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二章

622話

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 お義母さまが戻ったのはお義父さまの二日後だった。
 私とアズライトと一緒に、転移陣の塔で待機していたお義父さまがお帰りなさいの特攻でガバッとお義母さまを抱きしめて持ち上げて、お義母さまの首筋に顔を埋めてるもんだからちょっと困っちゃったよ。
 
 お義母さまは、王妃さまを王宮までお送りして、転移陣の間で王様が王妃さまにスライディングで跪いて謝罪したのを見て帰って来たそう。

「おほほ!女は待つだけと言う思い込みは古いのよぉ」

 なんて笑っていたけれど、がちょっと萎れてたよ。
 お義父さまさまもわりと急に森やダンジョン行っちゃうから耳が痛いよね。

 お義母さまはお義父さまにひとしきり好きにさせてから私をハグしてくれた。

 一緒について行ってたチェイスさんとアモンさん、お土産と荷物をどんどん運んでいる侍従侍女さんたちとずっとフル回転で転移して来てるので、動力装置の魔石に魔力をたんまり補充した。
 
「いやー、いい仕事でしたわ!」
「当たり当たり」
 お宿やカイダールの旅館でリフレッシュしたらしいチェイスさんとアモンさんがめっちゃ色艶良くなって帰って来たじゃん。
 日焼けして無精髭のオジサンだったのに小綺麗~。王妃さまの前に出るんだから整えたのは普通かな。
 でも侍従さんと護衛さんの一部はげっそりしてるんだけど?
「アイツらは体力がねぇんだ」
「忍耐強さが必要だな」
 おぉ~・・・いつもヘラヘラしてるのに割と厳しいんだね。

「美味いもん食えて良い風呂入れて、美女の護衛って給料いらねぇくらい天国だったぞ」
 チェイスさんが要らないこと言うから。
「ほう、そんなに言うなら一週間分ほど減らすかのぅ」
 お義父さまに聞かれちゃったじゃん。
 お義母さまについて行けたことを妬まれてるよ?
「「わー!!嘘です。要ります!!」」
 口は災いの元だよ。

「お前らは次の派遣でアンゼリカ隊に随行しろ」
「ぎゃー!!」
「いやいやいや!」
 なぜ女好きなのに、女性ばかりの隊に喜ばないのかな?

「アンゼリカさま、遠征ですか?」
「ん?船で近海を調査すると言い出してのぅ」
 チャレンジャーだなぁ。
「なぁに今回は一月ほどで戻るじゃろう。新造船の試しも兼ねてじゃ」
 大丈夫な船かな??
 ワイバーン隊を上空に飛ばして航行するから、下手な魔獣は来ないし、万が一、座礁や沈没することがあっても助けに入れるらしい。
 ちょっと安心。

 みんなで本邸に戻るとお祖母さまが待っていた。ハロルドとシエル、侍女長達も。

「ただいま戻りました」
「ああ、おかえり」

 カーーン!!

 何かのゴングが鳴った。
 ハロルドたちは黙礼してからみんな離れちゃたよ?

 ドンと飛び込んだお祖母さまをお義母さまが迎え討つ。
 なぜ腰を落として組み手みたいになってるんだろう??
 
 グイグイ!ギギギ!

「えー・・・」
 冒険者で元騎士のお祖母さまと拮抗するってお義母さまが何者なんだ?

「あー、これは久しぶりだがワシとの結婚後からこんな感じじゃぞ」

 えー、王都の貴族だったお義母さま、筋トレでもしてたのかな。

「まだまだ私は負けないよ!」
「いいえ、そろそろ私が!」

 お祖母さまは見た目というか、肉体もお義母さまとほぼ同じくらいの年齢なのでまだまだ現役冒険者でお強いよね?

「母上は魔力でかさ増しタイプだから素の筋力はアンゼリカと変わらんだろうのう」
 今は魔力使ってないらしいけど、アンゼリカさまはお義父さまを手本にしているパワー重視なまで相当ですよ!?

「旦那さまに付き合える体力と筋力!!私もいっぱい鍛えてますの!よっぉぉ!!」
 あら?ちょっと「ふわぁお!」なことを言われましたかね!?
 思わずお義父さまを見てしまったけれど、お義父さまは気付いていないようだ。鈍感だった!!え?私がエロス脳なの?

「あはは!私の旦那さまもまだまだ!!」
 あかーん!
「父上とワシがなんだ??」
 お義父さまが純粋過ぎた!

 勝負はお祖母さまの勝ちだったけど、おかえりのハグだったよね?

「一回くらい勝ちたいのですわぁ」
「普通の令嬢だった子に負けられないよ」
 お義母さまのガッツがすごい。

 私もいつかお義母さまに勝たないとダメかな?無理そうだよ。

 お義母さまは着替えとお化粧直しをするとお義父さまとお部屋に行かれた。

「しばらくは降りてこないだろうからリーシャもゆっくりしておいで」
 まぁ!ラブラブですね!私もジュリアスさまと二十年経ってもイチャイチャしてる夫婦がいいな。
 お祖母さまは「仕事片付けてくる」ってハロルドのところに行っちゃった。

 セバスチャンに呼ばれて案内されたお部屋には先ほどのお土産が並べられていた。

「ほとんどがリーシャさまのためのものです」
 うわぁ。王都の流行のお菓子やお飾り、布ととにかく可愛らしいものが並んでいた。
 お義父さまや息子たちには申し訳程度で、ええ?ってなる。
「大奥様はとにかく娘を持つ母の役割に憧れていらっしゃるので、可愛くお礼を言って差し上げてください」
 うおぉ。さりげなく難題だよ。

 ニーナとサラ、メルが荷物の仕分けをして私のお部屋に運ぶ手配をしてくれた。
「とても良い生地ですのでマダム・シフォンに素敵なドレスを作っていただきましょうね」
 
 また新しいドレス!!

 セバスチャンを見るとスイっと目を逸らされた。

 今夜はお義母さまご帰還の宴会になるかと思ったらそれは明日なんだそうで、夕食時に可愛く着飾ってお義母さまに喜んでいただきましょうとニーナたちにスペシャルエステを受けることになった。

 
 
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