とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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24巻

24-2

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 2


 そしてリアルで一週間が過ぎた。その間、自分は師匠ズやルイさんと共に森林浴を楽しんだり、風呂に行ったり、チェスをやったり。たまに、ハムスターに似たキーン族のとらちゃんに森を案内してもらってほんの少しだけ戦ったりと、今までと比べると非常にのんびりとした時間を過ごした。
 そして今日は、エルフ農家の収穫の手伝いに出向いている。小麦が豊作で人手が欲しいとの話だったので、協力することにしたのだ。

「ああ、そんな感じでいい。とにかく収穫しないと終わらないぞ~」

 念のため刈り取り方を畑の主人のエルフ男性に確認してもらって、問題なしとお墨付きを頂いた後は、とにかく小麦を刈り取る。
 こっちの世界に機械の類は少ない。特にエルフの村などでは全く見ない。そのため収穫作業は全て手作業だ。かなり前にも収穫を手伝ったことがあったが、その頃と変わりないな。その代わり、こういう人手が必要なときには助け合う形が出来ているので、なくても問題ないのだろう。リアルだとそういうわけにはいかない所もあるから機械は必須だが。
 なお、このお手伝いで自分は三〇〇〇グローほど貰うことになっている。軽いアルバイト代程度の額だが、今までため込んだお金の大半をドワーフの里で新装備の支払いにてちゃったので、貰えるだけありがたい。もちろん、貰うものを貰うからには、相応の仕事をきちんとこなさなければな。

「こちらの畑は終わりました! 刈り取った麦を村に運んだ後、次の畑に取り掛かります!」
「おうっ、頼むぜ!」

 畑の主人エルフにそう声をかけて、束ねた小麦を一緒に作業していたエルフ男性と共に次々と運んでいく。そこから先の処理は女性エルフのお仕事。基本的には男性が刈り取りと村内への運搬を、女性が脱穀などの作業をするようだ。
 リアルだと、麦を口に入れられるようになるまでにはいくつもの工程が必要なんだが、この世界ではそういったものはざっくり飛ばしている可能性が高い。もしくはエルフ独特の魔法があるのかもしれないし、深くは突っ込んでいない。

「刈り取った麦です、後のことはお願いします」
「ええ、任せておいて。みんな、麦が次々と来るわよ。手早くね!」

 女性のエルフの皆さんも声をかけ合って、次々と運ばれてくる麦に対応していく。
 さてと、あと二往復ぐらいすれば、今の畑で収穫した麦は運搬し終えるかな? 今日の仕事は三つの畑で小麦を収穫することだからな、もたもたしてると日が沈んでしまう。まあ、自分は夜中でもやれるっちゃやれるけど……他の人にそれをいるわけにはいかない。

「よし、一つ目の畑はこれで終わりだ。次にかかるぞ!」

 その言葉に皆で頷き、次の畑に取り掛かる。こんな刈り取り作業なんてものも、リアルじゃなかなかなぁ。体験ぐらいはできるかもしれないが、本格的な仕事としてはなかなかレアだな。それに中腰での作業が多いから、その後の腰痛に悩むことになるかもしれない。歳関係なく。

「ふむ、これは人手が欲しくなるのも分かるのう」

 雨龍さんがそんなことを言う。師匠ズもここ数日、収穫が忙しい所には率先して手伝いに行っていたという。もちろん正体は隠しているが、農家の人もまさか龍神様が自分の畑で収穫を手伝っているなんて知ったら驚きでひっくり返るだろうから、それがいいだろう。
 ──ああ、リアルの日本にも、もしかしたらそういう神様がいるかも。何せ八百万もいるのだから、秘かに人を助ける神様がいてもいいよね。

「うむ、収穫作業は良い。農家が必死に頑張ってきた成果を見られるのだ。良い作物が採れるということは、ここのあるじが真剣に農作物と向き合ってきた証拠だ」

 こちらは砂龍さん。確かにこの麦はよく出来ている。もちろん、農家がどれだけ頑張っても、日照りや台風、害虫や病気などで台無しにされてしまうケースもある。しかし、そういう災いも、努力によって被害を軽減することが可能な部分もある。

