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本編

面倒な女と脳天気王子

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 王城で外交用の書類の翻訳をしているときに国王陛下が呼んでいると女官が迎えに来た。

「陛下、何かございましたか?」

 大広間に通され、宰相、大臣などが勢揃いしていた。

「サファイア!この面子の中で一番最後にやって来るとはどう言うことだ!」

 どうも何もお前が仕事を押し付けるからだろうが!とは思うが顔には出さない。

 意味のわからない言い掛かりをつけているこの男の腕には何故か勝ち誇った顔の趣味の悪いドレスの令嬢が巻き付いている。

「お前のような傲慢で使えない女なぞやはり妃には相応しくない!!婚約破棄だ!!父上!私はこのポメラ・スウィートヘッド子爵令嬢を愛しています!!」


 王家に押し付けられて仕方なく婚約していたルーリオ第一王子に婚約破棄を言い渡されましたわ。
 つい先日、正式な婚約誓約書に署名したばかりだと言うのに。
 私はつい笑みを作ってしまう。

「あら、私は陛下に御了承頂けるのなら構いませんわ」

 この席には父の公爵シルヴィオ・アーバン財務相と兄のジェイド・アーバン王国騎士団副団長も着いている。
 二人とも無表情を装っていますが口角が上がってますわ。お互い修行が足りませんこと。

 これだけの重鎮が集まっている中で発言の撤回は出来ない。
 公爵家と公爵令嬢を侮辱し、恥をかかせてもいる。

 あっさりと私に了承されて拍子抜けしたのかポカンとしている王子と令嬢。 
 そもそもその男おバカなので私に押し付けられた不良債権ですもの。
 
 でもせめて婚約誓約書に署名する前に行動したら良ろしかったのにね。

「では陛下、そう言うことですので」

 私の後ろに控えていた護衛のランドから書類を渡してもらい陛下に差し出す。
 ランドにはいつでも取り出せるように持ち歩いてもらっていた。

 陛下は青い顔をしつつもその書類を引き裂く。魔法紙に魔導インクが使われたこの国で一番効力のある契約書が魔法の炎で消える。    

 これで誓約書の破棄の場合の賠償支払いと慰謝料の支払い、付随していた契約の破棄を完全に遂行しなければならない。

 実は王子が学園で出会ったポメラに夢中になっていることは随分前から知っていたし、すでに貴族の中では知らないものはいなかった。

 陛下が気に留めていなかったのは、下位貴族の娘を正妻に迎えようとはいくら王子でも言い出さないと思い込んでいたのと、必要以上の王子の情報は周りから意図的に隠されていたから。

「それでは執務の引き継ぎが済み次第、王宮を辞させて頂きますね」

 
「待て!!お前仕事はどうするんだ!!!」

 はて?ぼんくら王子は何言ってるの?

「王家の仕事ですので婚約を破棄された私には触れない管轄になりましたわ」

「では誰が仕事をするんだ!?」

 陛下も大臣たちもあまりの発言で驚愕している。

「ご自分でなさるか、新たなご婚約者さまにお任せすれば良いのでは?」

 なぜお二人ともびっくりされてるのかわかりませんがもう帰っていいですか?

「陛下、我々も誓約書の通りに職を辞して領地に帰らせていただきます。公爵家一門の希望者も追随すると思いますが誓約は大事ですからねぇ」

 お父様が淡々とご挨拶です。一門ってここにいる重鎮と城内の役職半分くらいついて来そうね。正式には一門じゃないけど過去に婿入り嫁入りの関係があれば言い張れますよね。他の公爵家も近しい血筋。

 ちなみにお父様の言う領地に帰るは独立しちゃうからね⭐︎って言う意味です。

 陛下はもう真っ白になっています。

 流石に下のものが困るのは気の毒なので残る人に引き継ぎはしますのよ?優しいでしょ。

 ちなみに私個人も王都に商会といくつかお店を持っていますが、全部閉めて領地と他国に移します♪沈む船からは逃げなくてはね!
  
 王子がいつかやらかしてくれないかなって思っていたら思いの外早かったですの。

 一応いつでも行動できるように何年もかけて予算を作るために商売を手広くやってたら儲かっちゃいまして。王国に税金がっぽり取られたのはまあご愛嬌。

 逆にうちが引き上げることになってダメージが深い状態で民には申し訳ない。
 移住は大歓迎ってこっそり宣伝する予定。
 
 引き継ぎと荷物の引き上げに与えられていた執務部屋にいたらポメラがやってきた!

「何で家具持ってっちゃうのよ!」

 え?私のだし逆に何で置いてくの?
 全部据え置きに戻して綺麗さっぱりでお返しするのが普通でしょ?

「それ可愛いから置いていきなさいよ!」

「あ”?何でうちの領民が私のために作ってお祝いにくれたものを置いてかなきゃいけないのよ!」

「え、お金持ちのくせに置いていけばいいでしょ!」

「欲しかったら実家の持参金で揃えなさい!もし下げ渡すにしても女官や侍女に日頃の感謝や褒美であげるものです。何も関係ない貴方に差し上げる物なんてないのよ」

 何?新種のイキモノ?

 話している最中も部屋の中を物色している。宝石ケースがあったらめんどくさい事になっていた気がする。
 ここは執務室。休憩室や寝室は別なので目配せして侍女に貴重品を持って移動してもらう。

 かなり疲れつつやっとの思いでタウンハウスに戻った。

 お母様もたーいへんって言いながらニコニコです。

 やっと解放されたからね。

 あんなにやばい内容盛り盛りでよくサインしたなって思うんだけど、それだけ王家がやばかったのよね。

 お父様たちも部下に引き継ぎをって伝えたら部下の方達はついて行きたいって。
 ちょいと下級の人は行き場もないし繰り上がりで出世出来るかもって残る。

 お兄様は騎士団なので部下に泣かれたけど辺境騎士でも良いなら来い!ってやっちゃって大量離脱だって。

 タウンハウスは取り外せるものは全部外して屋敷は売る。早々に売り抜けないとゴミになる。


 他の一門のお家も引っ越し準備だろうなぁ。

 誓約書の中に賠償で王子の所領が入ってたんだどあそこ良い葡萄が採れるから絶対ワイン作るんだ~。
 慰謝料は領地で温室作ろうかな。

 自由な未来って素敵。


___________________

一番最初に思いつきながら後回しにしたのをやっと書き出し。数話で終わりますゆえ。
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