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連載
番外編、その頃の魔王城
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最近いやしがないとの事で、番外編をはさみます。
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「やっぱり魔王は悪役をするべきなのだろうか」
ここは魔王城の遊戯室。 魔王(魔族の女性)が、趣味と実益を兼ねて魔王城の一角に魔王が1人でコツコツと作り上げた多数の遊具がある。 遊ぶ事が出来る部屋であり、まだアップデートが先と言うこともあり出番がなくて暇な魔族の皆様の憩いの場となっている。その遊技場に居る魔王が眉間にしわを寄せながらボソッと呟いた一言が先ほどの言葉である。
「魔王様、突然何を言い出すのですか?」
ビリヤードに興じていた四天王の内の一人であるエキドナが、頭に?マークを浮かべながら魔王に問いかける。エキドナとは、ラミアのように下半身が蛇であり、上半身の背中から羽が生えている美女である。
「いやな……人の世界では魔王と言うのは悪役を務める事が多いようでな、我もそういった立ち振る舞いをした方が喜ばれるのではないかと思ってな……」
そう言いながら椅子に座り、足を高く組む姿は魔王と言うよりも女神のように美しい。 実際この世界の魔王はあくまで『魔族の王』という意味しかなく、また魔族の皆さんも肌色こそ青い肌などが多いが性格はフレンドリーで温厚であったりする……ぶっちゃければ戦争とは縁遠い存在である。 ただし魔法の力に加え肉体的な強さも兼ね備えており強い種族であるという部分は、ファンタジー世界によくある設定に近い。
「ですが魔王様、最近ではむしろ魔王様と結婚して幸せに……なんて展開も多いようですよ? 魔王と勇者が相思相愛になるというお話も増えておりますし」
やんわりとエキドナは他のお話を例えに出し、無理に悪役を務めなくてもいいだろうということを伝える。 実際この魔王は王座に座っている時より、遊具を作っている時の方が楽しそうなのである。そんな魔王が高笑いを上げて悪事を展開する姿を想像しようとしたが……出来なかった、というのがエキドナの本心である。
「そうですよ、魔王様。 無理に悪役なんてしなくていいと思いますよ」
エキドナに同意したのは、部下とチェスに興じていた四天王の1人である死神の女性。死神である為か、やや影が濃いがその表情には陰鬱さはない。
「それに悪役といったら死神である私のほうが色々とひどい扱いを受けてますよ」
死神、と聞くと即死させてくる能力を持っていたりする恐ろしいモンスター、というイメージを持つ人も多いだろう……が、それは大半が偽物である。本来の死神とは、寿命、事故、病気などを問わず死した人の魂をその鎌で刈り取って、冥界にきちんと導くという仕事を持つれっきとした神である。 死神によって導かれた魂は恨みなどから完全に開放され、穏やかに成仏する事が出来る穏やかな死を迎えられる。 しかし、人はどうしても死を恐れ、その死を司る死神を恐れたのだ。
その死神の女性が魔王の四天王をしている理由は、寿命が長い魔族の人が寿命を迎えた時に本来の仕事である魂を導く仕事をする為である。 それから逆に死すべき時ではない時の怪我や病気には治療を施すし、病気も治す。 死を司るからこそ、死すべきではない時の処置もよく分かっている。そういった行動を続けた彼女のお陰で、魔族の中での死神とは死すべきときは彼女に導かれ、死すべき時ではない時は治癒を与える彼女のお陰で、死神という存在を歪めてとらえる者はいない。
「む、確かにそうか……」
死神の意見を受けて、魔王はそっと左手で頬杖をつき始める。その姿がいちいち一枚の絵画のように美しいのは魔王だからなのか。
「両方やれば宜しいではありませんか」
そう言ったのは7並べを部下のサキュバスとしていた四天王の1人、サキュバス・クィーンだった。サキュバス・クィーンはその美しさに惹かれる男性が絶えないので、普段は無闇に出歩かずに済む様にとある場所に小さな街を作ってそこで生活している。その特権を許されている為に女王である彼女が四天王の義務を果たす事が魔王との約定である。 戦闘方法は魔法使いタイプであり、それに加えて幻惑、誘惑の力をも使いこなす。 誘惑の方は女性相手には無効という事はなく、性別の差など関係なく魅了し、戦闘の意思を奪う。
