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二章

645話

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 正式な診断の前に迂闊なことは言えないので、ニーナは無事かと聞かれても微妙な顔しかできないよ。

 親友で腹心のルークの妻で、私にとって姉のような存在なので、何かあったら一大事だとジュリアスさまはとても混乱しているらしい。

 ルルゥもアズライトも言う気はなさそうなので、シーンなのだ。

 ルークだけ、顔色が悪い。ルークも魔力が強い方なので自分で気付きそうなものだけど、身内ほど気が付かないかも?ヤバい病気とかなら気付くかな?

「みんな入って良いよ」
 マギー先生の声に、ゾロゾロ入って良いものか?と思いつつ、隣室に入る。

「ルーク、あんたが親になる想像はしてなかったねぇ」
「「「「「・・・!?」」」」」
 確定です!ルークはギルティです!

「おおよそ十週前後かねぇ。当面は仕事や長距離移動は禁止さね」
 うぉ!?

 ルークとジュリアスさまはカチンと停止中で、ルルゥとジャスパーは「『やったー』」と喜び、ポムとティムはバンザイポーズ。

「私はリーシャさまの乳母になりたいので調整したいと申し上げてましたよね?」
 ビクンとなったのはルークだけじゃなくて、私とジュリアスさまも。

 ひんやりしたニーナの声に震える。

「仕事ももちろん遠出にも付き添いたいと・・・」
 にょーーー。私はその気持ちは嬉しいけど、ニーナの子供は楽しみだよ。

「それは」
 ルークが冷や汗だ。珍しい。
 でもこの世界の避妊ってどうやってるの?確実なの?

「あー、ニーナ、乳母なら二、三年は乳が出ていればイケるさね?なんなら二人目三人目とだ」
 マギー先生が助け舟を出す。

「私はリーシャさまのお子と私の子が仲良く育つのを楽しみにしていたのに」
 それは私も素敵だと思うけど、年上の幼馴染も良きだよぅ。
 
「ニーナ!俺は別に今すぐどうとか思っていなかったが、出来れば良いなと思っていたぞ!このヘタレを待っていたら十年は待つ事になるんだぞ!」
 わぁ。素が出てますよ。ルーク。

「旦那さまがヘタレなのは分かってますし、リーシャさまの成長をもう少し待っているのも理解出来るでしょうが!?」
 
 ヘタレ二連発。

 流れ弾がビュンビュンなので、ジュリアスさまが瀕死だよ。

「だが!避妊薬なんか続けてたら身体に悪いだろう!?」
 あー、ルークの勝ちだ。それはダメだ。変な薬だと妊娠不可になる可能性が。

「そんな粗悪品使うの?」
 思わず聞いちゃう。怖いのだ。
「いえ、ですが使い過ぎると・・・」
 ま!!使い過ぎるってどう言う事ですか、奥さん!!

「リーシャになんて事言うんだ!!」
「聞かれたから答えたんだよ!」
 ジュリアスさまが私の耳を抑えたけど手遅れだよ。
 ルークは素だとタメ口。珍しいからちょっと見ちゃうね。

 うむぅ。この世界はコンドーさまが無いのですね。身体に優しい避妊薬・・・って薬はどんなに頑張っても副作用があるしなぁ。

「ニーナ、乳母は嬉しいけど、私はニーナの子供、楽しみだよ?私オバになれるね?」

 まずはおめでたいんだって。

「でも来週からウォレス領に行く予定で」
 どこでも着いてきてくれるつもりでいてくれるのも嬉しい。

「ウォレスは一週間だし、とりあえず赤ちゃんのために休もう?可愛いおしめとかスタイ、作ってみたり」
「ですが・・・」
「ニーナがいてくれるのが当たり前に思ってたけど、お休みも取ってくれないと」
 今後もずっと一緒にいられる(よね?)んだし、自分の人生も楽しんで貰わないと。

「赤ちゃん、嬉しくない?」
「嬉しいです・・・」
 初めての妊娠で混乱しちゃったかなぁ。

「マギー先生、しばらくは安静がいいよね?」
「そうだね。軽く散歩くらいは良いけど」
 
 そんなわけで安定期が過ぎるまで休暇で落ち着いたら時短勤務で納得してもらった。
 ルークにはまだ怒ってるみたいだけど。

「ヘタレ・・・」
 ジュリアスさま、それは多分結構みんな思ってる気がする。嫁が私でごめんね?
 成長待たれてるだとかはちょっと困る。身長は伸びないみたいだし。お胸に肉が付くまで待ってるのかなぁ。つかない気がする。

「ま、私がいるんだ。何も心配はないんだがね?」
 マギー先生、それはニーナに対してか私に対してか意味ありげだね?

「ヘタレ・・・」
 せっかく休暇でご機嫌だったのに。

「ジュリアス、俺は心配で長期留守ができない。来週はセリウスに変わってもらう」
「あ・・・そうか。そうだな」
 ん?妊娠初期に旦那が仕事を投げたぞ。

「変わらなくて良いです!!邪魔なので仕事に行ってください!!私が着いていけないのでしっかりお守りしてくれずにどうするんですか!?」
 ありゃ。妊娠初期ってガルガルしちゃうの?その辺りの知識がゼロだ。

 ルークは喜びたいのに困っちゃってるね。

「さすがに分かったばかりで離れるにはダメだ」
 うん。まぁ休めるなら休むのもアリでは無いかな。

「旦那さまに休暇を与えないのに自分は気楽に休みますか?」
 ニーナの侍女、使用人の矜持は果てしなく高かった。
 休暇は与えてないんじゃなくて、仕事が詰まってるんだし、そこは許してあげて。

「う!」

 いや、心配で落ち着かないのも困るし、休んでもらう方が安心だよ。


 結局、ルークは通常業務を行い、セリウスさまに変わってもらう事に。

 ニーナは自分の理想の人生設計があったようで、ちょっと混乱してたけど、赤ちゃんは嬉しいとお腹を撫でた。

 ルーク、強行突破せず、ちゃんと話し合った方がって思ったけど、ニーナの予定は私次第になってたから、これが正解だったかも。

 さすがに十年後とかは無いと思いたい。



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