「雨龍さん、砂龍さん、そろそろ自分は麦を束にする作業に入ろうと思うのですが、残りの刈り取りは任せてもいいですか?」
「うむ」
「任せてくれていい」

 そうして作業しているうちにこの畑の麦は刈り終わったようで、次々と束にする作業に移る人が増え、あっという間に終わった。後はそれを村に運ぶだけ。だったのだが……

「うーん、雨の匂いがする。少し作業を早めないとねずみにされそうだぞ」

 一緒に仕事をしていたエルフ男性がそんなことを口にする。

「テルがそう言うなら間違いはなさそうだな……お手伝いしてくれている方にも教えておこう。このテルという男は、こういう空気を感じ取る感覚がエルフの中でも際立って鋭くてな。特に雨の降る前兆は百発百中で拾うんだ。すまんが、ここからは作業速度を上げるぞ、大変だが、降られるまでに刈り取りを済ませたいんだ」

 ああ、そこまではいきたいかな…

「了解です、こちらも雨の中で作業するのはちょっと勘弁願いたいですからね。急ぎましょう」

 そこから運搬は小走りになり、村の女性にも雨が迫っていると伝えて、すぐさま畑にとんぼ返り。そして全員で一丸となって三つ目の畑の作業が八割方終わったところで、西側の雲がじわじわと黒くなっていた。

「西から来るぞ、急げ急げ!」

 雲の色が変わるという分かりやすい雨の前兆で、皆の作業速度が更に上がる。そのおかげで何とか雨が降る前に麦を運ぶことに成功し、事なきを得た。後のやるべきことは広い家の中でゆっくりやるそうだ。雨に降られたときに使える場所が複数あるとのことで、問題はなさそうだ。

「手伝い、助かった。後半かしてしまったびに、謝礼には色を付けておいた。遠慮せず受け取ってくれ」

 と、今回の仕事を振ってきた男性エルフから五〇〇〇グローを頂いた。雨龍さんと砂龍さんにも同額を支払っているようだ。二〇〇〇グローも上乗せして大丈夫なのですか?とつい聞いてしまったが、小麦が雨に濡れることに比べれば安いものだとのことで、それ以上聞かずに素直に頭を下げて報酬を懐に収めた。
 雨はどんどん強くなり、雷も鳴っている。

「それにしても強烈な雨になってきたな。テルが感づいて、手伝ってくれた皆が急いでくれなきゃ、今頃は……間に合って本当によかったな……」

 確かに雷交じりの強い雨は色々と怖いな。特に雷がな~……雨を避けて木の下にいたら危険だし、言うまでもなく農具の金属も危険だ……というか、「ワンモア」世界では現実よりも落雷の被害が起きやすい。これは魔法の影響なのかね? 魔力というものが存在して空気中を漂っているわけだから、それが媒体になるのかもしれない。

「うむ、この雨の下での作業は気が進まぬな……」

 エルフの男性の言葉に、砂龍さんが同意する。雨龍さんは……表情からすると「わらわは別に濡れても構わんのだが」みたいなことを考えていそうだ。まあ、名前に雨が入っているし、扱う力も水が関係しているもんね。濡れるぐらい何ともないんだろう。

「しかし、ルイさんの家に帰るにしても、少し雨脚あまあしが弱まって雷が過ぎてくれないと、外に出たくないですね」

 そのまま自分と師匠ズは、農家の男性エルフの家で雨宿りさせてもらった。帰るときには水たまりが複数出来てそうだから、回避するのに少し苦戦しそうだなぁ。幼い頃なら水たまりは遊び道具の一つだったが、今はもうそんな歳じゃない。


     ◆ ◆ ◆


 数日エルフ農家のお手伝いを行って、依頼された収穫作業は無事に終わった。それと同時に砂龍さんから「そろそろダークエルフの谷に向かうぞ。ならし程度の軽い戦いは行うから、最低限の準備はしておけ」との指示も頂いた。
 そういった準備が済んだ頃、師匠ズから風呂に行こうと誘われた。

「師匠達もお風呂が好きですよね、自分もそうですが」

 自分と師匠ズ、そしてルイさんも一緒に、今日も仕事後のひとっ風呂に向かう。
 その途中で、砂龍さんがおもむろに小さな石を拾った。
 何をするつもりなんだろう?と思ったが、砂龍さんはその石を自分に放り投げてきたので、反射的にキャッチした。確認してみると、普通の丸っこい石でしかない。なんでこんなものを投げ渡してきたんだろ?