「両方、か?」
魔王様はそのサキュバス・クィーンの意見に顔を上げる。
「そうです、魔王様と親しくしたいというのであれば、微笑を返せば宜しいのですよ。 そして逆に一方的に魔王様を悪と断じて攻めてくるのであれば死を持って報いれば宜しいだけかと。 人にだって色々な考えの違いがありますし、我々魔族達も姿形に考えも違いますし、一辺倒に考える必要は無いと私は考えます」
確かにその通りか、そう魔王は考えて思考の海にゆっくりと沈む。
「で、貴方はどう考えていますか?」
エキドナが問いかけたのは四天王最後のリビングアーマー。 鎧だけで動く存在だがれっきとした魔族の一員であり、生きている存在である。
「……すでに大体答えが出ていますし、私が付け加えることはありませんよ。 ただ、お城が広いですから土足でバタバタ走り回られると、リビングメイド部隊からは仕事が増えると文句が増えそうではありますが」
それだけ言ってリビングアーマーの彼女(鎧が女性用のフルプレートアーマー)は静かに直立を続ける。リビングメイドとはメイド服のリビングアーマーであり、人が見ると中身がないロングスカートのメイド服だけが勝手に動いて、魔王城の掃除や洗濯をしているように見える為、一種のポルターガイストのように見えるだろう。 だが、れっきとした魔族の一員であり、生きている。メイド部隊は魔王城の清掃、料理などの衣食住の部分を担当しており、四天王であるリビングアーマーは、そのリビングメイドの長も兼任している。リビングアーマー自身も掃除や洗濯や料理が得意なのだが、家事をする全身鎧というその姿は、始めて見た者の目にはなかなか奇妙に写る事だろう。
「ふむ、無理に悪役はしなくてもよい、ということで良いか……」
魔王が思考の海から帰ってきたようだ。眉間のしわも消えている。 そんな魔王様が統治する魔王領は今日も穏やかで平和だった。
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と、魔王城は平和です。
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「やっぱり魔王は悪役をするべきなのだろうか」
ここは魔王城の遊戯室。 魔王(魔族の女性)が、趣味と実益を兼ねて魔王城の一角に魔王が1人でコツコツと作り上げた多数の遊具がある。 遊ぶ事が出来る部屋であり、まだアップデートが先と言うこともあり出番がなくて暇な魔族の皆様の憩いの場となっている。その遊技場に居る魔王が眉間にしわを寄せながらボソッと呟いた一言が先ほどの言葉である。
「魔王様、突然何を言い出すのですか?」
ビリヤードに興じていた四天王の内の一人であるエキドナが、頭に?マークを浮かべながら魔王に問いかける。エキドナとは、ラミアのように下半身が蛇であり、上半身の背中から羽が生えている美女である。
「いやな……人の世界では魔王と言うのは悪役を務める事が多いようでな、我もそういった立ち振る舞いをした方が喜ばれるのではないかと思ってな……」
そう言いながら椅子に座り、足を高く組む姿は魔王と言うよりも女神のように美しい。 実際この世界の魔王はあくまで『魔族の王』という意味しかなく、また魔族の皆さんも肌色こそ青い肌などが多いが性格はフレンドリーで温厚であったりする……ぶっちゃければ戦争とは縁遠い存在である。 ただし魔法の力に加え肉体的な強さも兼ね備えており強い種族であるという部分は、ファンタジー世界によくある設定に近い。
「ですが魔王様、最近ではむしろ魔王様と結婚して幸せに……なんて展開も多いようですよ? 魔王と勇者が相思相愛になるというお話も増えておりますし」
やんわりとエキドナは他のお話を例えに出し、無理に悪役を務めなくてもいいだろうということを伝える。 実際この魔王は王座に座っている時より、遊具を作っている時の方が楽しそうなのである。そんな魔王が高笑いを上げて悪事を展開する姿を想像しようとしたが……出来なかった、というのがエキドナの本心である。
「そうですよ、魔王様。 無理に悪役なんてしなくていいと思いますよ」
