とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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お次の試練は、またまた変わり種

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 翌日。今日も援軍として動くために塔の中へ。いつものように彼と挨拶をしてから今日の派遣先の情報を貰う。

「今回は、特殊な環境下での戦いとなる。全ての武器や防具を一旦取り上げられ、スキルレベルも一にまで下がった状態から始まる。ただし、道の途中で落ちているアイテムは非常に多く、またレベルの上昇速度もすさまじく早い。その状況で三〇階上り切った先にいる門番を打ち倒せばいいという仕組みになっている。無論、一階の長さは短い」

 ふむ、これまた特殊なルールだなぁ。とはいえ、行かないという選択肢だけはない。

「分かりました。それにしてもまた特殊なルールですね……とにかく、行ってきます」「一筋縄ではいかない。気をつけてな」

 そして飛ばされた先では、六人のプレイヤー達が待っていた。ここは、家の中か?

「援軍来た、これでいける!」「よろしくな!」「援軍が来てくれたんだから、このチャンスを逃しちゃダメだよ!」

 今回の同行者は、男性プレイヤー三人、女性プレイヤー三人。装備は……全員初期装備になっている。自分も含めて。ただ、メインの武装に違いがあるので見分けはつく。黒いロン毛の男性プレイヤーは両手剣。黒毛でスポーツ刈りの様な頭部の男性プレイヤーは大太刀。赤い髪を後ろを結わえて変則的なポニーテールのようにしている男性は大盾に短剣。彼がタンカー役だろう。

 青い髪をツインテールにしている女性プレイヤーはセスタスをつけているので格闘家、緑のセミロングの女性は杖を持っているので魔法使いだろう。最後の1人は、紫の髪の毛を地面にこするんじゃないかというぐらい長くしており、手にしている武器は弓なのでアーチャーだな。なお、じろじろ見る訳にはいかないが、三人ともボディスタイルは素晴らしいとだけ付け加えておこう。

「よろしくお願いします、ここに来る前に簡易的な説明は受けているのですが──一応経験者である皆さんに詳しいルールを伺いたいのですが宜しいでしょうか?」「ああ、こちらとしてもそのつもりだった。とにかく、まずは話を聞いてくれ」

 タンカー役だと思われる男性からの説明を聞いて、自分は一言ぽつりとつぶやいた。

「ローグライクゲーム……」「その言葉が出るなら、問題ないな。とにかく、勝手な行動をとると全体が辛くなる。気を付けてくれ」

 この試練は、ローグライクゲームのように自分達が一回行動すると敵も一回行動する。攻撃、一歩歩く、アイテムを使うなどの行為が一回行動であるとみなされる。向きを変えたり、周囲を見渡したりすると言った行為は含まれない。逆に言えば、こちらが行動を起こさない限りモンスター側も何も行動できないと言う事でもある。

「最初感覚がつかめなかったこともありまして……早々に全滅させられたこともあります」「一回やられると、たまに出てくる蘇生アイテムによる復活以外では復帰できないんだよね。幽霊になって後をついていくって形になるから」「何せ装備もなければレベルも1になってるから序盤はアーツも使えんしな」「使えるようになってもMP回復アイテムが出るかどうかは運しだいだし」

 ワンモアのシステムとローグライクのルールを無理やりつなぎ合わせた感じだな。自分もステータスを確認すると、全てのアーツが使えなくなっていた。レベルアップで徐々に解禁されていくのだろう。後、真同化の残滓は完全使用禁止。今回は頼ることが出来ない。

「まあ、まずはやってみましょうか。失敗しても何度もチャレンジすれば良いだけですから」「そうだな、とにかくまずはやってみよう。援軍として来てくれたそちらとしても、感覚を掴みたいだろうしな」

 という感じで、まずはファーストアタック。挑戦する意思を同行者の1人が告げると、全員が家の中? から転移させられる。転移が終わると立っていたのは森林の中。ただししっかりとした道があるので、進むのに問題はなさそうだ。

「じゃあ行こう、ああ、道には見えないけど罠が仕掛けられている事もある。誰かが引っ掛かるか、攻撃してあぶり出しに成功すれば見えるようになるんだが」「後は、見えるようになるアイテムもあるよ」

 やっぱり罠もあるのか。でも盗賊関連のスキルレベルも1なので、罠があるかどうかはさっぱり分からない。周囲の敵の存在も感じ取れない──こんな感覚はものすごく久しぶりだな。