「風呂に入る前に体感しておいてもらう。今拾ったそれが、何の仕込みもないただの石だということは分かったな? その石を右手で強く握り込んでみるがいい」

 まあ、師匠がやれと言うのであればやりますけど……何の意味があるのかよく分からない。とりあえずぎゅっと――

『ギシッ』

 ……ギシッ? 右手をゆっくり開くと、握った石は粉々になっていた。あれ? こんな握力、自分にあったっけ? もちろん冒険者なんだから一般の人よりはあるけど、ここまでのレベルではなかったはず。

「──師匠、本当にこの石に仕込みはなかったんですか?」

 師匠が拾った後に何か仕込んだ可能性はある。何せ正体は龍神だ。そんなことも一瞬でやれるだろうし、それを気づかせないようにだますこともできるだろうから、つい疑ってしまう。
 いやだって、普通は握り込んだだけで石を粉々にはできないよ? それも力自慢の人がじゃなくて、自分がやってそうなったんだから。

「仕込みはない。そして石をそうできるのであれば、こちらの予定通りだな……詳しい話は風呂にかりながらしてやろう」

 そう言うと、再びお風呂屋さんへと歩き出す砂龍さん。まあ、話をしてくれるというのなら、質問はその後にするか。
 そうしてお風呂屋さんの門をくぐり、脱衣を済ませてゆっくりと肩まで湯に浸かる。アクアは以前と同じく桶風呂。砂龍さんは熱いのが好みのようで、中央に近い場所に陣取っている。

「さて、先程の一件だが。その話をする前に、少々昔の話をしたい。お前がゴロウと組んで試練に挑んだときのことを覚えているか?」

 そりゃ、まあ。師匠ズに会うきっかけだったから、忘れるはずもない。

「うむ、そしてお前は、我らの試練を見事に突破した……では、その後のことも覚えているか? 雨龍から、我らの与える力がどういうものなのかを説明しただろう」

 そうそう、そんなこともあったっけ。確か……

「師匠達の試練を乗り越えた者は、使っていない力を削って伸ばしたい方向に割り振ることで、その力をより引き出せるのでしたね」

 つまりはステータスを特化させる、ということだった。事実、ゴロウはこれを受けたことでより腕っぷしが上がって、その後の試練も見事に戦い抜いた。

「そうだ。だが、お前は弓を使い、魔法を操り、そして物も作る。そのためどこも削ることができず、その代わりの報酬として、雨龍は封印具である指輪を渡した」

 その指輪のおかげで、その後のゲヘナクロスとの戦争で雨龍さんに手助けしてもらえて、本当にありがたかった。まあ、周りからはどうやったのか質問攻めにされたけど。

「その一件は、こちらにとっても悔しい話だったのだ。試練を乗り越えた者に代わりの報酬しか渡せなかったことはな。なので、お前のような者がまた現れるときのことを見据え、我々にできる新しい報酬の形を模索していた。そして、それが形となったのが、今のお前というわけだ」

 ちょ、知らないうちに実験体扱いされていたってことですか? といっても薬物などを使ったわけでもなく、純粋な修業の延長線上にあったみたいだけど。

「お前達が見ている数値には現れぬが、全体的に能力が伸びている。全体的に伸ばす故、劇的な効果を見込めないのは変わらぬが、お前という器を多少なりとも大きくすることに成功している。以前にそれは不可能なことだと言ったと思うが、修業として様々な負荷をかけ、一から心身を鍛え直すことで、どこかを削ることなく力を上げてやれるようになったのだ」

 つまり、だ。師匠達は新しい修業のさせ方を見つけたことで、自分のような存在でも力を伸ばしてやれるようになったというわけか。ただし修業を長期間続ける必要があるから時間はかかりそうだが、それはわざわざ自分が口にしなくても、更なる改善点として師匠達の頭の中にもあるだろう。

「なんにせよ、新しい成長の方法に成功したことで、お前は以前より間違いなく強くなった。ただ劇的な変化ではないから、お前自身はいまいちそうは感じないだろうがな。これから出向く場所で軽く慣らしをしたら、今回の修業は終わりだ。その後は準備期間となる」

 確かに、スキルレベルは全く上がっていないし、HPとかはバー形式で表示されているだけで数字は出ない。師匠を疑うわけではないが、あまりにも自分が強くなったという実感がない。

