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二章
530話
しおりを挟む馬車の発進後、少しスピードを上げて安定した頃に、デイオン夫人からのお土産をお二人にも渡す。
『こちらは道中のおやつで、この花束は香りで長旅のお疲れを少しでも癒してほしいと、リボンには旅の安全の祈りを込めた刺繍を入れてくれたそうです』
美味しそうなおやつから漂う木の実の香りと、小ぶりで小さめの花でまとめた花束をお二人は嬉しそうに受け取る。
『『接待先で、このような可愛いお花をいただくのは初めてだ』』
ファリンさまには、ピンク色の花、ルアランさまには、薄い緑と黄色の花をまとめた可愛いブーケで、リボンのお色も同じく。
私は、水色と薄紫色。これだけの色々なお花があるところ見たかったな。
貴族の見栄え大事な大輪の花じゃないから、染色とかお茶用に作ってるのかな。香りがとってもいいので、次回来れたらじっくり見せてもらえるといいな。
一緒に乗ってるルルゥは、お土産のお菓子を預かってくれた。
『木の実の種類がグレーデンとは少し違って面白かったです。少し分けてもらったので酒に漬けましたよ』
ルルゥ!!愛してる!!
思わず、熱視線をむけてしまう。
『『リーシャは酒が好きなのか』』
『・・・大好きです』
誤魔化しても仕方ないので正直に答える。
『この人は酒が絡むと人が変わるので怖いのですよ』
お二人が、キョトンとした。変なこと教えないでよ!
ルルゥが色っぽく笑うけど、十二歳に色気なんて通じないんだからね!多分。
王女さまたちは、レイドラアースの土地柄?風景の移り変わりを眺めるのが楽しいみたい。
『ナギの風景と違いますか?』
どんな景色なのか気になったので聞いてみる。
『『なんと言うべきか。水っけが全然違うからか、遠くの方まで見えるような、景色がはっきりして見える気がする』』
ん?湿気のこと??
蜃気楼とかみたいに霧がかった風景なの?
『『山が多くて滝も多くて、木ばかり』』
んー、貧弱な私のイメージでは全然わからないけど、日本の山陰とかそんな感じかなぁ?
『『ここに来てからは肌がカラッとしている』』
なぜか砂漠の国みたいに言われている感じる。
この辺りは若干乾燥気味だけど、砂漠まではないぞ。
『『あと夜も冷えないのは初めてだった』』
あらま。夜間冷えるのか。
『薪やお布団とか多めで過ごすのですか?』
『『暖炉は一日中使っているが、火は弱めだ。温石を持って歩くし、寝る時は足元に入れる』』
石を持って歩くの??
『辛いものを食べるのは寒いからですか?』
『『どうであろう。たくさん採れるのもあろうな』』
ほえー。
『『日中は寒さはそこまででもないぞ』』
暖炉の火を落とさないのは湿気を溜めないのと火付けの魔石が勿体無いからだって。
あと従者の人たちは生活魔法はほぼ使えないから、いちいち火を起こす方が手間だとか。
木材がたんまりあるかあら出来るのだそう。
『『アッガスもデイオンも夜は冷えなかった。この国は温度差が少ないのか?』』
おや、ナギは地域差がないのかしら。
『ここはレイドラアースの南側です。北側と東側の一部はとても寒い地域ですよ』
『『同じ国でさように違うのか』』
やっぱり地域差がないっぽい。
ルルゥがマジックバッグから出した地図で説明してくれた。
『北にはホーンと言う領地がありますが冬は雪が深くて吹雪の日もあります』
ものすっごい日に行ったから思い出すと余計にブルっと来ちゃう。
『『吹雪!?本でしか聞いたことがない』』
私はホーンで見た景色を話した。
あ、魔法でどうこうは省いてね。
守護獣とかも内緒なので。
『『真っ白で凍えるような寒さ』』
想像してみても、あの芯まで凍るような風景って体感しないと綺麗だねってしか思わないかも。
『『グリーンリバーは北を越えるのであろう?困難な旅路になるだろうか』』
山越えはしんどいけど、交通ルートは確かそこまで大変じゃないはず。
『グリーンリバーまでは確かホーンは通らず、商人たちが往来できる道があるので大丈夫ですよ。あちらは常春の地ですのでまた違った景色が見られるでしょう』
ルルゥが地図の上で指を滑らせて、街道を指し示す。
私も行ったことないけど、常春ってなんか素敵な響き。
『『寒い地域を挟んでそこまで違うのか』』
それねー。私も不思議に思うんだけど、多分神様の恩恵とかだと思うの。
レイドラ神と精霊王たちが今は弱ってるらしいので。
グリーンリバーの神様たちはまた違うらしいので、きっとそれ。
『『ナギは小さな島国だから大陸とはやはり色々違うのだな。楽しみだ』』
あちこち回る予定なの、楽しそうだなぁ。
お二人はまだ十二歳なのに怖いとかないのかしら。私は正直、国から遠く離れてって言うのは怖いなぁ。
言葉も違うし、法律とか価値観とかもね。守られない部分が出てきたらと想像すると恐ろしいな。弱虫だ。
ナギ語の挨拶、レイドラアース語の挨拶、などをお互いで教え合いをしていると『休憩です』って声がかかった。
お昼くらいかな?
ルルゥが先に降りて、私を降ろしてくれたあと、横に待機していたユエさまが王女さまたちを降ろす。
『私で申し訳ありませんね?』
ユエさまが拗ねてる?
『私が口うるさいから、顔を見るとこんな顔なんですよ』
ユエさまに降ろされて王女さまたちがむっつりしてた。
ルルゥが良かったの?
でも顔に出せるって多分それなりの関係が築けてると思うのですよ?
私もルークやルルゥに文句が言えるようになるまではちょっと緊張気味だったもん。
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