とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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楽? な4階

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 次のダンジョンに挑む前に、先ほどのダンジョンでどういう事があったのかをお互いに発表しあった。その結果だが。

「なるほどな、そんなオーガが出てくるとは……外れを引かされたって事か。いや、助っ人がいるから外れをまわされたのか?」

 という言葉が出てきた。外れとは? と問いかけてみた所……大体この試練は罠が多いか、モンスターが多いか、数は少ないがモンスターの質が高いかの三パターンがメインらしい。しかし、ときたまこのパターンから外れたダンジョンが生成されることがあるんだと。で、当然そう言う例外パターンだと厄介な存在がうろつく。

「以前に出た奴だと、カウンターが得意なゴブリンだとか魔法が得意なゴーレムとか。で、とにかく強い。罠のパターンだと、これどうやって抜け出せって言うんだというぐらいえぐい封鎖を喰らう事がある。というか喰らった経験あるんだよな」

 って感じらしい。ネームドモンスターになる一歩手前って所かね? 普通のモンスターと比べるとはるかに強いって事だけは間違いない。実際出会ったあのアルビノオーガも、重鎧を着たプレイヤーを投げ一発で行動不能に追い込んだしな……

「が、外れは一階の試練に多くても一回しか出ない。だから残り二階ではそう言った外れパターンは存在しないと思ってくれていい」

 本当かなぁ……が、経験者の彼等に反論するだけの情報も経験もないからここは頷いておく。でも、ワンモアだよ? 絶対ろくでもない攻撃を油断させておいて、こちらがあと少しでクリアできるって所にぶち込んでくると考えておいた方が身のためだろう。

「なんにせよ、外れを引いてなおかつゴールしてくれたという事実はすごく重い。今回でクリアできなきゃマジでどれぐらいかかるか分かったもんじゃない。お前ら気合を入れなおせよ? 助っ人に頼りすぎんじゃねえ!」

 軽鎧のプレイヤーの言葉に他の五人が同意し、話し合いは終わった。その話し合いの間に自分はフルーツを食べた事によって消費したHPを完全に回復できた。これで問題なく次に進める。

「で、助っ人さんには予定通り、重鎧を着たこっちのメンバーの最後の一人に同行してくれ。しんどい事ばっかりやらせて申し訳ないが、頼む」「了解、まあ何とかやってみますよ」

 最後の一人は、片手斧と盾を使うタンカータイプだそうで……レイジに似ているな。彼と一緒に戦った経験が使えるだろうか?

「しかし、俺のトリモチは何時取れるんだ……少しは動けるようになってきたが……」

 さっきのダンジョンで同行し最後に吊り上げた重鎧の彼はまだ体に着いたトリモチの大半がくっついたままだった。ある程度は取れたんだけど、まだまだ完全に剥がれるには時間が必要そうである。

「時間がたつのを待つしかないだろ……普通はそうなったらゴールできないんだがな」

 その言葉通り、剥がれるのを待つしかないだろうねぇ。流石に完全放置は可愛そうなので、フルーツをいくつか適当に選んで彼の口に運んであげたが。

「まあ、こいつのトリモチが剥がれるまでは休憩だな。三階登って、プレイヤーの方にも疲労がたまってくる頃だ。ここで時間をかけて休息を取っておく方が良いから、ちょうどいいだろ」

 そう言いながらも、口元が笑っているんだよなぁ。半分は面白がっているのは明白だ。で、当然トリモチが絡みついている彼もそれは分かっている訳で。

「そっちが同じ光景になったら、覚えてやがれ」

 と言っていたりする。まあ、流石に本気で恨みつらみをぶつけている訳ではないから大丈夫だろうが。そう言う雰囲気があったら止めに入ってるよ。

 それから大体中分ぐらい後だろうか? 彼からトリモチが完全に剥がれたのは。なんにせよ、これで先に進むことが出来るだろう。まあ、彼自身は「休んだ気がしねえ」とぼやいていたが。そして、再び六人がバラバラに入場するダンジョン入り口の前へとやってきた。

