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 閉門ギリギリで外に出た。
 顔見知りの門番のおっちゃんが心配してくれたけど、大丈夫~って出たよ。
 
 しばらくは競歩くらいの速度で歩いてた。次の町までは仮眠しても朝の開門くらいに着けるだろうか。

「しっかし何であんな睨んできたのかな?何もしてないよねぇ」
「何もしないからって言ってくるのもいるだろ?」

「えー?」

 卒業式の彼女はそんな理不尽な感じじゃなかったのにね。

「ゴブリンの集落、出来立てならいいけど、時間経ってるなら人の遺体とか出てくるよね?あのお嬢さま大丈夫だと思う?」
「なったばっかじゃ無いみたいだし、ヤバかったらマグナムが止めるだろ」

 ルカは私のせいか分かんないけど結構クール。私が突飛な行動するのに付き合ったせいでとか兄たちが笑ってたけど、わりと元々な気がする。

「「冒険者はなった時点で自己責任」」

 そう、今までだって無茶して死んだ人も大怪我して引退した人も見てきた。

 分不相応な仕事を受けたのが悪い。
 例え同情や優しさから引き受けたとしても完遂出来ない仕事を受けるのが間違い。

 割り切らないとやって行けない。
 何でも引き受けたいなら強くなって影響力のあるランクになってから。

 私達はそうやって生き延びてきた。
 他人からどう思われようと生き延びることが大前提。

「ルカが一緒に冒険者になってくれて良かった」



 私は記憶が戻った時、ここがどんな世界だか分からなかったし、自分の立ち位置も分からなかった。

 ただ実家が貧乏で、母が昔求婚を断った相手に未だ嫌がらせを受けてるって知って。
 父の元に母に似た娘(私)を差し出せって脅しが来てたのも8歳の頃に偶然知っちゃって。

 物語がどうとかの前に自分と家族を守らないとって思った。

 スキルボードが出せたことで、自分の魔力や属性、スキルを知って。

 定番の前世の食べ物や発明なんか出したら余計注目浴びて変な貴族に狙われる可能性が上がると思ったから、自分が強くなって抵抗できるようにしようって、冒険者になることを選んだ。
 
 やんちゃだった私がどんどん大人しく考え込むようになったのを、ルカが心配して張り付いてたのと、ルカの魔力やスキルが自分と同じくらいって気がついたから、思い切って前世の話をして。

「前世はなんか分かんないけど、リィンがリィンならいいや。能力が同じなのは俺たち双子だからだろ」
 8歳のルカが冷静にそう言った。

「もしくは母さんのお腹の中でリィンの魔力が俺に混じっちゃったんじゃない?」
 そんな感じで流された。
 ルカは転生とか前世の記憶とかは無いって言ってる。けど随分大人びてた。

 それから2人で森に行ってこっそり魔法の練習をしたり、木の枝を剣に見立てて訓練したり。

 そんな毎日を送っていたら、森の中で妖精と出会った。
 私達は妖精達に魔力の使い方を学んで、どんどん使える種類が増えて。

 あれ?主人公サイドなの?って思ったこともありました。違ったけど。

 王都に行く時、妖精達も着いてきてくれるって言ってくれたけど、目敏いのに見つかると大変だからお留守番をお願いした。

 学園ではとにかく目立たず、いやスキップするのには少し目だったけど、他にもいたからね。
 まぁ突き抜けず、ほどほどに過ごして、高位貴族に目をつけられないように卒業した。卒業式ではアレだったけど、何とかなった。



「ルカがいないと無理だったよ」
「何?突然」
 
 半分くらい進んだところで仮眠を取るためテントを出して、簡単な食事を用意してる時に呟いたら、ルカは怪訝そうに見てくる。
 少し耳が赤いぞ~。照れた時はいつもよりつっけんどんになるんだ。可愛いね。

「ベーつに?お姉ちゃんはルカちゃんが大好きなだけぇ」
 ルカの隣に座って肩にもたれ掛かるとルカは嫌そうな顔をしつつもじっとしてくれる。

「双子で姉も何も無い」

 出てくる順番が違っただけで私たちはずっと一緒。どっちが上とか偉いとかもちろん無いよ。

 でも可愛くて大好きなんだもん。

 買っておいた肉串とパンを少し温めて食べて、用意した簡単スープを飲んでからお互い交代で休んだ。

 空が少し朝焼けた頃、パンを食べてから荷物を片付けて、出発。

 夜間の獲物はツノ兎3匹。毛感触が良くお肉も美味しいのでラッキーだったよ。
 





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