ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
671 / 764
二章

660話

しおりを挟む
 厨房にたくさんは入れないので私とルルゥ、ウォレス家のコック長ニキさんとお弟子のノックさんで仕込みをする。
 ジュリアスさまは一緒にって言ってくれたけど、セリウスさまと一緒にレオンくんとハインツくんと遊んでてねって。
 アランとジェイクは厨房の入り口と勝手口で待機。

 他所の厨房にポムたちは呼べないので、まずはルルゥと一緒に木の実の中身を確認。
 鑑定では完熟でなければ、真ん中の種を割らないように切れば良いって出てたので、ルルゥにお願い。

 外皮はアボガドより分厚くて少し堅い感じ。
 実もアボカドっぽい気がする。
 種は実サイズの三分の一くらいかなぁ。

「これは苦いのですぞ」
 ニキさんは食べたことがあるようだ。

 私とルルゥは毒じゃなければとりあえず味見とスプーンでちょっとだけ掬って舐める。

「苦いわね」
「うぇ」
 
 重曹をそのまま食べたことは無いので、よくわからないけど、結構な苦さ。
 これは少しで使わないとお菓子の仕上げに響きそう。

「乾燥させる?そのまま?」
「うーん?材料に混ぜやすいのはどっちかなぁ」
「クッキーならこの状態でも良いけどケーキだと練りすぎちゃうかしら?」
 
 作り慣れてるのは圧倒的にルルゥなので、ルルゥの感覚に任せた方がいいね。

「クッキーからいってみようか?」
「了解よぉ~」
 そんなわけでニキさんとノックさんにウォレス領でよく食べられるナッツ系の木の実を出して欲しいとお願い。
 せっかくだからね。

 大まかに言っちゃえば、この世界のピーナッツやアーモンド、クルミなどナッツ系はどこでも似たようなものしかないんだけど、形は違ってたりするし、クリーミーさ、歯応え、味わいは地域差が出てる気がする。

 大きなどんぐりはちょっとテンションが上がる。どんぐりクッキーってなんか可愛いよね!
 ポムたち用に崩す前のを分けてもらった。

「私が修行した先とは随分と作り方が違いますねぇ」
 ルルゥが素材と材料を混ぜていくのをニキさんたちは真剣に見つめる。

 バターや砂糖をふんだんに使えないもんね。
 この国の普通のクッキーはちょっとビスコッティのような堅めのだ。素朴で美味しいけど、バターたっぷりのサクサククッキーも美味しいよね。

「さてクッキーは寝かすから、窯の火を見ながら唐揚げの準備ね」
 私は解体できないので、ルルゥにお任せ。
 サンダーフロッグは生きてる時に触ると危険だけど、しめた後は心臓に気を付ければ大丈夫なんだって。
 ニキさんもノックさんも手際良く剥く。

「これを一口大に切り分けて」
 味付けはフリュアとニンニク、フリュアとショウガ風味のハーブの二種類。
 片栗粉、お芋のデンプン(グレーデン工場で量産中なのだ)をお肉にまぶして。

 そしてルルゥが味見用を揚げようと、マジックバッグはーから油壺を出して鍋に移し入れて火にかける。

「油をこんなに!?」
 そう言えば揚げ物は一般的じゃなかったんだった。

「これは獣の油の部分を使ってます」
「「ふぉぉ・・・」」

 製造方法はレシピで出してるんだっけ?
 ルルゥを見上げるとニッコリしてるので、後でウォレス男爵とセリウスさまに応相談だ。

「今はまず作っちゃいましょう」

 油に火が回ってきたので二種類四人分の唐揚げをジュワー。

「良い匂いが・・・」
「これは・・・」

 厨房に香ばしい香りが広がる。アランとジェイクもゴクリだ。慌てて二人の分も油にインだ。

 本当ならルルゥも唐揚げ用の薬味ハーブのソースやタルタルも作りたいところだけど、情報をバカスカ出せないので抑え気味なのだ。

「さぁお味見どうぞ」
 まずはニキさんとノックさんに出して、アランとジェイク、ルルゥと私と取り分けたお皿を持つ。

「「「「いただきます!!!」」」」

 美味しいものを見た時の嬉しそうなお顔は気分が良いよね。
 ルルゥも満足気に様子を見ている。

「うっっま!!」
「ビリビリ・・・!!きくぅ!」
 あ、サンダーなんだった。サンダーフロックはグレーデンで狩る鳥や牛よりはビリビリ度が低いそうだ。

「ルルゥ、子供用に普通のお肉も」
「わかってるわぁ」
 ニンニクも控えめにね。

「・・・」
 ビリビリに警戒しつつ、パクッと食べると、ちょっと辛めのラーメン食べた時くらいのビリビリ度だった。これくらいなら・・・?
 って痛い。喉がちょっと痛い。

 私以外は平気みたい。

「追加を入れても・・・?」
 それはもう味見では無いよう。

 って、厨房の入り口を守っていたアランがめっちゃ困惑顔でルルゥに縋るような目をしている。

 アランの体の陰にセリウスさまとレオンくんとハインツくん、ウォレス男爵が厨房を覗いてるのが見えた。

 これはグレーデン名物「匂いに釣られてきちゃった」と同じ光景だ。

 しかもその後ろに控えめにジュリアスさまとウォレス夫人、部下さんたち・・・。

 その後、みんなでお夜食も唐揚げ祭りと、合間に焼き上げたクッキー争奪戦が広げられた。

 私はジュリアスさまとこそっとアズライトとジャスパー、ポムもティム、シャム、ディディエ、サラとメルに唐揚げとクッキーを差し入れに行った。

「プキュ」
「モキュ」
「ギャ!」
「きゃん!」

 自分たちだけズルいとプンスカされたけど、許して欲しい。
 木の実の渋苦い種だけになったのも渡したら、お尻フリフリしてくれたよ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

聖女転生? だが断る

日村透
恋愛
生まれ変わったら、勝ち逃げ確定の悪役聖女になっていた―――  形ばかりと思っていた聖女召喚の儀式で、本当に異世界の少女が訪れてしまった。 それがきっかけで聖女セレスティーヌは思い出す。 この世界はどうも、前世の母親が書いた恋愛小説の世界ではないか。 しかも自分は、本物の聖女をいじめて陥れる悪役聖女に転生してしまったらしい。 若くして生涯を終えるものの、断罪されることなく悠々自適に暮らし、苦しみのない最期を迎えるのだが…… 本当にそうだろうか?  「怪しいですわね。話がうますぎですわ」 何やらあの召喚聖女も怪しい臭いがプンプンする。 セレスティーヌは逃亡を決意した。

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...