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試練の残り階層二〇階
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先日の偽雨龍師匠との戦いから数日が経過した。この数日間は比較的簡単かつ、護衛対象として送られたパーティ先でも特に問題はなく、スムーズに階層を踏破することができた。その積み重ねで、自分が護衛対象として登らなければならない階層の数は残り二十となっている。かなりいい感じに進んだと言える。
なお、昨日ウィスパーチャットがツヴァイとグラッドから飛んできており、グラッドは黒の塔七二〇階に到達し、ツヴァイも白の塔六〇〇階に到達したのだという。まず間違いなくこの両名が率いるパーティが、各塔のトップだろうと思われる。彼らがワンモアが終わった後にどうするのかは知らないが、ゲーマーとしてアピール出来ている事は間違いない。
おかげで掲示板でもこの二人の名前を見る事が日に日に増えてきており、特に女性を多くギルドに入れているツヴァイの方は相変わらずハーレムギルマス、修羅場迎えろという心が温かくなる声援が多数送られている。名が知られるというのは大変だよなぁ。
さて、そんな彼らの活躍はさておき、自分も頑張って塔の攻略を進めなければならない。残り二〇階となったのだから、今の試練もあとひと踏ん張りだろう。もっとも、ここからがきつくなりそうだという予想はしている。数日かなり余裕をもって登れた以上、その反動が来るタイミングは今日以降だろうと踏んでいる。
「来たか。残り二〇階となったな。もう少しでこの試練も終わる。励んでほしい」
すっかりなじんだ彼からの言葉に頷く。あと少しで彼ともお別れか、ちょっと名残惜しい気もするがいつまでもここに居る訳にもいかない。とにかく制限時間内に塔の天辺に到着することが最優先なのだから。
「ええ、今日もよろしくお願いします。さて、今日の派遣先はどんな感じになりそうですか?」
自分の言葉に、彼が返してきた言葉は。
「残り二〇階層分はかなりつらい戦いの連続になる事をまず最初に告げておく。そして、今日の派遣される先だが……飛んだり走ったりする、俗にいうアクションは得意か? そこで苦戦している者たちの所に出向いてもらう」
アクションステージか。前にも雲を足場とするアクションステージをやったな。それに今までの冒険で色々とアクションをやってきたからまあまあ得意と答えても申し分ないぐらいの能力はある、と自己評価では思っている。
「アクションの難易度もさることながら、同時に現れる敵に苦戦を強いられ、そして転落するというパターンで進めなくなっている。彼等の支援をしてやって欲しい」
ああ、よくあるアクションゲームのやられた方だね。敵に接触するとか射撃攻撃に当たるとかで動きを止められたり弾き飛ばされたりすることで足場から転落させられるといういやらしいパターンだ。アクションゲームをやったことがある人ならば、あるあると答える事だろう。
「なるほど、それは確かにきつそうだ……そして、そうやって突飛ばせる力を持ったモンスターが、そこには出てくると言う事でもありますね」
自分の言葉に、彼は頷いた。むしろ、そう言う事が察することが出来るようにヒントをくれたと考えるべきだろうな。少なくとも、ここに居る彼は自分に協力的だ。
「準備は大丈夫か? まあ、貴殿が忘れる事はないと思うが一応、な?」
こうして念押しもしてくる。人によっては面倒だと感じるかもしれないが、自分にとってはありがたいと感じる。一応確認し、問題ない事をちゃんと彼に伝える。
「分かった、では飛ばすぞ。幸運を祈る」
そして、自分は移動させられる。さて、次に会うパーティはどういう反応をするか……でも掲示板などで、自分以外のゲスト参戦しているプレイヤーの存在を他のプレイヤーがどう見ているかの情報も確認できたし、悪い様には扱われないと思うが。転移が終わると、自分は崖の近くに立っていた。目の前には大きな海が広がっており、複数の小島が見える。あの小島を渡っていくのだろうか?
