですね」

 魔法使いの女性プレイヤーの零した言葉に、自分がすかさず返答する。普段はソロだし、前衛を務めること自体は何の問題もない。

「すまないが頼む。俺一人が前衛だと流石に支えきれん」

 大太刀使いの男性プレイヤーは合した言葉に自分は頷いて応えた。状況は悪化したが、全滅したわけではない。まだ、クリアできる可能性は十分に残っている。それに周囲のモンスターを殲滅した事によりレベルも上昇し、四三まで上昇していた。このレベルアップのお陰で、自分のスキルである〈百里眼〉が、普段の七割ぐらいまで解放された感じがする。

 さて、とりあえず手に入ったポーションでHPとMPをある程度回復してから前進を再開する。霧が薄れた事と〈百里眼〉の力が戻ってきた事で、モンスターの発見が非常に楽になった。多数固まっている連中は避け、数匹程度の塊は倒す。倒す理由はいざ逃げようとしたときに囲まれないようにすることと、蘇生アイテムのドロップを願ってである。

「それなりに進んだが、まだ出口らしきものは見えてこないな」「結構歩いたはずだし……今までのエリアならそろそろ出口が見つかってもおかしくないわよね」

 大太刀使いの男性プレイヤーの言葉に、アーチャーの女性プレイヤーがそう話を合わせる。確かに、ここまでのエリアの広さを考えると、出口が見つかってもおかしくない。霧もかなり晴れたので、そこら辺の感覚がおかしくなっていると言う事はない。だが、ここは最終エリア。一回り大きくてもおかしくはない。

「二人とも、焦っちゃダメですよ。最終エリアなので、規模が大きいという可能性もあります。変に焦って先を急いだ結果、誰かがやられて状況がさらに悪化するなんて事にならないようにしなければなりませんから」

 ここで、魔法使いの女性プレイヤーからそんな言葉が出てきた。確かに、二人は早くゴールしてクリアしてしまいたいという焦りが見え始めていたからな。それに助っ人に過ぎない自分が言うと反発を受ける可能性もあった。だが、付き合いの時間が長いパーティメンバーから言われれば、そう言った反発は起きにくいはずだ。

「確かに、その通りか」「そうね、ワンモアがそう簡単にクリアせてくれるはずもなかったわね……」

 どうやら、二人共少し冷静さを取り戻せたか。しかし、やはり面子が一気に三人減った事による焦りはそうそう抑え込めるものじゃない。それがまた浮かび上がってくる前に、出口が見つかれば良いのだが──っと、敵だ。

「先方右前に、猿が二匹、オーガが三匹の団体を確認。数が負けているので、回避する事を提案します」

 自分の報告に、三人が少しだけ相談してから回避する事で同意。左側にそれる事でモンスターから見つからないように進む。あの数ぐらいなら、面子が揃っている時なら戦って倒せているんだがなぁ……仕方がない。どんな時でも常に万全とはいかないんだから、今ある手持ちの戦力で何とかやりくりしなければならない。

 その進み方を維持しつつ前進するが、倒したモンスターからはいくばくかの食料や回復アイテムぐらいしかドロップしない。やはり装備品や蘇生アイテムを得るためには、敵の集団を倒さなければならないのだろうか? それとも、単に引きが悪いだけか? 物欲センサーに引っかかってドロップしない可能性もまた、否定できない。

 そしてついに回避できない状況に陥った。前方にある程度間をあけつつ、モンスターが布陣している。一つの団体は三匹から五匹ぐらいしかいないのだが……厄介な事にどの団体にも必ず猿が混じっている。オーガメイジも数体確認できているので、敵の強さは大きく上ゲラれてしまう事も間違いない。

 だが、逆に言えばここから先にこちらを進ませたくないと言っている様な物でもある。進ませたくないものは何か? ゴールの可能性が高いだろう。その結論に、当然皆がたどり着く。

「やるしかない、か?」「この何が何でも進ませたくないという布陣。絶対奥にゴールか何かあるわよ」「自分も同意見です。ここは無茶をしてでも突破したい」「危険な橋ですが、渡る価値がある以上進むしかないですね。賭けるべき場所、と言う事でしょう」

 全員の意思の統一がなされ、ここを突破する事に決める。そうなるとどう戦うか、が肝心だ。数が多い分、手早く一つの集団を処理していかなければ数に圧し潰されて全滅するだろう。だが、今全員の武器がヒヒイロカネになっており、火力は前衛三人がやられてしまったあの戦いの時より上がっている。

 なので上手くやれば、複数の小さな集団がひと固まりになる前に一つづつ潰していける筈だ。集団がある程度間を開けている事もあって、決して不可能な話ではない。肝心な事は、集団の端っこをちゃんと見つけてそこから倒し始める事だ。よく確認せずに襲い掛かって挟み撃ちにでもされたら、その瞬間この作戦は瓦解する。

「よし、じゃあそれで行くぞ。すまないが、モンスター集団の端を見つけてくれ」「了解」「分かったわ」

 大太刀使いの男性プレイヤーの頼みに、自分とアーチャーの女性プレイヤーが返答してから敵集団の観察を開始。結構細長く陣を張っているな……何が何でもこちらの接近を阻もうという意思が伺える。

「結構、長いわね……」「ええ、ちゃんと端を見つけないと簡単に挟み撃ちにされますよ、これは」

 結局端っこを見つけるのに十分以上は費やしただろう。それだけ長く、そして数が多い。一つの集団を瞬殺に近い感じで倒していかなければ、数に圧し潰されてお終いだ。だが、この先には間違いなく何かがある。ここまで大規模に守っているのだから。

「よし、じゃあ移動するぞ。十分に距離を止まって静かにな」

 端の場所を教えると、大太刀使いの男性プレイヤーがそう口にした。自分達はそれに頷いてから移動。十二分にモンスターから距離を話した状態で移動する。万が一にも気が付かれるわけにはいかないから……距離を保ち、最後となるであろう食事を行い、HPとMPが完全に満タンになっている事を確認し合う。

「では始めましょうか。何が何でも、ここを突破しましょう」

 魔法使いの女性プレイヤーの言葉に、皆で頷いて静かに陣の端っこにいるモンスター集団に近づいていく。戦いが始まってしまえば、後はひたすら戦い抜くだけだ。始め方が一番重要な作戦なので、誰もが慎重に動く。何とか気が付かれる事なく、弓の間合いにまで近づいた。

「よし、始めよう。二人とも、最初の攻撃は任せたぜ。欲を言えば、オーガだけでもヘッドショットで落としてほしい」「最大限の努力はします」「結果も出さないとね」

 大太刀使いの男性の言葉に自分が返答した所、アーチャーの女性にそう言われてしまった。そうだな、努力だけじゃなく結果を出さないとだめだな。ここで結果が出せなければ、今までの行動が全て水泡に帰してしまう。それは流石に悲しすぎる。では、いい加減覚悟を決めて始めますか。このモンスターの布陣を食い破らなければね。
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