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二章
554話
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なんとなく思いついたことを口に出すのはやめておいたほうが良いと思ってはいた。
思ってはいたのよ?
『グレーデンだけが得をしたり、評価を得ることが優遇されて狡いと仰るなら、ドローレス侯爵、ダルム子爵は大使としてナギに向かわれたらどうでしょう?』
いや、無能だとか役立たずな人を外交に使おうとか国の恥を晒したいわけじゃないの。
怖気付いていかないだろうからね。
私の真意に気付いた人たちはニヤニヤっと口角を上げる。普段から会議を無駄に長引かせる原因に腹を据えかねてるんだろうな。
『ほう!確かにグレーデンに頼り切りは良くないからな!ドローレスにダルムよ。ナギに向かって色々な情報を得て来てくれるか?』
王様が悪ノリしている。
『『そうか、普通の船だと二ヶ月、今の時期だと二回くらいは大きな海魔獣が出るであろうがナギは元気な客人は歓迎するぞ』』
王女さまたちは意地悪ではなく、無知なおじさんの顔色がコロコロ変わっているのを無邪気に面白がっている。
ナギもデレードも大きな艦船みたいな造りの船だから、比べると豪華客船くらいの船は遅いし、防備が心許ないだろうなぁ。
実際、国が派遣するなら国の船を出すんだけど、そこにも気付かないでいそうだ。
王女さまたちの言葉が聞き取れなかったのか自前らしい通訳の言葉にドローレス侯爵が真っ青になって、ダルム子爵は汗だくになってる。
『私は外交は担えませんゆえ、大使は外務大臣であるガルフ侯爵が適任かと』
『私もそう思います』
もう少し気概を見せて欲しかったよね。
私のことは睨んでるから、ただのバカだよ。だって私も前には王女さまたちがいるのよ。誰を睨んじゃってるんですかね?
『ガルフが長く留守をするわけにはいかぬからなぁ』
やっぱりお前たちが・・・って言う雰囲気を王様から向けられたらガタガタっと椅子に言わせた立ち上がった。
「あ、あー、腹がいとうございます!!ちょっと失礼を!」
「わわわ・・・私も朝から少し・・・」
あれが侯爵とか奥さんとか家族が恥ずかしいよね。しかも公用語忘れて。
『墓穴を掘って慌てて付いた嘘は『うんこしたい』だそうです』
なんかあの二人を庇うのも嫌なのでストレートに訳しちゃった。
王様とユエさまが『ブハッ』っとなって、宰相とリックさまが『せめて腹を下したとか』って呟いた。
『困った時はナギのタヌキもあんな感じになりますが『具合が悪い』にした方が良いですね』
『『受け取り方はうんこしたいでも一緒だと思うがな』』
ユエさまが笑いを抑えて言ったのに王女さまたちが言っちゃったので、王様も近くの席の人たちも我慢できなくて吹き出した。
『いやー、うちの者たちがすまないな。もちろんあんなめんどくさいのは派遣しないので安心して欲しい』
『あれならあれでウチが優位で話しを纏められるので良いのですよ?』
ユエさまってば正直者ね!
