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26巻
26-1
しおりを挟む【スキル一覧】
〈風迅狩弓〉Lv50(The Limit!) 〈砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)〉Lv46 〈精密な指〉Lv54
〈小盾〉Lv44 〈蛇剣武術身体能力強化〉Lv31 〈円花の真なる担い手〉Lv10
〈百里眼〉Lv44 〈隠蔽・改〉Lv7 〈義賊頭〉Lv87
〈妖精招来〉Lv22(強制習得・昇格・控えスキルへの移動不可能)
追加能力スキル
〈黄龍変身・覚醒〉Lv15(Change!) 〈偶像の魔王〉Lv7
控えスキル
〈木工の経験者〉Lv14 〈釣り〉(LOST!) 〈人魚泳法〉Lv10
〈ドワーフ流鍛冶屋・史伝〉Lv99(The Limit!) 〈薬剤の経験者〉Lv43 〈医食同源料理人〉Lv25
ExP53
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 災いを砕きに行く者
託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人
妖精国の隠れアイドル 悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人
魔王の代理人 人族半分辞めました 闇の盟友 魔王領の知られざる救世主 無謀者
魔王の真実を知る魔王外の存在 天を穿つ者 魔王領名誉貴族
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
強化を行ったアーツ:《ソニックハウンドアローLv5》
1
ついに見つけた空のドラゴンさんの浮遊島にて、白羽さんとプレイヤー軍団の戦いがあった翌日。
自分が「ワンモア・フリーライフ・オンライン」の世界にログインすると、グラッドPTのジャグドからメールが届いていた。
食事を終えた後にそのメールを開封し、中身を読むと……
「これは、本当か!?」
と、自分はつい声を上げてしまった。
当然、龍神の分身である幼女にパワードスーツに宿る研究者、白羽さんらが何事かと自分に視線を向けてくる。
「どうしたのじゃアース、急に声を上げよって?」
幼女の問いかけに、自分は『有翼人の障壁発生装置の発見に成功した』という一報が入ったことを伝える。
「へえ、やるものね。確かにそれは大きな発見よ。これで奴らの鉄壁の防御にもヒビが入るわね、それも特大のヒビが」
白羽さんは何度も頷きながら情報の価値を認めていた。
その一方で研究者の宿るスーツは、手を顔部分に当てて何事か考え込むような姿勢になっている。
「何か、引っかかるところがあるんですか?」
自分の問いかけに、研究者からは――
『その報告、装置の発見数については触れていたか? ないのであれば聞いてみてほしい』
との返答だった。
なので自分は、ちょうどログインしていたジャグドに直接ウィスパーチャットで聞いてみることにした。
【アースか、送っといたメールは見てくれたんだよな?】
【もちろんだよジャグド。ところで、発見した装置の数ってどれぐらいなんだ?】
【あ? 数? そうだな、昨日から調べ始めた東の浮遊島だと、大体一四ぐらいだったな。結構ありやがったぜ。それがどうしたんだ?】
一四か。それを伝えると、研究者が宿っているスーツが首を横に振るような動作をした。
【それでは数が合わん。こちらからも一つ、役に立つ情報を出そう。我々有翼人というのは、一二という数字を無意識に大事にする性質がある。だから、防衛装置などの重要な物は、まず間違いなく一二の倍数の個数が設置されているはず。それを向こうに伝えるんだ】
へえ、そんな性質があるのか。現実世界で言うラッキーセブンとか一三日の金曜日とか六六六の獣の数字とかってのと似た感覚なのかもしれない。