「それと、器が大きくなったとはいえ、それは体力や精神力に限った話だ。お前の魂の器のほうは変わっておらぬ故、更なる技術を身に付けたり、新たな変身を覚える余裕はないことを付け加えておくぞ。ここは我々の今後の課題といったところだが、お前が生きているうちに解決することはできぬであろう」

 ああ、スキルレベルの更なる上限突破などは不可能ということか。まあそれは仕方がない、素の肉体が強くなったのであれば、アーツの使用回数や基礎的な火力や防御力の向上に繋がるだろう。これ以上を望むのは強欲が過ぎるってもんだ。

「強くなったかどうかは、追々分かるってことですね?」

 自分の言葉に、砂龍さんは頷いた。

「慣らしていくうちに分かるだろう。肉体と精神が鍛えられたというのが、どういうことかを」

 師匠がそう言うのであれば、そういうことなんだろう。これ以上あれこれ考えても意味はないな。今は風呂を純粋に楽しむことにしよう……エルフの村を旅立ったら、この先しばらく入れなくなるのだから。


【スキル一覧】
風迅狩弓ふうじんかりゆみ〉Lv50(The Limit!) 〈砕蹴さいしゅう(エルフ流・限定師範代候補)〉Lv46 〈精密な指〉Lv54
〈小盾〉Lv44 〈蛇剣武術身体能力強化〉Lv31 〈円花まどかの真なる担い手〉Lv10
百里眼ひゃくりがん〉Lv44 〈隠蔽いんぺい・改〉Lv7 〈義賊頭ぎぞくがしら〉Lv87
妖精招来ようせいしょうらい〉Lv22(強制習得・昇格・控えスキルへの移動不可能)
 追加能力スキル
黄龍変身こうりゅうへんしん・覚醒〉Lv15(Change!) 〈偶像ぐうぞう魔王まおう〉Lv7
 控えスキル
〈木工の経験者〉Lv14 〈釣り〉(LOST!) 〈人魚泳法〉Lv10
〈ドワーフ流鍛冶屋・史伝しでん〉Lv99(The Limit!) 〈薬剤の経験者〉Lv43 〈医食同源料理人〉Lv25
 ExP53
 称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
    妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 災いを砕きに行く者
    託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人
    妖精国の隠れアイドル 悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人
    魔王の代理人 人族半分辞めました 闇の盟友 魔王領の知られざる救世主 無謀者
    魔王の真実を知る魔王外の存在 天を穿うがつ者 魔王領名誉貴族
 プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
 強化を行ったアーツ:《ソニックハウンドアローLv5》



 ついに冒険の舞台は) 雑談掲示板 No.4288(空の上へと


 211:名無しの冒険者 ID:ksic42sd8
 ついに新エリアのPVも発表されたことで、
 掲示板の流れがはえーはえー


 212:名無しの冒険者 ID:tgwa6fwfE
 空の上、すごい綺麗な場所だったよな


 213:名無しの冒険者 ID:RFqw5dwqw
 建物は古代ギリシャを意識してるんかな?
 アリストテレスとかがいそうな雰囲気


 214:名無しの冒険者 ID:5wedwF23p
 有翼人、男も女も美形だらけだった……
 お付き合いしたいぜ


 215:名無しの冒険者 ID:52wef3D2w
 その一方でどんなモンスターがいるのかは発表されてないね
 そっちは実装されてからのお楽しみってことかな


 216:名無しの冒険者 ID:ERWGetwg7
 ただ、建物は綺麗だったけど、中身はなかなかえぐそうだよね
 何せカジノですよ?
 しかもこそこそ隠れてる闇カジノじゃなくって、公式なでっかいカジノ!
 借金するプレイヤーで溢れ返りそう


 217:名無しの冒険者 ID:IDRty5wFw
 カジノがあるなら景品とかもありそう
 どんなものがあるのか楽しみでしょうがない


 218:名無しの冒険者 ID:OIrty2feW
 新素材とかあったら、生産者がカジノに入り浸りそう
 もちろんその素材で作れる装備が強かったら、戦闘系も篭りそう


 219:名無しの冒険者 ID:TYHEhseg5
 冒険そっちのけでスロットやらポーカーやらブラックジャックやらに
 興じるのか……金足りるかな


 220:名無しの冒険者 ID:rg5sefO1c
 あと、今までとは違っていくつか機械も出てきたよね?
 島と島を渡るときにはヨットみたいな船で移動するっぽいし


 221:名無しの冒険者 ID:REGrg2EwX
 機械って言っても、極端にメカメカしい感じじゃなくて、
 ファンタジーの外見を保ちながらって感じだけどね
 もしかして出てくるモンスターもメカ系?


