ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

文字の大きさ
上 下
547 / 765
二章

536話

しおりを挟む
 朝食を食べてからの出発。
 
 マルコス男爵もお土産には卒倒しかけてたらしい。
 お菓子セットと化粧水、お酒セット、魔獣肉や毛皮は宿泊先に平等に渡すことになってるからね。

 ガルフ侯爵が楽しげに教えてくれた。
 マルコス男爵夫人は今回は腰痛で出てこられないようだったのでこそっとポーションと薬湯の素を差し上げたよ。
 私に会うことをすっごく楽しみにしてたのに「うっかり腰を痛めて」と言う涙滲む思いのこもったお手紙をいただいてたので簡単に「またの機会にお茶を」とお見舞いの言葉を添えた。
 
 お見送りには、旅館の代表とお手伝いに入っていた侍従侍女さんたちが出てきてくれた。

 旅館から馬車で出発すると近くの領民や騎士さんたちが手を振ってお見送りしてくれる。

『『小綺麗な街であったな』』
 再開発中みたいな感じだし、儲かり出したところだからかな?
 アッガスもそうだけど、新しい建物と通路を作ってるから、民も移住してきて、新しい仕事が増えて、田舎だけど発展してる感じでワクワクする。

『数年前通った時はあまり印象に残らない町でしたがね。やっぱり人が増えると言うのは動きが出て良いです』

 ルルゥが言うと王女さまたちがどんどん質問して、話が弾む。

 公用語はそこまで得意じゃ無いとか言ってたけど、ペラペラだよ。侯爵令息のポテンシャル?

 色々は話してるうちにお昼の休憩になった。

 マルコス領から出て、次の領地を抜けてないけど、ちょっと道が良くなってきた。
 人の行き交いが多い道になってきたっぽい。

 街道沿いにある休憩場で馬車を降りた。
 全部の馬車や騎馬があり慣れないので少しずつ離れた場所でそれぞれ休憩。

 他の人たちの邪魔してるんじゃと思いきや、通過予告をして待機させたり、ルートを変えさせたりしてるんだ。国家の接待なので仕方ないと受け入れさせてる。否やとは言えないわねぇ。

 私たちを馬車から下ろして、テントを張った場所に座らせてから、セリウスさまとアンゼリカさまと王国騎士さんが話し込んでる。

 なんだろうと思ってると、別ルートでバッタみたいに魔獣の群れの発生があったみたいで情報の共有をしていた。

『重なる時は重なるねー』
『どこに出ようと戦力は分けてあるから問題はない』
『胃が痛いですよ』
 王国騎士さんだけ、どんよりしてるよ。

 お昼ご飯は、私たちにはお弁当で騎士さんや従者さんたちには、スープと焼肉とパン。
 仕込みだけしてあったスープを温めて、鉄板で薄切り肉を焼く。パンはマジックボックスに山盛り用意してある分。

『野外でスープを温めるとか肉を焼くとか発想がありえないんですけどね』
 ユエさまと王国騎士さんたちが微妙な顔で笑ってる。

 魔獣避けしてても危険な野外では兵糧食に水と干し肉なんだって。
 野営ではさすがに火は起こすから温かい茶くらいは飲めるけど、匂いが漂うと動物や魔獣が寄ってくるから調理はしないのが普通だ。

『魔獣が自らやってきたらラッキーだろう。一品増える』
『うむ。出てきたら倒せばいいだろう』
 何言ってるんだって顔してるセリウスさまとアンゼリカさま。
 逆に何こいつらって呆れられてるけど。
 グレーデン一族と王国騎士さんたちとユエさまとナギの人たちには超えられない壁がある。

『みんな兵糧でいいんですかぁ?』
 ルルゥがうちの騎士さんたちにスープを配膳してるのを、『良くない!』って慌てて貰いに行った。

『『私たちもスープをもらおう』』
『はぁーい!どうぞ』
 ところどころオネェが出ちゃってるルルゥ。王女さまたちには態度が柔らかいね。

 私たちのテントは王女さまたちとユエさまと私、アンゼリカさまだけ。ニーナがお茶を用意してくれてまったり。

 お肉を焼いてる鉄板のところとスープのところはちょっと殺伐としてきた。

『『食べさせてない子供のようだ』』
 んー、王国騎士さんとナギの騎士さんたちが必死だ。おそらく貴族出身だから上品な態度でいたら出遅れた勢。
 
『兵糧で過ごすつもりでいると火の通ったものはご馳走に見えるからな』
 アンゼリカさまがお弁当だけじゃ足りないからとセリウスさまと交代でお肉を食べに行くって言い出したら、
『『私たちもお肉を食べよう』』
って王女さまたちが言う。

『足りませんでしたか?』
『『そうではないが、外で肉を焼いて食べるのは楽しい』』
 アウトドアのバーベキューに目覚めちゃったか。

『焼きたてを食べるのがうまいよな?』
 アンセリカさまが王女さまたちを両腕で抱えて行ってしまった。

「ちょっ!!!?」
 
 びっくりしたら、ユエさまもポカーンとして、護衛のナギの騎士さんも予想外すぎて遅れて追いかけて行った。

『楽しそうなので良いでしょう』
 ユエさまったらわりとあっさりだね。

『お二人は大人に甘えたり遊んでもらう機会が少ないので良い経験でしょう』
 
 とりあえず不敬罪とかにはならないようで良かった。
 
 アンゼリカさまってば、やっぱり行動がお義父さまちっくなんだよね。

 出遅れた私はテントで、騎士さんたちと肉を奪い合ってるアンゼリカさまを眺めることにした。
 ファリンさまとルアランさまが大笑いでアンゼリカさまを応援して、それを爆笑して煽るグレーデン騎士さん、困惑するナギの騎士さんと王国騎士さん、気にしたこっちゃないと奪い合いに参加する騎士さんたちで、良い思い出にはなるかなぁ?と眺める私たちだった。

 昼食中に、少し離れた場所で野うさぎと猪がでたらしい。
 魔獣じゃない普通の動物が出たのが辺境から離れたんだなぁって。




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

処理中です...