ともかくそういう話であるならと、ジャグドにウィスパーを送りつつ、『ブルーカラー』のメンバーにもメールを書いていく。
【アース、そりゃ本当か? そんな情報をどこから仕入れてくるんだよ、お前さんは】
【こちらはこちらで特殊な助っ人がいるってこと。この情報提供者は、洗脳対策の装置を作れて、有翼人にも詳しい存在だ。まず間違いはない情報と見ていい】
こちらの何の迷いもない言葉に、ジャグドからは【一二の倍数だな、覚えておくぜ】と返ってきた。
最後に、『ブルーカラー』への連絡メールはこちらで送っておくとジャグドに伝えて、ウィスパーを終了する。
『大きな発見だ。これで、メインの装置が無事であったとしても障壁の耐久性は大きく落ちる。そうなれば、ドラゴンのブレスによる突破が可能となるだろう。そして障壁がなくなれば、連中も打って出る他なくなる。島に立てこもられてこちらが一方的に削られるばかりという最悪の展開は、これで消える、か。こちら側に追い風が吹き始めたな』
研究者の言葉に皆が頷く。久方ぶりの実に良いニュースだ。
本格的な戦闘が始まったタイミングで、ツヴァイやグラッド達に装置を破壊してもらえば、後からやってくる魔族&ドラゴンの後詰め部隊が戦いやすくなる。
「ええ、これで勝機がはっきりと見えてきました。あとは、今作ってもらっている洗脳対策装置の完成をもって、こちらが攻める側に転じることになるでしょうね」
そう自分は返したのだが、研究者は何も言わない。どうしたのだろうと首を傾げていると、しばし後にようやく返事があった。
もっともその内容は、こちらの予想とは大きくかけ離れていたが。
『それについてなのだが、少し作戦の実行を遅らせてもらいたい。洗脳対策装置の完成はあと少しといったところだ。ここまでくれば、調整にかかる時間を考慮しても長々と待たせることはない。しかし、今のままの私では、奴らとの戦いの途中で脱落することになりかねない。向こうにかなり研究されてしまっているからな』
確かに、今までやってきた防衛戦の中で、向こうに色々と試されてしまった。
他のゲームでも、どんなに強いレイドボスも攻略法が確立されてしまえば、いつかは狩られる。
おそらく、このパワードスーツが狩られる時期は、そう遠くないところにまでやってきている。だからこそ、その前に打って出て有翼人の企みを砕いてしまいたいというのが、自分の本心だ。
『それに関して相談だが……今まで君が戦い、稼いでくれたエネルギーのおかげで、私が私を作るときに諦めた本来の案を実行できる。この強化を施せば、今までの戦いで敵に研究され、暴かれてしまった私の能力情報を、一気に無意味なものにできる。しかし一度戦いが始まってしまえば、もうそんな強化を施す余裕などないだろう。最悪、補給すらままならぬかもしれない。だから今のうちに私自身を強化し、アドバンテージを得ておきたいのだ』
パワードスーツの強化案があるということか。
確かに、こちらの攻撃力や防御力は、向こうも大体把握できてくる頃合いではある。特に防御面においては、先日攻めてきた連中がこちらのシールドを大きく削る薬品を使ってきたこともあり、集中的に研究されてしまっていると見るべきだ。
現状のままで決戦に突入すれば、ダメージがすぐに蓄積し、途中でリタイアという結果を迎えるかもしれないと、研究者は言いたいのだろう。
「――仰る通り、今までの戦いでこちらの戦力はほぼ丸裸にされました。その提案自体は納得できますし、同意もしたい。問題は、それにどれだけかかるかです。時間が長くかかるほど、それだけ洗脳によって敵に回る人々の数が膨れ上がってしまう」
戦力増強のためとはいえ、ここでいたずらに時間をかければ、かえって不利な状況に自分達を追い込むことになりかねない。洗脳対策装置の完成、障壁発生装置の発見、並びに破壊方法が完成したそのときこそ、こちらが攻勢に出るべきタイミングではないだろうか?
