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5巻
5-2
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「アレが四が武か……」
関所を無事通過し、しばらく歩くと街が目に入ってきた。
ちなみに、雨龍さんの正体は前もって関所に伝わっていたらしく、お役人が総員で頭を下げる騒ぎになるところだった。龍の国にあって龍という存在は王並みのお偉いさんになるようだ。
「どれも同じくらいの大きさだったこれまでの街と違ってな、四が武からは大幅に広くなっておる。そのぶん、人も仕事も多い。お主のように色々と物事をこなせる人間なら、むやみやたらと戦闘をせずとも、次の街への通行を奉行所に認められるようになるのも十分に可能じゃ」
雨龍さんがそう教えてくれる。
「なるほど……先に来た人は、とにかくモンスターを倒しまくって奉行所に認められたと聞いていましたが」
掲示板などで知った情報をぶつけてみた。
「それはそれで、治安維持行為として認められておるのじゃ。奴らは数が増えると強い個体を頭にして街に攻め入ることがあるからのう、先手を打って問題を潰したことになるわけよ。特に強い奴を倒せば、それだけ安全にもなるじゃろう」
なるほどね、だから大物のモンスターを倒した人達は、あっさりと関所を通過することができたわけか……
「ぴゅぴゅ」
そのとき、頭に乗せている鳥の妖精ピカーシャの鳴き声が聞こえ、反射的に警戒態勢に入る。どうやら、イノシシタイプのモンスターが一匹、こっちに向かってきているようだ。ここには雨龍さんがいるが、今は龍の力を完全に封印しているから、その存在に気がついていないのだろう。
「ピカーシャ、ありがとうな。さっさと始末して街に入るか」
【チェーン・ウィップ】を取り出し、待ち構える。それはなんとなく鞭と蹴りで戦いたい気分だったからで、深い意味はない。
突進してくるイノシシに、鞭で《拘束》をかけて動きを封じる。そして〈上級鞭術〉のアーツである《引き寄せ》を発動。《引き寄せ》はコンボ専用のアーツで、《拘束》した相手を瞬時に自分の目の前まで引っ張れるという効果を持つ。間合いをある程度空けて戦う槍などを相手にするときに有効だ。
引き寄せたイノシシに対して、すかさず蹴り系スキルのアーツ、《ハイパワーフルシュート》を発動し、空中に蹴り上げる。
「ピギッ!?」
後はもちろん《大跳躍》で高くジャンプし、《フライ》で稼いだ滞空時間を生かして空中コンボに持ち込む。数回ほど牙を模した刃を付けてある【ファング・レッグブレード】による蹴りをイノシシにぶち込み、《エコーラッシュ》を仕掛けてその威力を反響させ、フィニッシュ。《拘束》対象が消滅した【チェーン・ウィップ】を回収しつつ、くるりと回って着地した。エリアル攻撃にはやはりロマンがある。
「ほうほう、そんな戦い方もできるのかえ」
ニンマリとこちらを見てくる雨龍さん。
「たまにはこういう動きをしておかないと、体が鈍るので」
適当な理由を答えておいて、再び街に向かって歩き出す。こうして、ようやく四が武に到着した。
四が武に入ると、確かに今までの街よりも道が広くなっており、たくさんの人が行きかっている。道の左右にはお店が多く並び、食べ物や薬の店、宿屋などがいくつもあった。
「まるでお祭りみたいだな」
これが自分の感想であった。
「これぐらいの大きさは、この先の街では普通じゃて。早めに慣れることじゃな」
雨龍さんがそんなアドバイスをくれる。まあ、しばらく街を歩けば自然と慣れてくるだろう。人間なんてそんなものだ。
「とりあえず今日から泊まる宿屋を探すか」
それなら、道行く人に聞くよりこの辺の商売人に聞くのがいい。
そう決めて、一番近い蕎麦屋に入る。ここなら食事のついでに宿も探せるだろう。
「宿屋を探すのではないのかえ?」
蕎麦屋に入る自分を見て雨龍さんが不思議そうに声をかけてくるが、とりあえず入ろうと手招きをした。
「はい、らっしゃい!」
威勢のいい声で出迎えてくれたのはオヤジさんだ。
「らっしゃい、どうぞ!」
店員と思われる若い男性が、自分達がついた机の上にお品書きを置いていく。ふむ、お勧めになっている天ぷら蕎麦にしよう。
「雨さんは決まった?」
街中で気軽に雨龍さんの名は出せないので、関所をくぐった後、雨さんと呼ぶように話し合っておいたのである。
「お主は何にするつもりじゃ?」
どうやら決まっていなかったらしい。自分はお勧めメニューにすると伝えると、雨龍さんはお品書きを閉じながら「ならわらわも同じものにするかの」と言ってきた。