 222:名無しの冒険者 ID:HGarg5Wdc
 メカのモンスターならもういるじゃん、地底世界で時々攻撃してくる奴
 もしかしてあのモンスターの生まれってこの場所なんじゃね……?


 223:名無しの冒険者 ID:wefW23dWe
 空の上で出来てたとして、地下にいる理由は何よ?
 空からわざわざ地上を通り越して地下に移動させるって、
 かなり手間じゃね?


 224:名無しの冒険者 ID:HRaeg2wD2
 地上にいるならまだ分からなくもないけど、地下なんだよね
 だからある程度関係性はあったとしても、
 完全に同一とは思えないってのが今のところの感想かな


 225:名無しの冒険者 ID:IKYut5dWq
 まあ、暴走メカってのもお約束の一つだからね
 難しく考えなくてもいい気がする
 問題が起きたらそのときに対処すればいいじゃない


 226:名無しの冒険者 ID:THREs2wEC
 現時点では何とも言えないよな


 それでも空の上はすごい綺麗だから、観光的な意味で期待してる
 いいスクショが撮れるといいんだけど


 227:名無しの冒険者 ID:EWGRwag8u
 場所自体が観光地みたいなものだからねえ。
 SSに収めたい場所はいっぱい見つかると思うよ


 228:名無しの冒険者 ID:IUJtuid2e
 地底世界も悪くはないんだけど、
 SS向きの綺麗な場所ってのはかなり限られてたからね
 その分空の上では楽しませてもらうよ


 229:名無しの冒険者 ID:SERFaw5Cw
 SS鳥に走り回る人にとっては、文字通りの天国か


 230:名無しの冒険者 ID:EGweg25Dw
 SS鳥か……空の上だから、誤字が誤字に見えないな


 231:名無しの冒険者 ID:Irsa2fWEq
 しかし、みんな一つ大事なことから目を背けていないか?
 あえて言わないんだろうけどさ……
 言っていい?


 232:名無しの冒険者 ID:KYDdrt2We
 大事なこと? 大事なことねえ……
 あ、言うな、言わなくていい。空ってことで予想ついた


 233:名無しの冒険者 ID:WDd53fdWu
 俺達には羽根がない、そういうことだろ?
「ワンモア」だもん、分かっているさ……だから言うなよ、これ以上


 234:名無しの冒険者 ID:QEWFq5WDa
 まあ、高所恐怖症なら行かないっていうのも一つの選択でしょ
 すでに実装されてる場所だって、ちょこちょこ新しくなってたり、
 ダンジョンが生まれてたりしてるし


 235:名無しの冒険者 ID:EGeqw1ddW
 もしくはカジノに入り浸ってればいいだろ。それなら何の問題もない
 あ、お金がなくなるって反論には対応しません


 236:名無しの冒険者 ID:Of52fWcAz
 今のうちに金策をしないといけないかー
 ……でもみんな同じこと考えてるよね


 237:名無しの冒険者 ID:IRg2fe6wF
 今その言葉を吐いている時点で遅い
 金策が必要な人はもうとっくに、
 面倒だけど金になる街の人達からの依頼を受注しに、
 我先にと走り回ってるよ


 238:名無しの冒険者 ID:Omytrf23f
 むしろそれに疲れたから今ここに来て休憩してるんだし
 まあでも確かに、今頃金策がって言っている時点で遅れてるのは事実だね


 239:名無しの冒険者 ID:RETrewf2W
 でもやらないよりはましだからな……
 まだひと月と少々ある
 その間に走り回っておいたほうがいいと思うぞ


 240:名無しの冒険者 ID:Hrh52f9wn
 うむ、悩むぐらいならさっさと行動に移るべしだろ
 やる気があれば、一か月でそれなりのお金は稼げる


 241:名無しの冒険者 ID:EAFfea4Qw
 新人さんはきついだろうけど、逆に新人さんなら、
 空の上に行く前にいろんな国を回って強くなるほうが先だからなぁ