「おお、待ってたぞ。みんな、待ちに待った援軍が来てくれたぞー!」
その声に振り返ると、後ろには声を出したと思われる男性プレイヤー……装備は腰に短剣が二本、背中に短弓が一本のレンジャーとかシーフを連想させる装備だな。鎧もワンモアでは珍しい革鎧だし。その男性プレイヤーの声で、他の語名も集まってきた。名前は相変わらずアンノウン扱いだが、タンカー役で大盾に片手斧を持ち、重鎧を着込んだ女性プレイヤー、大剣を持って軽鎧を着た女性プレイヤー。
後はローブを着て金色に輝く杖を持った男性プレイヤーと、軽鎧を着て二刀流ならぬ二杖流の男性プレイヤー。最後にいかにもニンジャとでもいう様に覆面をして忍び装束に身を包んだ男性プレイヤー、この六人のようだ。あえて忍者ではなくニンジャと表現したのは、全然忍ぶ気が見受けられ無いからだ……何せ忍び装束の色が、銀色に輝いてるんだもの。
このパーティでは女性が前衛、男性が後衛とか遊撃役というやり方らしい。で、杖を持っている二人は魔法がメイン、ニンジャさんは投擲攻撃がメイン……珍しいな。後はパンチやキックなどの体術も鍛えているそうだが。投擲ほどのレベルではないとの事。弓を持っている男性や、前衛の二人のメインは言わなくても分かるからカット。
「自分は弓、並びに腰に差している剣と蹴りによる攻撃が使えます。よろしくお願いします」「「「「「「よろしくー」」」」」」
自己紹介とある程度の手札の説明も終えたので、さっそく攻略を開始した。彼等は崖から飛び降りて、海に浮いている小島に着地する。やっぱり、あの小島を飛び乗って進むようだ。そうなると、当然周囲の海から海にちなんだモンスターとか、空から飛行してくる連中がやってくるのだろうな。そして周囲は海だから、逃げ場も隠れる場所もない、と。
(確かにこれはきついな。しかも妖精ももういないから、壁を作ってもらって盾にするという手段も使えないわけだし)
最悪三六〇度周囲をぐるりと囲まれてしまう可能性もある。何せ今自分達がいるのは小島。周囲は海。だからタイミングを見計らって特定の小島にこちらが到着した所で、周囲を取り囲むように海中から現れれば一瞬で包囲網が完成する。
そうなれば逃げる場所もなくクロスファイアよりもえげつない形でこちらが集中砲火をもらう展開を迎えてしまう。そうなってしまったら、いくらタンカーでもパーティメンバーを庇いきれない。
(いつも以上に〈危険察知〉先生の反応に注目しておかねばならないな。この前の霧の中を歩いた時も大変だったが、今回も苦労させられそうだ。幸い今の所アクション要素は小島から小島に飛び移る時のジャンプだけだが……こっちもそれだけで終わるとは思えない。何せ案内役の彼がアスレチックと評したのだから、この先は何かがある)
と、そこまで考えた所で〈危険察知〉先生が反応した。これから三つほど先の小島の周囲にかなりの数のモンスターがいる。だが、《百里眼》でその島を確認してもモンスターの姿は見えない。つまり、連中はそれなりに深い海中に潜んでいる可能性が高い。
この情報は、同行しているパーティにも伝えておく方が良いだろう。こっちを護衛対象ではなく援軍と認識しているのだから、聞いてもらえる可能性は高いはずだ。
「っち、そのパターンで来たか。情報に感謝する」
自分の話を聞いて、舌打ちした後に感謝の言葉を真っ先に述べたのは、二杖流の男性プレイヤーだった。
「六回目の全滅を喰らった時と同じ手段だな。しかし、今回は先に知ることが出来た。ならば対策を練る時間がある……どうにかしてそいつらを海中から引きずり出せないだろうか? 奴らの連携を崩せれば、こちらに十分な商機がある」
これはタンカーの女性プレイヤーの発言。引きずり出す、か。
「雷撃系魔法を試すか? 出来るだけ島に近づいてから、海水に向かって放てば電撃が届くはずだ。詠唱時間が少し長いが、こっちが不意を打てるのであれば問題は無いだろう」
そして、案を出したのが金色に光杖を持っている男性プレイヤー。まあ、確かに水に雷撃はお約束だな。
「それで足りなければ、こちらの発破弾も追加すれば大丈夫と見る。水中で起きる爆撃による衝撃はかなり強烈故。居ると分かっていれば、出し惜しむ理由もござらぬ」