「ではオヤジさん、お勧めを三人前、お願いします!」
「三人前?」と首をひねるオヤジさん。そこで自分はピカーシャを手の上に乗せ、この子の分です、と説明して納得してもらう。「そんな小さな体に入るのか?」との当然の疑問には、「自分より食べます」と答えておく。ピカーシャが自分の手をつんつんつついて、そんなことはないと抗議してくるが、事実だろうが……
しばらくのんびり待った後、「お待たせしました、天ぷら蕎麦三人前です!」と店員さんがお盆を持ってきた。
そして出された蕎麦を食べ終えて、お勘定を済ませた自分は、店から出る前にオヤジさんに声をかけた。
「どうしやした?」
オヤジさんが来てくれたところで、三が武の宿で預かった判子を見せる。
「この判子と関わりがある宿をご存じないでしょうか?」
判子を見たオヤジさんは、アゴをさすった後に呟く。
「コイツは……間違いねえな、あそこの宿だろう……」
どうやら思い当たる節があるようだ。
「この店を出て目の前の道を右に行って、後はとにかくまっすぐ進むと、結構でかい建物が見えてきやす。その建物に入って、そこの番頭さんにこの判子を見せりゃええと思いますぜ」
街が大きい分、旅人だって多く集まるだろうから、宿屋も相当大きいんだろうな。
オヤジさんに頭を下げてお礼を言い、店を出る。
「ありがとうございやした!」
出て行く自分達の後ろから、オヤジさんの声が聞こえた。代金は一人前七八〇グローだった。ちなみに雨龍さんは自分の食べた分は自分でちゃんと出している。
「宿屋の場所も分かったことだし、さっさと落ち着きますか」
「そうするかの、宿で落ち着いたら、後のことを考えようかの」
雨龍さんの質問に頷きつつ、道を歩く。人通りは多いが、歩くのに苦労するほどではない。さすがに最大サイズのピカーシャが歩いてたら大迷惑になるけど。
蕎麦屋のオヤジさんが言った通り、しばらく行くとかなり大きめの建物が見えてきた。
「うーむ、今まで見てきた中でも大きいな」
「ぴゅ」
「わらわもこうして入るのは初めてじゃ」
いよいよ四が武での拠点となる見込みの宿屋の前に到着したが、その大きさにちょっと引いてしまった。立派な門、奥行きのある庭。一体ドコのお城ですか? と問いたくなるスケールである。しかし、突っ立っていても仕方がないので入ろうとしたところ、門の奥から四名ほどの男性従業員が出てきて止められた。
「申し訳ありません、当方は特殊な宿でして……お引き取りを」
ああ、俗に言う「お偉いさん御用達」ってことなのか? そう考えながら、懐に手を入れて例の判子を取り出す。
「この判子を番頭さんにお見せしてください。三が武の女将さんから渡された物でして、これを見ていただければ分かっていただけると思います」
そうすると、四人の内の一人が判子を手に取り、色々な方向から細かく確認し始める。
「――本物か?」
「わからん」
「一応確認をとるか?」
「こんな旅人がこの判子を預かるなんて可能性があるのか? またこの前来たような者達と同じではないか?」
なんとも不穏な雰囲気でぼそぼそっと話し合う従業員さん達。小さい声で喋っているけど、ばっちり聞こえてしまっているんですがね……
「精巧に作った偽物の可能性が高いだろうな、性懲りもない」
「十分にありうるな、人族の器用な職人が作ったのかもしれぬ。またひっかかると高をくくっておるのか」
「番頭様のお手を煩わせても仕方ないのでは? ここは我々で」
「うむ」
あれま、そういう反応になりますか……こっちが聞いていたのを知ってか知らずか、向き直って判子をこちらに軽く投げてくる従業員さん達。ゆっくり曲線を描いた判子を、自分は慌ててキャッチする。
「この宿に泊まりたいがために小細工を重ねたようだが、無駄な努力だったな。早々に立ち去れ! これ以上手間をかけさせるなら、詐欺の罪で奉行所に訴え出るぞ!」
なぜこんなことを言われるのだろうか? 偽物とか言っていたが。とにかくこんな物言いをされるのなら、ここに居るべきではない。雨龍さんに目配せして、素早く後ろを向いた。長居は無用だ。
「ふん、そんな詐欺を働く己の薄汚さを恥じろ。そっちの女も、いい年をしておるくせに」
そんな声が後ろから聞こえたような気がした。
気がした、と表現したのには理由がある。というのも、直前まで空は雲ひとつない晴天だったというのに、突如一筋の雷光が落ちてきてとてつもない音が轟き渡ったせいで、実際には何も聞こえなかったからだ。衝撃で地面は激しく揺れ、自分は立っていられずついしゃがみこんでしまう。一体、何が起こった!?