 242:名無しの冒険者 ID:Ud358cSw6
 龍の国のフィールドを問題なく歩き回れるぐらいの実力は欲しいよね……
 ネームドモンスターとかボスは除くけど


 243:名無しの冒険者 ID:EFfe522qD
 エリアボスは見かけたら即逃げでしょ
 あいつらは準備を整えてから戦わないと勝ち目なんかないから


 244:名無しの冒険者 ID:JUts2Uwew
 今はファストの街でもそこそこの性能の武器が
 初心者さんでも買える値段で出回っているしね
 装備の充実度はすぐ上がるから、
 レベルアップも昔と比べるとはるかに速い


 245:名無しの冒険者 ID:EFeqwf5Qe
 龍の国に入るために修業した日々が懐かしい
 初日に門前払い食らって、悔しさの中でモンスターと戦いまくってたなぁ


 246:名無しの冒険者 ID:GRwagf5dW
 そういえば妖精国とかは悪いことしてなきゃ入れるけど、
 龍の国は一定の強さがないと入れてもらえなかったね
 特に実装初日は門前払い食らった人が多くて阿鼻叫喚だったっけ


 247:名無しの冒険者 ID:feaiwkfaw
 龍の国は、それなりに強いモンスターが結構いるからしゃあない
 駆け出しが入ったらあっという間にころころされてしまうがな


 248:名無しの冒険者 ID:ui5w174Ku
 エルフのほうも、手ごわいのいるけどね……
 森に入らなきゃそっちはあんまり問題にならない


 249:名無しの冒険者 ID:EWRTGaew5
 獣人連合や魔王領は実力ないとあっという間に……
 だから、今度の空のエリアも行くのは簡単だけど、
 モンスターと戦いたいなら相応の実力を身に付けるまでは、
 行かんほうがいいだろうね


 250:名無しの冒険者 ID:Irt5dwWex
 やる気があればひと月である程度の形にはなる
 使える時間と本人次第だけどね



 3


 翌日ログインした後、ルイさんに別れを告げて、エルフの森をとらちゃんの案内でゆっくりと進む。
 思えば、この日の違和感は、このときからすでに発生していたのだろう。
 とらちゃんは安全第一で道案内をしてくれるわけだが、その案内を受けている間、自分は普段よく見る《危険察知》先生を一回も見ていなかった。油断とかではなく、敵がいないということをなぜか確信できてしまっていたから。
 何事もなく無事にダークエルフの街に到着し、多くのメイドさんとすれ違いながら宿を探したら、早速谷に降りて戦闘を行うと言う師匠ズについていく。
 そして谷に下りていく途中で何回もヘビのモンスターに襲われたのだが……

「……そこか」

 モンスターのいる場所が分かる。分かってしまうのだ。まるで頭の中にレーダーをぶち込まれてしまったみたいに。そして何より、そのことに一切の違和感を覚えないことに違和感を覚える。
 自分の体(ゲーム的に言うならこのアバター)に、一体全体何が起きてしまっているんだ?
 一応念のために《危険察知》先生も併用しているのだが、感じる敵の位置とのズレがない。発見次第、ただ弓で射抜くだけだった。

(──まさか)

 谷に降りた後、普段使っていない【真同化】の槍モードを発動させた。多くの相手を一気に処理するなら、槍のほうがいいだろうと考えたからだ。
 そして、カエルとヘビの六匹パーティという、リアルではあり得ないような天敵同士で構成された敵集団にわざと突っ込んでみた。
 接近すると同時に、槍を何気なく振るう、と……モンスターの首が飛んだ。
 しかも一つじゃなくて同時に複数。普段の自分では絶対にあり得ない首刎ね率……背中からカエルが襲ってきたので石突きで迎撃。こっちの動きが止まったので好機と見たのか、他のカエルが跳躍して突っ込んできて──直後にそいつの首が飛んだ。無意識のうちに自分が槍を振るったらしい……その事実に、ものすごい気持ち悪さが襲ってくる。


 そのままモンスターの集団を槍一本で殲滅せんめつした後、自分は師匠ズに詰め寄った。自分の体に起きたことを聞くべく、師匠ズに真正面から疑問をぶつける。


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