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二章

657話

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 今日からウォレス男爵と部下さんたちとで森の木を見に行くことに。
 セリウスさまとルルゥ、チェイスさんとアモンさん、アランとジェイクが一緒に行く。
 サラとメルも付いてくるって言ったけれど、男性はいっぱいで手は足りてるからってお留守番に。
 私が行くことないってウォレス夫人もサラとメルも言うんだけど、私が欲しいものの選別は私にしか出来ないよ。

 戦力的にもグレーデンの隊長クラス以上のメンバーなので心配ないよ。

 だけど、私の足はめっちゃ遅いので、ジュリアスさまが私を抱っこさ。くぅ。

「物凄い体力ですねぇ」
 森の中を進むジュリアスさまをウォレス男爵が羨望の眼差しで見上げる。
 二メートル越えマッチョのジュリアスさまなので真似出来なくても大丈夫ですぞ。

 ウォレス男爵と部下さんは樹木をそれぞれ解説してくれる。
 私は〈鑑定〉しつつ、枝や葉っぱ、樹皮もチェック。
 自然林なので少し進めば違う木も出てくる。
 
 植林はしてないのか伐採した場所は少し開けている。
 
 ポムとティムが私が欲しがりそうな木、自分たちが欲しい実を夜間に見つけてくれてたようで、アズライトとジャスパーが上手くそちらに誘導してくれる。
 と言っても、グレーデンの人間以外がいる場所では喋らないようにしてて、ポムとティムも比較的静かにしてくれてる。
 セリウスさまの肩にシャム、ルルゥの肩にディディエがいるので、ウォレス家の人たちはグレーデン家、みんなペットを可愛がってると微笑ましく見てくれてるっぽい。

 私のペットが爬虫類って思われてるのはちょっとどうかと思うんだ。目がクリクリのトカゲとして可愛さをアピールしている。
 グレーデン家の食事では、ポムたちに倣って?あざとくなってきてるの。
 可愛さを出すとおやつでもお酒でも好きにおかわり出来るから。
 おじいちゃん、プライドは無いのかね?

 お昼は森の中でお弁当。ルルゥが準備してくれた。ウォレス男爵は恐縮してたけど、滞在中ずっとおもてなししてもらうのも申し訳ないからって、外での食事の時はグレーデン家の担当に。本音は、うちの男性陣は肉をガッツリ食べたい、だろう。

「これがグレーデン騎士団の食事・・・」
 おや?ウォレス家の護衛さんが呟いた。
 お知り合いのどなたかが騎士団の野営食事情を聞いたことがあるらしい。

「訓練や遠征時は兵糧ですよ」
「昔よりは食べやすくなってますけどね」
 
 ちなみに今出てるのはピタパンに照り焼きチキンを挟んだものとメンチカツを挟んだものだ。お肉は魔素たっぷりグレーデン産。

「この森の獣や魔物より肉がジューシー良いですね」
 脂のノリと魔素の違いが顕著のようだ。
 王都近隣よりは魔素ノってそうだよね。

「この味付けもとても美味しいですね。フリュアの風味が・・・?」
「あら、フリュアをご存知で?」
 ルルゥが聞くと、この森にもフリュアの実があって、食べたら不味いと知られているけれど、みんな一回は味見してみるのが子供アルアルなんだって。

「大人が不味いって教えるものは実は美味しいって言う小話がありましてね」
 お酒のおつまみになる食べ物や、ちょっと渋い味の山菜は子供向けじゃないけれど、慣れると美味しくて、大人は子供には美味しくないよって教えるんだって。
 でも大人はそれを子供が寝てから食べてると言うのを見ちゃうんだけど、いつか親の目を盗んで食べようと狙ってやっと食べてみたらすごく美味しい。
 でもその時には子供は大人になってたのでしたって言う。
 教訓もオチもないお話を寝物語に聞かせてるんだそう。

 大人が美味しいなら、子供だって美味しいはずって子供は思っちゃって食べちゃう。

 ダメなお話じゃん!

 毒にあるものはちゃんと毒だからって教えてるらしい。

「あはは、サンダーの肉食べるみたいなやつだねー」
 グレーデンっ子は大人が痺れ肉食べてビリビリしてるのに興味深々になって、ちょっとだけーって貰って食べてビリビリッとなるのがお約束?らしい。
 大人の食べ物に興味を持たなくなるように大人の食べ物が気になり出す小さい時に一口食べさせるらしい。スパルタ!
 お酒が飲める年になってくると美味しく感じるらしい。トラウマにならないのか。

「サンダーフロッグならいますが美味しいですか?」
「フロッグは唐揚げが良いですよ」
「唐揚げ?」
 ガビン。カエル肉かぁ。知らずに食べる分には良いんだけど言われちゃうとちょっとね。

 ウォレス家のみなさん、唐揚げがわからないのに、このお昼ご飯を作るルルゥが言うならとても美味しものだと期待値が半端なくなってるよ。

「今夜、痺れる覚悟で捕まえてきます!!」
 騎士さんが唐揚げを夢見て痺れる覚悟を。
 カエル、サンダーって名前なだけあって触ると電気が走るようだ。
 ゴム手袋があれば、安全なのに。

「あらぁ、ならアモンとチェイスついて行ったら?」
「俺たちは良いっすよ」
 ルルゥとチェイスさんでお話がまとまったようだ。

「「「お願いします」」」
 護衛さんたち、美味しいご飯のためなら時間外労働も厭わないのね。

「お前たちほどほどにな」
 ジュリアスさまも止めないようだ。

「まずは午後の予定をこなしましょう」
 ウォレス男爵はすでに唐揚げに支配された空気を元に戻してくれた。


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