『ああ、時間があまりないのは分かっている。だから最優先で取り掛かる強化部分は防御面となる。まずは、先日使われた薬品ではシールドが破れないようにシステムのバージョンアップを図らねば。続いて装甲自体にも手を入れて、その後に武装の向上。この順に強化を施すが、時間が来ればそこで中断だ』
全体をオーバーホールして、完成まで全く動かせない、なんて形ではないのならば大丈夫かな。シールドの性能が上がるのであれば心強いし。
「了解、じゃあその方向で動いてください。もし、その間に攻め込んでくる者達がいたら――」
そこで白羽さんに視線を向けると、彼女は任せろと言わんばかりに右腕を力強く曲げる。
――うん、とっても大きな力こぶが出来上がったのなんて自分は見なかった。
「いよいよ決戦が迫ってきたのう。勝つか負けるかが今後の世界の在り様を左右する……まさに天下分け目といったところじゃな」
幼女の言葉に自分は頷く。
今まで通りの世界で居続けられるか。それとも有翼人達の前にひざを折り、支配される暗黒の時代が幕を開けるのか。その答えが出る日は近いな……
もちろん、後者の結末なんかを迎える気は全くない。しかし戦いは水物、やってみなければ分からないから……
(不安は消えないが……やるべきことはやってるし、これ以上できることは思いつかない。体が鈍らないよう、定期的にほぐすぐらいしかやることがない。薬も十分な量があるから調合する必要はない。当初の予想に反して、全く使わずに温存できているのは大きいな。全体的に見れば、ここまではいい感じで進んでいる)
その幸運が台無しにならないよう、この後の戦いで最良の結果を出さなければならない。
「硬くならないの。今からそんな状態でどうするのよ。力んだっていい結果なんて出ないわ。むしろ過剰な力みは悪い結果しか出さない。そうでしょ? 大丈夫、たいていの無茶は私がどうにかするから!」
白羽さんに気を使われてしまった。
でも、白羽さん。貴女一人に背負わせる気はさらさらない。これは言葉じゃなく行動で示すつもりだけどね。
今日は今のところ、およびでない客人がやってくる気配はない。できればもうこっちが攻めに転じるまで来ないでくれればいいのだが。
それはさておき、自分は白羽さんと体術限定での訓練を行っていた。まあ、白羽さんの要望だったわけだが、自分のためにもなるので了承したのだ。
「貴方の主な武器は魔剣と弓だから、体術は蹴りが中心になるわよねえ」
「これ以上の体術は覚えられないんですよね、自分の限界なので」
自分に合わせて白羽さんも蹴り技のみで相手をしてくれている。お互いにアーツの使用はなし。大怪我を負う可能性があるし、基本を磨くことが目的なので、アーツという大技に頼らないのである。
お互いの蹴りをぶつけ合い、回避し合って、訓練は続く。
「もう少し、速度を上げるわよ。ついてこれるかしら?」
「了解、上げてください」
白羽さんの言葉通り、間合いから出入りする移動速度と、飛んでくる蹴りの速度がワンランク上になる。が、このレベルならまだまだ余裕を持って対処可能である。砂龍さんと雨龍さんのお二人から受けた修業は伊達ではないのだ。
「っ!? このタイミングで反撃!?」
「あまり、甘く見ないでいただきたい」
仕掛けられたかかと落としを、自分は右斜め前に進んで回避すると同時に、右膝蹴りを白羽さんの側面に打ち込んだ。大して効いちゃいないだろうが、驚かせることはできたようだ。
もっとも、これによって白羽さんのギアがもう一段階上がってしまったのだが……それでもまだ対処はできる範疇。慌てずに防御し、回避し、反撃する。
「いいわ、実にいいわよ! この速度でもこうしてお互いに蹴り合うことができるなんて、本当に楽しいわ!」
「ここに来るまでに、いくつもの苦難と修業を乗り越えてきてるんです。こちらにも相応の意地というものがある!」
更に戦いのテンポが上がり、それにつられる形で双方共にテンションも上がってきているようだ。自分も白羽さんも、普段とは違う声が出ている。
「なら、これはどう?」
「おおっと!」
白羽さんの飛び蹴り――から空中で停止しての後ろ蹴り。その攻撃への自分の返答は、飛び蹴りは首を捻っていなし、後ろ蹴りは前方にローリングして回避。その後すぐに反転し、着地点を狩るように(アーツではなく文字通りの)スライディングキックを仕掛けてみた。
「あら危ない」
自分の反撃は、着地とほぼ同時のバク転のような白羽さんの動きによって回避された。むう、掠りすらせずか。
