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霧の中を探索中

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 それからしばらく霧の中を歩き回った。オーガ達を倒しつつ進み続け、更に明らかに場にそぐわないものを二つ見つけていた。一つ目は狛犬。神社に飾られているアレだ。これも調べたのだが……特に何らかの仕掛けは無かった。そしてもう一つが再び噴水。ただ、先に見つけた噴水よりも大きく、装飾も派手になっていた。

 何かあるかもと噴水はしっかり調べたのだが、何らかの隠しスイッチの様なものは無し。ただ、この噴水にたどり着いてから霧の深さが和らいでいる事を確認した。ある程度ではあるが先を見渡しやすくなっているのだ。そうなると、残りのオブジェクトを探し当てればこの霧を完全に晴らすことが出来ることが出来る可能性が出てきた。

 だが。この霧の深さが和らいでいると感じられたプレイヤーに差が生まれていた。具体的には、自分、アーチャーと魔法使いの女性プレイヤーが和らいだと感じ、それ以外の面子は変わっていないと感じているようだ。これは話をして確認を取ったのでたぶん間違いない。なんでこのような差が生まれたのかは、現時点では分からない。

 それでも、ある程度先が見えるようになったおかげでオーガ達の接近をより早く前衛組に伝えることが出来るようになっていた。猿の接近も一回あったが、今回は不意打ちされる事なく対処。問題なく倒す事に成功した。やはり視界が広がるというのは大きい。

 しかし、手に入るアイテムは寂しい限り。かなりのモンスターを倒しているはずなのだが、食料以外は初期武器などの、現時点では明らかにパワー不足な物しか落ちない。これは食料を除き、レアドロップ以外は全部役に立たない物しか落ちないエリアなのかもしれない。幸い食料は落ちるので、餓死の心配はないのだが。

「どれぐらい歩いた?」「このエリアに入ってから二〇分とちょっとが経過してる。ただ霧のせいでどれぐらい歩いているのかはさっぱり分からないわね」

 なんてやり取りが前衛で行われていた。そうか、もう二〇分過ぎているのか……ならばそれなりに歩いたはずだが、出口らしきものは確認できていない。噴水を見つけてこの霧を晴らしていかないと、ゴールできない仕掛けになっているのだろうか? それともゴールにたどり着ければそれでいい? うーん、分からない。

「進む方向はまっすぐでいいんだよな?」「これと言った目印が無いからなぁ……変に曲がると、最悪同じ場所をぐるぐる回っているだけだったなんて展開を迎えかねない。もしマップの端にたどり着いたら、その気に曲がる事を考えればいい」

 との事で、まっすぐ前進を続行。この方針に文句はないので黙って進む。そうすると、またオブジェクトを発見。今回も外見は噴水なのだが……でかい。宮殿の前にあるような豪華でサイズがでかいタイプだ。そしてコイツはただでかいだけではなく。

「この噴水、水じゃなくって霧を噴射してないか?」「霧が深かった元凶はこれか!?」「ぶっ壊せば止まるか?」「おバカ! こういうのは下手にいじって壊すと取り返しがつかなくなるものってのがお約束でしょこの脳筋!」

 前衛があーだこーだ話し始めたが、彼等の言う通りこの噴水は霧を噴射し続けている。これを止められれば、霧が一気に薄れる可能性は十分にあるだろう。問題はどうやって止めるか、なのだが。

「とりあえず調べてみましょう。何か分かるかもしれませんし」「そうだな、まず手分けして調べてみよう。結構でかいからな」

 噴水の周囲をまず皆で手分けして調べてみる事に。下手に触ると何が起きるか分からんと言う事で、一切のお触りは禁止。そして周囲を調べ終わった所、噴水の三か所に何らかの穴が開いている事を確認。覗いてみたが、奥は暗くて確認できず。穴の大きさも様々で、手を突っ込める大きさ、鍵穴のような穴、そして直径五センチぐらいの穴だった。

「多分、罠があるよなぁ」「無い、とは思えないな」「手を突っ込める大きさの穴があったけどよ、前TRPGで腕を突っ込んだら罠があって、奥にあるアイテムを掴んだら腕が斬りおとされたって経験があるんだ。だからあそこに腕を突っ込むのはお勧めしない」

 へえ、TRPG──テーブルトークRPG経験者がいたとは。まあ、それはともかく彼の言葉には同意だ。先が見えない穴に腕を突っ込むのは危険すぎる。彼の言葉のように、トラップが仕掛けられていた場合回避できないからだ。とはいっても、その奥に何かあると分かった場合は手に入れたくなる……という人の欲をついた罠である。

