ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼

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二章

529話

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 うちわの柄も雅だったので色々聞きたかったものの、時期に出発なので馬車の中か別の時に聞こう。

 そんなわけで朝食を済ませて、一旦着替えたり荷物をチェックしたりでみんなお部屋に戻って行った。

「セリウス卿、リーシャ夫人、大したもてなしが出来ずに申し訳無かった。またお立ち寄りの際には我が領を案内させてください」
 デイオン子爵が私とセリウスさまに声をかけてくれた。

「今回は急なことであったし、泊めて頂いただけで助かっていますよ」
「はい、ゆっくりさせていただきました」

 王都までの一日目なので無理しないように近距離でゆっくり出来たのは良かった。

 今回の立ち寄る領地、宿泊地は王家とグレーデン家で、派閥関係で問題のない領主、接待費(食材、人件費)の一部を負担しても領民に害がないか、魔獣の出没率などを考えて決めた旅程。
 ナギの王族がいるので、他の先発、後発で出発したルートより、安全で快適なルートの予定だ。何も問題ないように。

「グレーデン総領地に比べれば何のことはない土地ですが、久方ぶりのお客人、領民も喜ぶことでしょう」
「ここは旧アッガスや旧ノールに囲まれて随分窮屈だったろうが持ち堪えてきた強い地だ。陛下も其方の胆力に感心していた。今後も今までのように民のためであるようにと言付かっている」
 デイオン子爵がセリウスさまに惚れたみたいな顔になっちゃった。ただ感激してるんだけど目がウルウルで顔を赤くされるとぱっと見ね!
 王様に気にしてもらえてるのが嬉しいのは、きっとそれだけ頑張ってきたから。もらい泣きしそう。
 旧ノールはノール男爵が持ってた領地でやっぱりハーボットの末端で、旧アッガスと同じく何もしなくて、魔獣も放置で、放置って言うか自分の領周り以外に押し出す感じに魔獣避けを設置して、魔獣を近隣に押し付けて、自領では違法薬草や奴隷売買に勤しんでたような感じだったらしい。

 ハーボット、ろくなやつがいねぇ!

 現在ノールはエリューン領に吸収されてる、でも代官任せだそうで。
 荒れ果てた領地もらってもなって感じらしい。

「アッガスもノールも金金うるさいばっかりで街道対策も周りに押し付けてばかりで」
 うわぁ。嫌な隣人いるよねぇ。

「今は補助金もいただきましてだいぶ楽になりました」

 ハーボット派閥がうまい汁吸いすぎて、今まで及ばなかった補助が困っている地域に回り始めたんだって。宰相頑張ったってことかな。ハゲ対策を許そうかしら。

「今後はアッガスから王都に向けての街道整備も進むから安心してほしい」

「はい!ありがたいことです」

 どうもこの旅程には王様の今まで至らなかった場所に立ち寄って、王家に良い印象を持ってもらいたい大作戦がくっついてるのか。

 いい人キャンペーンが自分でしなきゃだけど、王様はあちこち行けないやね。

「もう少し経てば我がグレーデンにも旅館が出来るからその時は招待するのでぜひいらしてほしい」
「必ず参ります」
 お仕事中の真面目なセリウスさまは、かっこいいね。お義母さまの雰囲気がある。
 見た目はお義父さまに近いのに雰囲気が貴公子だよ。いつものチャラい感じがゼロになるとこうなるんだね。

 子爵はガルフ侯爵や他の人にも挨拶があると言うので去って行った。

 セリウスさまが私をジッと見て、私が首を傾げると、
「惚れるなよー?」
って言って頭を撫でて笑った。
「惚れないですー。お義父さまくらいの肉体になってから言ってくださいー」
 マッチョ率が足りないざます。
「理想は父上かー?ディーランティス山並みに理想が高いなー」
 ディーランティスはホーン領にある国一番の山だ。
 私の理想が高すぎるみたいに言うけど、ジュリアスさまは二番目か三番目くらいかしら?
 あ、ザイルさんとかマルゴさんもかなりマッチョだ。何番かわからないなぁ。

「ジュリアスさまが好きなんで、憧れの筋肉は別口ですー」
「何だそれー、憧れの筋肉ってー」
 爆笑された。
 後ろに控えていたアランとジェイクまで笑ってる。

「母上と同じで変だよねー」
「筋肉は一番大事ですよ!筋肉は裏切らないんですよ!」
 もっと爆笑された。
 セリウスさまは筋肉に裏切られたらいいんだ。

「外でそんな恥ずかしい言い合いやめなさいよねぇ」
 着替えを済ませたルルゥがお部屋から出てきた。

「さぁ、とっとと着替えて外で待機しないとダメよぅ」

 くぅ、朝ごはんだけの衣装とかもうやめさせてほしい。

 結局、軽めの衣装に軽めに結った髪に着替えてあわてて馬車寄せに向かったよ。


『皆様が王都までの旅路を無事にお過ごしになれますよう』
 デイオン子爵は、なんとか暗記したらしい公用語で王女さまたちにご挨拶した。

『『歓待に感謝する。このデイオンの地がより平和で幸福に包まれますように』』
 王女さまたちは、祈りを込めた挨拶をして馬車に乗り込む。

「リーシャさま、どうぞこちらを」
 ネリー夫人が焼き菓子の入った籠を持たせてくれた。
 ユーリエ夫人は、小さなミニブーケを三つ私に持たせてくれて、
「旅の安寧を祈り、簡単ですがリボンに刺繍をいたしました。お花の香りが少しでもお慰めになれば幸いです」
 心尽くしのお土産を頂いた。

「ありがとう存じます。ネリー夫人、ユーリエ夫人、またお会いしましょう」

 挨拶をして馬車に乗り込んだ。

 他の馬車と馬が進むのを待って、私たちの乗る馬車も動き出した。

 窓から、王女さまたちとともに手を振って、デイオン家を後にした。



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