上 下
9 / 13
本編

両家の父は仲良しです

しおりを挟む
 お父様と私は馬車いっぱいに結納品やお土産を詰めてシルバーリーフにやってきた。
 婚約成立前だけどほぼ確定だし、何度も行き来するのはお父様もまだ忙しいので一回で済ませたい。

 シルバーリーフ家の皆さんが総出で出迎えてくださって。
 早速本題に入ると
「サファイア嬢の相手としてなら長男でも次男でも婿に出しましたぞ!そのひねくれ者でいいのかい?」
 お父君が冗談のフリして他の兄を勧めてくる。
「ほっほ、婿に来てもらうのが嫡男では申し訳なかろう。レイニード殿は学友としてよくサファイアを助けてくれたと言うから気が会いましょうな」
「サファイア嬢ならこっちに嫁入りでも大歓迎なんだがなぁ」
 元王都でタッグを組んでた二人が笑顔でやりやってますが何か怖い。

「サファイアちゃん、私のことお義母さまって呼んでくださる?」
 男3人育て上げた美貌の奥様がかわいいおねだりを!コクコクと頭を振ると
「うふふ、女の子欲しかったから嬉しいわ~♡」
「お式のドレス何枚か作るでしょ?1着は私に任せて欲しいの、でもサファイアちゃんドレス工房も持ってるのよねぇ?」
 指を組んで左右に体を揺らして楽しそうなお義母さまをガッカリなんてされれませんわ。
「いろんなデザイナーの衣装が着られるなんて嬉しいですわ」
「そうよねー!」

「サファイア、これ婚約誓約書」
 レイから渡された書類をザッと確認。
 特に罠的な仕掛けもない。
 浮気や暴力など禁止事項、財産の管理など一般的な内容なのでお父様と一緒にサイン。
 

 婚姻式は半年後。シルバーリーフとアーバンで2回。パーティの飾り付けや食事の手配楽しみ♫

 レイは荷物がまとまったら、アーバンに来ちゃうんだって。新居間に合いませんがな。

「そういえばのう、スイートポテトだったかが拘束されたぞ」
 あら美味しそうね?

「国境に辿り着けなかったか?」
「そもそもあの妙なリボンまみれのドレスで辻馬車乗ってたらカモだろうよ、有金全部巻き上げられて路上に捨てられてたらしいぞ。結構ボロボロで」
「そりゃ女一人で行動してたらなぁ・・・」

 真実の愛とか一番愛しいとか言ってたはずな王子様とはどうなさったのかしら?
 一人だけ脱出しちゃうなんて。
 やっぱり愛なんて軽いものね。
 ん?スイートポテトさんは一度も愛とか言ってなかったかも??

「いやぁん、殿下ったら素敵♡」
「えー☆殿下ぁ~カッコいい~♫」
「ポメラもぉあのネックレスがぁほ・し・いな♡」
 いけない。イラッとしてきた。
 いつも見かけると殿下の腕にぶら下っってブリブリっと上目遣いで何かしら褒めたりおねだりしたり。
 そんな姿しか思い出せないわ。
 
「ああ、ポメラは可愛いな」
「あの女と違って素直だ」
「愛らしいな、ポメラは本当に愛おしい」
 今まで散々侍女や下級貴族の令嬢に手をつけておいてどの口が言うの?って思ったけど。誉め殺してくれる子がスイートポテトさんしかいなかったのかしらね?

 どっちにしてもおねだり女の愛もチヤホヤされたいだけの男の愛もしょうもないわ。

 今頃王子はなにを思ってるんでしょうね?

 婚約っていう良いお話の時に思い出すんじゃなかったわ。

「おお~これはアーバンの滴ではないか!」
 お土産を開いた元宰相さまが喜声を上げる。
 手に持っているのはケース入りの一番オススメのお酒プレミアものです。これも製法が歴史に埋もれちゃってたので再現まで大変でした。主に職人さんが。
 プレミアは数が少ないのと一番に埋もれた歴史の番人だった村の人たちとお世話になった職人に配ったので一般販売数が少ないことでついちゃった付加価値。

「あらぁこれはフィオーラの吐息ね!」
 高級美容液の瓶を掲げて大喜びのお義母さま。相当テンションが高い!
 ちなみにフィオーラはお母様のこと。いつまでも綺麗なお母様にあやかってお名前をいただきましたわ。
 次に出す美容クリームはお義母さまのお名前がいいかしら?お義母さまも相当な美人ですもの。早速こっそり打診したら、お義母さまにぎゅうぅって抱きしめられて、
「ぬわんて可愛い娘かしら?レイナード!あなたはとっととアーバンに行ってサファイアちゃんはここに残して!!!!」

 やや!婿だけ向かうとかなにそれー!