「――たわけは己らのほうよ。この者はそんな悪事は働かぬのにな」
非常に冷たい声色で、雨龍さんがボソッと呟いたのが聞こえた……直感が、「今は後ろを振り返ってはいけない」と教えてくれる。それに従い、地面の揺れが収まってから立ち上がり、ゆっくりと前だけを見てその場を立ち去った。
体全体に冷や汗と脂汗がじわりと滲み出てくるほどの恐怖を感じる。
後ろが騒がしいのが非常に気になるが、直感が「まだ振り向くな、死ぬぞ」と教えてくれているので、振り向けない。しばらくはそのまま前だけを向いて歩き続け、死の気配が収まったところでへなへなと地面に座り込んだ。
ヴァーチャルリアリティの世界とはいえ、ここまで真に迫る恐怖を味わうとは。ホラー映画なんて目じゃない。
「どうしたのかえ?」
いつもの声色に戻った雨龍さんが声をかけてくるが……
「さ、さっき突然降って来た雷で腰が抜けた……」
こう取り繕うのが精一杯だった。
「なんじゃ、情けないのう。お主は男ではないか、そんなことでは強くなれぬぞ? うん?」
雨龍さんはくすくすと笑うが、自分は本気で怖かった。恐らく口を滑らした従業員は……死んでこそいないかもしれないが、再起不能だろう。現実世界でも、落雷を受ければ人なんて簡単に死ぬ。地震、雷、火事、かあちゃん、と恐ろしいものの内の四つとして挙げられているくらいだ。
あの従業員のせいで、とんだ宿探しになってしまった。
「と、とりあえず他の宿屋を探そうか……大きい宿屋はダメだ、あんな奴ばっかりの可能性がある」
雨龍さんも「同感じゃな。あんな、見かけは豪華でも心のすさんだ宿はごめんじゃ」と言ってくれたので、小さめで良さそうな宿屋を探す。
二〇分ほど探すと、ほどほどに良さそうな宿屋が見つかった。
「いらっしゃいませ、二名様でしょうか?」
宿に入ると、女将さんと思しき人が確認をしてくる。まあピカーシャが数に入らないのはしょうがないだろうな。「二名です」と告げて空きがあるかを聞くと、幸い「ある」との答えだった。
「すまぬが女将、風呂はあるのかえ?」
風呂を気にするとは、やはり雨龍さんも女性ということか。女将さんは笑顔で「さほど大きくはありませんが……」と前置きした上で、風呂があると雨龍さんに告げた。
「雨さん、ここでいいと思うが、どうだろうか?」
「そうじゃな、問題なかろう。女将、世話になるぞ」
何とか、四が武で拠点となる宿を確保できた。案内された個室に入り、そこでようやくひと息つく。
「やれやれ、えらい目にあったな」
それはあの従業員達も同じだろうが……同情する気などない。
「ふん、身から出た錆じゃ」
「ぴゅぴゅ!」
雨龍さんの意見に、ピカーシャも同意しているようだ。正直なところ、客商売をする者の態度ではなかったからな……今日の話が周りに広がったら、あの宿屋は潰れるんじゃないか?
