モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?

紫楼

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 ベン兄さんが固まったままでいるのを放置して話を続ける。

「それならばBランクのほうですね」

 爵位と領地なんて領民の生命を背負うなんて冗談じゃないよ。

 父が子爵でガラム領主なのはギリギリのラインで貧乏なので王都に呼び出されてもいけない、社交も免除されるためにお祖父様が不毛の地に引きこもれるように策を弄した感じ。あと伯父の干渉避けもね。
 流石に伯爵以上では特別な事情がないと、式典や王家主催の宴に出ないのは無理だから。

 それなのにルカが伯爵でそこそこの領地をもらったら、私たち引きこもれないじゃない。
 
「だが祝賀会までには無理であろう?」

 お祖父様は父さん母さんが引きこもるのは理解してても、ジョン兄さんとベン兄さんも含めて私たち兄弟姉妹が表に出ないのは歓迎してない。
 親の因果に巻き込まれるのは良くないって思ってるみたいだけど、私たちは貴族でありたいと思ってないからねぇ。

「・・・Cランクじゃ足りないですか」
 
 この国じゃまぁまぁなんだけどな。
 ほどほどで行きたかったなぁ。

「お前たちが人前に出て無事でいられる立場と言うなら少し足りぬな」

 足枷や首輪をつけたい訳じゃないと信じてるけど、伯爵位はマズイよね。伯父の代になったら一族の長だからとか言って来そうだし、面倒しかない。
 
 私たちにそれまでに結婚しろってことか?

「パーティ前にBランクになれば除籍に納得してくれるんですか?」

 ルカが目に力を入れて確認する。

「Bまでになれば、お前たちを手に入れたいと下心を持つ者を跳ね除けても問題は無かろう。だが現状パーティで目をつけられれば婚姻を強引におしすすめられれれば逃げられないであろう?」

 母さんがどれくらい面倒な目にあったかが推しはかれるよ。
 正直美しいだけでそんなに?って思うんだけど。

「お祖父様に頼るわけにもいかないですしね」

 ルカが私に目配せをする。
 
「ベン兄さん、数時間出掛けてくるのでネルとファナから絶対に目を離さないでいてください」
「何だ?」

 この屋敷の中にこの子達を置いていくには嫌だけど連れ歩くわけにもいかない。こうなるとベン兄さんがついて来てくれて本当に良かった。

「ちょっとギルドに行ってくるよ」

 ちょっとそこまでってなくらい気軽く言ってみたけど、正直めんどくさいなぁ。

 お祖父様が怪訝な顔をしてるけど知らん。

 私とルカは一旦用意された部屋に戻って簡素な衣服に着替え、私は上にまぁまぁなドレスを着て、マントを羽織って出掛ける。表はそこそこ良い生地で貴族街でもアリな見た目、裏がちょっと粗めで庶民街では裏返しに着て平民っぽく見せる工夫をした一品。逸品とは言えないね。

 屋敷を出るまでメイドや侍従がちょっと眉を顰めたけど街に出るのに良い格好出来ない。

 馬車を出してくれたので貴族街の端っこまで乗せてもらって、馬車の中でドレスを脱いでマントを羽織り直す。まだ表ね。馭者に見られちゃうから。

「おかえりはどうなされますか?」
 お迎えもしてくれると言われたけど、時間が読めないので帰りは馬車を借りるからと帰ってもらった。

 庶民街に入ってすぐマントを裏返しにして足早に冒険者ギルドを目指す。

 まだ懐かしいってほど時間が経ってないので、受付のモニカちゃんに合わせる顔がないわ~って思ったけど看板娘なモニカちゃんはいつもの定位置でムサイ奴らを相手してる。

 マントを脱いで受付待つかって思ったらモニカちゃんも隣のネリーちゃんも私とルカを見つけて慌ててかけ寄ってくる。
 なんかしたっけ?

「あああー~!!!リンクくん!リュカくん!ギルマスのところに顔出してくださいぃーー!!」

 この前の緊急依頼のことかな。

「了解」

 モニカちゃんのバイーンな胸に私の腕が挟まれて、ネリーちゃんの程よい膨らみがルカの腕に・・・。ルカちゃん、逆だったら良かったのにね。なんかすまん。
 私はちゃっかり幸せなんだけど。ふわふわって良いよね。自分にはないので!

 周りのモニカちゃん狙いの奴らが私の腕を眺めて羨ましそうかつ恨めしそうだよ。
 男装してるとは言え、私も美女なんだからな!

 どのみち私たちも用事はギルマスだったので早速案内されるがまま、って二人とも来たら受付困るじゃん?

「この時間、依頼受付なんてほとんどないからベスだけで大丈夫です~」

 ベスちゃんが気の毒だろう。私たちはギルマスに相談があるからって二人とも戻ってもらった。

「ええ~!せっかく王都に来てくれたのにぃ!また来てね?」

 二人して上目遣いだよ。可愛いけど、私には意味がないよ~。
 ルカは可愛い子は好きだけどのめり込んだりが無いから軽く頷くだけだよ。モニカちゃんのこと好みなくせにねっ!
 
 ギルマスの部屋にノックをすると、
「おーん?どうぞー」
って言われたので遠慮なく。

 目を眇めて書類を眺めてた目線が上に向いて私たちを確認したら、破顔した。

「おおおぅ!!よく来てくれたな!!」

 ん?緊急依頼はそんな歓迎されるほどのことじゃなかったよ?

 ルカと一緒にゴツいおっさんに抱きしめられた。


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