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二章

603話

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 王妃さまはあんな自由な旦那を持つからか、至極真面目で優秀で国民思いの王妃さまと人気が高い。
 いや、王様も人気は高いよ。ただおサボり魔なのを知ってるからね。

 王妃さまは王様と婚約が決定してからは、ほぼ王宮で王子妃教育が入っていたので、学園生の時の行き帰りと、王太子妃となったばかりの頃にお披露目馬車でしか王都の街に出たことがないらしい。
 「幼少期の領地ではお転婆娘でしたのよ」って、王様ーーーー!!気の良い綺麗なオジサマだと思っていたけど、ダメ夫だー!!

「王族って言うのは正式に動けば近衛も侍女も山ほど動いてお金がかかりますからね。表立って動けないのは当然なので構いませんの。王太后さまも隠居後に離宮に入られてやっと旅行に行けるようになったのですよ」
 うひゃ。王族って華やかなだけじゃないのね。

「でも陛下ったら子供の頃からルドガーやアーク、ルシードが大好きでしょう?辺境伯の先代方も陛下を可愛がってくださったようですし、先王陛下も息抜き先に学園時代のご友人の領地には良く逃亡なさっていたそうですの。王太后さまには多少の息抜きが出来ぬと良き王ではいられまいと仰ってらしたのでね。私もそう言うものだと納得はしておりましてよ?」
 王妃さまが歩きながらお話ししてくださる。とても鬱憤が溜まっておられますよ!王様!!
 お義父さまは途中自分の名前が出て「!?」っとびっくりだったよ。

「でも陛下ったらここ最近はグレーデンから戻るとお肌がイキイキと艶めいてらして!少しお太りになって戻られますのよ?」
 ん?何か浮気が疑われそうな現象だよ。
「そしていつも料理とお酒が美味しいとご機嫌で!お土産も持って返ってきてくださるけれど、楽しそうで、私も早くグレーデンに行きたいと切望しておりましてね?旅館の宿泊予定がなかなか組めないものですから、我慢出来ずについ来てしまったの」
 あら。旅館については申し訳ありません。
 だって、ナギとか急に決まったので現地確認ができずに高位貴族どころか王族をお迎えするのは従業員に重荷なので。

 お宿は普段は居住区の住民に管理を任せてるけど使う時は、グレーデン家の侍従侍女さん、コックさん、護衛さんと、辺境伯家に使える人たちを随行するから、王妃さまに失礼はないはず。
 今頃準備に慌ててるかもだけど。

 いやぁ、離れから池までの間に途切れない王妃さまのお声。怒りか鬱憤か測りかねるけど、王様のことを嫌ってはいないようだ。

 いつもよりなんとなく遠く感じた池にあと少し。
 本邸を出る頃には夕暮れになってて、すでに薄暗くなってる。

 ポムとティム、ディディエが走り出した。
 大騒ぎのラヴァたちの姿も見えてる。

 ポムたちはチェリーの木に向かって、えいやーっとやってるポーズ。

「プッキューーーーン」
「モッキューーーン」
「ギャオオーーーーン」
 
 魔法を一気に使う時のポーズですね。

 蕾を付けてたらしいチェリーの木がふわぁーっと開花を始める。
 手前の木から奥の木々に。以前より増えに増えた池周りの桜並木のような光景が広がっていく。
 木々の下からのライトがより華やかさを演出だ。
 
「まぁ!!」
「わぁ・・・」

 王妃さまとお付きの女官さん、侍女さんもその光景にうっとりされてる。

「陛下は池までは来られてませんよぉ」
「あらぁ!」
 お義母さまが王妃さまに耳打ち。
 そもそも本来は王様でも王妃さまでも超危険区域には連れて来たくないのですよー。

「父上、ラヴァたちが一緒に着いてくると思いますので先に行かせていただきます。後からゴンドラで王妃さまをご案内ください」
「そうだな、かなり波打つであろう」
 ジュリアスさまがお義父さまにそう伝えると、王妃さまが、
「まぁワイバーンに乗るのね!私も乗ってみたいですわ」
って言い出した。
 いきなりお転婆フルスロットルです!
「あらぁ!!旦那さま、私も久しぶりに乗せていただきたいですわぁ」

 ガビーン!お止めしないのです。

「・・・王妃さまは乗馬経験は?」
 後ろで控えていたルークが訊ねる。
「あらぁ幼い頃にお兄様に乗せていただいたくらいかしら?」
 運動神経の話かな?
「万が一池に落下されますとそれなりに大きな魚がおりますので大変恐ろしい思いをなさるかと」
 う!私はこの池では泳ぎたくないよ。前までなら浜辺の浅いとこなら行けたけど、今はそれも嫌かも。
「落ちてもすぐ助けてくれるのでしょう?」
 あれ!?好奇心が勝って恐怖心がない?

「ワイバーンたちは遊泳で島まで行きます。水がたくさんかかると予想しますが」
 ルークさんや、落ちる話の後の水飛沫はインパクトがないです。実はテンパっていますか?
「そんな体験したことがないわ!ぜひかかってみたいわ」
 王妃さまに対して自己責任とか言えないから、お義父さまとお義母さま以外は困惑している。

「我らが王妃さまの御身体に触れるわけには参りませんので、そちらの女騎士ミルゼに相乗りしてください」

 女性騎士が三名いたの気付かなかった。お義父さまの護衛??(ほぼ必要ない)として混ざってたらしい。
 王妃さまが来られたから急遽呼んだのかな??
 結構マッチョ!!
 女子プロの人気選手みたい!!カッコいいぞ!
 ミルゼさんたちは恐縮しつつ王妃さまに跪いた。

「凛々しいのね!よろしくお願いね?」
「一滴の水も陛下にお付けしないよう、お守りします」
「頼りにしてますよ」
 
 
 
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