ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

546話

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 グレーデン家のタウンハウスは王宮に近いし、なんなら転移陣で移動できちゃうんだけど、今回は王宮に泊まる事になってるのでちょっとブルー。
 タウンハウスなら、自由に転移陣使っちゃってグレーデンに戻ったり、アズライトやポムたちを呼んだりも可能なのに。
 
 王宮にはグレーデン家用に用意されている区間があるので、王宮侍女さんに案内されてお部屋に入った。

「ご入用な物やご用命がございましたら遠慮なくそちらのベルを鳴らしてください」
 
 侍女さんたちが下がり、私はグデッとソファに倒れる。

 セリウスさまは王家への献上品と販売物の確認、アンゼリカさまはグレーデン騎士団の護衛など配置確認で、私だけ休憩はちょっと悪いなって。
 ルルゥは王宮にいる間は王宮のコックさんに変身なので、すでに行ってる。

「リーシャさま、ご夫人方より王都滞在中にお茶のお誘いが来ていますがお断りしますか?」
 一応、通訳として来ているので、個人的な交流は入れない事になっているので、ニーナは確認しつつ、すでにお断りな事は知ってるので代筆で返信するのと私が直接返事を書くのを分けてる。

「ほんの半刻でもと謙虚な振りで書いてあるのね」
「最低でも一刻半(三時間)はおもてなししないと相手に恥をかかせてしまいますから成立しないのですがね」
 短いと「あなたに使える時間は無いのよ」って失礼な扱いをされた事になるんだって、めんどくさいね!
 半刻でも良いは、「ここまで折れてるのだから時間を作れ」といった意味らしい。

「お義母さまならうまい返しが出来るのに良い返事が書けないよ」
「そうですね、大奥様なら、お茶一服程度しか空いてませんのって返しますか」
 十五分弱!!
 実際はお茶一服で何時間も粘りたい人もいるらしいけど、お茶が冷める時間が十五分くらいって感じ。

 王都にいる時しか声かけてこないのはその程度の思いって、お義母さまならおっしゃるけど、ガルフ侯爵たち、騎士団連れてアッガスに来るのも大変だったみたいだからそりゃグレーデンに来れないよね。
 おしかけ令嬢たちって運が良かったのか凄腕護衛を雇ってたかだよ。ほんと怖いもの知らずじゃん。
 グレーデン近郊の主要の街道は危なく無いように討伐してるからかな?
 最近は魔物避けも増やしてるからだいぶ良いはず。

「王妃さまや公爵夫人を優先するのはわかってるでしょうから、お誘いもギャンブルでしょう」
 返信する手間は考えてくれないのか?
 執事か侍女がやるって思ってるなら彼らの時間だってプライスレスじゃなくてよ?

「マールベリーさまとサーキス子爵夫人、フラウ侯爵夫人は時間を作ってね」

 身内だけど、滅多に会えないので、お義母さまからのお土産もお渡ししないと。

「リーシャさま、マーベルハント侯爵、マーベルハント翁、カイダール男爵がご挨拶に参られました」
 扉の前で護衛に立ってたアランが声をかけた。

「入ってもらって下さい」
 慌てて姿勢を直して髪の乱れもチェック。

 ニーナが扉を開けると、お祖父様と伯父さま、アーロンお兄さまが入ってきた。

「お久しぶりです」
「久しいな」
「会えて嬉しいよ」

 お祖父様たちは、空き時間に来てもらうのは約束していた。 
 ナギのご一行と特効薬についての話し合いがあるので打ち合わせもあるしね。

「なかなかお会いできませんがお変わりありませんか?」
「ああ、私もみんなも元気だよ」
「こちらも変わりないよ」

 マーベルハントの叔父様や従兄弟たちもお元気でカイダールにいる伯父さまもお元気、良かった。

「お兄さま、旅館やお宿はどうですか?」
「少しずつ、進んでいるよ」
 
 カイダールには休息地として、薬効あるお風呂や食事を出す旅館を多く作ってもらっている。エステもあるけど、グレーデン領で使うものとは別で薬効のあるもの中心が売り。

 グレーデン家というか私がオーナーのお宿もあるのでそろそろ見に行きたいのだ。

「保養所は少し人が入ってきたよ」
 一気に人気になると困るので宣伝控えめに知り合いから広めている。

「宿は従業員をしっかり教育してからでないと怖いから、お祖父様の友人にお願いして泊まっていただいたりしてるよ」
 本格営業出来てるのはまだ少しだけ。
 貴族相手だと大変だ。

「アーロンは頭が良くて、商売にも向いているんだ」
 伯父さまが楽しそうに語る。
「お祖父さまたちが引き篭もりすぎなんですよ。本は返事をしてくれませんよ」
 お兄さまはマーベルハントの伯父さまとも上手くやってるようです。

「確かになぁ。本は知識をくれるが人の感情の揺れは本から得た情報だけでは図れぬなぁ」
「本の内容は変化しないからのぅ」
 厭世的なマーベルハント家の弱点は人間関係・・・。

 ニーナがお茶とお菓子を運んできてくれたら、お祖父さまが思い出したと横に置いていた小さいトランク型のマジックバックを開いた。

「セラーナの蔵書がまだ隠れておってな、鍵がついておって読めぬがリーシャが持っていた方が良いと感じたので持ってきたのじゃ」
 読めない本はただの置物・・・。鍵付いてるなら読まない方がいいやつでしょ。

「おそらく嫁に来る前のものじゃから、ネイマーシェのものだ。私も興味はあるが何せ開かぬからな」

 本好き一族が読めない本なんて悔しいだろうなぁ。
 隠し部屋におかず、外に出してたらなら、マーベルハントかレイドラアースに必要な内容なのではって気がする。

「もし読めたらお祖父様にも内容を知らせますね」
 何やら不思議な鍵の仕様で厳重な封印魔法がかかってる。
「おお、そうか」
「頼む」
 よっぽど読みたかったんだろう。見た事ない笑顔のお祖父さまと伯父さま。

「あとは、またいっぱい採れたでな、お土産に持って来たぞ」

 トランク逆さにドババーッと出てきたのは大量の大きなイガグリ。
「グ○コーーー!!!」
 あまりの量にポーズとっちゃうよね。
 両手片足あげちゃうよね。
「変わった驚き方だな」
 お兄さまに笑われた。

「美味しいお菓子を作っても分けてあげません」
「え、それはやだ。ごめん!怒らないで!」

 お兄さまが慌てるのを見てお祖父様たちが笑う。

「兄妹で喧嘩ができるのは良いことだな」
 
 微笑ましい年齢じゃないと思うんだけど。

 ルルゥは忙しいからどっちにしてもすぐ作れない。モンブランタルト食べたいな。





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