自分は立ち上がって再び構えを取る。白羽さんも同じく構える。
「うーん、惜しいわねえ。貴方がもしドラゴン、もしくはそれぐらいの頑丈な体と長い寿命を持っていてくれたのなら、定期的に会ってこういう手合わせをやりたかったわね。それこそ、何千年にもわたって続けられれば、本当に良かったのに」
これは褒めてくれてるんだよな? でもまあ、残念ながらそれは叶わないわなぁ。
「ドラゴンさんだったら、他にもいるじゃないですか。特にグリーン・ドラゴンさんだったら人型にもなれますし、ドラゴン姿ではできない体術を用いた戦いをしたいというのであれば、彼らに頼んでみるのもいいのでは? 顔繋ぎぐらいならやりますよ?」
自分の申し出に、白羽さんは首を横に振る。
「彼らも確かに強いんだけど……やっぱり違うのよ。彼らは強い、初めから。だからそうね……先程の飛び蹴りを例に挙げましょうか。貴方は最初の攻撃を首を捻ることで、その後の後ろ蹴りは前転することで回避した。その後、スライディングしながら私の着地を狙ってきた。でも、彼らは全く違う」
どう変わってくるのか、興味があるので黙って続きを待つ。
「彼らなら、最初の飛び蹴りを避けない。防御もしない。ドラゴンだから、自分の体に自信を持っている。ううん、持ち過ぎていると言うべきかしら。蹴りの一発や二発受けたところでどうということはないと考えてしまうのね。だから、動きと判断が大雑把になる。技のぶつけ合いという楽しみがなく、私の求めている手合わせは望めない」
あー……うん。ドラゴンさん達からしてみれば、自分達に特攻効果がある武器とかで殴られたりしない限り、食らったって構わないと考えてもおかしくないか。攻撃を受けて、相手の動きが止まったところを捕まえて、パワーでねじ伏せる。それで大半は事足りてしまうのだろう。
プレイヤーが真似するならば、ガッチガチの重装備にあらゆる軽量化効果のある能力を付与して、スキルも軽量化系を取り揃えて……いや、そうなると火力が出せない。真似は無理だな。
「まあ、あの体躯と鱗を持っていますからね。生半可な攻撃など何ともないでしょうし」
そういや、ずーっと前にグリーン・ドラゴンの長と戦ったときもそうだったな。普通の矢なんて簡単に弾かれ、打撃に特化した矢でもかすり傷さえ与えられなかった。結局口の中に【強化オイル】をぶち込まなければダメージは与えられなかったし、《サクリファイス・ボウ》で当時の愛弓を犠牲にして相打ちがやっとだった。
「でしょう? 人型になっても、その防御能力は据え置きなのよね。だから多少の訓練をしていることはあっても、貴方のようにひたすら磨き続けたりはまずしない。そんな彼らが、私の飛び蹴りを受けたらどうなると思う?」
そんなことになったら――想像はそう難しくないな。
「慢心した彼らは、予想していない一撃で吹き飛ばされて即お終い、でしょうかね? もしその一撃に耐えたとしても、頭を激しく揺らされることになるので、しばらくはまともに立てないでしょう。そこに追い打ちを叩き込めばそれで決着……ですかね」
自分の答えに、白羽さんは頷いた。
「大体その通りね。見た目で判断して、人間の小娘の放つ蹴りなど受けたところで何ともないって考えちゃうのよねえ。過去に数回やったことがあるんだけど……あ、もちろん正面から正々堂々とよ? その結果がみんな似たりよったりってのが全く笑えなかったわ。この話が広まらなかったのは、小娘の蹴り一発でのされたなんて知られたら、彼らの自尊心が崩壊するからってところかしら」
そりゃショックでしょうなあ。意識を取り戻した後に現実を理解したら、七転八倒しただろう。もしくはこれは夢だ、って現実を認めなかった奴もいたかもね。で、そんな話を仲間にしたら、何を言われるか分かったもんじゃない。
「だから、こうして戦えるのが楽しいのよ。こういう面は圧倒的に人間達のほうが優秀よね、むしろ元から強ければ強いほど、この手の修練や研究を怠る……というより、やることを思いつかないものなのかもしれないけれど。さ、続けましょ?」
お話はお終いか、荒くなっていた息も整ったし、もう少し付き合いますか。
「では、行きますよ?」
「ええ、遠慮なく来てちょうだい」
この後ログアウトするまで、ひたすら白羽さんと蹴りオンリーの手合わせを続けた。リアルでこれぐらい素早く、激しく動ければ楽しいのにな~、なんてことを頭の片隅で思いながら。
白羽さんも満足したようで、次の防衛も任せなさい!と上機嫌になってくれたので、やった価値は十分にあった。
さて、明日はどうなりますかね?