「さて、あと二階だ。だが、ここまで大幅な難易度上昇は回避したまま来ることが出来た。これは大きなチャンスだ、逃がすなよ!」

 同行パーティの内の一人がそう改めて声を上げ、全員が気合を入れなおしてから入場。片手斧と盾を使う重鎧のタンカーさんと一緒に入った先は……うん、今までと大差ないダンジョンが広がっていた。

「では、よろしくです」「こちらこそ、よろしく頼む。罠の見切りをお願いする」

 これまで通りに自分が先に出て、罠を見つけたら注意を飛ばしながら回避する。今までと違うのは……部屋が出てこない事だ。

「部屋が出てきませんね」「通路がメインのパターンだろう。難にしろ、戦闘で時間を浪費させられないのは助かる。罠はそちらがすべて見切ってくれているから引っかからないしな」

 同行している彼の言う通り、部屋が出ない事で足を一切止める事なく進めている。ただなぁ……順調に進めているとどうにも裏があるように感じて仕方がなくなるんだよ。今までが今までだけに、順調に進んで問題なく目的達成なんて展開は無いと考えてしまう。本当にこの階は、罠を回避するだけで通過できるのだろうか?

 自分は内心でそんな事を思いつつも、罠を回避しながら通路をひた走る。そりゃ多少は罠の範囲が広くて慎重に進まなければならない場所はあったが、それでも障害と呼ぶには弱い。なんて事を考えつつ進んでいたら、ゴールできてしまった。

「これで終わり、ですね」「いやあ、すごく楽をさせてもらった。部屋が無いパターンを引いたのは運だが、罠を一度も踏まずに進めたのは助っ人である貴殿の力だ。素晴らしい」

 そうしてゴールの鳥かごに乗ろうとして……自分は足を止めた。

「どうした?」「これは……違う! これはゴールに連れて行ってくれる鳥かごじゃない!」

 近づいたとたん、罠判定が急に鳥かごそのものに発生した。もし乗ったら、たぶん上昇していく途中で突如落下を始めて虚空に落としてくるってパターンだろうと予想する。とにかく、この鳥かごに乗ってはいけない。

「そんな罠が!?」「ええ、ここまで近づかなければ罠と見破ることが出来なかったですからね……危ないところだった。そうなると、罠ではない本当のゴールはどこに……」

 最後の最後にこう言う罠を持ってくるとは……やっぱりワンモアはワンモアだな。さて、そうなると周囲に何らかの隠し要素があるはずだな。絶対にゴールできないというやり方だけはしてこない以上……そうして五分ぐらい周囲を調べてみると、罠ではない隠し扉を発見した。ただし床に。扉というよりはハッチと表現すべきだろう。

「こんなところに……」「ガッチリとした隠蔽でしたが、何とか見敗れました。罠の反応はありませんし、おそらく本当のゴールはこの先です」

 ハッチから降りた先には、やはり通路が続いていた。大量の罠というおまけ付きで。そうそう、そうだよ。ワンモアがそんな優しい訳がないよな。こういう鬼畜な事をサラッとやってこそだ。幸い時間はまだある、崩壊まであと数分ほどの猶予はある。ここまで来るのに時間がかかっていないからな。

「大量の罠を確認しました。ここからが本番という奴らしいです」「分かった、先導してくれ。こちらはそちらに従うだけだ」

 罠は大量にあるが、それでも足場として使えるスペースはある。自分が先に歩いて踏んでいいスペースを教えて、同行している彼が後に続く。やがて崩壊が始まった音が聞こえてきたが、まだまだ先だ。焦る事はない。そしてついに、今度こそ本物の鳥かごもどきの前まで到着する。

「──罠は無し。今度は本物の様です」「一人できていたら、絶対罠の鳥かごに乗って、その後に虚空に叩き落とされていただろうな。何とも汚い手を使うものだ」

 まあ、そりゃワンモアだしとしか言いようがない。すんなりクリアさせるような世界じゃないからねぇ。それを自分はしっかりとこの身に刻んできた。ま、それでも今回は相当楽な方に入るけど──と考える自分は相当に毒されているのだろう。なんにせよ、楽に終わったので今回は良しとする。
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