「後は五センチほどの穴と鍵穴っぽい穴か……鍵穴の方は、助っ人の彼に確認してもらうしかないだろうな」

 タンカーの男性プレイヤーの言葉に、自分は頷いた。これは自分の仕事の範疇だろう。言われなければ、自分から立候補するつもりだった。

「じゃあまず、鍵穴から当たらねえか? これは経験者がいるんだから一番マシなアタック方法だと思うんだがどうよ?」

 無難だね。じゃあ早速……と言う事で鍵穴のような穴に挑戦してみる事に。ふーむ、これはこうなって……宝箱の鍵を開けるのと大差はないな。道具が拾った貧弱なものしか無いけれど、なんとか行けそうだ。よし、これで回るはず。

「たぶん行けたと思う、回すので念の為に身構えておいて欲しい」「OK、俺が盾を構えておく」「じゃ、まわしますよ」

 鍵穴をまわすと……小さな穴が開いた。中は……ふむ、ボタンが一つか。押さなきゃ始まらんよねと言う事で、同行パーティに許可を貰ってから押してみる。

「押しました、何か変わったかな?」「あ、噴水が吐き出している霧の量が明確に減ってる! でも、完全に止まる訳ではない様ね」

 アーチャーの女性プレイヤーの言葉を聞いて、自分も噴水の様子を確認する。確かに上部から噴き出している霧の量が減っている。その為なのか、周囲の霧がかなり晴れてきたように感じられる。だが、その一方で噴水が吐き出す霧は完全には止まっておらず、もう一手何かしないと完全に止める事は出来そうにない。

「このパターンだと、二つある穴のどちらかに同じ仕掛けがある、か?」「多分そう言う事だろうが……間違った方を押すと霧の吐き出される量が元に戻って、穴が全てロックされるって可能性もあるぞ」「そうなると、これ以上触らないという選択肢もあるのね」

 同行者の話の内容は、十分にありうる話だ。間違ったスイッチを押したら、トラップの復活なんてのもお約束の一つだろう。この噴水が吐き出していた霧の量が減ったのだから、これ以上触らないという判断もありだ。穴はあと二つあるが、その穴の先にあると思われるスイッチが霧の噴出をさらに減らすものであるという保証はどこにもない。

「明確に霧が晴れた。これ以上いじらなくていいんじゃないか?」「ああ、賛成だな。俺達でもわかるぐらい霧が薄くなってる。これなら先も見えるし、これ以上いじらない方に俺は票を入れる」

 いじらない方に票をさっそく入れたのは両手剣と大太刀使いの男性プレイヤーだ。その一方で……

「俺はもうちょっとチャレンジしたい方だな……次、こんな仕掛けを見つけるのは何時になるか分からんわけだし、霧を薄く出来るチャンスは逃したくない」「私ももっと霧が薄くなった方が射撃しやすいのは確かなのよね」

 一方で、もう少しチャレンジしたいと言ってきたのがタンカー役の男性プレイヤーと、アーチャーの女性プレイヤーだ。こっちの言い分も分かるけどね。

「うーん、悩ましいけど私はもういじらない方が良いな」「私もいじらない方が良いと思います、失敗した時のデメリットはたぶん大きいと思いますから」

 残りの格闘家と魔法使いの女性プレイヤーの二人がいじらない方に票を入れて決着がついた。これ、どっちも正解なんだよねぇ……ただ、どちらを選ぶかの話であって。だが、多数決で決まったのでタンカー役の男性プレイヤーとアーチャーの女性プレイヤーもまあそれなら仕方が無いという感じであった。

「もう一つぐらい、この手のオブジェクトがあればいいんだがな」「無いって事は無いと思うぞ。なんにせよ、これで霧がかなり薄くなったから周囲が見やすくなった。かなり進みやすくなったのは間違いない」

 同行者の言う通り、霧はかなり晴れている。周囲を見渡す事もできるようになった。そして分かったのが、周囲にはオブジェクト以外これと言ったものが何もないと言う事。そしてもう一つ……この霧は、モンスターの視線も奪っていたと言う事だ。なぜそれが分かったのかというと……周囲に現れたモンスターの集団×三が、こっちに向かって前進してきたからだ。

「敵の大群が来ています! 戦闘態勢を!」「マジかよ! 霧が晴れてきたとたんこれかっ!」

 自分の言葉に、タンカー役の男性プレイヤーが盾を構えながら皆の前に出る。しかし、モンスターの団体にはサルも数匹混じっている……この試練中で一番きつい戦いになる事が予想できるぞ、これは。
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