2
それからリアルの時間で一週間が経過した。この一週間で、色々とこちらの準備が進んでいる。
まず、『ブルーカラー』のメンバーとグラッドPTの探索のおかげで、東西南北にある浮遊島からは六〇個、それ以外の島からは四八個の障壁発生装置が発見された。これが一二の倍数であることも考慮し、全ての装置が見つかったという結論になった。
このデータをジャグドが単独で魔王城まで持ち帰り、魔王様と四天王の皆様による障壁発生装置を破壊する魔道具開発が突貫作業で行われた。
出来上がった魔道具――一種の小型爆弾は、取り付けて数分後に爆発し、魔法的な要素で障壁発生装置の仕組みを焼き切るという仕組みらしい。
本格的な戦闘が始まり次第、この魔道具を持った『ブルーカラー』とグラッドPTの皆が手分けして、各発生装置を破壊することが決まった。なおこの魔道具を皆の手元まで運搬したのもジャグドである。
それから、自分がいる浮遊島への襲撃は、この一週間で二回あった。プレイヤーによる襲撃と、完全に洗脳されてしまった「ワンモア」世界の人達による襲撃が一回ずつだ。が、両方とも白羽さんが鎧袖一触で始末してしまった。
ちなみにこの二回の戦いが終わった後、白羽さんはすさまじい量の食事をとった。ここから考えたことが一つある。白羽さんが以前、団子を大食いした理由だ。
元ドラゴンである彼女は、多分普通の人間よりもはるかに大量のエネルギーを体に蓄積できるのだろう。で、そのエネルギーを放出することで二〇〇人以上のプレイヤーを相手にしても圧倒することが可能なのだ。
当然、それだけの莫大なエネルギーを放出すれば、その分新しく補給しなければならない。だからそのために食いまくるのではないか、というのが自分の考えだった。
また掲示板では、白羽さんがなぜこの浮遊島にいるのかという議論が行われていた。かつて彼女に危ないところを助けられたプレイヤーが結構いたらしく、「彼女が島を護るのには何か重大な意味があるんじゃないか?」「もしかしてあの島は攻め込んじゃいけない場所なのではないか?」という意見が、徐々に、だが確実に強まってきている。
恩人に刃は向けられないという意見も複数見受けられ、島へ乗り込むことを中止したプレイヤーも現れた。そういったプレイヤーと、島を攻略したいプレイヤーとの間で喧嘩腰な意見のぶつけ合いも始まり、次の襲撃作戦の進みは遅くなっているようである。
この状況は、時間を稼ぎたいこちらとしては実にありがたい。
そして最後に大きな話題が一つ。反撃作戦において肝心要である洗脳対策装置が……遂に完成を迎えた。だが、それと同時に、一つの厳しい現実を自分は知ることになる。
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