「とりあえず、序盤の五階は歩き回ってアイテムを見つけつつ、モンスターを倒してレベルを上げていく。そこそこの武器が出れば、かなり楽になるからしっかりチェックしていかないといけない」

 大太刀使いの男性プレイヤーの言葉に従って行動していく事になった。この森林付近で出てくるモンスターはファスト周辺にいるモンスターと同じぐらいらしい。序盤五階でレベルを上げ、装備を整える事が彼らのやり方らしい。ただ──

「食い物が出るか出ないかの運もあるからなぁ」「餓死は辛いよねー……でも、アイテム探さないと結局途中でやられるからねぇ……」

 ローグライクお約束の食料関連の枷もある。これは実際にプレイヤーの空腹感で表現され、かなりきつい様だ。で、完全に空腹になってしまうと目が回って上手く歩けなくなったり攻撃が出来なくなるだけではなく、HPがゴリゴリ減って最終的に死亡する事になるそうな。空腹感の表現まで、凝るんじゃないよと言いたい。

 そんな事を教えてもらいつつ、モンスターを狩りアイテムを稼ぐ。序盤だけあって、こちらが弱くてもモンスターを倒す事は難しくない。更に一本だけだが鋼の大太刀が出た事により、大太刀使いの火力が目に見えて上がった。森林のモンスターならば一撃必殺となっている。

「もう一本ぐらい、いい武器が出て欲しいんだが」「後防具……せめてレザーアーマーでもクロースでもいいから出て欲しいよね。初期服じゃ心もとなすぎるし」

 残念ながら、今回はそれ以上の収穫は無かった。幸いいくつかの食料としてパンやおにぎり、ピザに焼いた肉などが手に入ったので、アイテムの引きは悪くない。そして森林五階目。

「お、上質な木の弓が出たぞ。どっちが使う?」「自分は後回しでいいですよ」

 弓が出たので、同行者に使ってもらう。自分はあくまで援軍だし、スネークソードもあるのでここは彼女に譲るべきだろう。そうして装備してもらったわけなのだが。

「うっそ、この弓呪われてた!」「マジかよ、良い弓だからしばらくは大丈夫だろうが……呪いを解くアイテムが見つかったら最優先で使わせないとだめだな」

 呪いシステムまであるとは。ま、それでも最初に使っていた弓に比べると遥かに優秀な弓であることは間違いないらしいので、呪われていても使う価値はあるそうな。この階層では、さらにチェインメイルやレザーアーマー、クロースと言ったアイテムも獲得できた。防具は前衛に最優先で回し、これで多少はましになった。

 また、レベルも全員が六まで上昇し、序盤のアーツである《スラッシュ》や《ファイアアロー》などが解禁されている。が、MP回復のアイテムが出てこないのに乱発は出来ない。出てきたとしても魔法使いに回す事になるだろうな……一応時間経過でHPと共にMPも回復するのだが、時間を経過させると腹が減る。腹気減ると食料に手を付ける事になる。そして食料が枯渇すると、死が迫ってくる。なので、やはり乱発はしない方が良い。

「今回はまあいい方だな。食料もそこそこ、武器は良いのが二つ。片方呪われてたのは目をつぶるとして……スタートダッシュは出来た」

 武器を変えたとたん、火力が跳ね上がっているからね……いい武器を手にした二人がメインでダメージを与えて、他の面子は取りこぼしなどを倒す形を取って手早くモンスターを処理できている。

「とはいえ、ここはまだ練習レベルですからね。次の河原からが本番ですよ」「だな、罠も増えるし飛び道具を使ってくる奴も現れる。注意してくれよ」

 と、同行者お二人からの情報。なるほどね、まあ飛び道具を使う奴が出てくるのは予想していたし、罠も本格的になってくるのも分かる。この森林区間は、ローグライクの感覚を掴むための練習場的な感じなんだろう。

「了解です、気合を入れなおします」

 言葉だけでなく、一度息を吐いてから気合を入れなおす。何せ、今はレベルが大きく下がっている。この森林を抜けるまでに、今までの感覚とは違い過ぎて結構苦労させられていた。森林エリアで何とかある程度のずれの修正は出来た物の、本調子とはいいがたい。ここで遠距離攻撃をされた場合、普段のように回避できるかどうか。

(何せ、普段使っている改造小盾もないんだもんな)

 油断は一切できないだろう。新鮮な気分という言葉で表現するのはちょっと辛い。同行者たちが、ここを突破するのに苦戦する理由は十分に理解した。次のエリアがどのようにこちらを苦戦させてくるのか……予想が出来ないというのはちょっとどころではなく怖いな。
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