ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

702話

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 マイ酒蔵に向かうとケビンさんが庭にいた。

「こんにちは」
「お帰りなさいませ」

 一緒に酒蔵に入って、留守中のお酒の出入りと仕込んだ素材を記した書類を見せてもらった。

 家族や賄いに出す分はケビンに采配をお任せしてるので、大量に持ち出すとかは出来ないんだよ。
 グレーデン家がお付き合い関係で使う分も適度に出してもらう。
 素材のほとんどはグレーデン家のものだし、留守中にもお義父さまやお祖父さまたちは私の資材置き場に錬金用素材を貯めてくれてるので、代金以上の物が手に入ってるのだ。
 全部取られたらそりゃ泣くよ?
 犯人に抜け毛フエールとか作って塗っちゃうかもくらいには怒る。

 さすがに全取りされることはない。
 マギー先生はたまに魔石や魔物素材を持ってきて交換してくらしい。
 みんなにやられたら無くなっちゃうけど、グレーデン酒造がちゃんと軌道に乗って美味しくて手頃なお酒を売ってるので、普段はそちらで入手して、良いお酒は賄いや宴会で振る舞われるのを、騎士さんや従者さんは楽しみにしてくれてるんだよ。

「それでですね。このコーナを使ったお酒なんですが」
 ふぉ!?
 コーナのお酒!?
「どうにも苦めなんですよ」
 おお?

 お試しに味見を出してもらう。
 一緒に来ていたアランとジェイクもお猪口サイズを一口。

「おん?」
「んー」
「ぬぅ」
 砂糖に入ってないココアに濃いめのアルコール臭だ。大人の飲み物・・・。

「ミルクで割ってシロップを入れたらどうかな」
「なるほど?」
 確か苦いチョコレートリキュールはカクテルにも使えたよね。
 カクテルが広まると面倒なことになるから言わないけど。

「お菓子に使うのも良いかなぁ」
 アイスクリームにかけたりも良いね。

 棚にはパバブ酒や紫蘇もどきのお酒もあった。過去に作ったことがあるのが並んでるかな。
 そうそう新しい素材も出てこないしね。

「今夜のお祭りでいっぱい出してね」
 ケビンにお願いしておく。話はもう通ってるだろうけど、思いっきり出して良いって伝えておかないとね。
「それはみんな喜びますね」

 留守中に領地を守ってくれた御礼も兼ねて、夫人として大盤振る舞いしなくては。

 あ、各種五本分か確保ね。私のコレクション分は譲らないよ。

「あと近いうちに精霊王にお供物もしたいのでその分も避けておいてね」
「了解です」

 パバブ酒は多分アズライトたちしか喜ばない気がするんだけど、通はいるかな。

 
 ニーナが待ってるので、錬金術素材のチェックはしないで本邸に戻ることに。

「酒がいっぱい出来上がってましたね」
「私がいない間にあんまり出さなかったみたいだね」
「リーシャさまのお酒を勝手にごっそり持って行くバカはいないでしょ」

 私がブチキレるから?

「滅多に飲めない方がワクワクしますよ」
「そうかな」
 美味しいお酒があるなら私は毎日飲みたい。
 けど、酒蔵の持ち主の留守に好き勝手する品のないことはしないか。

「マギー先生とロジャー先生はもっと請求してるかと思った」
「領内の酒造がそれなりになってきてるなら無理言わないんじゃないですか」
 そう言うものかな?

 屋敷に戻るとニーナが玄関ホールで待っていた。
 周りの勧めで椅子に座ってたけど。

「ニーナ、ここは寒くはないけどお部屋で待っててくれた方が安心だよ?」
「待ちきれなくて」
 もう~。

 三週間の留守で心配かけちゃったかな。ずっと一緒だったからいないと落ち着かないよね。
 ニーナが結婚の挨拶でいなかった間は私も寂しかったもん。

 今日はこれからマダムで、夜は宴会だけど、宴会はそこそこでルークに連れ帰られちゃうだろうな。

 昼食後、マダムがお弟子さんとお針子さんたちを連れてきてくれた。

「うふふ、旅館は素晴らしいですね!私のお肌が生まれ変わりましたのよ」
 ご挨拶もそこそこにお肌を見てっとばかりに頬やデコルテを見せられた。

 どうやら、エステに特化した旅館に行ってくれたらしい。毎度あり。

「私たちもお休みに連れて行っていただきました」
 お弟子さんたちも日頃のご褒美に連れて行ってもらえたらしい。
 福利厚生がばっちりなマダム・シフォンのお店なのだ。素晴らしいね。

「リーシャさま、ユカータはとても楽ちんですね」
「ムームーも良いものでした」
 作ってくれたのもマダムたちなのに実際に着て休暇を過ごして見て感動したそうだ。

「温泉も肩こりが治りましたよ!」
「私は腰が」
 あらら、みんな湯治が必要な状態だったのね。

 マダムたちのマシンガントークはお義母さまが入ってくるまで続いた。

 いや、入ってきてからはさらに盛り上がったよねー。






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