戻ってくる時「すっきりして来ました」って顔で入ってくるのかしら?ってちょっと期待していたのに、本日は休ませて欲しいって伝達が入った。
意気地なしのくせになぜあんなに引っ掻き回すんだろうなぁ。
途中でお茶とお菓子が配られて、餡子を砂糖で固めた餡子玉と、煎餅にスパイス粉末をかけた物が出た。
ルルゥが早速ナギ風のでお菓子を作ったんだろう。
オヤツに辛い物って発想がないにはナギもレイドラアースも一緒なので、場内がざわついた。
『辛いが餡子と交互で食べれて嬉しい』
『スパイスが効いているが辛いだけじゃない』
概ね好評だ。
しかし、辛いのですよ。
ヒーヒーな唇を慰めるのにお茶を飲んだら、烏龍茶?に砂糖入ってた。厳密には烏龍茶じゃないのでまぁこういう物として飲めば、紅茶みたいで良いか。
煎餅は海苔と醤油のが好きだけど、ザラメもいいよね。うん。ザラメかぁ。砂糖を結晶化させればいけるよね。今度おねだりしよう。
『『オヤツまで辛いのかと思ったが餡子玉の甘さが続くのより好きだな』』
王女さまたちは舌まで大人なの。すごいね。
ちなみに渋いおじさまたちは何気に甘い物好きで餡子玉の方がおかわりされてる。
煎餅は王様と宰相がバリバリやってる。
お茶の後は、少し歓談みたいな状況になって、会議はまた明日と言うことに。
夜会の準備もあるので今日は元々早めに終わる予定だったしね。
私はジュリアスさまと一緒に王様に呼ばれた。
用事があるとかではなくて、私たちがいると仕事がサボれるって理由で。
「ずっと仕事で頭がスッキリしないときのこの刺激が堪らない」
先ほどの煎餅を持って来させて、ブラック状態な日常を愚痴られる。
「人間ってちゃんと寝ないと死ぬんですよ?」
多分ポーションとかで誤魔化してるんだろうけど、脳が休めないとダメなんだよ。
「刺激物で脳を覚醒させるよりは、少しでも寝た方が仕事が捗りますよ」
王様がガーンってなってるよ。王子さまたちが成人するまでは元気でいないとダメだから、健康に気をつけていただきたい。
「陛下があちこち逃亡しなければ、ここまで仕事は溜まらないんですけど」
あ、侍従長がズバーンと王様を背中から切った。
って言うか、あちこち行ってるのか。それは擁護出来ない。
ジュリアスさまは王様に同情的だけど、護衛つけずに逃亡する人だからね。
ジュリアスさまが護衛の立場だったら泣いちゃうでしょ。
「息抜きは大事なんだぞ」
息抜きも大事だけど、少しでも寝た方が良いと思うな。
まぁ、ナギご一行がいる間は忙しいから、仕方ないよね。
そういえばと、王様と宰相にお願いされていた〈抜けないくん〉と栄養剤を渡したら、王様の目が輝いた。
あげないとか思ったこともあるけど、綺麗なオジサマが薄くなっちゃったら切ないもんね。
まぁ宰相の頭皮は若干お寂しくなっていたけど、まだ間に合うはず。
せめて〈産毛ハエール〉でも開発しようかな。
思ってはいたのよ?
『グレーデンだけが得をしたり、評価を得ることが優遇されて狡いと仰るなら、ドローレス侯爵、ダルム子爵は大使としてナギに向かわれたらどうでしょう?』
いや、無能だとか役立たずな人を外交に使おうとか国の恥を晒したいわけじゃないの。
怖気付いていかないだろうからね。
私の真意に気付いた人たちはニヤニヤっと口角を上げる。普段から会議を無駄に長引かせる原因に腹を据えかねてるんだろうな。
『ほう!確かにグレーデンに頼り切りは良くないからな!ドローレスにダルムよ。ナギに向かって色々な情報を得て来てくれるか?』
王様が悪ノリしている。
『『そうか、普通の船だと二ヶ月、今の時期だと二回くらいは大きな海魔獣が出るであろうがナギは元気な客人は歓迎するぞ』』
王女さまたちは意地悪ではなく、無知なおじさんの顔色がコロコロ変わっているのを無邪気に面白がっている。
ナギもデレードも大きな艦船みたいな造りの船だから、比べると豪華客船くらいの船は遅いし、防備が心許ないだろうなぁ。
実際、国が派遣するなら国の船を出すんだけど、そこにも気付かないでいそうだ。
王女さまたちの言葉が聞き取れなかったのか自前らしい通訳の言葉にドローレス侯爵が真っ青になって、ダルム子爵は汗だくになってる。
『私は外交は担えませんゆえ、大使は外務大臣であるガルフ侯爵が適任かと』
『私もそう思います』
もう少し気概を見せて欲しかったよね。
私のことは睨んでるから、ただのバカだよ。だって私も前には王女さまたちがいるのよ。誰を睨んじゃってるんですかね?
