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二章

663話

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 森五ヶ所目。
 花びらが石鹸にできる花の群生地を見つけた。
 ウォレス領の人たちはほんのり香るこの花を、枕に入れたり靴に入れたりするサシェにしているそうだ。
 私が興味を示したら、いっぱい採っていいとのことだったので遠慮なく頂いた。
「プキュ・・・」
「モキュ・・・」
 ポムたちは花をパクッと食べて、すごい渋面になった。
 口の中で変な味がする花って言ってるらしい。見た目は可愛いコスモスっぽい花だ。

 川縁を見つけて早速花びらを手に置いて洗ってみた。
 アワアワが出てきたよ。
 
 動物油で作られている巷で売ってる石鹸やグレーデンで作ってる植物油の石鹸よりお手軽だ。しかも良い匂い。
 確か似たような実もあったけど、これはさらに花をむしるだけって言う。

 ウォレス男爵たちも驚きのアワアワさ。この花はこの近隣領でよく咲いてるんだそうで、珍しいものではないそう。
 繁殖率も良いので希少性はなく、商品としては低価格になっちゃいそうだ。
 
「商売にはならなくても洗濯や外出時の手洗いに良いですね」
 グレーデンには咲いてないのでセバスチャンは買いだと判断した。
 使用人向きの良いものだって。

 この気候じゃないと繁殖しないのかなぁ。
 定期的に仕入れられるなら自生に拘らなくても良いかな。食用に間違えちゃうと困るから。商品として仕入れる方が安心。

 翌日は滝のある森で、アズライトが幸せそうだった。私たちが探索中に滝でディディエと遊泳すると別行動に。

 この森では洋梨っぽいのと新たな辛い実が。ポムたちがダンシングした。

「プキューーン!!!」
「モッキューーーン!!!」
 コロコロとした青紫の味をそのままバクバクと頬袋に詰める。

 ウォレス男爵たちはこの実を穀物の虫除けとして使ってて、ポムたちが食べるのを見て驚いていた。

 ここの地域の人たちは、辛い物はあまり好きじゃないらしい。ポムたちが実を齧った時に香る匂いがすでに辛そうでみんな引いてる。
 だけど、ナギの唐辛子ゴロゴロスープに入ってた実の方がもっと辛いっぽいよ。
 
「はぁ、モラやモニパルが何か丸い物を良く食べているとは聞いていたのですが、辛いのを食べてるんですか」
 モラとモニパルはどの地域にもいるんだね。
「彼らは辛いものが大好きですが普通の木の実や果物も大好きですよ」
「ほー」
 あの可愛い見た目で辛党とか不思議すぎるよね。

 私たちはお昼を食べようとアズライトたちが残っている滝の近くに向かった。

「おお、滝の魚ですね」
 ディディエが魚を積み上げた山の上でフンスとしている。

 どうやらアズライトと一緒に滝に棲む魚を獲ったらしい。

「ギャォ」
 ぷりぷりと脂の乗った岩魚やヤマメみたいな魚とナマズっぽい・・・どじょうの方?なんかヌルッとしたのがピチピチ。

「あら、お昼ご飯に獲ってくれたの?」
 ルルゥがディディエに腕を差し出すとスッと腕に飛んできた。
「ギャオーン」
 ルルゥにスリスリと褒めてってやってる。
 アズライトはしゃべらないようにしてるので、無言で私の方に戻ってきた。

「賢い鳥ですね」
 ウォレス男爵たちはグレーデンになら変わった従魔がいても不思議ではないって思ってるようで、ディディエの姿もポムたちの色もジャスパーの種族も気にしてない。おおらか。

「これを使ってお昼にしましょう」
 
 そんなわけで焚き火と簡易石窯を組み上げて、魚の腑を取って枝に刺して焼いたり、身を解してハーブをまぶしてキノコの炒め物に混ぜたり。簡単ピザを焼いたりで楽しく食事した。

「森の中でこんなに手の込んだ食事ができるだなんて」
 安全な森でもやっぱりゆっくり休まないのかな。

 滝のマイナスイオン浴びながら、山の恵みと川の恵みを頂くって最高だよね。

「ここの先の岩場にプチプチとした感触の水苔がありますがもしかしてそちらのポムさまたちがお好きかもですね」
 渓流沿いの岩場に群生しているようだ。

「モキュ?」
「プキュ?」

 そんな情報を聞いてしまうと行くしかない。

 食事の片付けをした後、みんなでその岩場を目指した。

 見た目は海ブドウのような粒々した藻?のような物を発見。
 遠目だともずくっぽい。

「プキュ!」
「モッキュ!!」

 どうやら弾ける食感でピリ辛な藻らしい。ワサビに近しい辛味だそうで、ルルゥも料理に使いやすいかもと言い出して総出で収穫したよ。

 アズライトは『パバブが至高』なのであまり反応が良くなかった。

 ウォレス男爵たちがスープに使ってるそうで、辛い度は低めみたい。

 樹液探しは脱線しまくりなのだった。


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