そして、さらに案を出してきたのがニンジャの男性プレイヤー。自分の持っている強化オイルと少し似ている道具を彼も持っているようだな。これならば、自分が強化オイルを投げ込む必要はないか。流石に強化オイルと言っても水中ではすぐ消えてしまうし……起爆した時の笑劇による轟音で聴覚にダメージを与える位しかできないからな。
「とりあえず、その二つで行ってみるか。先に雷撃、ダメならば発破でいいだろ」
短弓使いの男性プレイヤーの言葉に、皆でうなずく。さて、通じてくれると良いのだが……やってみなければ分からないな。
なお、昨日ウィスパーチャットがツヴァイとグラッドから飛んできており、グラッドは黒の塔七二〇階に到達し、ツヴァイも白の塔六〇〇階に到達したのだという。まず間違いなくこの両名が率いるパーティが、各塔のトップだろうと思われる。彼らがワンモアが終わった後にどうするのかは知らないが、ゲーマーとしてアピール出来ている事は間違いない。
おかげで掲示板でもこの二人の名前を見る事が日に日に増えてきており、特に女性を多くギルドに入れているツヴァイの方は相変わらずハーレムギルマス、修羅場迎えろという心が温かくなる声援が多数送られている。名が知られるというのは大変だよなぁ。
さて、そんな彼らの活躍はさておき、自分も頑張って塔の攻略を進めなければならない。残り二〇階となったのだから、今の試練もあとひと踏ん張りだろう。もっとも、ここからがきつくなりそうだという予想はしている。数日かなり余裕をもって登れた以上、その反動が来るタイミングは今日以降だろうと踏んでいる。
「来たか。残り二〇階となったな。もう少しでこの試練も終わる。励んでほしい」
すっかりなじんだ彼からの言葉に頷く。あと少しで彼ともお別れか、ちょっと名残惜しい気もするがいつまでもここに居る訳にもいかない。とにかく制限時間内に塔の天辺に到着することが最優先なのだから。
「ええ、今日もよろしくお願いします。さて、今日の派遣先はどんな感じになりそうですか?」
自分の言葉に、彼が返してきた言葉は。
「残り二〇階層分はかなりつらい戦いの連続になる事をまず最初に告げておく。そして、今日の派遣される先だが……飛んだり走ったりする、俗にいうアクションは得意か? そこで苦戦している者たちの所に出向いてもらう」
アクションステージか。前にも雲を足場とするアクションステージをやったな。それに今までの冒険で色々とアクションをやってきたからまあまあ得意と答えても申し分ないぐらいの能力はある、と自己評価では思っている。
「アクションの難易度もさることながら、同時に現れる敵に苦戦を強いられ、そして転落するというパターンで進めなくなっている。彼等の支援をしてやって欲しい」
ああ、よくあるアクションゲームのやられた方だね。敵に接触するとか射撃攻撃に当たるとかで動きを止められたり弾き飛ばされたりすることで足場から転落させられるといういやらしいパターンだ。アクションゲームをやったことがある人ならば、あるあると答える事だろう。
「なるほど、それは確かにきつそうだ……そして、そうやって突飛ばせる力を持ったモンスターが、そこには出てくると言う事でもありますね」
自分の言葉に、彼は頷いた。むしろ、そう言う事が察することが出来るようにヒントをくれたと考えるべきだろうな。少なくとも、ここに居る彼は自分に協力的だ。
「準備は大丈夫か? まあ、貴殿が忘れる事はないと思うが一応、な?」
こうして念押しもしてくる。人によっては面倒だと感じるかもしれないが、自分にとってはありがたいと感じる。一応確認し、問題ない事をちゃんと彼に伝える。
「分かった、では飛ばすぞ。幸運を祈る」
そして、自分は移動させられる。さて、次に会うパーティはどういう反応をするか……でも掲示板などで、自分以外のゲスト参戦しているプレイヤーの存在を他のプレイヤーがどう見ているかの情報も確認できたし、悪い様には扱われないと思うが。転移が終わると、自分は崖の近くに立っていた。目の前には大きな海が広がっており、複数の小島が見える。あの小島を渡っていくのだろうか?