 化粧品に目がないって本当だったのね、って思ったらレイがため息ついて、
「母上が美しいから化粧品に名前つかわせろって言ったらそうなるだろう?最上級の讃美だろうが」
 あ、そっか。お母様もご機嫌だったわ。
 
「もう逃げられないからな?」

 ん?なんか一瞬目の奥が光ってた気がするけど気のせいかしら?
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お望み通りに婚約破棄したのに嫌がらせを受けるので、ちょっと行動を起こしてみた。

夢草 蝶
恋愛
 婚約破棄をしたのに、元婚約者の浮気相手から嫌がらせを受けている。  流石に疲れてきたある日。  靴箱に入っていた呼び出し状を私は──。

(完)お姉様、ありがとう!ーー姉は妹に婚約破棄され……処刑され……(全5話)

青空一夏
恋愛
姉にコンプレックスを感じていた妹が無意識に魅了の魔法を使い、姉の婚約者レオン王太子を魅了。婚約破棄に追い込むが…… 毎日7:00投稿。全5話。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

信頼はお金では買えません。ご存じありませんか? それはご愁傷様です

ノ木瀬 優
恋愛
突然婚約者から婚約破棄を突き付けられたミナ。頑張って立ち上げた商会も半分持っていかれてしまった。そんなミナを執事のロロが優しくサポートする。一方その頃、婚約破棄したカールは……。 アルファポリス初投稿です! (主になろうをメインで活動していました。) よくある婚約破棄物、全7話で2万字ちょっとの短い作品です。 本日中に完結します。軽い気持ちで読んで頂けたらと思います。R15は保険です。

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

(完結)夫に殺された公爵令嬢のさっくり復讐劇(全5話)

青空一夏
恋愛
 自分に自信が持てない私は夫を容姿だけで選んでしまう。彼は結婚する前までは優しかったが、結婚した途端に冷たくなったヒューゴ様。  私に笑いかけない。話しかけてくる言葉もない。蔑む眼差しだけが私に突き刺さる。  「ねぇ、私、なにか悪いことした?」  遠慮がちに聞いてみる。とても綺麗な形のいい唇の口角があがり、ほんの少し微笑む。その美しさに私は圧倒されるが、彼の口から紡ぎ出された言葉は残酷だ。 「いや、何もしていない。むしろ何もしていないから俺がイライラするのかな?」と言った。  夫は私に・・・・・・お金を要求した。そう、彼は私のお金だけが目当てだったのだ。 ※異世界中世ヨーロッパ風。残酷のR15。ざまぁ。胸くそ夫。タイムリープ(時間が戻り人生やり直し)。現代の言葉遣い、現代にある機器や製品等がでてくる場合があります。全く史実に基づいておりません。 ※3話目からラブコメ化しております。 ※残酷シーンを含むお話しには※をつけます。初めにどんな内容かざっと書いてありますので、苦手な方は飛ばして読んでくださいね。ハンムラビ法典的ざまぁで、強めの因果応報を望む方向きです。

婚約破棄されてしまった件ですが……

星天
恋愛
アリア・エルドラドは日々、王家に嫁ぐため、教育を受けていたが、婚約破棄を言い渡されてしまう。 はたして、彼女の運命とは……

明日婚約破棄すると宣言されたら?

haru.
恋愛
婚約者から突然呼び出されて「明日婚約破棄するから準備をしておけ。」と言われた。 準備とは何の準備でしょうか? ...心の準備?...両親への説明?...何の事なのでしょうか? いつも一言足りない私の婚約者。 今度はどういったあの言葉には込められていたのでしょうか? 17年来の知り合いですけど未だにあの方の事が理解出来ません。

処理中です...