「まあ、雨龍さんやピカーシャの言う通りか。幸いいい宿が見つかってよかったけど」
ただ、問題はこれだよな……と判子を取り出してみる。
「捨ててもよいのではないか?」
雨龍さんはそう言ってくるが、あの三が武の女将がそんな変な物を渡すかな? 少なくとも、自分に害を与えて得をするとは思えない。そんなことを考えていると、ピカーシャが一枚の紙をくわえてきた。
「ぴゅ」
そして自分の前にその紙を置いて、ツンツンとつつく。
「判子を押してみろっていうのか?」
自分の言葉に、ピカーシャはコクコクと小さく頷く。
「そうじゃな、朱肉もここに備え付けてあるし、押してみるのもよいかもしれんぞ」
雨龍さんに差し出された朱肉に判子を当て、紙に押してみる。浮かび上がった文字は……
「天龍?」
よく見ると、「天」の字の中央に非常に小さな昇り龍が彫り込まれている。これはだいぶ注意しないと間違いなく見落としてしまう。
「こちらを騙すにしても、これは手が込みすぎてないか? 雨龍さんはどう見る?」
「ふむ……少なくとも三が武の女将には、わしらをはめるつもりはないようじゃのう」
結局、余計訳が分からなくなってしまった。まあ龍の国を出る前にもう一度三が武に立ち寄って、判子を返却すればよいという意見に纏まった。
その後は風呂を満喫し、ログアウト。四が武でもトラブルが多発しそうな予感でいっぱいだ。
ちなみに、風呂は当然男女別であった。
翌日。ログインすると、布団から起き上がってあくびをする。
「おう、お目覚めかえ」
視線を横に移すと、雨龍さんがのんびりお茶を飲んでいた。ピカーシャは自分が入っていた布団の上でうつらうつらと舟をこいでいる。
「さて、今日も頑張りますか……の前に」
会社のお昼休みを利用して、昨日のことについて調べようと掲示板などを大雑把に眺めてみた。「偽物」「判子」で検索してみると、残念ながらヒットした内容があった。
「昨日のごたごたが起きた原因について、分かったことがある。どうも、数日前にあの宿屋に泊まってみたいという好奇心を抑えられず、判子の偽物を作って入った者がいるらしいんだ」
何のことはない、あそこまで悪意を持たれた原因は、プレイヤー側にあったというわけだ……
「わらわも少々調べてみたぞ。お主の言った通りで間違いないようじゃな。そのときの門番従業員は、偽物を見破れなかったためにそれなりの罰を受けた様子じゃ。だから新しい門番達は神経を尖らせていて、疑わしきは全て通さぬという考えに凝り固まっていたようじゃて。それを考慮しても、浅慮であったことは否めぬがの」
原因はプレイヤー側にあり、という部分は変わらないのだが……
「ま、もう過ぎてしまったことだから仕方がない。それにある意味、こうなってよかったのかもしれない。雨龍さんの正体がああいう大きい宿屋の従業員にばれたら、それこそ異様なもてなしを受けることになるだろうし、それではかえって疲れないか?」
「その意見は否定できんのう」
お互いの顔を見合わせ、頷く。
「だからこの先では、ここのようなやや地味めでお風呂がある宿屋に泊まろうと思うのだが、どうだろうか」
「そうじゃな、わらわも目立ちたいわけでなし、それでよいぞ」
「ぴゅぴゅ」
起きてきたピカーシャも同意しているようだ。
「とりあえず、今後の方針はそうするということで」
「では朝餉じゃ」
「ぴゅぴゅ」
部屋を出て、宿屋の食堂に向かう。出された料理はそこそこおいしく、不満は特になかった。しっかりと完食し、「ご馳走様でした」と言って手を合わせると、宿屋の女将さんが「はい、お粗末様でした」とこちらを見ながら応えてくれた。なんとも丁寧な人である。
それから女将さんに出かける旨を告げて、鍵を一旦預ける。
「とりあえずは、街を見て回るか、それとも外に出て軽く肩慣らしをするかってところなのだが」
「ぴゅ」
「外に出ようではないか。街のほうは、必要ならわらわが案内すれば済む」
二人に聞くとこんな返事だったので、外に出ることに。雨龍さんがこの街を知っているというのならば、そちらのほうがいいからな。
矢の準備もして、いざ外へ。モンスター関連の情報はあえて集めていないので、どんな奴がどこにいるかは分からない。のんびりムードはおしまいにして、ちゃんと警戒を始める。