「おお、待ってたぞ。みんな、待ちに待った援軍が来てくれたぞー!」
その声に振り返ると、後ろには声を出したと思われる男性プレイヤー……装備は腰に短剣が二本、背中に短弓が一本のレンジャーとかシーフを連想させる装備だな。鎧もワンモアでは珍しい革鎧だし。その男性プレイヤーの声で、他の語名も集まってきた。名前は相変わらずアンノウン扱いだが、タンカー役で大盾に片手斧を持ち、重鎧を着込んだ女性プレイヤー、大剣を持って軽鎧を着た女性プレイヤー。
後はローブを着て金色に輝く杖を持った男性プレイヤーと、軽鎧を着て二刀流ならぬ二杖流の男性プレイヤー。最後にいかにもニンジャとでもいう様に覆面をして忍び装束に身を包んだ男性プレイヤー、この六人のようだ。あえて忍者ではなくニンジャと表現したのは、全然忍ぶ気が見受けられ無いからだ……何せ忍び装束の色が、銀色に輝いてるんだもの。
このパーティでは女性が前衛、男性が後衛とか遊撃役というやり方らしい。で、杖を持っている二人は魔法がメイン、ニンジャさんは投擲攻撃がメイン……珍しいな。後はパンチやキックなどの体術も鍛えているそうだが。投擲ほどのレベルではないとの事。弓を持っている男性や、前衛の二人のメインは言わなくても分かるからカット。
「自分は弓、並びに腰に差している剣と蹴りによる攻撃が使えます。よろしくお願いします」「「「「「「よろしくー」」」」」」
自己紹介とある程度の手札の説明も終えたので、さっそく攻略を開始した。彼等は崖から飛び降りて、海に浮いている小島に着地する。やっぱり、あの小島を飛び乗って進むようだ。そうなると、当然周囲の海から海にちなんだモンスターとか、空から飛行してくる連中がやってくるのだろうな。そして周囲は海だから、逃げ場も隠れる場所もない、と。
(確かにこれはきついな。しかも妖精ももういないから、壁を作ってもらって盾にするという手段も使えないわけだし)
最悪三六〇度周囲をぐるりと囲まれてしまう可能性もある。何せ今自分達がいるのは小島。周囲は海。だからタイミングを見計らって特定の小島にこちらが到着した所で、周囲を取り囲むように海中から現れれば一瞬で包囲網が完成する。
そうなれば逃げる場所もなくクロスファイアよりもえげつない形でこちらが集中砲火をもらう展開を迎えてしまう。そうなってしまったら、いくらタンカーでもパーティメンバーを庇いきれない。
(いつも以上に〈危険察知〉先生の反応に注目しておかねばならないな。この前の霧の中を歩いた時も大変だったが、今回も苦労させられそうだ。幸い今の所アクション要素は小島から小島に飛び移る時のジャンプだけだが……こっちもそれだけで終わるとは思えない。何せ案内役の彼がアスレチックと評したのだから、この先は何かがある)
と、そこまで考えた所で〈危険察知〉先生が反応した。これから三つほど先の小島の周囲にかなりの数のモンスターがいる。だが、《百里眼》でその島を確認してもモンスターの姿は見えない。つまり、連中はそれなりに深い海中に潜んでいる可能性が高い。
この情報は、同行しているパーティにも伝えておく方が良いだろう。こっちを護衛対象ではなく援軍と認識しているのだから、聞いてもらえる可能性は高いはずだ。
「っち、そのパターンで来たか。情報に感謝する」
自分の話を聞いて、舌打ちした後に感謝の言葉を真っ先に述べたのは、二杖流の男性プレイヤーだった。
「六回目の全滅を喰らった時と同じ手段だな。しかし、今回は先に知ることが出来た。ならば対策を練る時間がある……どうにかしてそいつらを海中から引きずり出せないだろうか? 奴らの連携を崩せれば、こちらに十分な商機がある」
これはタンカーの女性プレイヤーの発言。引きずり出す、か。
「雷撃系魔法を試すか? 出来るだけ島に近づいてから、海水に向かって放てば電撃が届くはずだ。詠唱時間が少し長いが、こっちが不意を打てるのであれば問題は無いだろう」
そして、案を出したのが金色に光杖を持っている男性プレイヤー。まあ、確かに水に雷撃はお約束だな。
「それで足りなければ、こちらの発破弾も追加すれば大丈夫と見る。水中で起きる爆撃による衝撃はかなり強烈故。居ると分かっていれば、出し惜しむ理由もござらぬ」
そして、さらに案を出してきたのがニンジャの男性プレイヤー。自分の持っている強化オイルと少し似ている道具を彼も持っているようだな。これならば、自分が強化オイルを投げ込む必要はないか。流石に強化オイルと言っても水中ではすぐ消えてしまうし……起爆した時の笑劇による轟音で聴覚にダメージを与える位しかできないからな。
「とりあえず、その二つで行ってみるか。先に雷撃、ダメならば発破でいいだろ」
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