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二章
531話
しおりを挟む休憩にした場所は草原が広がってるところで、大きめな日傘のようなテントを出してくれてた。
『いやぁ、かなりの移動距離ですよ。噂には聞いていましたがグレーデンの馬は素晴らしいです』
ガルフ侯爵が王都から乗って来た馬車本体は王家から、《浮上》《重量軽減》のプレートを貸与されているそうで、行きも従来より早く来れたけど、魔馬の馬力が王都産の魔馬とアッガス(グレーデン)産の魔馬では違いが桁違いなんだそう。
ガルフ侯爵たちが王都から連れて来た馬車の馬は、途中の領で三回交代して来て、最終的に馬車を引いてきた馬たちは、アッガスやグレーデンからの荷物が増えるので別隊でゆっくり進んで、乗り換えた領で元の馬に交代して、王都に向かうことになってるそう。
アッガスからの魔馬は交代予定はない。それだけでも馬力の違いがあるよね。
改造馬車になる前も交代なしだったので元々強い魔馬たちなんだ。
今はさらに余裕で、わんこが散歩を喜ぶが如く、魔馬たち的に「いくぜいくぜ」的に嬉しい仕事らしい。
長距離散歩。長距離が過ぎるよね。
『すごく早い脚ですねぇ』
普通の馬の二倍近くあるから怖がりそうなのに、ナギの人たちは馬の品評会みたいな空気でじっくり見てる。
魔馬たちも鼻高々に凛々しい顔して見せてるよ。
『『あやつらは騎獣に目がないからな』』
ナギの馬は脚が太めの背が低い種だそうで、馬は農耕用で、二足歩行のオオトカゲで馬車、トカゲ車?を引くそう。
聞くと小さい恐竜のような生き物な感じ。この国にはいないっぽい。
『オオトカゲに近しい速さを出せるとは不思議です』
二足歩行で早いトカゲの方が不思議な気がする。
魔馬たちのことは騎士さんたちが嬉しそうに話をしてるので、遠慮なく休憩をする。
『はい、どうぞ』
ルルゥがピタパンもどきを出してくれた。
横でニーナがお茶をセットをしてくれる。
『『食べやすいな』』
パンが薄くて、野菜とお肉を楽しめるので重すぎず食べれて良い。
男性陣には軽過ぎるかもと思ったら、ちゃんと携帯食のシリアルバーも配られてた。
宣伝のためらしい。
『我が国ではパンにあたるのは穀物を練って蒸すか揚げるかしたものですが焼くのも良いですね』
ユエさまが言うのは中華のマントウや花巻かな。あれも美味しいから好き。食べたいな。
『『パンもケーキも焼き菓子もみんな美味であった』』
アッガスでの食事やデザートはまだ控えめだったんだけど、ルルゥが本気を出したら飛ぶぞ!
王宮もコックさんたちかなり腕を上げてるはずなので、王都で飛んでもらおう。
ルルゥがナギに連れて行かれたら大変だもの。
ちょっと遠くの方でザワっとして、すぐ収まったと思ったら、騎士さんたちが走って来た。
『バッタが出たので退治しました。喰いますか?』
え、バッタは要らないけど?食べる感じ??
『『素揚げがうまいな』』
え、好きなの!?
でもデーンと出されたバッタはデカかった。大鍋で揚げる?
『『バッタ?』』
思ってたのと違うみたい。お二人も引いてる。一メートルのバッタはもう違う種類だよね。
『あー、これは畑を襲うのでちょっと報告が要るやつです』
セリウスさまが嫌そうに言う。
『こちらの休憩中に出来るだけ狩ってくれ』
『『「「「応!!!」」」』』
騎士さんたちに指示すると、ガルフ侯爵が王国騎士さんたちに、ユエさまがナギの騎士さんたちにも手伝うように伝えた。
『ありがとう存じます』
ユエさまとガルフ侯爵にお礼を言うと、
『放っておけば他の領地にも被害が広がるので当然のことだ』
とガルフ侯爵が言い、
『あのサイズですと後ろから襲われても大変ですし、バッタは栄養素が高いので粉末にして薬に使うのも良いですから向こうから現れてくれてラッキーですよ。ちょっと種が違うようですが』
とユエさまが口元を微笑ませて言う。
やっぱ食べたい感じ?
セリウスさまは近隣領とここの領主に魔法鳥で報告を飛ばした。
ガルフ侯爵は王様と農産部の担当に。
『出て来たものは狩るが調査は領主の仕事だ』
それはサボられると被害が出そうだな。
『皆様は素揚げで食べたいので?』
ルルゥのどこか間延びした声で、デーンと置かれたバッタに視線が集まる。
なんて言うか硬そう。
『揚げても歯が通る気がしない』
『これの羽は初級冒険者が防具に使う』
どう考えても顔が凶悪で怖いし、脚がぶっとくてトゲトゲしいし、素揚げでは食べれないと思う。
『中身はナッツのようで美味しいんですよ』
力説するナギの方々。
普通にナッツ食べないかな?
『じゃ揚げるは揚げて中身食べる感じね?』
『脚のこの部分も良いですぞ』
羽はムシって素材に身は素揚げに決定しちゃった。
美味しいもの他にあるのに。
ドンドン討伐されてくるバッタが積み上がって、みんなが嬉々として羽をムシって頭を外す。
これは魔獣なら魔石がないかなぁ。
可愛い王女さまたちとキャッキャうふふな旅ができると思っていたのにねぇ。
ルルゥがキッチン馬車出して、油の準備を始めた。
ルルゥの料理への貪欲さはこんな時でも出るのね。
仕方ない。ピーナッツ(もどき)味を食べる覚悟をした。
『『この脚が一番カリカリで良いぞ』』
王女さまたちに良い笑顔でもトゲトゲの脚を差し出された私は、覚悟を決めて齧ったよ。
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