「一応、わらわに襲い掛かってきた相手はこちらで迎撃する。ワザとこちらにぶつけるような真似はせぬと信じておるぞ?」
ああ、完全に自分に任せっきりというわけではないのか。手伝いはしてくれないが、こちらの負担を故意に増やすこともしない。もしかして、これって「双龍の試練」の延長戦……? いや、さすがに深読みしすぎか? だが、現にゴロウは砂龍さんに連れて行かれているし……
「まあいいか……」
いちいち考え込むのも面倒だ。今はばっさり切り捨てることにする。「龍の儀式」を目指している限り、雨龍さんが自分に変なちょっかいをかけてくることはないだろう……年齢を聞いたりさえしなければ、だが。気を取り直して、〈遠視〉を発動してモンスターの姿を探す。
(この付近は街の近くということもあってか、モンスターはぽつぽつといる程度だな……)
イノシシや、たまにゴブリンがいるぐらいだった。街に入る前にイノシシとは戦っていたので、今回はゴブリンにしよう。
まずは久々に使う《ホークショット》で、ゴブリンを遠くから狙い撃つ。一射目でこちらに気がついて駆け出してきたが、次々と自分が射る矢によって、接近戦になる前に崩れ去った。
(単体の強さは三が武と大して変わりはないか。だが今まで出会ったことがないタイプのゴブリンがいてもおかしくはないし、慢心はいけない)
ゆっくりと進みつつ、〈遠視〉で獲物を探す。そして見つけ次第、即座に射殺していく。それを一時間ほど続けただろうか。
(とりあえず街の近辺ではこんなものか……明日からはもう少し奥に踏み込んでみるべきだな)
敵を見つけては遠距離から一方的に射殺したため、今日はこちらの被弾はゼロ。こういうパターンにはまると、飛び道具というのは非常に強力である。
とはいえ、二が武にもいたハンタータイプのゴブリンや魔法使いタイプのゴブリンと出会わなかったおかげであり、今日はたまたま幸運だったと考えておくほうがよいだろう。
「弓の腕は十分にあるようじゃな」
すっかり存在を忘れていた雨龍さんに声をかけられ、ビクッと体が反応してしまったのはご愛嬌――正直に白状すれば、素でびっくりしていたのだが。
「『双龍の試練』に比べれば十分に余裕がありましたから」
何とか動揺を隠して答える。
「確かにのう。さて、今日はそろそろ引き揚げてよいのではないか?」
言われてみれば、かなり集中していたので、軽く疲れているかもしれない。ここは雨龍さんの言う通り引き揚げておくべきだろう。無茶をしたところでいいことは何もない。
「そうですね、今日はここまでにしましょう」
頭に乗せたピカーシャにも確認した後、街へと帰還する。帰還途中でモンスターを数匹見かけたが、十分に距離があったため戦いは避けた。一旦帰るという思考に入ったら、その後は必要でない戦いに臨んでもいい結果は出ないと考えているからだ。
途中で厄介なモンスターに襲われることもなく、無事宿屋に到着した。本番は明日からだな。
【スキル一覧】
〈風震狩弓〉Lv26(←1UP) 〈剛蹴〉Lv2(←1UP) 〈遠視〉Lv68(←2UP)
〈製作の指先〉Lv86 〈小盾〉Lv16 〈隠蔽〉Lv46 〈身体能力強化〉Lv73(←1UP)
〈義賊〉Lv47 〈上級鞭術〉Lv15 〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv42 〈上級鍛冶〉Lv40 〈上級薬剤〉Lv15 〈上級料理〉Lv36
ExP25
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人難の相
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者:青のピカーシャ(アクア) 〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
〈風呂好き〉〈???の可能性〉
同行者:雨龍 〈基本戦闘参加不能〉〈基本戦闘支援不能〉〈基本戦闘妨害不能〉
〈人型変化可能〉 〈風呂好き〉〈特定質問による凶暴化〉
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