『ガルフが長く留守をするわけにはいかぬからなぁ』
やっぱりお前たちが・・・って言う雰囲気を王様から向けられたらガタガタっと椅子に言わせた立ち上がった。
「あ、あー、腹がいとうございます!!ちょっと失礼を!」
「わわわ・・・私も朝から少し・・・」
あれが侯爵とか奥さんとか家族が恥ずかしいよね。しかも公用語忘れて。
『墓穴を掘って慌てて付いた嘘は『うんこしたい』だそうです』
なんかあの二人を庇うのも嫌なのでストレートに訳しちゃった。
王様とユエさまが『ブハッ』っとなって、宰相とリックさまが『せめて腹を下したとか』って呟いた。
『困った時はナギのタヌキもあんな感じになりますが『具合が悪い』にした方が良いですね』
『『受け取り方はうんこしたいでも一緒だと思うがな』』
ユエさまが笑いを抑えて言ったのに王女さまたちが言っちゃったので、王様も近くの席の人たちも我慢できなくて吹き出した。
『いやー、うちの者たちがすまないな。もちろんあんなめんどくさいのは派遣しないので安心して欲しい』
『あれならあれでウチが優位で話しを纏められるので良いのですよ?』
ユエさまってば正直者ね!
戻ってくる時「すっきりして来ました」って顔で入ってくるのかしら?ってちょっと期待していたのに、本日は休ませて欲しいって伝達が入った。
意気地なしのくせになぜあんなに引っ掻き回すんだろうなぁ。
途中でお茶とお菓子が配られて、餡子を砂糖で固めた餡子玉と、煎餅にスパイス粉末をかけた物が出た。
ルルゥが早速ナギ風のでお菓子を作ったんだろう。
オヤツに辛い物って発想がないにはナギもレイドラアースも一緒なので、場内がざわついた。
『辛いが餡子と交互で食べれて嬉しい』
『スパイスが効いているが辛いだけじゃない』
概ね好評だ。
しかし、辛いのですよ。
ヒーヒーな唇を慰めるのにお茶を飲んだら、烏龍茶?に砂糖入ってた。厳密には烏龍茶じゃないのでまぁこういう物として飲めば、紅茶みたいで良いか。
煎餅は海苔と醤油のが好きだけど、ザラメもいいよね。うん。ザラメかぁ。砂糖を結晶化させればいけるよね。今度おねだりしよう。
『『オヤツまで辛いのかと思ったが餡子玉の甘さが続くのより好きだな』』
王女さまたちは舌まで大人なの。すごいね。
ちなみに渋いおじさまたちは何気に甘い物好きで餡子玉の方がおかわりされてる。
煎餅は王様と宰相がバリバリやってる。
お茶の後は、少し歓談みたいな状況になって、会議はまた明日と言うことに。
夜会の準備もあるので今日は元々早めに終わる予定だったしね。
私はジュリアスさまと一緒に王様に呼ばれた。
用事があるとかではなくて、私たちがいると仕事がサボれるって理由で。
「ずっと仕事で頭がスッキリしないときのこの刺激が堪らない」
先ほどの煎餅を持って来させて、ブラック状態な日常を愚痴られる。
「人間ってちゃんと寝ないと死ぬんですよ?」
多分ポーションとかで誤魔化してるんだろうけど、脳が休めないとダメなんだよ。
「刺激物で脳を覚醒させるよりは、少しでも寝た方が仕事が捗りますよ」
王様がガーンってなってるよ。王子さまたちが成人するまでは元気でいないとダメだから、健康に気をつけていただきたい。
「陛下があちこち逃亡しなければ、ここまで仕事は溜まらないんですけど」
あ、侍従長がズバーンと王様を背中から切った。
って言うか、あちこち行ってるのか。それは擁護出来ない。
ジュリアスさまは王様に同情的だけど、護衛つけずに逃亡する人だからね。
ジュリアスさまが護衛の立場だったら泣いちゃうでしょ。
「息抜きは大事なんだぞ」
息抜きも大事だけど、少しでも寝た方が良いと思うな。
まぁ、ナギご一行がいる間は忙しいから、仕方ないよね。
そういえばと、王様と宰相にお願いされていた〈抜けないくん〉と栄養剤を渡したら、王様の目が輝いた。
あげないとか思ったこともあるけど、綺麗なオジサマが薄くなっちゃったら切ないもんね。
まぁ宰相の頭皮は若干お寂しくなっていたけど、まだ間に合うはず。
せめて〈産毛ハエール〉でも開発しようかな。
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