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二章

674話

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 街巡りのラストはケーキ屋さんだった。
 個室を予約してくれてたそうだ。

 出てきたのは、蜂蜜を染み込ませたマフィンみたいなおやつ。紅茶はバラの花弁入りで、女性に人気と店員さんがおすすめしてくれたのでそれを頼んだ。
 ジュリアスさまとハンメルさまは花弁なしで飲んでる。

「ルーデウスの作る物に比べたらダメだろうけれど、それなりに人気な店だよ」
 今更だけど、ルルゥのことを本名で呼ぶのは昔馴染みか距離がある相手って感じかなぁ?
 
「蜂蜜は騎士団が訓練や討伐のついでに獲ってくるんだよ」
 領地内では、領民向けにお安く卸してるんだって。と言っても今いるお店は富裕層のお店だ。

「グレーデンの七虹草の蜂蜜には勝てないけれど、甘いのを安く出せる強みってやつだ」
 蜜ミツバチの七虹草の蜂蜜はブランド品みたいな扱いで貴族向けに販売してるのでめっちゃお高い。
 グレーデン家では、アズライトの池の島産なので自家栽培の強みで、好きに食べてるけど贅沢品だ。

「魔の森で獲ってくるなら貴重品扱いですよね」
 そう、採ってくるんじゃなくて、凶暴な蜂を討って獲ってくるんだよ。
 普通のミツバチだってたくさん集まって刺して来るのに、大きくて毒針で襲って来る魔の森の蜂は、一般の人は絶対採れないし、獲れないよ。

「そうだね。でも砂糖よりは入手しやすいから」
 そう言えるのは騎士団が化け物級な強さを持ってるから。

「そう言えば、グレーデン領からは砂糖も買えるようになったんだね」
「一般的に流通してるサトウキビではなくて野菜みたいなのから作ってるんです」
 ポムたちの加護舞のおかげで、サトウキビ畑も広げてるけどね。

「あの荒野が生まれ変わってるのすごいよ」
 ハンメルさまは私が初めて見た時のグレーデンより不毛だった時代を知ってるんだね。

「父上が頑張ってくれたところにリーシャが来てくれてグッと良くなったんだ」
 自分の功績にしないジュリアスさまは真面目過ぎるのだ。
 お義父さまの後をコツコツ積み上げてきたのはジュリアスさまだし、私をグレーデン家に迎え入れてくれたからこその話で、ポムたちのことも受け入れちゃう大らかさがあったからなのだ。

「陛下って何考えてるかわからないけど、強引に進める事柄は、結果的に上手い方向に進めるからきっとすごいお考えがあるんだろうね」
「・・・おそらくは権能だろう」
「レイドラ神の?あれ本当なんだ」

 王族には生まれながらに神に授かりしスキルみたいな物があるそうだ。
 どんな権能かは公表されないけれど、王宮内の神殿で儀式を受けて、神器が光らないと権能を持ってないので、立太子も即位も出来ないとか。

「前王も変わったお方だったと聞くし、何かしら人にはわからぬ物が見えておられるかもしれない」
 神の恩恵か何かはっきりした判断が出来るなら、王子さまが誕生されるまでに、王女殿下には権能が現れなかったから王太子に出来なかったのかな?
 
「リーシャ夫人がグレーデンに行くことでグレーデンが発展する事がわかってたのか?」
 うーん?だったらもっと早く急オレイユ男爵やハーボット派閥をどうにかしてたと思うんだよね?
 権能も何か制限とかあるのかな。

「未来か何かわかる能力ならカイダールお父さまを失う前に動かれてると思うんですよね」
 私より重要な人物だ。
 あれ?でもアルモンドでお兄さまとお兄さまの母に出会うことで、特効薬が完成してるのか?
 正解がわからないね。

「何かしら見えていたとしても、人の人生を強制的に悪い方向へ変えるようなお方ではない。分からぬことを考えて深みにはまるのは無駄だ」
 ジュリアスさまもハンメルさまも、王様のお忍び「来ちゃった」で、幼い頃からお付き合いがあるので悪い人ではないと知っている。

「権能ねぇ、じゃジュリアス兄さんは生真面目か筋肉だね」
 それは権能じゃないよ。
「ハンメルはお調子者か?」
「えー?」
 ハンメルさまも真面目っぽいけど、弟気質なのはセリウスさまとクラウスさまに似てるかな?

「父上たちは豪快だな」
「それは否定できない」
 ルシードさまは知将っぽいけど、豪快なんだ。

 二人が冗談とか言い合ってるのを見て、ジュリアスさまが外で気を抜いてる場面は珍しいなって思って、ついニヨニヨ見ちゃって、ハンメルさまと目があってクスッとされちゃった。

 
 蜂蜜マフィンは濃厚だったのでジュリアスさまは半分でギブアップ。私のお腹に収めたよ。

 お店を出たら、二人とも塩を求めてまた肉串を買った。
 私の分も買ってくれたけど、少し食べてジュリアスさまに。蜂蜜マフィンが胃を占領してるんだもの。

「あー、デートっぽい。彼女のもらうとかやっぱ良いよね。彼女欲しい!!」
 変なスイッチが入ったっぽい。

 ジュリアスさま的には、家では膝抱っこで私に食べさせてるし、屋台の食べ物を分けたりは子供の頃に弟たちにした事と大差ない感覚だったらしく、
「そう言う物なのか?」
って、ちょっと赤くなってた。

 私の旦那さま、可愛いかよ!

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