エキドナに同意したのは、部下とチェスに興じていた四天王の1人である死神の女性。死神である為か、やや影が濃いがその表情には陰鬱さはない。
「それに悪役といったら死神である私のほうが色々とひどい扱いを受けてますよ」
死神、と聞くと即死させてくる能力を持っていたりする恐ろしいモンスター、というイメージを持つ人も多いだろう……が、それは大半が偽物である。本来の死神とは、寿命、事故、病気などを問わず死した人の魂をその鎌で刈り取って、冥界にきちんと導くという仕事を持つれっきとした神である。 死神によって導かれた魂は恨みなどから完全に開放され、穏やかに成仏する事が出来る穏やかな死を迎えられる。 しかし、人はどうしても死を恐れ、その死を司る死神を恐れたのだ。
その死神の女性が魔王の四天王をしている理由は、寿命が長い魔族の人が寿命を迎えた時に本来の仕事である魂を導く仕事をする為である。 それから逆に死すべき時ではない時の怪我や病気には治療を施すし、病気も治す。 死を司るからこそ、死すべきではない時の処置もよく分かっている。そういった行動を続けた彼女のお陰で、魔族の中での死神とは死すべきときは彼女に導かれ、死すべき時ではない時は治癒を与える彼女のお陰で、死神という存在を歪めてとらえる者はいない。
「む、確かにそうか……」
死神の意見を受けて、魔王はそっと左手で頬杖をつき始める。その姿がいちいち一枚の絵画のように美しいのは魔王だからなのか。
「両方やれば宜しいではありませんか」
そう言ったのは7並べを部下のサキュバスとしていた四天王の1人、サキュバス・クィーンだった。サキュバス・クィーンはその美しさに惹かれる男性が絶えないので、普段は無闇に出歩かずに済む様にとある場所に小さな街を作ってそこで生活している。その特権を許されている為に女王である彼女が四天王の義務を果たす事が魔王との約定である。 戦闘方法は魔法使いタイプであり、それに加えて幻惑、誘惑の力をも使いこなす。 誘惑の方は女性相手には無効という事はなく、性別の差など関係なく魅了し、戦闘の意思を奪う。
「両方、か?」
魔王様はそのサキュバス・クィーンの意見に顔を上げる。
「そうです、魔王様と親しくしたいというのであれば、微笑を返せば宜しいのですよ。 そして逆に一方的に魔王様を悪と断じて攻めてくるのであれば死を持って報いれば宜しいだけかと。 人にだって色々な考えの違いがありますし、我々魔族達も姿形に考えも違いますし、一辺倒に考える必要は無いと私は考えます」
確かにその通りか、そう魔王は考えて思考の海にゆっくりと沈む。
「で、貴方はどう考えていますか?」
エキドナが問いかけたのは四天王最後のリビングアーマー。 鎧だけで動く存在だがれっきとした魔族の一員であり、生きている存在である。
「……すでに大体答えが出ていますし、私が付け加えることはありませんよ。 ただ、お城が広いですから土足でバタバタ走り回られると、リビングメイド部隊からは仕事が増えると文句が増えそうではありますが」
それだけ言ってリビングアーマーの彼女(鎧が女性用のフルプレートアーマー)は静かに直立を続ける。リビングメイドとはメイド服のリビングアーマーであり、人が見ると中身がないロングスカートのメイド服だけが勝手に動いて、魔王城の掃除や洗濯をしているように見える為、一種のポルターガイストのように見えるだろう。 だが、れっきとした魔族の一員であり、生きている。メイド部隊は魔王城の清掃、料理などの衣食住の部分を担当しており、四天王であるリビングアーマーは、そのリビングメイドの長も兼任している。リビングアーマー自身も掃除や洗濯や料理が得意なのだが、家事をする全身鎧というその姿は、始めて見た者の目にはなかなか奇妙に写る事だろう。
「ふむ、無理に悪役はしなくてもよい、ということで良いか……」
魔王が思考の海から帰ってきたようだ。眉間のしわも消えている。 そんな魔王様が統治する魔王領は今日も穏やかで平和だった。
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と、魔王城は平和です。
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